トム・ストッパード『ロックンロール』

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坂口 今回はトム・ストッパード。
植本 『ロックンロール』。
坂口 植本さんがいくつか提案して下さったなかで、なんでぼくがこれを選んだかというと、演劇ぶっくを作った頃ね、トム・ストッパードが好きな人がいて。理屈をこねるやつで。この作品、理屈こねるやつが好きそうでしょ?
植本 いや、そうね。
坂口 遅れてきた全共闘みたいなやつでね。
植本 知識が豊富っていうか。
坂口 「ブルータス」の編集とかもやってて、すごく海外のネタとかで助かった。もう死んじゃったんですけどね。
植本 そうなんですか。
坂口 そんなんで、彼に「トム・ストッパードやろうよ」って言われても「嫌だ!」って言ってたんですよ。
植本 え? 編集長が?
坂口 そう。「ストッパードの記事を書きたい」って言うんだけど、「なんか理屈っぽいネタは嫌だな」って思って。という思い出がすごくあったんで、まずはこれにしてみようと思いました。



植本 そうなんだ〜。これは読んで、今回は翻訳が小田島恒志さんなんだけど、「大変だったろうなぁ」って思って。
坂口 はい。
植本 もちろん、ソビエトと東欧の歴史も分かんなきゃいけないし、チェコ語も分かんなきゃいけないし。ト書きでいっぱい出てくる、ロックね。「ここでこれを流せ」というロックね。その知識もないと訳せないだろうなと思って。
坂口 植本さんはそこらへんは得意なの?
植本 おれね、どっちかっていうと、吹奏楽部上がりだから、クラシック派なの。
坂口 あ、じゃあ、あんまり聞いてない?
植本 もちろん、聞いたことある名前は出てきますよ。後半になれば、自分が高校生くらいだった、それこそマドンナもU2も出てくるし。
坂口 ボブ・デュランとかローリング・ストーンズとか、もうあらゆることが場面展開で、何十箇所も出てきますよね。
植本 ちゃんとした意味を持っているんだと思うんですけどね。曲によって。
坂口 でもさ、何なんですかね? 訳した人はもちろん大変だけど、観る人も大変だよね?
植本 まあ、知識量もすごいから。歴史についても。



坂口 1968年当時は自由化の波が東欧に芽生えてきて。それでチェコスロバキアのドブチェクが中心になって「プラハの春」っていって、当時だと共産主義で自由がない社会だったのを、少しでも自由な社会にしようとしたのを、ソ連が武力で介入して止めさせたっていうのが、まず背景の一つですね。
植本 「プラハの春」もね、おれ知らなくてね。名前は知ってたけど、調べると「あ、こういうことか」って。
坂口 その頃とかは、ベトナム戦争があってね。ぼくらとしてはそちらの方が圧倒的に身近な出来事でしたけどね。話を戯曲に戻すと、チェコの当時の、1968年の事件があった後ですかね? で、主人公のヤン。チェコスロバキア出身でケンブリッジ大学で博士号を取ろうとしている、29才。一応彼を中心に物語がケンブリッジとプラハで断片的に進んでいきます。20年間くらいかな。
植本 場面はだいたい順番で出てきますけど、最後は1990年くらいまで来ますかね。
坂口 ケンブリッジの場面は、ヤンの恩師マックスっていう大学の先生の家で。家族がいて、
植本 奥さんも教授で乳がんなのかな、娘がいて16才フラワー・チャイルドって書いてありますね。



坂口 その家族の話と一緒に政治的な出来事に関してのやりとりがあって、で、ロックの音楽ネタが入るから、けっこう複雑ですよね。読んでるからある程度分かるけど、次から次にチェコとイギリスの場面が出てくる。場面転換にローリング・ストーンズとか、いろんな人たちの印象的な曲を使ってね。それがもう、すごい勢いで。
植本 一番出てくるプラスチックなんとかっていう、チェコのバンド。YouTubeで観たんだけど、おどろおどろしかった。本当にアンダーグラウンドな。呪いのようなね。ははは。ロックだったよ。
坂口 当時チェコでパージされてた人たちだね。そういう人たちを支援する若者っていうかグループが、反体制というか、独裁政権に対する批判みたいな構造になっていくんですね。断片的な内容なんですけれども。イギリスでの彼は、先生の助手みたいな形で、博士論文を書こうとしている。
植本 なぜチェコに帰ったのか。ふるさとにね。わざわざそんな情勢の悪いときにっていう。それがキーになってるのかなと思うんですけども。
坂口 そうですね。彼は彼なりの正義感、思想みたいなもので、戻るんですよね。



植本 で、まあ、本当に彼はロック好き。タイトルが『ロックンロール』ですけども。レコードもいっぱい持っていて。どうなんでしょうね。ロックで人は救えるのかってどれくらい考えているのか分かんないですけど。
坂口 ロックが時代のキーになるっていうか、変革、自由のポイントになる、とは考えている。ヨーロッパの人はけっこうそういう風に考える人がいたっていうことですかね? 日本だと、そこまではいかないですかね?
植本 反戦歌があって。
坂口 「あぁ〜ん!」って「音楽なんかで世界が変わるかい!」っていうふうにぼくらは思ってた世代。
植本 そお?
坂口 うん。
植本 でもそういうふうに思っている人もいるんでしょ? もちろん日本で活動してて。
坂口 うん、うん、もちろん。フォークソングやってたし。実際、この会話に出てくるけど、署名とかも。署名の話も出てくるよね。「そんなことやるなら、おめえ、自分で行って助けてこいよ!」
植本 ありますね。
坂口 「署名なんかしてやった気になってるんだったら」って。その自分で行って助けてこいよっていう方に近かったから。でも実際に助けに行かないんだけどね。フフフ。そういう部分では、共感っていうか。なんとなくね。



植本 登場人物が、全員主義主張は違うのに、引かないから。みんな似てるなと思いました。
坂口 日本ぽくなくておもしろいかな。
植本 そうそうそう。平気で家族間、友達間で、すごくけんかし合ってるし。
坂口 その中には恋愛的な出来事、友情とか。師弟の愛情とか。家族同士のとか。いろんな愛の話もたくさん出てくるでしょ。
植本 そうなの。難しい情報もすごく多いんだけど、下世話な話題もね、セックスのこととかもちょいちょい挿入されてくるし。
坂口 そうですね。奥さんが、
植本 乳がん。
坂口 そうですね。ケンブリッジ大学の教授は、みんなが共産党をやめてるのに、彼はがんばって、「これじゃなくちゃ世の中は最低限変わらん!」って主張しているわけですね。で、その奥さんが乳がんで、その夫婦間の軋轢とかも出てくるでしょ。
植本 なんかちょっと、腫れ物に触るようなね。
坂口 教授と娘の距離感とかもね。
植本 本人、トム・ストッパード自身も言っているんだけど、そんなに全部理解しなくてもいいって。言ってて。感じてくれればね。で、一方では、知識が、お客さんの知識があればあるほど楽しめる劇だと思うし。
坂口 そうですよね、そんなこと言うけど、あんた。この芝居はもう少しわかりたいです!
植本 はい。はい。
坂口 そういうことで言えば、井上ひさしさんのは歌謡曲が。こういう形よりもっと、劇中歌として流行歌が入ってくるね。芝居の硬度、見え方は違うけど。
植本 もちろん、オブラートに包んで、明るさの中にメッセージ性があったりするとは思うけど。
坂口 そうだ、読んでて思ったんだ。「あ、井上ひさしさんにちょっと近いのかな」って。



坂口 気になったのはさ、トム・ストッパードっていう人は、ほとんど全部、こうしてああしてこうしろっていうふうな指示をしてるけど・・・。
植本 ト書き?
坂口 うん、ト書き。で、一箇所だけさ、
植本 分かった。
坂口 分かった? どこだっけかなぁ。なんか、彼女、
植本 これじゃないの?
坂口 すごく曖昧なさ、
植本 お任せしますみたいなとこ?
坂口 そうそうそうそう。「彼女とは〜、何かするかもしれない」って。
植本 あった!これだ。
坂口 そうそう。「マックスはここで彼女に触れるかもしれない」そこ。なんでそんなふうにするんだろうって。そんなこと書く人って嫌いだなって思うんですよ。
植本 え、そう?
坂口 するかもしれないって書いてもいいけど、ここだけどうして書くの? 他は全部自分が決めてるのに。ここだけどうしてこんなふうに曖昧に書くの?
植本 嫌いなんだ。ふははは。
坂口 なんだか分かんないけどさ、ここ読んだ時に、無性に腹が立ったんですけど。
植本 ふははははは!多くの役者は、っていうか分かんないけど、若い、そんなに経験のない人は「触れるかも」って書いてあったら、「触れろ」っていうことだろうと思っちゃうと思う。
坂口 そうなんですよね! そういう強制の仕方は良くないと思うんですよ。ほかは全部言ってるんだよ! 音楽は何分で何とかとかさ、でもここだけこういう言い方をする。おれは、そんな余裕が、君たちに任せている。
植本 ゆだねるね。
坂口 オレは懐も深いみたいなさ。
植本 ふははは。そうなのか!
坂口 ここ一点。すーごく思っちゃって。ああ!嫌だなと。誤解かもしれないけど。思っちゃうことはしょうがない。
植本 おれなんかはこれを読んだ上で、「触れるかも知れない」って書いてあったら、他のやり方ってすぐに考えちゃうけどね。ふふふ。
坂口 そういうふうに考えるといいけど。でも政治って、たいがいそういうふうにして、みんなを巻き込んで行く。「そっちのほうがいいかもしんないよ」って、「するかもしんないね」って誘導していくのが政治的なやり方だと思う。
植本 はいはいはい。おれね、あと表現として面白かったのが、明日から使えるなって思ったのが、「明らかにっていう言葉は見過ごせないわね」っていう「たいてい何かが明らかじゃないときに使われる」って。ああー!って思った。



植本 最初に、翻訳の小田島さん大変だったろうなと言いましたけど、これ上演するとなったら、役者も大変だよ。ふはは。
坂口 大変だよ!
植本 直感だけでできないもん。やっぱりある程度調べないと。
坂口 その時のこの人たちの表面的な感情だけでやっても、その奥深く歴史の背景を知ってやっても見えてくる物はそんなに、たいして違わないんじゃないかな。
植本 そんなこと言わないで〜!はははは。
坂口 思うんですよ。よく言うじゃないですか。この人物はこういう背景があって、こうだからこういうふうにみたいな。
植本 それに縛られていたら全然だめですし。
坂口 あんま関係ないかなって。逆にわざとらしくなったりする場合もあるかと。
植本 あ、あれだ、演出家は分かってないとだめだ。
坂口 何を見せたいかっていう覚悟がすごくいる戯曲だよね。
植本 そうだよね。
坂口 全部見せようと思っても、たぶん。少なくとも日本でやるときは、ちょっと無理かな。何をちゃんと観客に伝えたいかっていうことを考えないとね。
植本 その点、いかようにもできるというか。背景として、政治情勢が透けてくるっていうやり方もあるだろうし。
坂口 そうですよね、家族のこともあるだろうし、ヤンさん、チェコに戻っちゃう人の心理が重要だったりもするし。
植本 実際に主人公ですよね。牢屋に入れられたりとかしますしね。
坂口 その心情がちゃんと描ければいいのかとか。見せどころはいっぱいありますよね。ただ見せどころだけだとやっぱりきつい。なんかうや〜ってギャーギャーいうやり取りだけがずっと続きそう。



植本 これおもしろいのが、全編、若者が目上の先輩方になんて言うんだろう、「あんた古いよ!」みたいなことが、いっぱい出てきますね。「それ間違ってますよ」って先輩に言う。ふふふ。
坂口 素晴らしい歴史だよね。だから、それが、「ロックンロール」ということに繋がるのかもしれないですよね。だからあんまりロックンロールもよく分かってないぼくとしては。
植本 編集長はどこ通って来たの? 音楽は。
坂口 三波春夫かな。
植本 うっそ! ふふふふ。なぜ?
坂口 分かんないけど、子供の頃、三波春夫とか三橋美智也とか弟と一緒にいつも歌ってたな。
植本 へー。ある意味ませてるよね?
坂口 そうねぇ。今、考えれば歌詞とかは「惚れた」とか「別れた」とかだよね。小学生の頃、いつも弟と歌ってたな。
植本 この本、チェコが舞台だからさ、一回、ドボルザークっていう単語が出てくるね。ドボルザークやっと出てきた! みたいな。
坂口 でもちょっとだけだよね。
植本 そうそうそう、名前だけなんだけど。



坂口 あとはこの台本、何回読んでも生かじりかなぁ。
植本 だから、この作品ね、2010年に上演されてるけど、別にそんなに大きなカンパニーじゃなくて、全然小劇場でかまわないけど、やる気骨のある方がいたら観たいなと思います。
坂口 そうですね。なんかもっと、会話劇で見せてもらったらどうなんだろうって思いましたね。装置とかもなくて。それこそ朗読劇で見せて頂戴よ。
植本 うん?
坂口 いや、うんじゃなくて。
植本 何て言うの? 役者だからさ、どんな役でもやらないといけないけど、それぞれ主義主張ね、普段の生活を持ってるときに、自分と反対の主義の役とかっていうのは大変だろうなと常々思っていたんだけど、これくらいになるとちょっと距離感があるからいいかなと思う。わははは。
坂口 そう思う。これなら主人公のヤンで、明らかにいけるんじゃないですか。
植本 ああ、そうですね。いいと思いますよ。
坂口 じゃあ、わかぎさんに提案して。
植本 なんで?
坂口 次の戯曲はトム・ストッパードにして。
植本 今だと谷賢一くんとかやればいいのになと思うけどね。
坂口 でももういい訳ができてるから。
植本 そうだなぁ、やるとなったら、谷君、きっと自分で訳し直すんだろうなぁ。
坂口 小さな劇場でやってくれたらいいですね。
植本 トム・ストッパードの『ロゼギル』とか読んだことありますけど、他の作品も今この『ロックンロール』から入って、気になっています。
坂口 ぼくはこれで、一応、天国の井上二郎君にまぁ、少しでもお返しできたかなと。
植本 取り上げたぞと。
坂口 やってみました。彼は「けっ!」って思うだろうけどね。
植本 好きな人は好きなんだろうね。本当に。
坂口 なんかなぁ。井上二郎君はすごい理屈屋だったんだよね。うるせえ!っていうくらいの。
植本 いいバランスだったんじゃないですか。きっと編集長と。
坂口 すごく信頼できる男だったんですけどね。
植本 肌触り、直観で行く編集長と。
坂口 そんなわけで個人的な感情も入って。
植本 それも分かってよかった!わははは。



植本 潤

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うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】
こまつ座『イヌの仇討』

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作◇井上ひさし
演出◇東憲司
7/5〜23◎紀伊國屋サザンシアター

こまつ座 http://www.komatsuza.co.jp/

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坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



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三島由紀夫『椿説弓張月』

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公演チラシ

坂口 今回は曲亭馬琴が原作の『椿説弓張月』ということで。
植本 三島由紀夫の作。
坂口 どうですか?思ったより簡単に読めた。
植本 うん。お互い年ね、年を重ねたっていうのは、もう、若い頃だったら何が何だかわかんなかったと思いますよ。
坂口 そうですね。でもまあ、分かんないこともいくつかありつつ、読んでいくと何となく話が繋がっていくっていう感じではありますよね。
植本 びっくりしたのは、三島由紀夫さんが亡くなったのが、自分より全然若い時なんだってことが、ショックでしたね。


三島の画像

坂口 そうですか。この作品は1年前ですよね。
植本 亡くなる、自決の1年前、昭和44年。
坂口 44年か。は〜、そうですか。亡くなる1年前に、こんなすごいものが書けるって。
植本 もちろん、三島さんは歌舞伎好きっていうのはありますけど、それにしたって、小説家がこれだけの歌舞伎の本が書けるもんかって、それも驚いた。
坂口 もう本当に天才じゃないと書けないですよね。擬古典?
植本 擬古文なんですね。
坂口 だから、歌舞伎の、あえて昔の言葉で書いている。
植本 それがやりたかったことなんですね。三島さんがね。
坂口 それが現代に歌舞伎を、もう一つ新しい歌舞伎を復活させるというイメージも彼の中にはあったようで、昔の言葉でやることに意味があった。歌舞伎のおもしろい要素、あらゆる場面を集めてきたみたいな感じ。
植本 スペクタクルですよね。大がかり。出てくる道具もいちいち大きくて。
坂口 だけどいろんな地味だけど歌舞伎になくてはならない愁嘆場とかの場面もあるという。
植本 よく計算されて書かれていますね。主人公が源為朝。
坂口 はい、ひと昔前の人だと義経なみに、みんな知っている人です。
植本 弓の名手なんですよね。
坂口 身長が7尺ってデカい。歴史的に言うと、保元の乱の頃、1000年ちょっとかな?
植本 源平の頃で。
坂口 「保元物語」に出てくる強弓の武将鎮西八郎為朝の話です。
植本 それを基に曲亭馬琴が書いた当時の大ヒット作を、三島由紀夫はばっさり前半を切ってるんです。もう為朝が伊豆大島に追放されているところから始まってますからね。
坂口 この作品はおおよそ負け組を書いてますよね。そこが彼の美学っていうか。



植本 最初が伊豆大島で、次が讃岐、最後が琉球なので、とにかく海なんですよね。
坂口 少しだけ肥後の山中の場面がありますが、またここもすばらしい。
植本 だからおのずとね、スペクタクルなんですよね。船も出てきますしね。
坂口 海の場面って華やかで気持ちがいいですよね。最初から見ていくと、上の巻っていうのが「伊豆國大嶋の場」。これはあれですね。為朝が流刑された場所で、そこの代官を追い出して、自分が島の主人になってその代官の娘を嫁にしてるのかな。で、子供もいるということですね。一応、この物語では本当の奥さん白縫姫は死んじゃってるっていうふうに言われていて。
植本 そうかそうか。
坂口 っていうことになっていて、そこで、お祝い事っていうか。「新院の御忌日」っていってますね。これ、話があれだけど後鳥羽院だっけ?誰の?
植本 え!? 崇徳じゃなくて?
坂口 崇徳が上司なのか?
植本 崇徳上皇が。
坂口 崇徳上皇がこの人の親分?
植本 そうですね。
坂口 で、彼が死んじゃっていて、その命日がまずこの場面ですかね。ま、いろいろあるんですけど、そこに今まで、管理してた代官たちが平家と組んで攻めてくるっていう。そのなかで為朝のいろんな考え方とかが披露されていくんですけどね。おもしろいですよね。
植本 祭りがあったり、その中で人形振りを見せたりして、凝ってますね。
坂口 凝ってますね〜。イベントで盛り上げつつ人間関係を知らせて。で、戦になる。
植本 奮戦するも敗れてちりぢりになるんですよね。
坂口 まあ、史実だとここで為朝は自害するのかな。で、この物語では追われてどこに行くのかっていうと、中の巻で讃岐の国。



植本 まず讃岐なんですね。
坂口 海つながりだから。もともと彼はここに来たいんですよね?
植本 そうなんだっけ?
坂口 だって上皇のお墓があるから。
植本 ああ、それが讃岐か!で、自分は負けちゃったから上皇のお墓の前で死のうとすると、崇徳院の霊が現れる。お父さんの霊も、為義だっけ?
坂口 そう。だから彼は大島で負けて、しょうがないから主人の墓の前で自決しようと思うんですよね。でも、そうすると霊が出てきて「いやいやおまえさん、待ちなさい」。
植本 「あと10年すると平家が滅びるから。ちょっと待ちなさい」って言って。しかも肥後の方に行くといいことあるみたいなことを言って。フフフ。
坂口 為朝は「武運つたなき身を恥じて、御稜の御前にて腹を切って果てん志」って言ってるからさ。これはずーっとずーっとお芝居の中に為朝の意識としてある。
植本 鮮やかですね。急展開ですし。場面も一気に違うところで。
坂口 うん、ここもお化けっていうか、怨霊?
植本 霊ですね。
坂口 カラス天狗みたいな眷属(付き添い)も来て。見所はたくさんありますよね。崇徳上皇か。「すさまじき蒼白の顔」とかおもしろいですよね。
植本 「その命に従い、肥後に行きなさい」ってね。



坂口 肥後では、何だっけ、歌舞伎の、『忠臣蔵』山崎街道の場とかでもあるような。
植本 はいはいはいはい。山のね、猪が出てくるんだよね。「肥後国、木原山中場」。人食い猪を為朝が素手でやっつけるっていう。ふふふ。怪力ぶりを示す場面です。
坂口 だけどそこにもひとひねりあって。猟師にだまされちゃうんですね。
植本 祝い事と称して、酒に入れたしびれ薬を飲まされてしまい、「う〜たばかったな」みたいなところで終わってて、次、「山塞の場」に移っていきますよね。
坂口 ここらへんも上手だよね。猟師のしきたりとかって言って、撃ち取ったら、その場で肉をさばいて食って酒を飲まないといけないとか。
植本 ふるまい肉みたいな。
坂口 ルールなんだよとか言われて。
植本 「あー、そうか」と飲んで、まんまとしびれて。
坂口 ここらへんは、もう流れは好調だよね。で「山塞の場」、御殿作りを模した山のなかにつくった砦みたいなところですね。



植本 この場面はもっとも三島っぽいひとつの見せ場ですね。裏切り者だった武藤太っていう人がここに捕らえられてきて、頼朝の本当の奥さん白縫姫と対面する。おまえのせいでっていうことで、腰元とかが、裸にして、
坂口 木の釘?
植本 竹だっけ?
坂口 身体中に、
植本 順番に打ち込まれる。
坂口 すごいシーン。
植本 惨殺な、陰惨なシーンなんですけど、その一方で白縫は琴を弾いている。
坂口 雪も降っているんだよね。
植本 はい。
坂口 だから真っ白い場面で、琴の音が流れて、歌も歌ってるんだよね。
植本 うん。
坂口 そこで、武藤太が、右肩とか、左肩とか腹とかにだんだん
植本 竹の釘を打ち込まれて。
坂口 うん。それも腰元が木槌で打つんだよね。
植本 そうです。
坂口 すごいきれいで凄惨な場面なんでしょうね。
植本 三島っぽい。
坂口 ここは少し台本を入れてみましょう。

※千草 申し、お舘様(白縫姫)、この人非人のお仕置きは、
腰元山荻 首を刎ねても飽き足らず、やつに裂いても気がすまず
腰元木實 為朝様に成り代わり、御遺恨晴らす成敗は
腰元葛木 なぶり殺しかなぶり切り
腰元椎葉 何ぞよい思案はないかいなう。
千草 ヲヽよい思案がうかんだわいなァ。
他一同 千草様、その思案とは。
千草 肥後の山賊に傅へらるる、木槌の仕置がよかろうわいなァ。
他一同 モテまあ恐ろしい。
千草 お舘様、いかがでございまする。
白縫 そちたちで宰領しや。わらははここで琴歌の手すさび、千草、琴を持っておじや。
千草 ハハァ。
(ト 腰元たち、琴を持ち來たりて、白縫の前に置く。又、木槌五本と、竹釘澤山を持ち來たり、瀧平に手つだはせ、武藤太を下帶一本の赤裸にし、下手勾欄の左柱にうしろ手に縛つて坐らせ、瀧平に目じらせして去らせる。この間、雪下ろし。雪しきりに降る)
※「椿説弓張月」中の巻より


坂口 白縫姫は板東玉三郎の若い頃。
植本 初演がそうなんですね。まだ十代って言ってましたね。
坂口 19才かな。だからここでデビューするっていうか。
植本 それも一説によると、大きな襲名イベントが同じ月にあって、みんなそっちにかり出されていて、人がいなくて。玉三郎が抜擢されたらしいんですよね。
坂口 それはでも、本当に美しい人がやった方がいい。
植本 それで一気に名声を得て。
坂口 ここは誰が見てもおもしろいでしょ。
植本 うん! 不気味だし。
坂口 きれいだし。恐いし。
植本 一方で、為朝さんが、ここに連れてこられるんだけど、相手が自分の奥さんだから、「あら、あなた」って言って、しびれ薬を飲ませた方がしかられるみたいな。
坂口 そうですね。しびれ薬を飲ませた2人組は元武士で、ここの雇われ人だったわけですね。
植本 ・・・そして息子にも会え。
坂口 ここらへんの武藤太と白縫とのやりとりとかも、長セリフだけどすごいおもしろいよね。まあ、ここで武藤太がすげえ憎たらしいやつだと思えないと、なかなかその場面にたどり着かないから。・・・だって、「首をはねても飽き足らず、八つに裂いても気が済まず」って言うくらいだからさ。このくらい人を恨んでみたいですね。



植本 他にもキャラクターとしては、高間の太郎とか、喜平次さんていう人。
坂口 付き添い。子分だよね。
植本 家臣っていうか、よく働いてくれる人ですね。喜平次さんとかはね。
坂口 この台本、割セリフとかも読んでいると、気持ちのいいセリフ回しですよね。やっててもすげぇ楽しい、おもしろいんじゃないかなって思うんだけど。
植本 義太夫狂言だしね。三味線に合わせて、セリフを謳うような、語るような感じが。歌舞伎にもよくありますけど、それはもう心地いい。
坂口 その心地よさが、彼のひとつのメインテーマでもあるんだよね。 歌舞伎って楽劇だから。そこをはずして何が歌舞伎かっていう。セリフの一つ一つの言い回しがとても気持ちがいい。
植本 演出も三島さんなので、掟破りの浄瑠璃の方々を連れてきたみたいですね。
坂口 ああ、そうなんだ。このためにわざわざ作曲してるんですよね。新作だから当たり前ですけどね。もちろん、分かんない言葉も出てくるんですけどね。それを含めてもいいなぁって。読んでて楽しくて。で、ここでまあ、もう一回家臣がそろうんですよね。大島から逃げ出して来て、ここで本妻も含めて全員集合。。
植本 そうですね。「よし!じゃあ平家を倒しに行こう!」って。
坂口 隊制を整備して、「平家の赤旗をなぎ倒さん!」って行くのが次の場。



植本 「薩南海上の場」。船です、セットは。大きな船で。
坂口 結局、最終的には琉球に流れ着いちゃうわけですよね。だから薩摩からどこに行こうとしてるの? 京都?
植本 そうだね。「海路はるばる都を目指し」だから京都に行こうとしてるんだろうね。だけど、海が荒れちゃうんでしょ。
坂口 いたるところでこう、障害が。
植本 そうそうそうそう。
坂口 彼はすごく強いのに何をやってもうまく行かない。
植本 ヒーローに障害ありみたいな感じなんだよね。
坂口 ここもいい場面ですよね。一面波布で。浄瑠璃出がたりで。気持ちのいい場面じゃないですか。
植本 でも天気が悪くなって。
坂口 まぬけな話だよね。「うおー!」って行こうとすると、途端に海が荒れちゃって。行かれなくなっちゃって。奥さんは、
植本 海に飛び込むと。
坂口 昔の話にそういうのが、ヤマトタケルの弟橘姫。
植本 ああああ。そうですね。ありますね。
坂口 それに習って自分が海に飛び込めば、波が静まるだろうっていうことで飛び込む。
植本 そうすると黒アゲハになるんです。すごいでしょ。大きさ的には、80cmくらいの黒アゲハって書いてあったような、座布団くらいあるのかな。
坂口 後書きにも書いてあるけど、あえてウソを見せることで、より劇的効果を上げたいみたいな。
植本 わかりやすく糸が見えたりとか。
坂口 ここ重要ですよね。習慣でやるのではなくて、意識してやる。
植本 すごい離れてるのに矢の大きさが向こうもこっちも同じ大きさとかね。
坂口 あえて、そういうふうにしている。

歌川国芳画

 歌川国芳画


植本 喜平次さんと為朝の息子俊天丸が巨大な魚に襲われる?
坂口 あれ、よく浮世絵にある北斎の絵にあるやつじゃないですかね?
植本 そうなの!?
坂口 でっかい魚に襲われると、
植本 助けるのが黒アゲハで、魚を静めて人間2人は背に乗って
坂口 琉球に行く。
植本 すごい話ですよ。ははは。
坂口 そうだよね。その前に船が真っ二つに割れちゃう。もう一人の高間の太郎は、
植本 高間の太郎と奥さん?
坂口 は別の船で
植本 岩に流れ着いたところで死んじゃう。
坂口 このまま溺れて死んじゃったら武士の恥だからって。
植本 生き恥をさらすよりって言って、奥さんをまず殺してあげて、自分も死ぬ。
坂口 岩の上でね。しかもそれを大波がさらっていく。
植本 そう! すごいね。
坂口 だから「薩南海上の場」では、そうやって、もう彼の意思がすべて打ち砕かれる。しかもなんてことはない、天候に打ち砕かれるまぬけな話。になっちゃうんですね。
植本 でもまあ、チョウチョが現れたり、海が静まったりいくつも不思議なことは起きます。



坂口 下の巻になると、いきなり琉球。なんか、ものの本によると、当時の江戸では琉球ブームだったとか。
植本 ふーん。
坂口 ここは敵と味方がよくわかんないみたいなことになってませんか?
植本 そうですね。すでに琉球では王位継承者とそれをこばむ人がいて。
坂口 それがよく分かんない。「琉球国北谷最上の場」っていうのが最初に出てくるんですけどね。
植本 これさ、本に道具帳っていうか絵が入ってていいね。琉球になると棕櫚の木とかが出てきて。歌舞伎で棕櫚の木が生えてて不思議な感じがする。南国の植物。
植本 これおかしいね。琉球だから、ト書きでもカタカナで「ガジュマル」とか書いてあるんだけど。
坂口 それはそうだよな。
植本 豚の角煮?これもさ、猪子の角煮って書いてあるのが沖縄っぽい。
坂口 そればっかり食わされてるから嫌だって子供が言ってるよね。もういい加減にしてって。
植本 おもしろいなぁ。
坂口 そうすると、豚の耳のお吸い物ならいいだろうと。
植本 ミミガーだよ。ふふふ。
坂口 おもしろいんだけどさ、この場面は説明がしずらい。いわく因縁がたくさん交錯して、基本愛情のいい話なんだけどね。
植本 ここは唯一、ちょっと為朝とは関係ない話っていうかね。入り組んでます。
坂口 そんでラストですね。
植本 最後はもう、為朝の息子の俊天丸が琉球の国王俊天王っていうことになる。為朝は「ぜひ王様になって」って言われるんだけど、固辞して「じゃあ、うちの息子に」と。「自分はもう死にたい、崇徳上皇のところに行きたい」って言うと、海の中から白馬が現れ、それに乗って飛んで行っておしまいです!
坂口 彼は、そうずーっと思っていたわけだから、彼の望み通りにある意味なったっていうことだよね。平家をやっつけようとも思ってたんだけど、この時は平家はもう滅びているんで。
植本 そうですね。
坂口 だから一応、彼の中ではいろんな事が解決はしてる。平家は滅んで、崇徳上皇の元に行けるっていうのがね。
植本 最後、白馬出して来たかみたいなね。
坂口 で、ここで最初と繋がるんだよね。最初の大嶋の場も崇徳院の命日だったでしょ。 これもまた命日なんだよね。ちょうど対になってて、やっとここで彼の想いが遂げられるっていう。平家ももう滅びて、もう自分の役割は終わって、大好きな人のところに行って死にたいっていう、彼の思いがあるわけだから。三島的にはそれなりに気持ちが巡ったっていうか。
植本 だから三島由紀夫としては通しでの上演しか考えてないと思うんですよ。
坂口 これ素晴らしいですよ。
植本 見たことないから、ぜひ近々でやって欲しい。
坂口 うーん、でもまぁ、あんまりちゃちくやられても嫌かな。
植本 そうね。
坂口 どうやればいいのかっていう話だよね。
植本 たぶん、この通りでいいと思うんですよ。三島さんの目指したもの? さっき言ってたみたいなウソみたいなことがいっぱいあってね。
坂口 これをベストに演じられる人が、本当に本気でやってくれれば。
植本 ねー。
坂口 それこそ三島の生霊が出てきて演出して欲しいよね。
植本 はははは。そうなんですよね。天才だなと思いました。単純に。
坂口 もう本当に。これはもう誰にもできない。書けない。



坂口 花組芝居でやるかな?
植本 加納さん、興味あると思うんだ。
坂口 ね。
植本 三島がどうやりたかったかも分かってると思うんで。
坂口 歌舞伎のエッセンスがたくさんつまった台本ということで、ぜひ。
植本 前にぼくらがこのコーナーで取り上げた『四谷怪談』もすごいおもしろかったけど、これはこれで。
坂口 へんな言い方すれば、おもしろいところのダイジェストみたいな。
植本 それ本人、意識してるからね。
坂口 それを認めるかどうかっていうことでしょうね。
植本 ぜひ通しで見たいです。



植本 潤

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うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】

ゼータクチク vol.2
『春宵・読ミビトツドイテ』
【構成/演出】わかぎゑふ
【出演】草彅智文 亀山ゆうみ 植本潤 粟根まこと
3/22(水)~26(日)
cafe&bar 木星劇場

・・・・・・・・・・・・・・・・

坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



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深津篤史『うちやまつり』

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坂口 今回は深津
植本 篤史(しげふみ)さん。
坂口 そう読むの?
植本 はいそうです。
坂口 ご覧になってる?
植本 深津さんの作品ではなくて、新国立で演出をなさった岸田國士の『動員挿話』とかは拝見してますけど。
坂口 じゃ、読むのは初めて?
植本 うん、作品に触れるのは初めて。
坂口 ぼくもそうなんですよ。
植本 編集長は会ったことはあるの?
坂口 ないの! で、今回なんでこれかというと、深津さんが亡くなって、その戯曲をまとめた松本工房さんという出版社が、全作品が入っている、「深津篤史コレクション」という3冊セットを送ってくださったんですよ。
植本 亡くなったのが、2014年の7月でしたっけ?
坂口 はい。それで、読んでみたらおもしろくて。たまたま最初にあてずっぽうで2作品読んだら、傾向がかなり違うような気がしたので、植本さんにどっちにしましょうかってお聞きして。
植本 それが、今日取り上げる『うちやまつり』という岸田國士戯曲賞受賞作で、もう一個は『のたり、のたり、』という作品。確かに違いますね。
坂口 ぼくが、単純に好き嫌いで言えば、『のたり、のたり、』の方が好き。
植本 好きなんだ。ごめんね。ははは。
坂口 植本さんは、どうして『うちやまつり』を選んだの? 両方一応、読んでいただいた?



植本 読みました。深津さんという方、ぼく同い年みたいなんですけど、で、読んでみて、先に『のたり、のたり、』を読んで、これ、どう編集長と語ったらいいのかが、皆目見当がつかず。『うちやまつり』を次ぎに読んで、あ、こっちの方がお話しできるかなと思ったからなんですけど。
坂口 人間って、素晴らしいね!ぼくは逆だ!『のたり、のたり、』だったら、あ、話せるかもしれないけど、『うちやまつり』はどう自分が感じたことを話していいかちょっと、戸惑いました。どうして『うちやまつり』の方が話せそうと思ったの?
植本 まずはね、時期的にタイムリーだなと思ったのと。
坂口 何それ?
植本 お正月のお話でしょ?
坂口 はいはいはいはい。
植本 「明けましておめでとう」って何度も出てくるでしょ?
坂口 はははは。
植本 今の時期に合ってるなとおもったのと、どちらも密閉っていうか、閉塞性? がありますよね?
坂口 『うちやまつり』の方は、団地の小さい広場?
植本 共有スペースか。
坂口 もともと、バブルの頃にできた団地の話ですよね? だんだん人が居なくなって。これ書かれたの20年前でしょ?
植本 1997年初演ですね。
坂口 20年前にそういう過疎化っていうか。東京で言ったら多摩ニュータウンみたいなとこなんですかね? これは関西の話ですが。外だけど、閉鎖的な場所っていうのが、ここの設定ですね。
植本 ぼくたぶん、自分が「コミューン好き」なんだと思います。部屋の中に閉じ込められてるんじゃなくて、解放はされてるのに、閉鎖的なところが好きなんだと思います。
坂口 あ、なるほどね。まさに、そういう感じですよね。団地、広場? なんて言うの?
植本 本当だったら会議所みたいなところができるはずだったという場所。
坂口 できないで、そのままになっている囲われた空き地みたいな所ですかね。そこに人が入れ替わり出たり入ったりして。曖昧な会話を交わしつつ、全体のニュアンスが分かっていくっていう作りのお芝居ですよね。
植本 徐々に浮き上がっていく感じですね。ぼくが一番思ったのは、手触りとしては、すごくぬめーっとした感じなんだけど、渇いている感じもするし。屋外で、解放されてるんだけど、閉ざされてる感じ。相反する感じがあるなーと思って。そこがおもしろいと思って。



坂口 こんな風に書けるのはこの人しか居ないですね。ただ、自分は、こういうのを理解するのに向いてないんじゃないかなと。自分の資質としてね、うまく彼のおもしろさを共有できないっていうか、最後の最後でうまく折り合えない、というのがあったですよ。これ、岸田國士戯曲賞取ってるから、いろんなその時の様子とか見ようかなと思ったけど、
植本 論評?
坂口 みたいなもの。でもそれは、たぶん、違うんじゃないかと思って。自分の中だけで解決したい!ってすごく思ったんですよ。そんなこと滅多にないんですけどね。ちゃんとこの作品と向き合ってみたい。えらい、いいですよね。
植本 自画自賛だ。ははははは!ここにきて。自画自賛だ。なんかさ、難解っていう風にも言われているらしいんですけど。深津さんの作品って。でも難解でいてとても分かりやすい気もするし。分かりやすいようで、難解な気もするしって。
坂口 そうですね。
植本 相反するなと思って。
坂口 そこはすごい素敵っていうか、魅力的ですよね。普通の会話が行われていて、でも会話では、けっこうセックスのネタとかも頻繁に出てくる。
植本 そうだ! この『うちやまつり』に限って言うと、セックスすることと殺人っていうのが出てくるんですけど、人を殺すということがま、一緒だと。ここも相反するはずのものなのにっていうのが出てきますよね。



坂口 14歳の女の子からおじさん、おばさんたちまでが、入れ替わり立ち替わり。鈴木さんって言うのかな? 犯人って疑われている。殺人事件が起こってるんですよね。この団地で。
植本 いままでに3人亡くなっている。同じ団地の中で。
坂口 一時、鈴木さんっていう人が、
植本 ずっとマークされていたんですよね、警察からね。
坂口 そう。その人物がまずここに居て。その人といろんな人との会話がある。その会話そのものもおもしろいですよね。でも、そんな会話しねえだろっていう。
植本 しないですね。本来。描かれているのは、団地の中でも、お互いの名前もよく知らなくて、口を聞いたこともないんだけど、その知らない人同士で。話しかけないですよね。普通。
坂口 夫婦がセックスをしたら、その次の朝、お弁当を作ってだんなに渡すとかさ。佐藤さんの奥さんが鈴木さんとしゃべるけど、そんなこと、しゃべんないっすよ。
植本 知らない人だからしゃべれるかというと、そうじゃないですよね。
坂口 ただ、そのことが読んでるとそんなに不自然にも思わないで読み進められちゃう。いろんな会話が。その何ていうんですかね。わりと柔らかいのに、強引にこう、作家が攻めてくるのをこっちは受け止めてるっていう。
植本 赤裸々に自分のことを語る相手のリアクションがおもしろいから、行けちゃうんじゃないですか。このストーリー。
坂口 だって無理に無理を重ねてるって言えば重ねているような話でしょ。その広場には、猫と、猫じゃねえや死体
植本 猿の、
坂口 何かを埋めたりとか。
植本 あと昔なくしたビー玉とかね。
坂口 そうですよね。そんなことねぇだろと思いつつ、面白がりながら読み進められる本って、そんなにないっていうか。すごく魅力的だと思うんですよ。



植本 このね、読んだときに、やっかいなのは登場人物の名前じゃなかったですか?
坂口 そうですね。普遍性?
植本 これわざとでしょうけど、鈴木さん、佐藤さん、山本さん、山田さん、前田さん、高木さん、上田さん、もうねぇ、ありきたりな名前ばっかりなんですよね。
坂口 そうですよね。こう、どうなんだろう? 作家がいろんなものとある距離を置きたいから?
植本 もちろん役者さんがね、個性的であればわかると思うんですけど。
坂口 でもこれだけ入れ替わり立ち替わりいろんな人が出てきて、それぞれこう会話、この人が誰、この人が何というのは認識できない。鈴木さんと14歳の女の子ぐらいはすぐ分かるけど。
植本 誰かと誰かが誰かの噂をしているときに、その誰かが分からないよね。
坂口 そうですね。噂、けっこうありますもんね。で、結局、別に殺人事件、もう一こ、殺人事件が起こるのか? 途中で。
植本 パトカーが来てね。不倫か・・・。藤原さんと山田さんか。あの、足や体が床から離れるときの「ペリペリ」って言う血の表現がありましたよね?
坂口 だから誰がどこで何をしてるのか。もうそれは妄想なのか、本当の話なのかがよく分からないままに進んで行くし、
植本 主人公の鈴木さんも、自分でやってないんだけど、やってないから捕まってもないんですけど、だんだんね、「あれ? 自分でやったのかな」と思ったりもしたりね。
坂口 人の気持ちってね、そういうことがないとは言えないし。話してるうちに「あ、やっちゃったかな」と思うことも多分、あるとは思うんですけどね。あながち全然、うーん、分かんなくはないんだけど。なーんか。き、き、き、気持ちが悪いですよね。
植本 なんとなくここから、この世界から出て行けなさそうな雰囲気とか。抜け出せない感じ。
坂口 で、結局、最後も。よく分かんない終わり方になりません? 佐藤さんの奥さんと鈴木さんが話してるところに前田と高木の声が絡んできて、終わるのかな?
植本 (本を読む)佐藤(妻)「心理テスト。ここはジャングルです。私はなに? 」鈴木「ええと。」佐藤(妻)「あんまり考えやんと」鈴木「ええと。」佐藤(妻)「答えて」 ふっと、溶暗。で終わる。
坂口 客としては、けっこうぽかんとした感じで終わるんでしょうね。いわゆる静かな演劇系とはまた違って。平田オリザさんなどの作品も途中でぽこんって終わるけど、でもまあ、「あ、なるほど!」って。
植本 オリザさんの本って、時間を切り取った感がありますけど。深津さんはそうではないですよね。
坂口 違いますよね。・・・・・・なんだろうな。どう受け止めていいのか。ちょっと戸惑う、戸惑う感じがすごくしましたね。



植本 なんか、岸田國士戯曲賞を取って、どっかに書いてありましたけど、「観客動員が増えるのかな」と思ったら、増えてないみたいで。ただ賞を取ったことで、プレッシャーだけ。というか、回りからの注目だけが高まる。次ぎ何書くのかなっていう。そこと観客動員とは結びつかないということが書いてありましたけどね。
坂口 でもそう言ったら、一緒に読んだ『のたり、のたり、』は1998年だから、その後に書いている作品ですよね? こっちは、分かりやすい。ね? 関西の落ちこぼれた、湾岸なのかな?にいる若者たちがドラッグしたりセックスしたりして。東京の話だといやったらしい話になりそうだけど、これはちょっと、愛らしいまぬけな感じがして。文学的な匂いまでする。ぼくは登場人物たちにすごくシンパシーを持ったですよ。ビートニクっぽいというか。
植本 カチャカチャしてて、なんか色彩的なのはこっちですね。
坂口 そうですね。圧倒的に分かりやすいというか、共感しやすい。これ、自分の劇団に書いているんじゃないんですね。
植本 あー!そうなんだ!
坂口 なんか、ほかの方に依頼されて台本を書いているんで、そういう意味ではちょっと違うかもしれないんですけど。登場人物が愛おしいという感じがすごいしましたね。『うちやまつり』はすごく距離を置かれている感じ?
植本 なんかその、ちぐはぐな感じは別役さんみたいな感じを受けたし。この当時の日本映画も「あ、こういうの、確かにあったな」と。気持ち悪い感じの。
坂口 でもダイレクトな気持ち悪さではなく、よく分かんない気持ち悪さっていうことだよね? 腑に落ちないっていうか。ということかな?
植本 う〜ん。もちろん、登場人物の気持ち悪さもありね。



坂口 でもさ、会話とか読んでると、断片がおもしろい。こう、ついつい読んじゃう会話だったりするじゃないですか。それもちょっと、・・・・・・うーん、どう受け止めていいのかがよく分かんなかったなぁ。
植本 そうね。劇団に書いてて、劇団のこともよく分かってるだろうから。ぼくね、ただただ読んだときに、今、言われて分かったけど、「おもしろくやれるな」と思ったんです。役者としては。読んでるときは、「みんな体温が低いな」と思いながら読んでて。読んだときの印象としては、不気味さの方が大きかったです。
坂口 何だろう? ブラックユーモア? 雰囲気からしてグレーなユーモアか。実際にユーモアとも思えないようなユーモアが全体に漂っているような感じがして。それが一番、この戯曲の好きなところかもしれない。なんか。だけどもっていうのがずーっと常に。自分のこう、何だろう。受け止め方の感性が足んねぇのかとずーっと思いながら読んでました。ぼくけっこう、勘だけが頼りだから。自分のあれで。
植本 ははははは!いいと思いますよ。
坂口 だからそれが通用しないとなると。けっこう、どうしたらいいか分かんなくなっちゃう。もう完全に深津さんに惑わされてるっていう感じがして。それは心地良かったな。逆に。
植本 構成としてもね、三日午後2時、次が夜11時でしたっけ?
坂口 そうでしたね。
植本 夜になると、全員がパンダのお面って。
坂口 そうそうそう、お面をかぶっていて。
植本 全員が何か知らないけど、パンダのお面を。それぞれ、なんでしてるかの理由が違ってて。
坂口 そうですよね。
植本 パンダがただ好きな人と、パンダが絶滅しようとしているかもと思っている人と、
坂口 中国の思惑とかね。パンダ外交の話になったりもするし。
植本 じゃあちょっと、パンダ会開くか。ここで飲むかっていうことになったりして。
坂口 とか前田さんとか高木さんでしたっけ?常にセックスネタで。一緒に出てくるたんびにそういう会話でしょ?
植本 そうですね。「コンビニどこ?」って行って帰ってくると、「コンドーム」が袋の中に入ってたりして。
坂口 そう。それすぐ分かるかって、ちょっと思ったりもしますね。とかね。なんか夜中と朝ですよね、6時。寒いですよね。
植本 はいはい、そうですよね。
坂口 広場で必ず、あの、必ずじゃないけど、カナリアじゃない何だっけ?
植本 あ、インコ?
坂口 広場でインコが鳴いてるんですね。
植本 野生化した外国のインコがね。
坂口 はい。むかし話題になりましたよね。野生のインコ。
植本 そうですね。はいはい。
坂口 うーん。だから何だろう?後書きは読ませてもらったんだけど。・・・・・・団地。もう人が少なくなっちゃった。
植本 空いてる部屋もいっぱいあるっていう。
坂口 っていう団地の話ですよね。だからそれが分かるのかなってのがまず。・・・・・・ぼくは、ちょっと分かんなかったな。そこ、けっこうポイントですよね?
植本 そうですね。
坂口 逆にこう、新しく出来た場所で条件が悪くて人が集まらなかった街っていうか、なのかなぁと思って最初読んでました。ちょっとニュアンスが違ったけどねぇ・・・・・・。



植本 ま、一番この中でキーポイントとなるのは、たぶん、テープなんでしょうけど。ゴミをね、そこの空き地に、共有スペースに捨てに来る人がいて。わざとなんだろうなって。
坂口 そうでしょうね。
植本 カセットテープがいっぱい入っているのを捨てにくると、わりと全部いろんな人たちの盗聴テープっていうのが。はははは。
坂口 故意にね?
植本 ポイントでしょ、ここ。
坂口 そうですよね。
植本 なぜかラジカセもあって。がらくたの中に。
坂口 それを持って来た人が聴いてもらいたいから、持って来たんだよね? 置いていったんだよね? それを何の気なしに聞いちゃう。もうとっても不自然なんだけど、でもその不自然を受け入れちゃう自分がいるみたいなのが、ずーっと不思議だよね。
植本 そうですね。登場人物もあんまり驚かないというか。
坂口 はい。
植本 殺人に対しても何か。うーん。
坂口 冷めてるもんね。全然。
植本 そうですね。
坂口 普通もっとびっくり。大騒動になってる感じだけど。だけどそれは鈴木さんが3ヶ月前に捕まってっていうか。警察に連れて行かれて
植本 容疑者として
坂口 調べられて、無実だっていうことで。そういう3ヶ月経ってるっていうこともあるのかもしれないけど。
植本 ふふふふ。そこにね、住民たちが敢えて挑戦して、鈴木さんにしゃべりかけていく感じが。冗談ですよ、って言いながら。



坂口 でも冗談じゃねえよっていう。感じですよね。だから、・・・・・・あー、どう、最後ぽかんとして終わる、その、何だろう? 作家のニタリっていうか。気持ち? 当然分かっているわけですよね。観客のリアクションとかも。それでもこういうお芝居を作るっていうその姿勢が、・・・・・・いいけど、素晴らしいけど、・・・・・・うーん、自分が観客だったらどうなんだろうって。
植本 ま、あの。美術展とかに行ったりとかでもあるっちゃあるじゃないですか。ほかの芸術でも。
坂口 詩とかね。全部分かるわけじゃないから。べつに演劇ですべて分かる必要はない。というか演劇にはよくわからないけど、おもしろいという部分がたくさんある。
植本 演劇がね、どっちかっていうとエンターテインメント寄りなものが多いからなんですけど、こういった作品もあってしかるべきだと思うし。
坂口 全然。でも戸惑いみたいなものがありました。それでね、1ヶ所とっても好きなところがあって。(ページを探す)ずーっと会話になっているんですけど、ここだけ、つかこうへいの芝居みたいになってるんですよ。突然モノローグになる。誰に語り書けてるのかっていう。
植本 佐藤さんね?
坂口 そうそうそうそう。
植本 最初にずーっとしゃべってる人ですね。聞かれてもないのに、「奥さんがちょっと実家帰っちゃって」みたいなこととか。
坂口 ここまでずーっと会話で来てるのに、ここだけが誰にも向かってない、モノローグみたいな。少し読んでみますね。佐藤(妻)「寂しいの?」佐藤「寂しくなんかないさとわたしは言いたい訳です。冬枯れの夜、駅のホームに降り立てば、私と同じ風体をした男たちの家路を急ぐ姿があります。皆この団地に消えていきます。その姿が一人欠け、二人欠けても、私は寂しくないさと言いたい訳です。」以下略。
植本 おもしろいですね。
坂口 つかの芝居でよくあるじゃない?
植本 へへへ。しかもそのあと池田屋の話をして。
坂口 そうそうそう。それがとってもね、印象的。「サビの部分なのか?ここは」とまで思いました。
植本 おもしろいです。確かに。
坂口 本当にここだけなんです。
植本 長いセリフなんてそうそうないですもんね。
坂口 そうそう。
植本 本当だ。ふーーーーん。どうなんでしょうね。他の作品でもこういうのが多用されてるのかな。
坂口 『のたり、のたり、』の方にもブラッドベリのセリフが唐突に2カ所出てきます。あれもけっこうハチャメチャな会話じゃないですか。クスリと飲酒でラリって死にそうだとか。あれ、あれいいですよね。100円君ていう人が、恋人に会いに来るときに、必ず自傷してくるっていう話。手首切って血流したりしないと恥ずかしくて逢いに来れないっていう。クスリやってるんですけどね。
植本 そうですね。ありましたね!
坂口 あるんですよ。ぼく、こういうの好きです。
植本 うひゃひゃひゃひゃ。確かに。



坂口 これーーーは、し、し、知らなくて良かったっていうか。こう、一応、演劇の本作ってる身としてはね。ここに関わっていくともう、たいへん。はははは。
植本 出版する場合って、あれなんですか? 書いた方とわりとガッツリと付き合って行くんですか?
坂口 どうでしょう? ぼくは全くダメですけど、基本的に編集ってそうですよね。
植本 たぶんね、関西だと小堀さんという有名な方がいらっしゃいますけどね。
坂口 これの編集にも関わっていらっしゃいますよね。なんで、すごくこの本を作った方は、深津さんをすごく好きで、作品をものすごく好きでっていうのが伝わってきますよね。
植本 ぼくブログで、土田英生さんが、深津さんが亡くなった日にブログを書いたのを前に読んだんですけど。前から、生前から二人は牽制し合ってて、飲んだりすれば喧嘩をしたりとか。お互いに感想を言い合ったりしてね。ツッチーは、もちろん亡くなったことはショックなんですけど、作品が、もちろん自分の書いているものとは全然違うので、「やっぱり好きにはなれない、よく分からない」とは書いていて。だから関西ではそういう人たちがいて、自分はその時にもっと深津さんのことを知っていればよかったなとは思いましたね。
坂口 なるほどね。
植本 亡くなってまだそんなに経ってない、2年半くらい? まだまだ深津さんはね、みなさんの、亡くなってから日が経っていないから、近くに居るだろうし。
坂口 そうでしょうね。
植本 これは「古典になって行くのかな」と思いましたね。
坂口 そうですね。だからすごい、その、岸田國士戯曲賞に選出した委員はすごいと思いますよ。あの、ぼく、うーーん。これを一番にするっていうのが、できない。理解できないっていうか、分かんない部分があって。これは果たしていろんな来た戯曲の中でこれを一番おもしろいって言い切れる素養がない。自分に。本当に。これ素養がある方がきっと選んだんだけど、その人たちの当時の話を読むのは癪だから。
植本 読みましたけどね。ぼくね。
坂口 絶対読まない! 自分だけの、こう『うちやまつり』にしたい。もう他の人の意見は聞きたくないってすごく思いました。それはね、もう一つの作品、もう一個の方がぼくは自分が好きだったというのがありますからね。だからなんか、あーーー!



植本 よく言われているのは、やっぱり、その阪神大震災以降、方向性が決定づけられたみたいなことが言われてますけど。
坂口 はい。
植本 何ていうんですかね。虚無感というか。
坂口 これはいつ? 阪神大震災とは。
植本 その時にも作品を発表されていますけど。『カタカタ』でしたっけ? 『カラカラ』か。『うちやまつり』は2年後ですね。
坂口 そっか。2年後か。ふーーーん。なんかそこらへんもね。なんか。
植本 ご本人もね、そのときの様子とか、いろんなところに書かれていますけど。自分は大阪に居て、家族が芦屋に居て、家が全壊してみたいなね・・・。
坂口 なるほどね。・・・・・・乱暴に言っちゃえば、ぼくにとっては、その「他人事」だからな。こんなことを言うとまた、ものすごくあるけど。「頑張れニッポン!」とか言うよりかは、ましだと思うよね。自分にとってね。「他人事」って言った方がね。だからピンと来ない部分もすごくあるんですけど。うーん。何か、うまくすみません。
植本 本当にね、その後、いろんなところで既成の戯曲を演出してね。そちらでも、評価をいっぱいされてて。
坂口 そうですか。
植本 確かに『動員挿話』もすごくおもしろかったですし、新国で『象』とかもやってますしね。
坂口 ああー。なるほど。そういうこう、何だろう。『象』はあれか。
植本 別役さんのね。あとは『温室』とかね。ピンターだっけ?
坂口 ああー。ちょっと分かんない不思議な話が好きなんかな?
植本 癌になられて、闘病生活が長かったんですよね? 5年くらいあって。ていう中で、その5年くらいの中でもいっぱいお仕事されててね。
坂口 そうですね。ふーん。なんかなぁ。ぼやーっと生きている身からすると、「なんとなぁく違う人なんだなぁ」って。うーん思うかも。
植本 ふふふ。書いてあったのは、高校時代、応援団だったから、とにかく後輩の面倒見もよく。
坂口 へー、そうなんですか。へー。



植本 読んでないからあれだけど、おもしろかったですよ、選評。
坂口 そうなんですか。いや、ぼくは、自分の『うちやまつり』を解決してから。
植本 わははははは!
坂口 その前にはいろんな人の意見は、一言たりとも聞きたくない!って強く思った。こんな思ったのは初めてですね。
植本 本当に46歳でお亡くなりになっていて。本当にね、惜しい才能だなと思いますね。今回、これを初めて読ませていただくと。
坂口 まあ、そうね、1回も観てないっていうのも、演劇誌の編集長として立派といえば立派だけど。あきれちゃいますよね。自分で。へー。
植本 あと、本当に、関西で愛されてた方なんだなっていうのは。いろんな方の証言から分かりますね。
坂口 はー。
植本 人的に、それ以上に作品、才能?
坂口 そうですね〜。
植本 なかなか、かえってね、生前に知り合っていたら、ぼくたちがこうやって語り合えなかったかもしれないし。
坂口 そうですね。思いが強すぎますもんね。もしかしたら、うん。今更、もう、観れないけど。観ればよかったかなと、ちょっと思いますね。
植本 すごいあの、あれだけど、ほら、あんまり編集長はさ、新劇が得意じゃないじゃない?
坂口 そうですね。
植本 新劇の老舗の劇団でもやれそうじゃない。
坂口 そうですね。ニュアンスとして。岸田(國士)とかやってるくらいだから。
植本 そうそう岸田國士っぽいところもあるなと思った。
坂口 その性的な匂いが。2つしか読んでないけど。全編を通して語られているっていうのも。まあ「性的な匂い」という部分だけでくらべれば岸田はうまいですよね。
植本 ご本人は北村想さんの『寿歌』に影響を受けているとか。この作品に限らず。
坂口 はーーー。
植本 ご自分の出発点として。
坂口 何だろう。終末観とかってよく言われるけど、
植本 そうそうそう。
坂口 ぼくはこの作品、2つ読んで、それはほとんど感じなかったなぁ。見ている時期がずれてるんですかね。だからあんまりその影響っていうのは、自分の中では分かんないかったですね。



坂口 これ、でも今後、やったら観に行く?
植本 あー、観てみたいのはもしかしたら、こっちかもね。『のたり、のたり、』。
坂口 こっちはできそうだよね。別に。うううん。『うちやまつり』はやる人が大変かなって。役者。でも植本さんできそうだっておっしゃらなかったっけ?
植本 あの、やってみたいですし、おもしろいと思いますけど、その、必然的に違う方が演出することになりますし、その答え、それは、いいんだとおもいますけど。どの戯曲だって好きなように演出して好きなようにやれば。ただ、正解はもう聞けないのかなっていう、ね。
坂口 そうですね。正解は、いっぱいあると言いつつも、これは彼の物だからなぁ。
植本 うんうんうんうん。
坂口 という気はしますよね。
植本 そこの正解を出していくのが演出家なんだと思うけど。別にそこは。
坂口 そうですね。ふーーーん。なかなか。本当にこんなことがないと出会えなかった。
植本 よかったです。本当に。
坂口 ありがとうございます!松本工房さん。本当に。まあ、今頃、何言ってんだおめえ!って言われるかもしれないですけどね。
植本 そうね、深津さんのことをよくご存じの方とか。作品観てる方はね。
坂口 その非難も甘んじて受けましょ。
植本 そういう企画がないと出会えなかったですから。
坂口 本当にすみません!
植本 本当によかったです。


 ※「深津篤史コレクション」全3巻
(松本工房刊)は、1300ページに及ぶ深津篤史作品集です。下記ホームページでご確認ください。
http://fukatsu-collection.info/



植本 潤

a6a4c939

うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】

ゼータクチク vol.2
『春宵・読ミビトツドイテ』
【構成/演出】わかぎゑふ
【出演】草彅智文 亀山ゆうみ 植本潤 粟根まこと
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