大変だった新感線☆RS「メタルマクベスdisc1」も無事に千穐楽を迎えることができました。そして現在はdisc2のチームが舞台稽古をしているはずです。同じ脚本、同じ演出といいながら、キャストが変われば必然的に違うモノになるのは当然のコト。disc2ならではの「メタルマクベス」になると思いますので、その変化も楽しみに是非とも豊洲六丁目にお越し下さいませ。そしてグルグル回っちゃって下さい。皆さんが客席で座ったままグルグル回っている間、我々は舞台裏を自力でグルグル走り回っていますけど。


そんな風に我々が走り回っている「舞台裏」ですが、これはもう一般的に使われている単語ですよね。あの事件の舞台裏は! とか、歴史の舞台裏で暗躍する謎のシンジケート! とか、苦節三十年、今まで日の目を見ずにコツコツと頑張ってきた漫才コンビがついにチャンピオンに! 彼らを支えた芸人魂は、コンビ愛は、愛する家族は! その舞台裏に迫る! とか、まあ例えが長かったですが、表からは見えない隠された部分という意味で使われていますよね。
実際に、華やかに見える舞台でもその裏側では様々な苦労やスタッフの尽力があるワケでして、まさに舞台裏では戦場のようなバタバタとか見えない努力とかがあるのです。この場合、舞台の見えていない部分の全部という意味ですから、舞台ソデや楽屋も含めて「舞台裏」と呼んでいます。
確かにこれも舞台用語ではあるのですが、どちらかと言えばお客様目線の言葉ですね。我々は舞台裏という単語はあまり使いません。だって、仕事で従事していますから、もっと細かく呼び分ける必要がありますから。ソデ、奈落、綱元、楽屋。そしてもちろん、物理的に舞台の裏側もありまして、その部分は「ホリ裏」と呼ばれます。これが今回ご紹介したい舞台用語なんです。

舞台の一番奥には舞台奥面一杯の巨大な白い幕(本当は薄いグレーですが)が吊ってあり、その手前には同じ大きさの真っ黒な幕が吊ってあります。白い幕は「ホリゾント幕」と言い、照明で照らすことによって青空や夕暮れ空を表現できる背景を表します。その手前にある、暗い夜や、あるいは背景がない事を表す黒い幕が「大黒幕(おおぐろまく)」。大抵の劇場の一番奥にはこの二枚の幕が吊ってあり、それぞれ昇降させて使い分けることができます。
ホリゾント幕が真っ白ではないのは照明の過度のハレーションを防ぐためですが、まあこの幕が舞台の一番奥ってコトです。

でも、実はこのホリゾント幕は一番奥ではなく、劇場の壁よりもちょっとだけ手前に設置されているコトが多いのです。つまり、ホリゾント幕と劇場の壁との間には少しだけ隙間がある。そこはまさに舞台裏。ホリゾント幕の裏にあるので「ホリ裏」と呼ばれているのです。
ではなぜホリ裏に隙間があるのか。それは「上手と下手を移動するため」なのです。劇場で、客席から見て右側が上手ソデ、左側が下手ソデというのは以前にも書きましたが、当然この上手と下手を繋ぐための導線が必要なんですね。上手にハケた後、次に下手から出なくてはならない場合、このホリ裏を通って移動します。出番が近い場合などは大急ぎで移動することもあるのですが、そうするとホリゾント幕が風で揺れてしまうので、急ぎながらも揺れない程度に静かに走ります。これが中々難しい。さらに、かなり暗いので中々キケンです。

ホリ裏の広さは劇場によって様々でして、わずか50cm位しか無い場合もあります。逆に、まつもと市民芸術館・主ホールなどでは四面舞台と呼ばれる構造をしており、奥にもう一面舞台があってゴッソリ移動できるシステムなのですが、この場合のホリ裏は舞台一面分、つまり15mくらいあるのでやたら余裕があります。
また、劇場によっては舞台面を広く取るために壁ギリギリにホリゾント幕が設置されている場合もあり、その場合はホリ裏は通れません。楽屋の廊下や奈落を通って上手と下手を移動することになります。

このように、劇場によって様々なホリ裏ですが、では我々劇団☆新感線が二年間使ってきたIHIステージアラウンド東京でのホリ裏はどうなっているのか。ええと、そもそもホリゾント幕がありません。もちろん吊ろうと思えば吊れると思うのですが使っていません。巨大なセットがビッシリと組まれていて壁が見えないようになっているんですね。なので幕で隠す必要が無いのです。
しかし、当然舞台裏はあります。セットの裏が通れるようになっているんですね。皆さんがご覧になったあの巨大なセットの裏に通路があって、ソコが通れるのです。でもご存じの通り、あの劇場は回転式の丸い客席を取り囲むようにセットが組まれており、巨大な長方形を成しているのですが、その裏側を移動するというコトは長方形の一番外側を歩くというコトです。その延長距離は300mを越えまして、楽屋から舞台裏面をグルッと回って帰ってくるだけでなんか小旅行でもしたような気分になるのです。そりゃもう大変だよ。

舞台裏からホリ裏からあの劇場の裏話まで、今回は色んな裏をお話し致しました。夏が終わってもメタルマクベスは終わりません。年末一杯まで上演しておりますので、是非とも豊洲にお越し下さいませ。


koutetsu

IHIステージアラウンドでは鋼鉄城を巡る争いが描かれていますが、劇場の真向かいで建設中のビルがなんか鋼鉄城って感じでした。


粟根まこと

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あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。


【出演情報】

ONWARD presents
新感線☆RS『メタルマクベス』disc3
Produced by TBS
11/9(金)~12/31(月)◎IHI ステージアラウンド東京(豊洲)

◇コラム「粟根まことの人物ウォッチング」掲載の「えんぶ10月号」は全国書店で9/7より発売!