Fabrice_Melquiot

植本 今回はファブリス・メルキオさんの『ブリ・ミロ』。
坂口 フランスの方ですね。知ってました?
植本 いや、全くノーマークですわ。
坂口 タニノクロウさんがやってたんですね。
植本 6年くらい前ですね。知りませんでした。なんでこれを?
坂口 本屋さんで次のネタを探していて、お芝居の形がモノローグとダイアローグでできていて、面白そうかなと。
植本 混ざり込んでるというのか、会話の途中で突然客席に向かってセリフを言いますね。
坂口 そう。その部分はモノローグですよね。自分の心境の説明とか、場の説明を登場人物がそのまま客席に向けて語る。で、また、すぐ普通の会話に戻る。
植本 知らなかったけどかなり有名な方なんだね。youtubeとか見るとそれの舞台の映像も見れますね。
坂口 あ、見た?
植本 見た。あとそれの予告みたいなの作ってる団体とかもあって。そういうの見るとカラフルな舞台でやっぱり会話の途中で、俳優が一人でお客さんの方に向かってる映像ありましたよ。
坂口 あとは普通に芝居しているの?
植本 はい。
坂口 ちょっとね、いまどきでは風変わりなお芝居ですね。



植本 この方は1974年生まれで、この作品の初演は2003年ですね。で、お話は主人公ブリ・ミロが生まれるところからスタートします。
坂口 あ!お父さんとお母さんが出てきてね、で、お父さんはでっかい。
植本 そうです。
坂口 屠殺、、、
植本 元々肉を捌く人、、、
坂口 「牛の頭に斧を下ろして牛を殺す。」みたいなことが書いてありました。屠殺人ですね。だからデカくていい体してるお父さん。ダディ・ロトンド、ですね。
植本 お母さんがビノクラ。こちらは極度の近視。
坂口 名前は意訳すると眼鏡ママって書いてあるからそういうことなんだよね。
植本 主人公のブリ・ミロっていうのも太った眼鏡(笑)、だから、、、
坂口 これでいうとデブ近眼。そのまま名前になってる。
植本 それは親がつけたんですよ、わかりやすいようにね。
坂口 お父さんは、、、
植本 ニュアンスを意訳すると太っちょパパ。お母さんの方が眼鏡ママ。で、主人公のブリ・ミロっていうのがその両親の特徴をそのまま受け継いでいる、太ってて視力が弱い、という。



坂口 そうですね。これ思ったんですけど。これフランス語で読んだら倍面白い。
植本 (笑)。それ言ったら身も蓋もないですけどね。
坂口 そうですね(笑)。
植本 でも、、、この訳してる方すごい努力なさってるなって思った。
坂口 はい。でも、、、そうは言っても日本語とフランス語のとか、、、知識、僕らの知識。フランスならではの歴史とかがあって、それと現実の言葉、現実に対しての言葉遊びとかもいっぱい入ってるわけでしょ? それには残念ながら追いつかない。だからフランス人だったらもっともっと面白いんだな、って思いました(笑)。
植本 あ、でも面白かった! 全く予備知識なくて読んだんだけど、これはちょっとおしゃれだなって思った。
坂口 ウンウン。見ててもきっとわかりやすいが故に感じる部分があるみたいな。コミカルな部分もあるし。
植本 だって途中で、実在のシャロンストーンが出てくる(笑)。
坂口 (笑)。チャリティ活動に熱心で、高級商品のCMに出ているおばちゃんね。
植本 有名な女優さんですけどね。
坂口 しかも彼女とのシーンは、真ん中から後位になるんだけど、最初はこの、、、最初からやろうか(笑)。



植本 いいですよ(笑)、話を追ってね。まあ、産まれました。すでに特徴があってね、それこそ視力が弱かったり太ってるんですけど。産まれた時がもう9000gですからね。
坂口 生まれて一週間でブリの体重は12kgになっていた。
植本 まあそれは両親とも気にしてません、自分達の遺伝子だから。でも学校に行くようになって、いじめられたりとかして。
坂口 ものすごい太っちゃうんだよね?
植本 小学校の時に50何kgでしたっけ。
坂口 で、もう一つ要素があって、従兄弟だっけ? 父親の?
植本 奥さんの義理のお兄さんって書いてあるけど。
坂口 まあ親戚みたいなものですよね。そこの夫婦が、
植本 よくこの家に訪れているんですけど。その娘が、ペチュラ。
坂口 が、ペチュラは10歳かな。ブリは7歳。
植本 ペチュラはちょっと歳が上なんですね。
坂口 恋仲になっちゃう。
植本 早いですね
坂口 結構立派なラブシーン。
植本 そうですね。大人だね(笑)。
坂口 会話としては大人。
植本 フランス人ならそのくらいするか。みたいな感じですけど(笑)。
坂口 小学校行ったら恋愛はするわな。
植本 で、なんてーの。駆け落ちしようか、みたいなことになって。親に一応言うんですよ。でも取り合ってくれない。さすがにね。ふふふ。
坂口 彼女はブリ・ミロの太っちょさ加減に一目惚れするんですね。
植本 そうね。まあ性格も含めなんでしょうけど。



坂口 一目惚れして、ブリ・ミロも彼女を好きになって、で、ある時期に彼女の方がスペインに行きますね。
植本 お父さんが気象予報士なんですけど。これ面白いんですね、フランスの気候にあんまり変化がなくてお父さんとしてもつまらなくてスペインなら面白いんじゃないかって言って、スペインに赴きますけど。
坂口 そこらへんも物語の作りとして面白いですよね。
植本 そこから文通が始まったりして。
坂口 その間に、ブリ・ミロのお父さんは失業しちゃいますよね。
植本 それも社会情勢が入ってるんだなと思ったんですけど
坂口 狂牛病で、、、
植本 牛が全滅してしまって、屠殺人のお父さんは首になるんです。
坂口 なんかちょっと面白いエピソードっていうか。そんで彼は失業してるんだよね。
植本 そうすると彫刻家になるんです。
坂口 ああー、なんで??なんで彫刻家??
植本 なんか、ブリ・ミロが龍を怖がるんですよ。そうすると実際に木で龍を彫って見せて、ブリ・ミロとしては「あ、こっから龍がくるんだ」と思って、そういう出てくるところを見て安心して怖く無くなるっていう。それでそれが良かったんで、そのまま彫刻家になるんです。
坂口 生業になっちゃう?
植本 それで面白いのが、ト書きで、その彫刻が龍が火を吐く。っていうところあって。ここがファンタジー。
坂口 (笑)。
植本 そしてあれですよ、それでシャロンストーンがね(笑)。まあ後々ですけど、ペチュラと離れてしまったことでブリ・ミロが急激に痩せるでしょ。そうすると愛のために痩せた。ってことが世界中に広まって、まずアメリカ大統領からお祝いがきて、で、シャロンストーンは自分のでるCMにブリ・ミロを出演させる。そうするとCMのバックには龍の彫刻が映ってたりするんですけど(笑)。
坂口 お父さんの仕事がそこで活きたってこと?
植本 ま、そうですね(笑)。それで食えてんのかどうかってのは書かれてませんけど。転職は見事になさってます。
坂口 でもさ、ブリ・ミロはあんまり太ってていじめられてて、なんか「俺はロシアの体操選手みたいになるんだ」っていう決意するときがあるよね? あれはいじめられてたから決意するの??
植本 なんか「このままじゃいけない」と思ったんですね、、、どっかでね(笑)。
坂口 でも何十キロか落とすわけでしょ?
植本 30キロかな
坂口 どうやって?
植本 なんか、書いてあったけど、、、運動とかしたんだと思う(笑)。



坂口 家庭の中シーンが多い劇なんだけど、けっこう激しいドラマがあるんだよね。
植本 スパッと読めるから、戯曲としての長さもそんなないんだけど、時間経過は早いです。
坂口 なるほどね。
植本 そうこうするうちに、スペインに行ってたいとこ家族が、フランスに戻ってくるんですけど、、、ペチュラが、ね、、、(笑)。
坂口 なんかを食いすぎて太っちゃうんだよね、、、
植本 パエリアです(笑)。
坂口 あー、パエリアがうまいから食い過ぎて太っちょになっちゃうんだね。
植本 「私の姿を見てびっくりしないで。でもあなたは外見にこだわる人じゃないから」みたいなこと言って、まだ自分が太ったとは言ってないんですけどね。
坂口 彼女が戻ってくる。その時が10歳くらいだね。
植本 そう。で、戻ってくるときの手紙っていうのがシャロンストーンのCMに出たことでブリ・ミロが有名人になるじゃないですか。それで学校の先生とかもちやほやしたりとかして、ブリ・ミロがちょっと天狗になっちゃうんですね(笑)、それに対して「私スペインであんたのCM見たけどちょっと調子にのってんじゃないの、そんなあなた好きじゃない。」みたいなこと言って。
坂口 ああ、そうか。、、、植本さんいつになくしっかりストーリーを把握してるね。
植本 2回読みましたから(笑)。いつになくは余計ですけどね!
坂口 (笑)。



植本 で、それに対してブリ・ミロは改心するんですよね。「確かに僕、調子に乗ってた」て言って手紙にも書いてね。
坂口 そこのところは気持ちいいですよね。彼が改心するっていうか「おお俺やばいじゃん」みたいに思うところはちょっといいなあって思いましたよ。、、、で、彼女が帰って来て、
植本 その後、駆け落ちするでしょ。 カレー駅ってとこに行くんですけど。
坂口 これ、具体的に出てくるのはカレー駅だけでしょ? そこに電車に乗って?あ、海だ。
植本 あ。イギリスだ。
坂口 イギリスに渡るんだよね。イギリスの女王に祝福されに行く?
植本 そうそうそう(笑)!ローマ法王じゃダメだって言って、ローマ法王は周りにも似たような衣裳を着た、誰がローマ法王かもわからないし、寝てるんだか死んでるんだかわからないって言って、イギリスのエリザベス女王じゃなきゃダメだ!彼女はクールだから!って言って、ふふふ。
坂口 (笑)、それで行こうとして、カレー市まで。これは電車に乗って行くんだよね。
植本 海が時化てたのかな? そこの駅で止まらざる得なくなってね。
坂口 そこでの話がまたいい話で。
植本 いい話っていうか急展開(笑)。



坂口 電車が止まちゃうわけですよね。
植本 そうすると駅長さんがいい人でね。自分で鬱って言ってますねこの人。そして明日定年退職だって。で、電車の中で泊まっていいよって言ってくれたのですが、そこには自分達だけじゃなくて、、、どこの国だっけ、、、
坂口 あーー戦争してたね、、、
植本 えーっと。アルバニアだ。アルバニアから逃げてきた兄妹、お兄ちゃんと妹がいて。
坂口 そこでいきなり、、、
植本 あの、、、ブリ・ミロとペチュラの二人の恋は、冷めてしまった。一気にね。
坂口 それぞれが、アルバニアの兄妹を好きになっちゃう。
植本 一目惚れ、でね。
坂口 別に理由はないんだよね? 一目惚れ。
植本 突然なんだもん。
坂口 すごいね。
植本 「私たち破局ね」って言って(笑)。
坂口 で、ブリ・ミロはその妹を好きになって、ペチュラはお兄さんを好きになっちゃったよね。、、、それありかな?
植本 、、、ありじゃないですか?
坂口 いや、いんだけどさ。おやおやって、、、ここはよくわかんなかったな。わかるけどわかんないんだよな。



植本 う~ん、なんか、きっと全然違うんでしょうね。戦争から逃れてきた兄妹は自分達が会ったことない人たちなんだろうな、と思うと、ありえるな、と思います。
坂口 そんでまあ、二人の恋は終わって、でも仲良しは仲良しなんだよね。
植本 そうなんです。あともう一つ(笑)。そこにやっぱりシャロンストーンが追っかけてきてて、どうやらブリ・ミロのことが大好きらしくてね。でも、ここでの彼女の書かれ方が酷いでしょ「ゲスで!」みたいなね(笑)。
坂口 嫌いなんだね、作家がシャロンストーンを(笑)。
植本 いいのかなっていうくらいけちょんけちょんに書かれていて。で、ブリ・ミロはお断りするんですよね。僕にはこの人がいるから、とかって。そうすると彼女は駅長さんと仲がよくなっちゃう(笑)。
坂口 駅長は独りで寂しがってたから、
植本 「明日から定年でいくらでも時間はあるから旅行に行こう」って、、、シャロンストーンと多分旅行に行くんです(笑)。
坂口 ハッピーな話で、、、良かったでしょ?
植本 えへへへ。急展開で面白いですね。



坂口 だけど、アルバニアの兄妹は、、、
植本 国に帰りますね。
坂口 戦争してるんですよね。
植本 だからブリ・ミロやペチュラが「一緒に行く」っていうんですけど「戦争だからこない方がいいよ、ここの方がいいよ」って言って住所渡されて、「戦争終わったらくれば?」みたいな。
坂口 それでどうするの?
植本 で、別れて、最後は二人、ブリ・ミロとペチュラになって。私達やっぱり仲良しだよね。って言って、僕、将来駅長になるって言って。
坂口 え?駅長になるって言ってんだ。
植本 うん、ブリ・ミロはね。
坂口 ふ~ん。
植本 で、抱きしめてよ。って言って、あの、、、線路の砂利の上を歩く足音や、電車が出発する音が聞こえて、、、なんか最後の方読んでて、もはや日本のアングラだなって思いました(笑)。
坂口 あーーはいはい。だから僕らが説明するとわかりづらいけどさ、これ読んでると、状況がわかるようにモノローグが入るでしょ。 お父さんとお母さんとブリ・ミロの状況説明、心境説明が入る。それもなんかいいタイミングで入りますよね。それが終わるとまた会話になっていくからわかりやすい。
植本 わかりにくいとこ、どこもなかったですけどね~。これ僕今年ね、『アメリ』ていうミュージカルやったんですけど、やっぱり同じフランスだからなのかちょっと似てる。それもアメリが産まれるとこから始まって、それは女の子が主役だから。
坂口 ずいぶん昔に観た映画は面白かったです。
植本 で、奇妙な癖のある彼氏と出会って周りの人と関わって行くみたいな話で、似てるなって思って。
坂口 そうですね、あれも、断片断片の。ずーーっと物語が繋がっていなくて、場面場面みたいな形でしたよね。



植本 この方なんか調べてもあんまり日本語のものでは出てこなくて、向こうでは有名なのかもしれないけど、日本ではまだまだなんだなって思いました。
坂口 どうしてだろう。
植本 ね。せっかく本も出てるからどっかがやっても面白そうだなって思うんだけど。ボリューム的にも、登場人物の数にしてもちょうどいい感じがしてね。
坂口 わかりやすさもそうだしね。彼が太ったり痩せたり、そういうことはちょっと大変かもしれないけど。
植本 うん、この大統領にしたって、ビルゴアブッシュって色んな人の名前が入ってるみたいな人が出てくるでしょ(笑)。
坂口 フランスでいえばエスプリ?が効いてるっていうんですかね。面白いですよね。
植本 よかったぁ。編集長が自分で持ってきて「あんまり」っていうのかなって思って(笑)。



坂口 いやいや、これ、まず退屈しないのがいいです。で、突拍子も無いことがいっぱい出てくるし、言葉言葉の、、、今はストーリーをメインに話をしてるけど。夫婦の、お父さんお母さんやブリ・ミロの会話とか。従姉妹とのやりとりとかも結構ウィットに富んでる、楽しい会話ですね。ダイレクトな会話だけじゃなくてね。そこのニュアンスも楽しめる劇だと思うんです。
植本 あそこも良かった。ブリ・ミロが学校でいじめられた。それが、お父さんお母さんにしても初めて外の悪意に晒された、みたいなことを言ってて。それまでに家庭の中に悪意というものがなかった。みたいなことが読んでて面白かったですね。
坂口 そうですね。無菌状態みたいな。
植本 まあね(笑)。充分変わってるんですけどね家族としては。
坂口 なんか作家は、自由な人なんだなと思いました。
植本 多作みたいだね。この時点で、これ2008年かな?結構前なんだけど、そこでもう40作くらい書いてる。
坂口 フランス語だから世界にあんまり広まっていかないのかな?
植本 日本に、ってことかな。世界ではきっと結構やられてるんだろうし。賞もたくさん獲られてるみたいだし。だから、いいんじゃないですか。この対談、誰が読んでるか知らないけど、この方を世に広めるってことで(笑)。
坂口 この一作しかちゃんと読んで無いけど、これに関しては、もういつどこで誰がやってもいいんじゃないですか? でも、ほんとにいつになくちゃんと覚えてるね、あんた。
植本 うん、、、昨日の夜も2回目読んだし。いつも読んで、そこから何日か空いて臨むと、やっぱ忘れちゃうんだよね(笑)。ギリギリで読まないと。
坂口 じゃあ毎回ギリギリで読みなさいよ、ハハハ!
植本 忘れるでしょ?
坂口 忘れる!忘れたら植本さんに聞こうって思ってるから。まあ大丈夫。
植本 俺はね、この企画ちゃんとやらなきゃって思ってるからさ。フフフ。
坂口 ハハハ。じゃあ、今日はこれでおしまい。ありがとうございました。


植本 純米

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うえもとじゅん岩手県出身。89年「花組芝居」に参加。以降、老若男女を問わない幅広い役柄をつとめる。主な舞台に東宝『屋根の上のヴァイオリン弾き』劇団☆新感線『アテルイ』こまつ座『日本人のへそ』など。

【出演情報】
四獣『ワンダーガーデン』
作・演出◇わかぎゑふ
出演◇桂憲一 植本純米 大井靖彦 八代進一
11/9~11◎ウィングフィールド(大阪)
11/13~18日◎シアター711(東京)


坂口眞人

さかぐちまさと○84年に雑誌「演劇ぶっく」を創刊、編集長に就任。以降ほぼ通年「演劇ぶっく」編集長を続けている。16年9月に雑誌名を「えんぶ」と改題。09年にウェブサイト「演劇キック」をたちあげる。

(文責)坂口眞人



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