うちに

植本 本日は、『うちに来るって本気ですか?』。これ、ほんきでいいんですよね。マジじゃなくて。
坂口 ははは。
植本 これさぁ、えんぶさんから出してますけど、編集長好き? こういうの。
坂口 シチュエーションコメディっていうこと? おもしろいのは好きですよ。
植本 分かりやすいからさ。話としてはね。
坂口 分かりやすいから嫌とかは全然ないですよ。
植本 なんでこれを選んだのかなって。でもこれあれなんだってね。高校の演劇部とか大学の演劇サークルとか。あとテアトル・エコーさんを始め、全国の劇団とかでもすごい上演されてるんだって。
坂口 これうちのヨムゲキシリーズなんですけど、最初に売れる部数はともかくとして、後からくる注文としては、売れてるんです。
植本 ドル箱なんだ、これ。
坂口 いやいやいや、いまだに初版を売っているわけですからね〜。
植本 書いてあったもんね。年間に10何件、上演許可の問い合わせ電話がかかってくるって。こんな財産持ってるんだ。えんぶさん。
坂口 だから、儲かりはしないって。
植本 あ、そう。



坂口 うち、昔、演劇ぶっく社でアートのサイトを作ろうと思って、見事に失敗したんですけどね。
植本 それ知らないもん。
坂口 いきなりですみません。それが下地になって今に、演劇キックという立派なサイトができているという、背景は一応、説明しておくとして。当時その中で、戯曲をというか、単行本も売りたいなと思って。コンテストをやったんですよ。
植本 ああぁん。
坂口 そのときは演劇が得意だったから。戯曲のコンテストをやったんです。
植本 そのときは演劇が得意だったから? ははははは。
坂口 そうそう。演劇の会社だったからね。そんで、これが1番になった。
植本 え、あれを狙ってたんじゃないの? 岸田國士戯曲賞みたいな。
坂口 んなもん、狙うわけないじゃん!
植本 だって、だって。へへへ。
坂口 まぁ、これ1回で終わっちゃったんですけど。
植本 あー、そうですか。
坂口 サイト自体が大変なことになっちゃたんで。そういう曰く因縁のある。



坂口 内容としては5人の兄弟。中産階級の。
植本 ははは、「中産階級」。そんな言葉が出てくるとは思わなかったな。
坂口 それなりに、なに。
植本 まぁ、そうですね。お金がすごくあるわけでも、ないわけでもない感じ。
坂口 一戸建ての近郊の。東京? 都心、都心じゃないね。悪くない場所の。
植本 一軒家なんですよね。
坂口 はい。
植本 庭があってっていう、
坂口 家に住んでる。

【登場人物】
御殿場 縁(長女 29歳 中小企業勤務)
御殿場 太一郎(長男 27歳 ミステリー作家)
御殿場 真琴(次女 24歳 大学院生)
御殿場 忍(次男 22歳 大学4年生)
御殿場 百子(三女 19歳 浪人生)
蝮田 聖巳(28歳 フリー編集者)
相良 不見夫(29歳 縁の紹介相手 保父)
※編集部注


植本 兄弟が5人で、そこに直接親は出てこないんだけど背景として、寝たきりのおじいちゃんがいたりとか、お母さんがいたりしますけどね。
坂口 居間でのシチュエーションコメディですね。5人は、
植本 女性3人と男2人ですね。
坂口 一番上のお兄さんが小説家、
植本 くずれ?
坂口 もどき。がいて。二番目が女の人になるのかな?
植本 え〜とね、うんん。長女がね、29歳なのさ。御殿場縁(ゆかり)さんっていう中小企業勤務の人がいて、次が長男のミステリー作家がいて。で、修士論文の締め切りが迫っている次女の大学院生。振られたのと就活で混乱している次男の大学生4年生。座敷童が見える三女浪人生っていう。
坂口 揃ってますよね。
植本 まぁ、何ていうの? その人たちと訪問者2名が入れ替わり立ち替わりする中での、人間違い。ざっくり言うとね。
坂口 そうですね。それがわりと読んでると腑に落ちるというか、上手に作ってあるなぁって。
植本 ぼくが言うのもなんですけど、お上手です。
坂口 その勢いさえ上手にお芝居を作っていけば、おもしろいものになるなと思ったんですよ。
植本 ぼくも思います。
坂口 で、ただその、何だろう。ちゃんと途中から異物というか、2人、勘違いをするお客さんが入ってきますよね。
植本 そうなんですね。あのー、なんていうの。家に来るはずの人が、2人いるんですけど、それが人違いで。上手く言えないけど。取り違えてるというか、受け手(家族)がね。
坂口 そうですよね。で、その中でさらに、その2人に曰く因縁があるというか。
植本 過去にね。
坂口 そうそう。過去にもあるし。本人たちも何か。何かを持ってる。何ですかね。一人は小説の締切を守らせて原稿を取ってくるのを請け負う立場の人。フリーの編集者が入ってきて、もう一人は長女の、
植本 婚活の、
坂口 相談所!
植本 そう、結婚情報サービス。
坂口 の、パートナーというか、ちょうどうまく出会った人。っていう、その2人が入ってくるんですけども。それが、とり違えられて。
植本 しかも男と女なのに取り違えますからね。
坂口 はい。そうですよね。でもそこのところはちゃんと理屈をつけて、上手に作ってあるんですね。知っている人が電話してて見てないとか。
植本 ふははは。はいはい。
坂口 作ってあるんだけど、やっぱり勢いで行っているから、もしかしたら、作り方によっては、そこらへんで混乱するかなと。
植本 そうそう、だからね、これよっぽど設計図をきちんと書いて、演出のときにやらないと。破綻をきたすかなと。
坂口 何回もやってみて、ああ、ちゃんとこれで分かるねっていうところで提出してくれないと、けっこう、最後の方はただただわーわー言って終わっちゃうっていうことも出てきちゃうかもしれない。それはそうとしてさ、この5人の兄弟が、わりとかわいらしいなと思っていて。5人の兄弟+座敷わらし。
植本 座敷わらしは実際に、いる体でね。



坂口 それぞれキャラクターが立ってるというか、5人の会話がなんかちょっとほほえましく思えてくる。そこがけっこうなポイントだなと。
植本 そうですね。あのー、仕掛けもあるし、見えない座敷わらしを三女が手で扱うっていうのもあるし。あとトラップもあるでしょ。
坂口 そうそう。お兄ちゃんが推理作家で、自分の家に、
植本 いたずらに近いトラップがいっぱいあるんですよ。なんかそこを通るとロープに絡まってしまうとか。
坂口 とか、長女がもう結婚できないかもしれない、みたいに思ってるのに、ここでうまく出会っていく慌てぶりとか。それがメインの話なんですけどね。
植本 高校演劇とか、大学のサークルとかでやったときに、ま、友達同士じゃないですか。
坂口 はい。
植本 関係が作りやすいだろうなとは思いました。
坂口 なんかときどきに上手いつっこみっていうのかな。直接ストーリーには関係ないけど。
植本 関係性を表す。
坂口 上手にセリフが入っているから、観てる側はそれでけっこう和んでいく作りになってると思うんですよね。登場人物に親しみがわいてきますよね。



植本 こういうシチュエーションコメディ。上質なね。こういうの求められてるんだと思いますね。
坂口 これは、普通のところでも全然できると思うんだよなぁ。
植本 印象としては、『おそ松さん』とか、最近ありますけど。深夜のアニメっぽいんですよ。
坂口 『おそ松さん』ってなに?
植本 『おそ松くん』のちょっと大人になったときを描いている。
坂口 ちょっとやだね。
植本 大人気なんだよね。
坂口 そうなんだ〜。
植本 深夜のテイストがすごい匂ってきますね。
坂口 最近作品のチョイスがね、有名な人が書いたものとか、人気のある原作ものとか、そういうとこにいきがちですけど。こういうのを丁寧に、上手な俳優、おもしろい人がやれば、なんかもうちょっとまた別の演劇のお客さんっていうのかな、が開拓できるような気がするですよ。
植本 そうね。それこそシアタートップス。新宿にあった時代に、会社帰りの人が。
坂口 カクスコとか東京サンシャインボーイズとかね。
植本 そうそうそうそう。観に行ける感じの。お芝居。
坂口 そうですよね。というのが今はあんまりない? ない? ぼくの勘違い? でもやっぱりそういうところがちょっと乱暴になってる気がするですよ。
植本 うん、うん。



坂口 なんですけどね。そういうのがあるといいなぁって思いつつ、これを読んでいたんですけどね。
植本 いや、でも、こういうのが上演され続けるのはすごい大事だと思いますよ。何ていうの。本当にいろんな演劇があるので。わけ分かんなくておもしろいのは、それはそれでいいと思うし、こういうのがあっていいと思うし。
坂口 というわけで、くどいですけどこれはうちのヨムゲキシリーズです。
植本 噂でこの作品が、なんかいいなと思ってる人は、あ、えんぶが出してるんだって思って、紀伊國屋とかに探しに行くわけでしょ?
坂口 うん、でももう、たぶん、どこにも売ってないんじゃないかな。
植本 はははははは。
坂口 一時、全部引き取ったから。ネットでしか売らないっていうふうにして。だから今、たぶん、これヨムゲキをどっかで売ってるってことはほぼないと思う。
植本 あれ、紀伊國屋もないっけ?
坂口 ないと思いますね。なんで、ホームページから買ってください。
植本 演劇キックのここにあるやつ。そっか。
坂口 でもまあ、あれですよね。また、“えんぶ勇気のあるシリーズ”になるけど。なかなか立派なもんですよね。
植本 ふははは。そうだよ!
坂口 当時は無名なわけだからさ。
植本 何が当たるか分かんないでしょ?
坂口 へへへ。うん。こう、何、ヨムゲキのなかには今をとときめく人たちがいっぱいいるわけでしょ。宮藤官九郎さんとか、平田オリザさんとかさ。そういう中で、ぽこんとこういうのがあるっていうのがね、ちょっと楽しいかなと思って。
植本 だって、実際、これ売れてるわけだからさ。
坂口 そうね。ふふふ。売れてるっていってもね。
植本 ひはははは。
坂口 くどいけどさ。
植本 いやいや。
坂口 ほかのが売れなすぎるって。
植本 なかなか。だってさぁ、ご本人が演出した場合が一番おもしろいだろうなって思う戯曲もいっぱいあるじゃない。これはそうじゃないから。可能性がいっぱいあるんですよ。演出家さんによって。
坂口 なるほどね。
植本 そこじゃないですかね。やっぱり、やろうと思う人が多いのの、理由の一つは。
坂口 そうですね。
植本 松尾スズキさんのやろうと思ったときに、松尾スズキさんよりおもしろく、しかも若い世代の人ができるかって思うじゃない?
坂口 う〜ん、そうですね。確かに。
植本 この本にはそんな可能性がいっぱい詰まっているわけです。
坂口 じゃあ、ぜひ。あの、
植本 ネットから。はははは。



植本 これね、本当にね、さっきも言ったけど、こういうのをやると鍛えられると思うよ。
坂口 おおー。なるほどね。それは。
植本 一つの答えに向かって。
坂口 何? みんなが一つの目的に向かいやすいからっていうこと?
植本 目的っていうか、正解。正解に向かいやすい。
坂口 正解っていうけど、正解? もうちょっと砕いて言うとどういうこと?
植本 この笑いはこうしないと起こらないっていう、そのおもしろさを最大限に引き出すための。このセリフとか間はこれじゃないとダメだとかっていうのは、わりと正解があると思いますよ。
坂口 ほああー、なるほどね。ま、考えたことないけどさぁ。
植本 いやいやいや。
坂口 だからみんな言うのか! 今日は上手くいかなかったとか。上手くいかない日があるとか。
植本 それはいろいろなんじゃない? それはいろいろあると思う。相手役と2人の関係のときもあるし、お客さんに左右されるときももちろんあるし。なんで? 昨日とこんなに違う客層なの、雰囲気なのって思うときよくあるじゃないですか。
坂口 それ、ぼくら1回しか行かないから、その時しか分かんないですけどね。ふーーん。そうかぁ。
植本 でもこういうのは、お客さんに左右されてる場合じゃない本の一つだと思うので。
坂口 はあ。
植本 構築していかないといけないから。
坂口 だから、今、ここまで勢いがあるっていうのかなぁ。なんかけっこう無理くりなシチュエーションコメディを作ろうって思う人はあんまりいないかもね。みんな安定してきちゃったし。こういうの作ってた人たちも。
植本 はいはいはい。ベテランの域にさしかかり。
坂口 そうそう。そういう人たちがもうほとんど、ね。もうちょっと落ち着いた作品に。
植本 当然の変化なんだけどね。
坂口 まぁ、自分の年齢や時代に合わせて変わっていきますからね。そういう意味では、これはちょっと。これも昔作った本なんだけど、おもしろいかなぁ。
植本 えんぶさんが出す本の中では異質ですね。
坂口 そう、ですかね。
植本 ふふふふふ。
坂口 でもみんな。狙いどころとしてね、若い人がね、もうちょっとこっちをやってもいいんじゃなかなという気はすごくするですよ。はちゃめちゃなシチュエーションコメディっていうか。丁寧なんだけど、はちゃめちゃ。そこらへんを睨んで頑張ってみてもいいかなぁって思って。
植本 分かりますよ。こういうのが上手にできる若い俳優さんたちは、そこからの、たとえば外部への出演とか、映像への出演も増えていくでしょう。
坂口 そうですね。僭越ながら、頑張れって思いますよ。
植本 こういうのがね、上手にできる人はね。
坂口 上手にできるためには、いろんなことをしないといけないとは思いますけどね。



植本 潤

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うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。


【出演情報】
こまつ座『イヌの仇討』

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作◇井上ひさし
演出◇東憲司
7/5〜23◎紀伊國屋サザンシアター

こまつ座 http://www.komatsuza.co.jp/

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坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



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