植本潤(花組芝居)VS坂口真人(演劇ぶっく編集長)『過剰な人々』を巡る♂いささかな☀冒険

深津篤史『うちやまつり』

pbcc6kQN_400x400

坂口 今回は深津
植本 篤史(しげふみ)さん。
坂口 そう読むの?
植本 はいそうです。
坂口 ご覧になってる?
植本 深津さんの作品ではなくて、新国立で演出をなさった岸田國士の『動員挿話』とかは拝見してますけど。
坂口 じゃ、読むのは初めて?
植本 うん、作品に触れるのは初めて。
坂口 ぼくもそうなんですよ。
植本 編集長は会ったことはあるの?
坂口 ないの! で、今回なんでこれかというと、深津さんが亡くなって、その戯曲をまとめた松本工房さんという出版社が、全作品が入っている、「深津篤史コレクション」という3冊セットを送ってくださったんですよ。
植本 亡くなったのが、2014年の7月でしたっけ?
坂口 はい。それで、読んでみたらおもしろくて。たまたま最初にあてずっぽうで2作品読んだら、傾向がかなり違うような気がしたので、植本さんにどっちにしましょうかってお聞きして。
植本 それが、今日取り上げる『うちやまつり』という岸田國士戯曲賞受賞作で、もう一個は『のたり、のたり、』という作品。確かに違いますね。
坂口 ぼくが、単純に好き嫌いで言えば、『のたり、のたり、』の方が好き。
植本 好きなんだ。ごめんね。ははは。
坂口 植本さんは、どうして『うちやまつり』を選んだの? 両方一応、読んでいただいた?



植本 読みました。深津さんという方、ぼく同い年みたいなんですけど、で、読んでみて、先に『のたり、のたり、』を読んで、これ、どう編集長と語ったらいいのかが、皆目見当がつかず。『うちやまつり』を次ぎに読んで、あ、こっちの方がお話しできるかなと思ったからなんですけど。
坂口 人間って、素晴らしいね!ぼくは逆だ!『のたり、のたり、』だったら、あ、話せるかもしれないけど、『うちやまつり』はどう自分が感じたことを話していいかちょっと、戸惑いました。どうして『うちやまつり』の方が話せそうと思ったの?
植本 まずはね、時期的にタイムリーだなと思ったのと。
坂口 何それ?
植本 お正月のお話でしょ?
坂口 はいはいはいはい。
植本 「明けましておめでとう」って何度も出てくるでしょ?
坂口 はははは。
植本 今の時期に合ってるなとおもったのと、どちらも密閉っていうか、閉塞性? がありますよね?
坂口 『うちやまつり』の方は、団地の小さい広場?
植本 共有スペースか。
坂口 もともと、バブルの頃にできた団地の話ですよね? だんだん人が居なくなって。これ書かれたの20年前でしょ?
植本 1997年初演ですね。
坂口 20年前にそういう過疎化っていうか。東京で言ったら多摩ニュータウンみたいなとこなんですかね? これは関西の話ですが。外だけど、閉鎖的な場所っていうのが、ここの設定ですね。
植本 ぼくたぶん、自分が「コミューン好き」なんだと思います。部屋の中に閉じ込められてるんじゃなくて、解放はされてるのに、閉鎖的なところが好きなんだと思います。
坂口 あ、なるほどね。まさに、そういう感じですよね。団地、広場? なんて言うの?
植本 本当だったら会議所みたいなところができるはずだったという場所。
坂口 できないで、そのままになっている囲われた空き地みたいな所ですかね。そこに人が入れ替わり出たり入ったりして。曖昧な会話を交わしつつ、全体のニュアンスが分かっていくっていう作りのお芝居ですよね。
植本 徐々に浮き上がっていく感じですね。ぼくが一番思ったのは、手触りとしては、すごくぬめーっとした感じなんだけど、渇いている感じもするし。屋外で、解放されてるんだけど、閉ざされてる感じ。相反する感じがあるなーと思って。そこがおもしろいと思って。



坂口 こんな風に書けるのはこの人しか居ないですね。ただ、自分は、こういうのを理解するのに向いてないんじゃないかなと。自分の資質としてね、うまく彼のおもしろさを共有できないっていうか、最後の最後でうまく折り合えない、というのがあったですよ。これ、岸田國士戯曲賞取ってるから、いろんなその時の様子とか見ようかなと思ったけど、
植本 論評?
坂口 みたいなもの。でもそれは、たぶん、違うんじゃないかと思って。自分の中だけで解決したい!ってすごく思ったんですよ。そんなこと滅多にないんですけどね。ちゃんとこの作品と向き合ってみたい。えらい、いいですよね。
植本 自画自賛だ。ははははは!ここにきて。自画自賛だ。なんかさ、難解っていう風にも言われているらしいんですけど。深津さんの作品って。でも難解でいてとても分かりやすい気もするし。分かりやすいようで、難解な気もするしって。
坂口 そうですね。
植本 相反するなと思って。
坂口 そこはすごい素敵っていうか、魅力的ですよね。普通の会話が行われていて、でも会話では、けっこうセックスのネタとかも頻繁に出てくる。
植本 そうだ! この『うちやまつり』に限って言うと、セックスすることと殺人っていうのが出てくるんですけど、人を殺すということがま、一緒だと。ここも相反するはずのものなのにっていうのが出てきますよね。



坂口 14歳の女の子からおじさん、おばさんたちまでが、入れ替わり立ち替わり。鈴木さんって言うのかな? 犯人って疑われている。殺人事件が起こってるんですよね。この団地で。
植本 いままでに3人亡くなっている。同じ団地の中で。
坂口 一時、鈴木さんっていう人が、
植本 ずっとマークされていたんですよね、警察からね。
坂口 そう。その人物がまずここに居て。その人といろんな人との会話がある。その会話そのものもおもしろいですよね。でも、そんな会話しねえだろっていう。
植本 しないですね。本来。描かれているのは、団地の中でも、お互いの名前もよく知らなくて、口を聞いたこともないんだけど、その知らない人同士で。話しかけないですよね。普通。
坂口 夫婦がセックスをしたら、その次の朝、お弁当を作ってだんなに渡すとかさ。佐藤さんの奥さんが鈴木さんとしゃべるけど、そんなこと、しゃべんないっすよ。
植本 知らない人だからしゃべれるかというと、そうじゃないですよね。
坂口 ただ、そのことが読んでるとそんなに不自然にも思わないで読み進められちゃう。いろんな会話が。その何ていうんですかね。わりと柔らかいのに、強引にこう、作家が攻めてくるのをこっちは受け止めてるっていう。
植本 赤裸々に自分のことを語る相手のリアクションがおもしろいから、行けちゃうんじゃないですか。このストーリー。
坂口 だって無理に無理を重ねてるって言えば重ねているような話でしょ。その広場には、猫と、猫じゃねえや死体
植本 猿の、
坂口 何かを埋めたりとか。
植本 あと昔なくしたビー玉とかね。
坂口 そうですよね。そんなことねぇだろと思いつつ、面白がりながら読み進められる本って、そんなにないっていうか。すごく魅力的だと思うんですよ。



植本 このね、読んだときに、やっかいなのは登場人物の名前じゃなかったですか?
坂口 そうですね。普遍性?
植本 これわざとでしょうけど、鈴木さん、佐藤さん、山本さん、山田さん、前田さん、高木さん、上田さん、もうねぇ、ありきたりな名前ばっかりなんですよね。
坂口 そうですよね。こう、どうなんだろう? 作家がいろんなものとある距離を置きたいから?
植本 もちろん役者さんがね、個性的であればわかると思うんですけど。
坂口 でもこれだけ入れ替わり立ち替わりいろんな人が出てきて、それぞれこう会話、この人が誰、この人が何というのは認識できない。鈴木さんと14歳の女の子ぐらいはすぐ分かるけど。
植本 誰かと誰かが誰かの噂をしているときに、その誰かが分からないよね。
坂口 そうですね。噂、けっこうありますもんね。で、結局、別に殺人事件、もう一こ、殺人事件が起こるのか? 途中で。
植本 パトカーが来てね。不倫か・・・。藤原さんと山田さんか。あの、足や体が床から離れるときの「ペリペリ」って言う血の表現がありましたよね?
坂口 だから誰がどこで何をしてるのか。もうそれは妄想なのか、本当の話なのかがよく分からないままに進んで行くし、
植本 主人公の鈴木さんも、自分でやってないんだけど、やってないから捕まってもないんですけど、だんだんね、「あれ? 自分でやったのかな」と思ったりもしたりね。
坂口 人の気持ちってね、そういうことがないとは言えないし。話してるうちに「あ、やっちゃったかな」と思うことも多分、あるとは思うんですけどね。あながち全然、うーん、分かんなくはないんだけど。なーんか。き、き、き、気持ちが悪いですよね。
植本 なんとなくここから、この世界から出て行けなさそうな雰囲気とか。抜け出せない感じ。
坂口 で、結局、最後も。よく分かんない終わり方になりません? 佐藤さんの奥さんと鈴木さんが話してるところに前田と高木の声が絡んできて、終わるのかな?
植本 (本を読む)佐藤(妻)「心理テスト。ここはジャングルです。私はなに? 」鈴木「ええと。」佐藤(妻)「あんまり考えやんと」鈴木「ええと。」佐藤(妻)「答えて」 ふっと、溶暗。で終わる。
坂口 客としては、けっこうぽかんとした感じで終わるんでしょうね。いわゆる静かな演劇系とはまた違って。平田オリザさんなどの作品も途中でぽこんって終わるけど、でもまあ、「あ、なるほど!」って。
植本 オリザさんの本って、時間を切り取った感がありますけど。深津さんはそうではないですよね。
坂口 違いますよね。・・・・・・なんだろうな。どう受け止めていいのか。ちょっと戸惑う、戸惑う感じがすごくしましたね。



植本 なんか、岸田國士戯曲賞を取って、どっかに書いてありましたけど、「観客動員が増えるのかな」と思ったら、増えてないみたいで。ただ賞を取ったことで、プレッシャーだけ。というか、回りからの注目だけが高まる。次ぎ何書くのかなっていう。そこと観客動員とは結びつかないということが書いてありましたけどね。
坂口 でもそう言ったら、一緒に読んだ『のたり、のたり、』は1998年だから、その後に書いている作品ですよね? こっちは、分かりやすい。ね? 関西の落ちこぼれた、湾岸なのかな?にいる若者たちがドラッグしたりセックスしたりして。東京の話だといやったらしい話になりそうだけど、これはちょっと、愛らしいまぬけな感じがして。文学的な匂いまでする。ぼくは登場人物たちにすごくシンパシーを持ったですよ。ビートニクっぽいというか。
植本 カチャカチャしてて、なんか色彩的なのはこっちですね。
坂口 そうですね。圧倒的に分かりやすいというか、共感しやすい。これ、自分の劇団に書いているんじゃないんですね。
植本 あー!そうなんだ!
坂口 なんか、ほかの方に依頼されて台本を書いているんで、そういう意味ではちょっと違うかもしれないんですけど。登場人物が愛おしいという感じがすごいしましたね。『うちやまつり』はすごく距離を置かれている感じ?
植本 なんかその、ちぐはぐな感じは別役さんみたいな感じを受けたし。この当時の日本映画も「あ、こういうの、確かにあったな」と。気持ち悪い感じの。
坂口 でもダイレクトな気持ち悪さではなく、よく分かんない気持ち悪さっていうことだよね? 腑に落ちないっていうか。ということかな?
植本 う〜ん。もちろん、登場人物の気持ち悪さもありね。



坂口 でもさ、会話とか読んでると、断片がおもしろい。こう、ついつい読んじゃう会話だったりするじゃないですか。それもちょっと、・・・・・・うーん、どう受け止めていいのかがよく分かんなかったなぁ。
植本 そうね。劇団に書いてて、劇団のこともよく分かってるだろうから。ぼくね、ただただ読んだときに、今、言われて分かったけど、「おもしろくやれるな」と思ったんです。役者としては。読んでるときは、「みんな体温が低いな」と思いながら読んでて。読んだときの印象としては、不気味さの方が大きかったです。
坂口 何だろう? ブラックユーモア? 雰囲気からしてグレーなユーモアか。実際にユーモアとも思えないようなユーモアが全体に漂っているような感じがして。それが一番、この戯曲の好きなところかもしれない。なんか。だけどもっていうのがずーっと常に。自分のこう、何だろう。受け止め方の感性が足んねぇのかとずーっと思いながら読んでました。ぼくけっこう、勘だけが頼りだから。自分のあれで。
植本 ははははは!いいと思いますよ。
坂口 だからそれが通用しないとなると。けっこう、どうしたらいいか分かんなくなっちゃう。もう完全に深津さんに惑わされてるっていう感じがして。それは心地良かったな。逆に。
植本 構成としてもね、三日午後2時、次が夜11時でしたっけ?
坂口 そうでしたね。
植本 夜になると、全員がパンダのお面って。
坂口 そうそうそう、お面をかぶっていて。
植本 全員が何か知らないけど、パンダのお面を。それぞれ、なんでしてるかの理由が違ってて。
坂口 そうですよね。
植本 パンダがただ好きな人と、パンダが絶滅しようとしているかもと思っている人と、
坂口 中国の思惑とかね。パンダ外交の話になったりもするし。
植本 じゃあちょっと、パンダ会開くか。ここで飲むかっていうことになったりして。
坂口 とか前田さんとか高木さんでしたっけ?常にセックスネタで。一緒に出てくるたんびにそういう会話でしょ?
植本 そうですね。「コンビニどこ?」って行って帰ってくると、「コンドーム」が袋の中に入ってたりして。
坂口 そう。それすぐ分かるかって、ちょっと思ったりもしますね。とかね。なんか夜中と朝ですよね、6時。寒いですよね。
植本 はいはい、そうですよね。
坂口 広場で必ず、あの、必ずじゃないけど、カナリアじゃない何だっけ?
植本 あ、インコ?
坂口 広場でインコが鳴いてるんですね。
植本 野生化した外国のインコがね。
坂口 はい。むかし話題になりましたよね。野生のインコ。
植本 そうですね。はいはい。
坂口 うーん。だから何だろう?後書きは読ませてもらったんだけど。・・・・・・団地。もう人が少なくなっちゃった。
植本 空いてる部屋もいっぱいあるっていう。
坂口 っていう団地の話ですよね。だからそれが分かるのかなってのがまず。・・・・・・ぼくは、ちょっと分かんなかったな。そこ、けっこうポイントですよね?
植本 そうですね。
坂口 逆にこう、新しく出来た場所で条件が悪くて人が集まらなかった街っていうか、なのかなぁと思って最初読んでました。ちょっとニュアンスが違ったけどねぇ・・・・・・。



植本 ま、一番この中でキーポイントとなるのは、たぶん、テープなんでしょうけど。ゴミをね、そこの空き地に、共有スペースに捨てに来る人がいて。わざとなんだろうなって。
坂口 そうでしょうね。
植本 カセットテープがいっぱい入っているのを捨てにくると、わりと全部いろんな人たちの盗聴テープっていうのが。はははは。
坂口 故意にね?
植本 ポイントでしょ、ここ。
坂口 そうですよね。
植本 なぜかラジカセもあって。がらくたの中に。
坂口 それを持って来た人が聴いてもらいたいから、持って来たんだよね? 置いていったんだよね? それを何の気なしに聞いちゃう。もうとっても不自然なんだけど、でもその不自然を受け入れちゃう自分がいるみたいなのが、ずーっと不思議だよね。
植本 そうですね。登場人物もあんまり驚かないというか。
坂口 はい。
植本 殺人に対しても何か。うーん。
坂口 冷めてるもんね。全然。
植本 そうですね。
坂口 普通もっとびっくり。大騒動になってる感じだけど。だけどそれは鈴木さんが3ヶ月前に捕まってっていうか。警察に連れて行かれて
植本 容疑者として
坂口 調べられて、無実だっていうことで。そういう3ヶ月経ってるっていうこともあるのかもしれないけど。
植本 ふふふふ。そこにね、住民たちが敢えて挑戦して、鈴木さんにしゃべりかけていく感じが。冗談ですよ、って言いながら。



坂口 でも冗談じゃねえよっていう。感じですよね。だから、・・・・・・あー、どう、最後ぽかんとして終わる、その、何だろう? 作家のニタリっていうか。気持ち? 当然分かっているわけですよね。観客のリアクションとかも。それでもこういうお芝居を作るっていうその姿勢が、・・・・・・いいけど、素晴らしいけど、・・・・・・うーん、自分が観客だったらどうなんだろうって。
植本 ま、あの。美術展とかに行ったりとかでもあるっちゃあるじゃないですか。ほかの芸術でも。
坂口 詩とかね。全部分かるわけじゃないから。べつに演劇ですべて分かる必要はない。というか演劇にはよくわからないけど、おもしろいという部分がたくさんある。
植本 演劇がね、どっちかっていうとエンターテインメント寄りなものが多いからなんですけど、こういった作品もあってしかるべきだと思うし。
坂口 全然。でも戸惑いみたいなものがありました。それでね、1ヶ所とっても好きなところがあって。(ページを探す)ずーっと会話になっているんですけど、ここだけ、つかこうへいの芝居みたいになってるんですよ。突然モノローグになる。誰に語り書けてるのかっていう。
植本 佐藤さんね?
坂口 そうそうそうそう。
植本 最初にずーっとしゃべってる人ですね。聞かれてもないのに、「奥さんがちょっと実家帰っちゃって」みたいなこととか。
坂口 ここまでずーっと会話で来てるのに、ここだけが誰にも向かってない、モノローグみたいな。少し読んでみますね。佐藤(妻)「寂しいの?」佐藤「寂しくなんかないさとわたしは言いたい訳です。冬枯れの夜、駅のホームに降り立てば、私と同じ風体をした男たちの家路を急ぐ姿があります。皆この団地に消えていきます。その姿が一人欠け、二人欠けても、私は寂しくないさと言いたい訳です。」以下略。
植本 おもしろいですね。
坂口 つかの芝居でよくあるじゃない?
植本 へへへ。しかもそのあと池田屋の話をして。
坂口 そうそうそう。それがとってもね、印象的。「サビの部分なのか?ここは」とまで思いました。
植本 おもしろいです。確かに。
坂口 本当にここだけなんです。
植本 長いセリフなんてそうそうないですもんね。
坂口 そうそう。
植本 本当だ。ふーーーーん。どうなんでしょうね。他の作品でもこういうのが多用されてるのかな。
坂口 『のたり、のたり、』の方にもブラッドベリのセリフが唐突に2カ所出てきます。あれもけっこうハチャメチャな会話じゃないですか。クスリと飲酒でラリって死にそうだとか。あれ、あれいいですよね。100円君ていう人が、恋人に会いに来るときに、必ず自傷してくるっていう話。手首切って血流したりしないと恥ずかしくて逢いに来れないっていう。クスリやってるんですけどね。
植本 そうですね。ありましたね!
坂口 あるんですよ。ぼく、こういうの好きです。
植本 うひゃひゃひゃひゃ。確かに。



坂口 これーーーは、し、し、知らなくて良かったっていうか。こう、一応、演劇の本作ってる身としてはね。ここに関わっていくともう、たいへん。はははは。
植本 出版する場合って、あれなんですか? 書いた方とわりとガッツリと付き合って行くんですか?
坂口 どうでしょう? ぼくは全くダメですけど、基本的に編集ってそうですよね。
植本 たぶんね、関西だと小堀さんという有名な方がいらっしゃいますけどね。
坂口 これの編集にも関わっていらっしゃいますよね。なんで、すごくこの本を作った方は、深津さんをすごく好きで、作品をものすごく好きでっていうのが伝わってきますよね。
植本 ぼくブログで、土田英生さんが、深津さんが亡くなった日にブログを書いたのを前に読んだんですけど。前から、生前から二人は牽制し合ってて、飲んだりすれば喧嘩をしたりとか。お互いに感想を言い合ったりしてね。ツッチーは、もちろん亡くなったことはショックなんですけど、作品が、もちろん自分の書いているものとは全然違うので、「やっぱり好きにはなれない、よく分からない」とは書いていて。だから関西ではそういう人たちがいて、自分はその時にもっと深津さんのことを知っていればよかったなとは思いましたね。
坂口 なるほどね。
植本 亡くなってまだそんなに経ってない、2年半くらい? まだまだ深津さんはね、みなさんの、亡くなってから日が経っていないから、近くに居るだろうし。
坂口 そうでしょうね。
植本 これは「古典になって行くのかな」と思いましたね。
坂口 そうですね。だからすごい、その、岸田國士戯曲賞に選出した委員はすごいと思いますよ。あの、ぼく、うーーん。これを一番にするっていうのが、できない。理解できないっていうか、分かんない部分があって。これは果たしていろんな来た戯曲の中でこれを一番おもしろいって言い切れる素養がない。自分に。本当に。これ素養がある方がきっと選んだんだけど、その人たちの当時の話を読むのは癪だから。
植本 読みましたけどね。ぼくね。
坂口 絶対読まない! 自分だけの、こう『うちやまつり』にしたい。もう他の人の意見は聞きたくないってすごく思いました。それはね、もう一つの作品、もう一個の方がぼくは自分が好きだったというのがありますからね。だからなんか、あーーー!



植本 よく言われているのは、やっぱり、その阪神大震災以降、方向性が決定づけられたみたいなことが言われてますけど。
坂口 はい。
植本 何ていうんですかね。虚無感というか。
坂口 これはいつ? 阪神大震災とは。
植本 その時にも作品を発表されていますけど。『カタカタ』でしたっけ? 『カラカラ』か。『うちやまつり』は2年後ですね。
坂口 そっか。2年後か。ふーーーん。なんかそこらへんもね。なんか。
植本 ご本人もね、そのときの様子とか、いろんなところに書かれていますけど。自分は大阪に居て、家族が芦屋に居て、家が全壊してみたいなね・・・。
坂口 なるほどね。・・・・・・乱暴に言っちゃえば、ぼくにとっては、その「他人事」だからな。こんなことを言うとまた、ものすごくあるけど。「頑張れニッポン!」とか言うよりかは、ましだと思うよね。自分にとってね。「他人事」って言った方がね。だからピンと来ない部分もすごくあるんですけど。うーん。何か、うまくすみません。
植本 本当にね、その後、いろんなところで既成の戯曲を演出してね。そちらでも、評価をいっぱいされてて。
坂口 そうですか。
植本 確かに『動員挿話』もすごくおもしろかったですし、新国で『象』とかもやってますしね。
坂口 ああー。なるほど。そういうこう、何だろう。『象』はあれか。
植本 別役さんのね。あとは『温室』とかね。ピンターだっけ?
坂口 ああー。ちょっと分かんない不思議な話が好きなんかな?
植本 癌になられて、闘病生活が長かったんですよね? 5年くらいあって。ていう中で、その5年くらいの中でもいっぱいお仕事されててね。
坂口 そうですね。ふーん。なんかなぁ。ぼやーっと生きている身からすると、「なんとなぁく違う人なんだなぁ」って。うーん思うかも。
植本 ふふふ。書いてあったのは、高校時代、応援団だったから、とにかく後輩の面倒見もよく。
坂口 へー、そうなんですか。へー。



植本 読んでないからあれだけど、おもしろかったですよ、選評。
坂口 そうなんですか。いや、ぼくは、自分の『うちやまつり』を解決してから。
植本 わははははは!
坂口 その前にはいろんな人の意見は、一言たりとも聞きたくない!って強く思った。こんな思ったのは初めてですね。
植本 本当に46歳でお亡くなりになっていて。本当にね、惜しい才能だなと思いますね。今回、これを初めて読ませていただくと。
坂口 まあ、そうね、1回も観てないっていうのも、演劇誌の編集長として立派といえば立派だけど。あきれちゃいますよね。自分で。へー。
植本 あと、本当に、関西で愛されてた方なんだなっていうのは。いろんな方の証言から分かりますね。
坂口 はー。
植本 人的に、それ以上に作品、才能?
坂口 そうですね〜。
植本 なかなか、かえってね、生前に知り合っていたら、ぼくたちがこうやって語り合えなかったかもしれないし。
坂口 そうですね。思いが強すぎますもんね。もしかしたら、うん。今更、もう、観れないけど。観ればよかったかなと、ちょっと思いますね。
植本 すごいあの、あれだけど、ほら、あんまり編集長はさ、新劇が得意じゃないじゃない?
坂口 そうですね。
植本 新劇の老舗の劇団でもやれそうじゃない。
坂口 そうですね。ニュアンスとして。岸田(國士)とかやってるくらいだから。
植本 そうそう岸田國士っぽいところもあるなと思った。
坂口 その性的な匂いが。2つしか読んでないけど。全編を通して語られているっていうのも。まあ「性的な匂い」という部分だけでくらべれば岸田はうまいですよね。
植本 ご本人は北村想さんの『寿歌』に影響を受けているとか。この作品に限らず。
坂口 はーーー。
植本 ご自分の出発点として。
坂口 何だろう。終末観とかってよく言われるけど、
植本 そうそうそう。
坂口 ぼくはこの作品、2つ読んで、それはほとんど感じなかったなぁ。見ている時期がずれてるんですかね。だからあんまりその影響っていうのは、自分の中では分かんないかったですね。



坂口 これ、でも今後、やったら観に行く?
植本 あー、観てみたいのはもしかしたら、こっちかもね。『のたり、のたり、』。
坂口 こっちはできそうだよね。別に。うううん。『うちやまつり』はやる人が大変かなって。役者。でも植本さんできそうだっておっしゃらなかったっけ?
植本 あの、やってみたいですし、おもしろいと思いますけど、その、必然的に違う方が演出することになりますし、その答え、それは、いいんだとおもいますけど。どの戯曲だって好きなように演出して好きなようにやれば。ただ、正解はもう聞けないのかなっていう、ね。
坂口 そうですね。正解は、いっぱいあると言いつつも、これは彼の物だからなぁ。
植本 うんうんうんうん。
坂口 という気はしますよね。
植本 そこの正解を出していくのが演出家なんだと思うけど。別にそこは。
坂口 そうですね。ふーーーん。なかなか。本当にこんなことがないと出会えなかった。
植本 よかったです。本当に。
坂口 ありがとうございます!松本工房さん。本当に。まあ、今頃、何言ってんだおめえ!って言われるかもしれないですけどね。
植本 そうね、深津さんのことをよくご存じの方とか。作品観てる方はね。
坂口 その非難も甘んじて受けましょ。
植本 そういう企画がないと出会えなかったですから。
坂口 本当にすみません!
植本 本当によかったです。


 ※「深津篤史コレクション」全3巻
(松本工房刊)は、1300ページに及ぶ深津篤史作品集です。下記ホームページでご確認ください。
http://fukatsu-collection.info/



植本 潤

a6a4c939

うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】

ゼータクチク vol.2
『春宵・読ミビトツドイテ』
【構成/演出】わかぎゑふ
【出演】草彅智文 亀山ゆうみ 植本潤 粟根まこと
3/22(水)~26(日)
cafe&bar 木星劇場

・・・・・・・・・・・・・・・・

坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
4bbb344f

8e307e54

ミハイル・ブルガーコフ『アダムとイヴ』

2917d470


植本 前回の『至福』につづいてブルガーコフですね。
坂口 どうですか?
植本 今回の『アダムとイヴ』はスケールがまた更に壮大でしょ。
坂口 はい。作品もそうだけど、あの時期に書かれたっていうことで、ものすごく意味があるというか、
植本 1931年か。
坂口 その時はすごいインパクトだったんじゃないかな。その時に読んだらね。そこに居る人がね。
植本 太陽ガスっていう化学兵器でレニングラードが全滅しちゃう。 「ええ!ガスで死んでる」と思って。
坂口 すごいよね。そんなこと今までになかったわけでしょ? しかもこの10年後に、歴史的にも有名なヒットラーのレニングラード包囲戦で100万人ぐらいの死者がこの町で出てます。彼はそこまで見通していたわけではないとは思いつつ、でもやっぱりすごい。で、一幕目。



植本 五月のレニングラードって書いてありますね。
坂口 すごい明るい感じ。外からアコーディオンの曲が流れてきたり、
植本 お芝居が上演されてるんだっけ?
坂口 何ですかね。拡声器か何かからオペラの『ファウスト』が流れてきて。
植本 青年技術者アダムの部屋ですね。結婚したばかりの新婚で、奥さんが学生でイヴという。
坂口 比較的若い二人が結婚したっていうところですね。
植本 アダムとイヴなんですけど、それぞれロシア名はちゃんとついてて、アダム・ニコラエヴィチ・クラソフスキー、イヴ・アルチェーミエヴナ・ヴォイケーヴィチっていう。28歳と23歳の夫婦です。
坂口 いちゃついているところに、メイドとかが入ってきたりして。だんだん事態が分かってくる。その流れがとても上手ですね。見てて、分かりやすいのかなと。
植本 闖入者がいきなりくるのは前回やった『至福』と同じですね。
坂口 そうですね。青い帽子をかぶって、鼻めがねをかけた乱暴者がエフロシーモフという科学者を追って、窓から飛び込んで来たりしますね。その逃げ込んできた科学者が結局、主役なのかな?
植本 そうですね。エフロシーモフ。研究のしすぎで少し浮き世離れしている、アカデミー会員。41歳。
坂口 当時のソ連の感じだと、わりと社会に受け入れられないキャラクターとして、逃げ込んでくるのかな。しかし追っかけてる人も、どこかで乱暴をして、組合を除名になっているっていう。
植本 はいはい、そうですね。労働組合から追放された32歳のマルキーゾフさん。
坂口 その人たちが出てきてから、ドラマが動き出すっていう感じですね。



植本 キーワードとしては、「太陽ガス」。そこの時点では分かってないですけど、その科学者のエフロシーモフが、カメラ状の装置から出る光をあてると、太陽ガスに対して免疫がでるという。その光が細胞に染みこんで死なないっていう。
坂口 ガスが発射されても、その光が当たっていた人は死なない、っていう。ものだったんですね。それをみんなはまだ知らない。で彼はアダムとイヴに「記念写真を撮ってあげましょう」って言って、光をあててあげる。
植本 彼は、聖書にある「アダムとイヴ」だってことに気づいてね、科学者が。「じゃあお祝いしてあげようか」って撮ってあげますね。
坂口 その時に、またさらに仕掛けがあって。ほかに生き残る人を作っとくんですね。
植本 その二人を撮るときの光を、偶然浴びちゃった人たち。ちょうど入ってきたりとかしてね。
坂口 ダメな文学者のポンチクとか、例の乱暴者のマルキーゾフもちょうど窓から入ってきたりして、ちょっと光浴びるんですよね。そういう設定も上手です。この人たちが居なかったら、アダムとイヴと科学者のいきなり3人になっちゃうけど。
植本 おれがすごいおもしろかったのは、窓から入ってくるマルキーゾフも、光浴びるんだけど、窓からだから、足浴びてないんだよね。光。
坂口 そうですね。
植本 そうすると、後々、足だけ壊死しちゃう。そこ好きですよ。
坂口 そのあと、化学兵器? 太陽ガスが爆発すると、そこで幕かな。一幕目は。
植本 そうかな。そうですね。
坂口 町中みんな死んでるっていう、窓から見て「あ、みんな死んじゃってる」って動揺しつつ幕になるっていうのが、一幕目。なかなか。ここまででも充分見応えがある。序なんだけどさ。聖書とかに興味のある人は、もっといっぱい、ここで起こること自体がいろいろな伏線っていうか背景がどうやらあるらしいですね。残念ながらぼくらは。当時の共産主義社会もよく知らないし、キリスト教のことも、聖書のこともよく知らないから、半分くらいしか面白さが感じられてないような。でもおもしろい。
植本 そうなんですね、しかもその1930年代の初めに書かれていますけど、その年代って、ロシア、ソビエトは共産主義社会で反宗教体制なんですよね。



植本 二幕ね。生き残った6人の苦しむ様子が描かれるって書いてあって。
坂口 まず、街全体が壊滅しちゃうわけでしょ? レニングラードに何人いるか知らないけど、ものすごい数の人が死んじゃうわけですよね。言ってみれば原子爆弾くらいのもんですよね、規模として。
坂口 二幕はスーパーマーケットなんですね。イヴがみんなと別れてスーパーマーケットに迷い込んでいる場面が二幕の始まり。最初に書いてあるト書きがすごい。スーパーマーケットの様子。バスが突っ込んでいて。女の車掌が死んでたり。立ったまま死んでる人がいたり。
植本 マーケットに衝突した路面電車が、止まっている。巨大なセットですよ。
坂口 品物が散乱しているわけですよね。さらに大きな窓。ここも何か宗教的な話になってくるらしいですね。
植本 ここには「天国と地獄」、「地獄と天国が映し出されている。巨大な窓には」と書かれている。
坂口 上が天国でいい天気、下が地獄で何とか。その間に4頭立ての馬車が、
植本 二輪馬車が浮かび上がっている。
坂口 すごい惨憺たる風景の中に、またそういう景色が見えているっていう。幕が開いたらおおーっていう感じで。この人、プロフェッショナルですよね。
植本 画作りの上手な。
坂口 そう!すごく上手だと思います。
植本 ここで登場してくるのがダラガンっていう人。
坂口 兵士?
植本 飛行士37歳って書いてありますけど。戦闘機に乗って闘いに行くと、行った先で太陽ガスを浴びて命からがら逃げて来るんですけど、失明してるんですね。
坂口 くどいけど、ここも聖書のモチーフですね。
植本 この科学者のエフロシーモフっていう人がその失明した目を治す。
坂口 そのカメラに似た機械で光を浴びせてあげると、かろうじて生きている人は細胞が再生していく。死んだ人はだめ。
植本 そうなんですよ。完全に死んだ人はダメみたいですね。
坂口 だから目がつぶれた人の目が見えるみたいなことは、まさにキリスト的な展開ですよね。その後はどうなるんでしたっけ?
植本 科学者の存在が大きくなっていく。
坂口 彼が生死を握っている部分もあったわけだから。でもま、この場面は相当なドタバタっていうか。ね。みんながそろって、「これからどうしようか」っていう場面ですね。
植本 本当に起承転結でいうと、ぐーーっと物語が動く。で、三幕。



植本 三幕はテントが張られていて。森のはずれと書いてある。
坂口 陣地を作るわけですね。生き残った6人で。だからこの場面もまた、いきなり大きいテントが張られていて、森があって、しかも後ろに虹が架かっているわけでしょ。虹が架かっている場面が、またいきなり幕が開くと出てくるわけですよ。インパクトありますよね。しかもテントもいろいろなものをかき集めてきて。
植本 コミューンみたいな。
坂口 ここで、6人で原始共産制みたいな生活をしてるわけですね。
植本 役割分担があってね。
坂口 食物集めてきたり、炊事をしたり何かいろいろ。アダムが結局トップになっている。
植本 リーダー
坂口 一応、リーダーになってて。
植本 アダムがどんどんガチガチの共産主義者になっていきますよね。内面的に持ってた部分。それによってイヴとの夫婦仲がどんどん冷えていきますね。
坂口 すごく象徴的ですよね。ある部分で自分が権力を、小さいながらも権力を持つと、どんどん増長していくっていうか、自分の考えを通すために、偉そうになって行くっていうのは世の常じゃないですか。もうそれはどこの国とか組織をとってもそうですよね。
植本 友人をとってもそうですよ。久しぶりに会って、「あ、いつの間にか、しばらく会わないうちに、あ、こんな人になっちゃった」っていうことありますよ。
坂口 それ実感? すごいねえ。
植本 ないですか? そういうの。権力を持って,
坂口 僕のまわりにはあんまり偉くなった人はいないかも・・・。
植本 逆にそうならないように、この人気をつけてるなっていう人にも会う。
坂口 ああー。どんなこと気をつければいいんだろうね?
植本 前会ったときよりも、さらに権力的には上がっているんだけど、さらに低姿勢になっている。気の使い方とかが。
坂口 悟られまいというか、偉そうな部分を。
植本 そうそう、「いつだって友達のままだよ」っていうオーラをすごく感じたりすると、「ああー、大変なんだな」って。
坂口 植本さんと付き合うのは大変だね!
植本 そんなことないけど。
坂口 気をつけなきゃ。えらくなったとき。
植本 いやいやいや。そういうのあるでしょ?



坂口 まあ、ありますね。そういうことでアダムが力を持ってきて、イヴは嫌になってきちゃう。で、まわりのみんながイヴにちょっかい出すけど。イヴは、エフロシ-モフに惹かれて。
植本 唯一、ちょっかいをかけてこない科学者に惹かれていくっていうか。
坂口 これはもう、人生だよね。
植本 うん。
坂口 観客もさ、そこらへんは、「うんうん、そうだよね」ってちょっと思いますよね。
植本 ここのリーダーとして暴走し始めたアダムが科学者を「死刑にしろ!」とかって言いますね。もうね。
坂口 そうですね。でもまあ、イヴが止めるわけだよね。
植本 止めるときに、「もう、アダム、あなたのこと愛してない!」って。
坂口 そこらへんを受け入れるところがすごいね。アダムが。「あ、そう」みたいな感じでがっかりしているでしょ?
植本 だってそれはあれですもん。一般社会でもあると思うけど、仕事に暴走し始めた人は、もう仕事だけですもん。見えてるものは。「いいよ、次行くからおれは」っていう感じじゃない?
坂口 何か、すっかり理解してますね!
植本 いやいやいや。
坂口 えー、それで、さらにここではどういう展開なんでしたっけ?
植本 アダムがそのダガランを世界戦争に派遣する決議を承認させ、そして科学者の装置と爆弾をダラガンに渡すように命令する。そうすると科学者は「爆弾、すでに分解しちゃったよ」って言う。で、死刑、銃殺命令が下るっていう。
坂口 なるほどね。で、その後で飛行機に乗ってダガランが世界戦争に行っちゃうんだよね。



植本 四幕はみんなが、ダガランが帰ってくるのを待ってるっていうことですね。
坂口 ここではイヴとエフロシーモフはその場をぬけてスイスに行こうとしますね。
植本 ユートピアを目指して。
坂口 で、行こうとして、そしたら、ダガランが帰ってくる。
植本 世界戦争で、全世界政府というものが立ち上げられたんですね。
坂口 共産主義社会が勝ったということですよね。共産主義になったから、またエフロシーモフの技術が必要になっちゃう。ていうことですね。
植本 発明した物を政府に献上しろっていう。
坂口 そうですね。でもかれは爆弾は捨てちゃったり、光を当てたら助かる機器も、共産主義の中だけじゃなくてみんなに使ってもらいたい。
植本 「全世界にその光を」。
坂口 って言ってますよね。それはある部分、作家の代弁でもあるんだろうし、作家が理想とする科学者像でもあるかもしれない。
植本 平和主義と言ったら簡単かもしれない。まあ、戦争に反対っていう。
坂口 そうですよね。まあ、結局連れ戻されて、全世界政府のところに行くことになる。
植本 全世界政府の書記長がエフロシーモフに会いたがっている。っていう。
坂口 でお終いになる。だから“アダムとイヴ”は、楽園、スイスには行けない。ここらへんがさ、そうだろうねとは思うけど、もどかしいっていうのはある、でもまあ精一杯の作品なんでしょうねぇ。なんか渾身の作品だと。
植本 終わらせ方って難しいんだなと思いますね。
坂口 そうだよね。 「ふぅ」って言って終わるんだよね? ちょっと、地味っていうか。
植本 いいト書きですけどね。「巨大な飛行船によってできた濃い影が森を覆う」っていう素敵な。
坂口 ああああ、そうか!
植本 「全世界政府の書記長が君に会いたがっているゾ」幕ですよ。
坂口  暗雲が覆ってるって。もうそれだけで十分かもしれないね。
植本 「ラッパのシグナル音が聞こえ」
坂口 ラッパのシグナル音も聖書だ・・・。わからないくせに聖書にこだわる(笑)。
植本 あ、そうなんだ。
坂口 天使がラッパを吹くと何かが起こるというのがあるみたいですよ。だからもうそこここに仕掛けがほどこされているんですね。



植本 これは日本では上演されているんだろうか?
坂口 どうだろう? これ楽しいよ! すーごくおもしろいと思う。
植本 うん。おもしろいと思う。
坂口 何の役やりたい?
植本 これ? ・・・・・・ポンチク?
坂口 ダメな文学者か。はははははは。
植本 楽しそうだよね。
坂口 まんまで行ける。
植本 でも、どれもおもしろかったですね。登場人物。ぜひこれ企画していただいて。
坂口 そうですね。ぜひ見てみたい。
植本 それなりに資本のある制作の方、お願いします。
坂口 ぜひ! これだけは最後に書いておきましょう。
植本 そうですよ! もちろん。まだこの企画でしゃべって実現したものはないですからね。
坂口 へへへへ。さびしいね。植本さんは、その際はポンチク役で。
植本 はははは。ありがとうございます。


植本 潤

a6a4c939

うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】

news_thumb_yasyagaike2017_omote

花組芝居創立30周年第一弾
『泉鏡花の夜叉ヶ池』
2017年1月20日(金)~26日(木)
二子玉川 セーヌ・フルリ

・・・・・・・・・・・・・・・・

坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
4bbb344f

8e307e54

ミハイル・ブルガーコフ『至福-レイン技師の夢-』

300px-Bulgakov1910s

坂口 今回はロシアの作家ですが、どうでした?
植本 全然ノーマークな方でしたけど、紹介してもらって、とっても良かった。ミハイル・ブルガーコフの『至福-レイン技師の夢-』四幕なんですけど。本当に日本では知られてないんだね。ウィキペディアで見てもそうそう情報が得られなかった。
坂口 そうですよね。小説の方がちょっと有名らしいですよ。ぼくもまったくノーマークでしたけどね。しかも時期的にもロシア革命初期で大変な時代の作家ですよね。
植本 1930年代前後かな。活動されていたのは。
坂口 1917年にロシア革命があって、その前にチェーホフがいて、後にこの人がいるという時間的なポジションなんですかね。どこらへんがおもしろかったですか?
植本 まず映像が頭に浮かぶ。すごくスピード感があって。それぞれのキャラクターも、自分なりにね、浮かんでくる。その中でね、ちょっとおもしろかったのは、主人公のレイン技師がちょっと浮かびにくいですね。ぼんやりしてるような。でもそこがおもしろいかなって。もしね、舞台にかけるときに、この役は「どんな人でもできるな」と思った。
坂口 これはSFコメディですね。
植本 タイムトラベル物です。
坂口 今言ったレイン技師っていうのは、タイムマシーンをこっそり作っている人ですね。

*

植本 設定としては1920年代ですね。
坂口 ロシア革命の、まさに自分が書いている時代そのものが設定なんですよね。その時代はもう大変な時代になってきて。
植本 まあね、自由がない。物にしても、見る、読むものにしても。
坂口 ただ、世界の勢いとしては労働者階級が権力を握ったから、よい世の中というか、今までと違った、理想的な世の中になるかも、なろうっていう熱気がまだある時代ですよね。
植本 社会主義の意味でのいい時代。みんな平等ねっていう。
坂口 今から見るからこそ、いろいろな大変な社会だったけど、当時は、もちろん当事者は大変だけど、世界的にも注目されていた、実験的な、人間が生きるシステムとして実験的なことがちょうど始まった時代。彼はあんまりその状況には肯定的ではないっていうか。
植本 そうですね。書いている物を読めばそうとれますけどね。

*

坂口 一幕で、レインが自分の部屋でタイムマシンを作っているシーンがスタートですね。レインはあまり目立たなくて、他の人たちがおもしろい。
植本 キャラクターが濃いですからね。
坂口 そうですよね。最初に巻き込まれて一緒にタイムトラベルをするのは、住宅管理委員会の書記。
植本 何て名前だったっけ?
坂口 書記・・・・・・ブンシャ。この人は元は侯爵だったんだけど、今は侯爵ではヤバいから、身分がね。偽って「お母さんの浮気相手で御者の子だから、自分は侯爵ではない」と。
植本 この人は体制寄りですかね。
坂口 そうですね。他の本もちょっと読んだんですけど、他の作品もこういう人が出てくる。体制側に忠実でおちょくられるみたいな。
植本 まあ、コメディには必要な人ですよ。
坂口 でも当時は本当にリアリティのある人だったと思いますね。で、もう一人が泥棒?
植本 たまたま隣の家に入ってくる泥棒ですけども。
坂口 ミロフ・・・・・・
植本 ミロフラフスキー。これぼく一番やってみたい役ですね。これいい役だよね?
坂口 いい役だよね。たまたま彼が来てるときにタイムマシンが作動して。あっ、その前に1回作動に失敗して、イワン雷帝が出てきてしまいますね。
植本 タイムマシンの誤作動で、16世紀から。
坂口 機械のメモリを間違えて。出てきて、右往左往して屋根裏部屋に逃げ込んだままっていう状態になってるんですよ。バーン!って突如イワン雷帝が出てくる。
植本 タイムトラベルのお話を成立させるために、昔の人が、16世紀の人がやってくるというのが、重要で、とってもいい要素ですよね。
坂口 そうそうそう。いきなりイワン雷帝だからね。
二人 フフフフフフ。
坂口 しかもイワン雷帝が臆病。強いけど臆病みたいないいキャラクターで。舞台で観てたら(視覚的にも)異色でしょ。衣裳とか格好とかも。バカーン!って音がして、彼が出てきて右往左往するっていうのは。劇的な効果がすごいですよね。
植本 いいスパイスです。これ。
坂口 あわててタイムマシンを元に戻すと、イワン雷帝は屋根裏部屋に逃げ込んだまま、お付きの人たちは消えちゃう。その後、 泥棒ミロフラフスキーがまたマシーンいじくって、で、23世紀に行っちゃう。

*

植本 なんか。いつも、編集長が紹介してくれる戯曲、2回くらい読まないとわかんないんだけど、これは一発でわかった。
坂口 あー!本当? いつもは2回読むの?
植本 頭に入らないのってあるじゃない?
坂口 ぼくこれ、でも2回読んでるよ。
植本 なんか、サーッと読めた。
坂口 最初ね、ロシア革命のその頃のことが知りたくて。ぼくは共産主義にあこがれを持っている時代では、さすがになくて。ボロボロになって、ひどいことが起こってるぞっていう時期に共産主義に興味を持ったけど、でも、やっぱりそれなりの「そういうシステムがあるんだ」っていう希望を持っている派だったから、その時の様子をとっても知りたくて、まずこれをチョイスしたんですよ。これ。でもそれどころではない。

*

植本 でも、まあ、泥棒の人が20世紀から23世紀に移っても、どっちの時代にいても自由ですよね。そうするとやっぱり体制の堅苦しさは浮き上がってきますよね。
坂口 いつもコンビでいる書記のブンシャの融通のきかなさが、それをさらに際立たせる。
植本 まじめだからね。
坂口 「ちゃんとしなきゃいかん!」という。23世紀になってもずーっと主張し続けてくるというのも、ちょっと象徴的でうまいですよね。
植本 あの23世紀に着地した場所がこの作品のタイトル「至福」。何これ、地名?
坂口 場所、地域なんでしょうね。
植本 場所かぁ。何て言うんだろうな。作られた幸せな世界で。そこでは多分、あまり事件は起きないんでしょう。
坂口 共産主義社会がとりあえず行き着いた場所という設定ですね。
植本 そこに泥棒が入ってきて。23世紀の人の物を盗むものだから。向こうはね、ちょっとざわざわ。ざわつき始め。
坂口 それにしても盗みすぎだよね。
二人 フハハハ。
植本 それによって、そのレイン技師とか、23世紀に20世紀から行った人が、危険分子として見られるようになる。
坂口 そうですね。でも一方で、元の世界に逃げ帰ってくるときに、かれが役に立って。鍵をまた。
植本 泥棒が持ってるのがそもそもダメなんだけども。
坂口 泥棒が結局、一番自由で。ラストの話をしちゃうと、泥棒は警察に捕まらないんですよね。泥棒だけ。他の人たちはみんな警察に連行されちゃう。なんとなく皮肉なというか。結末だよね。こいつ(作家)、やるじゃんってすごく思いますね。しかも第二幕から「至福」という場所に行くんですけど、わりと平穏な。なんて言うんですかね面白味のない。生活そのものはあまり見えてこない。これはメーデーの前の日?
植本 舞踏会がね。
坂口 舞踏会が始まる。共産主義なのに「舞踏会」とか「ワイン」を飲むなんて、なんてこった!って書記のブンシャは憤ってたりしますよね。

*

坂口 話は戻るけど、でも一幕もおもしろいよね。レイン技師は奥さんに逃げられてるんだよね。ほかの戯曲を読んでると、奥さんに逃げられた人の話が出てきてさ。ロシアの革命前後って、けっこうそういうだめな恋愛話が多いですよね。
植本 主人公が、チェーホフもそうだけど、だらしなかったりとか、するよね。
坂口 すてきだね。
植本 この男も。
坂口 この人も家賃が払えないくらい夢中でタイムマシンを作ってて、奥さんに逃げられてっていう話が。
植本 で、ほら、あの、近所のおばさんが来る。自治会の人かな。いわしが何とかとか。
坂口 にしん、にしん。
植本 にしんか。にしんの配給って。ドアをドンドンって来るんですけど、レインが「今、忙しい!忙しい!」というと「あんた、もらえなくなるよ」と心配するという。
坂口 重大なあれなわけですよね。にしんの配給がね。井上ひさしの戯曲とかにも出てきますよね。「配給でいっぱい並んだ」とか。そういうことなんでしょうね。きっとね。

*

植本 話ちょっとそれちゃうけど、二幕で舞踏会じゃないですか。で、解説に書いてあったのかな。ブルガーコフの作品が劇場から閉め出されて、上演禁止になっていて、やっと取れたのが、ミュージックホールみたいなところだったからこの舞踏会のシーンを書いたんじゃないかって。
坂口 あ、そうなんだ。そういう障害を生かす設定もステキだね。舞踏会のシーン、かわいいシーンですね。泥棒のミロフラフスキーと向こう側の秘書の女性と仲良くなって。
植本 そうそうそう。
坂口 粋だよね。
植本 すぐ絵が浮かぶし。彼女もまじめだしね。
坂口 彼女も悪いやつに惹かれちゃう。
植本 そうそう。見たことないんだもん。そんな悪いやつとか。へへへへへ。
坂口 これ、すごい分かるよ。四幕で二人が別れることになっちゃうときに、「こどもができたら、おれの名前をつけろ」みたいなことを。
植本 この人、ルパン三世っぽいんだよね。この人。ハハハ。
坂口 おー、かっこいいいじゃん!って思うよね。想像力をかき立てられる。そういう出来事がいろいろあったんだねって。でも、それは脇の話なんだよね。泥棒の人と女性秘書との話は。

*

植本 そうそうそう、本筋の恋愛の話はちゃんと23世紀で結ばれているんだよね。
坂口 レイン技師と娘さんが。娘さんとその、何ていうの?
植本 お父さん?
坂口 お父さんが大臣クラスの人なんでしょ。
植本 ラダマーノフ。
坂口 そうそう。その人は開発人民委員っていったら。それも解説にあったんだけど、大臣クラスの身分なわけでしょ?その割りにはおっとりした人なんだけど、その娘との会話がなんともいえない絶妙じゃないですか?
植本 ちゃんと、親子は親子だなと思うし、その、もう一人出てくる調和研究所の所長サーヴィチさんっていう人が、この娘のことが好きなんですけど一向になびかないじゃないですか。
坂口 そうですね。
植本 お父さんとしても「こいつはどうかな?」てちょっと思っていたりして。
坂口 娘のことも、すごい客観的に、レインとの結婚話では「こんな娘で大丈夫か?」「おれだったらもうちょっと考える」とか、娘に対してけっこう批判的というか、諧謔的なコメントを出してるよね。あー、いーなーと。
植本 お父さんはおもしろいですよ。キャラクター的に。
坂口 娘はなんか、まあ、苦労知らずの、何て言うんですかね。元気のいい、わがまま娘みたいなちょっと。
植本 好奇心は旺盛だね。
坂口 「器量のよい娘はわがままだ」みたいなことを娘が自分で言ったりすると、「いやいや、君は自分で思うほどきれいじゃないよ」みたいなことを父親が言う。
植本 笑えますよね。
坂口 そういう上手な作りがそこここに入ってきます。で、二幕ではタイムマシンで飛んじゃった先での、メーデーの前夜祭で、彼らが紹介されるみたいな。ま、ビックリしている様子だよね。

*

植本 たぶん、この訳した佐藤隆人さんという方の訳もお上手なんだと思う。
坂口 的確に、笑えるっていうか、関係性がすぐ見えてくる感じですよね。
植本 三幕は、あれですね。タイムマシンの提出を国から求められて、レインさんがOKしちゃうんだよね。
坂口 あ、なるほどね。私有財産は禁止されてるから。
植本 宝はみんなで共有しようということだから。
坂口 国に提出しないといけないっていうことですよね。
植本 一方で、三人は危険だから。治療が必要だと言われて、自由がちょっと奪われる。
坂口 それはひとつ、恋のやりとりみたいのが、絡んでるから。すべてのところにそういう仕掛けがありますよね。でもあれ、お酒が蛇口から出てくる世界なんだよね。
植本 ね、そういうの素敵!
坂口 はははは。
植本 ユーモアとして、いいユーモア。
坂口 そうですよね。泥棒君が「ああ〜、こんなの飲んでも酔わないよ」とか言って飲ませて女を酔わせたりする。
植本 はははは。
坂口 素敵だよね。泥棒ミロフラフスキーと書記のブンシャの掛け合いも。
植本 でこぼこコンビみたいな。
坂口 進行係のスタイルは別にとっていないけど、ドラマの中に混ぜ込んであるけど、彼ら二人がうまーく進めていっている。進めていっているようにも見えないくらい上手に作られてると思いますよね。
植本 映画だったら、そこちょっととぼけた音楽が流れるんだろうなとか。
坂口 これだと「ハレルヤ」だけか。なんだかわかんないけど、「『ハレルヤ』が好きだから流せ」とか。

*

坂口 でもこれ、やばい話ですよね。未来の理想社会に行ったら、今、誠実にやってる書記が馬鹿にされちゃうという戯曲を書いたら、やっぱヤバイでしょ。
植本 うんうん、それはそうですね。でもよく書いてるし、どこかに書いてあったけど、スターリンが、こんな本書いてるのに、好きなんだよね。この人の話が。直接、声をかけたりしているんでしょ?
坂口 当時のスターリンっていったら、よくわかんないけど、国中で逆らえる人がいないっていう状況だから。
植本 独裁者なわけでしょ?
坂口 そうですよね。その人とタメで電話ができるってさ、一体どういうこと?
植本 「君、今、不満なの?」とか向こうから来るわけだよね。「出てっちゃうの?亡命したいの?」みたいな。すごい(笑)。
坂口 さんざん、血みどろで戦ってるやつから、そんな電話が来てさ。でも全然、何のよい待遇にもならないんだよね。普通だったら、ちょっと保護してあげてもいいじゃない?
植本 ことごとく、上演許可が下りなかったりとか。あと何か書いてあったな。スタニフラススキーと反目し合ってるみたいのが書いてあったりとか。
坂口 スタニフラススキーって、見ためインチキっぽいもんね。まあ本人も写真で見る限りかなり怪しいけど。
植本 あとちょっと面白かったのは、戯曲を書くことや上演を禁止されてたりしたから、役者をやって食いつないでいたっていうのが書いてあって。え!って思って。
坂口 ハハハ。そうだよね。役者とかやってたって。まあ、なんとかなかっていう感じだよね。
植本 いろんなことをやってるんでしょ。他の人の作品を戯曲化にしたりとか。

*

坂口 演出したりしてね。苦労している人ですよね。さて、四幕は20世紀に逃げて帰ってきて。
植本 帰ってきます。それでイワン雷帝を16世紀に戻します。
坂口 そうですよね。いろいろ収めて、いきますよね。警察があっけに取られていって、結局、こんな危険な物を作った奴はと、警察に連れて行かれちゃう。
植本 そこも、何て言うんだろうな。全体としてはレトロなSFじゃないですか。ぼく大好きなんです、レトロなSF。だけど、なんかゆったりしているじゃないですか。スピード感はあるんですけど、それでもなんかのんびりしてるのは、タイムマシンにみんなそんなに驚いてないんですよね。「危険だ!」とか言うけど。
坂口 そこを追求していったら、話が長くなっちゃう。彼らが、警察に連行されていくのがわりとすんなり受け入れられる。
植本 最後の最後で、「ここの警察はとっても善良なのです」いいセリフ。これはぜひやりたいな。この作品をね。誰かやらないかな。
坂口 これは全然オッケーだよね。時間堂が別の作品だけどやったときも、ダンスや生演奏があったり、コメディとしてエンターテインメントとして成立させてました。できれば、もっと緊迫した、生死をかけたお芝居だと思うんですが。この時代では無理かな。
植本 そういう生死をかけた演出で作品を観たいです。

*

坂口 日本で言えば、戦前の捕まったら反体制作家として拷問にかけられ殺されちゃうような時代に書いているんでしょ。そんな時代にこの作品、本人が言うところの悲
劇を書いている作家の勇気。本当にすごいと思う。
植本 チェーホフもお医者さんで、この人もお医者さん系でしょ。
坂口 ちょうどいいですよね。むこうにチェーホフが居て、日本の風土として、あまりコメディが評価されない。戦後、ロシアの作品が流行った時期があったでしょう。でもこれやんないもん。
植本 コメディが下に見られていた。それだってハリウッドだってそうだもんね。
坂口 共産主義の社会では、肯定的に扱われていない作品だったから。
植本 ブルガーコフにとってこの『至福』っていう作品は、どういう位置づけなんだろうね? これがベストだと思う。
坂口 次、もう一個やる? 『アダムとイヴ』という戯曲。おもしろいですよ。
植本 SFじゃないの?
坂口 細菌爆弾か何かで、大勢の市民が死でしまった街で生き残った数人の話。
植本 いいね!2ヶ月連続でやりましょう。


植本 潤

a6a4c939

うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】

東京イボンヌ
『酔いどれシューベルト』
yoidore
【作】福島真也
【演出】ブラジリィー・アン・山田
【出演】いしだ壱成 牧山祐大 高田正人(テノール) 中西勝之(バリトン) 植本潤 他

11月15日(火)~18日(金)
ムーブ町屋

http://tokyoivonnu.com/

【チケット予約フォーム】
https://www.quartet-online.net/ticket/yoidoresyu?m=0difiig

・・・・・・・・・・・・・・・・

坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



★話題の舞台を“お得に”観る!割引チケット販売中!
4bbb344f

8e307e54
最新記事

web magazine 日刊えんぶ

松崎ひとみサムナツ活動日記

池谷のぶえの国語算数理科社会。

一十口裏の妄想危機一髪

小野寺ずるのお散歩エロジェニック

粟根まことのエッセイ「未確認ヒコー舞台:UFB」

松永玲子のエッセイ「今夜もネットショッピング」

ノゾエ征爾のフォトエッセー「桜の島の野添酒店」

植本潤(花組芝居)vs坂口真人(演劇ぶっく編集長)対談「『過剰な人々』を巡る♂いささかな☀冒険」

ふれあい動物電気

kugiri

南信州・駒ヶ根だよりby劇団サムライナッツ

連載小説「煩悩サンスクリット」山田佳奈

男が惚れる男たち STAR☆JAKCSが大阪からやってくる!

だから芝居はやめられないゾ! 〜ほのぼろ稽古場通信〜

『電車という名の欲望』ができるまで。 本能中枢劇団

kugiri

演劇キック

観劇予報

宝塚ジャーナル

演劇人の活力源

えんぶ情報館

kugiri

えんぶショップ

えんぶミロクル

えんぶfacebook

演劇キックツイッター

kugiri