第54回「静かな丘」


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普段どれだけ便利なものに囲まれて生活しているのかが、あまり何もないところにくるとよくわかる。
今は少しだけそんな状況にある。
どこにいるかと言えば、静岡にいる。
日本平の山の中の方にいる。
木々に囲まれて、とても綺麗なコテージのようなところに泊まらせていただいている。
いいじゃないか。うん、そう、いいんです。
夜になれば、辺りは真っ暗。虫の音がこれでもかと空間を支配します。
朝はそれに加えて鳥の鳴き声。
自然と目が覚めます。六時くらいには覚めます。
いいじゃないか。うん、そう、いいんです。
7時くらいになってくると、パン!パン!と遠くの方で銃声のようなものが山にこだまして聞こえてきます。
しかし銃声じゃないだろうと思ったそれはなんと銃声で、どうやらライフルの射撃場があるようで。
別にいいじゃないか。うん、別にいいんです。
極めつけが、富士山がかなりドンと見えます。
最高じゃないか。うん、結構最高です。
ただ、コンビニがない。スーパーがない。食事処もない。(山を降りればある)。
ということを、こんなに感じるんだと自分でも驚くのであった。
部屋は、一人暮らしを始めたてのような状況なので、ホテルの部屋にあるような物以外は、持参したり買い揃えなければ、ないものはない。
そして基本的には自炊なのだが、普段、電子レンジにものすごく頼ってた事を知り、サランラップってとても優秀なキッチン用品ですねと再確認したりする。
色んなものがないとなると、工夫をするしかないので、それが楽しかったりする。
工夫できた自分を、やるじゃないかと褒めたたえたりする。
普段は日常生活のことで自分を讃えたりなんてすることはないのだなと知る。
なので、わりと嫌いじゃない、この生活。
これから約二ヶ月この生活が続くわけなのだが、終わる頃にはこれが当たり前となって、コンビニが不要になってるかもしれない。それもまたいいかもしれない。
で、何で来ているのかというと、静岡芸術劇場・SPACさんでの滞在創作&公演です。


ノゾエ征爾
ノゾエさん
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。

●今後の活動
SPAC「病は気から」
原作:モリエール 潤色・演出:ノゾエ征爾
2017年10月2日~11月2日◎静岡芸術劇場
http://spac.or.jp/le_malade_imaginaire_2017.html



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第53回「地方公演」

NOZOE

引き続き「気づかいルーシー」なのでありますが、
東京公演も無事終わり、地方をいくつか回らせていただいているこの頃であります。
福井、松本、富山、そして残るは広島(8月15日現在)。
劇場のサイズも様々なので、その劇場ならではの動きの変更などがちょこちょこと出てくる。それに関しては、「この空間だからこうしてた」という演出も多いので、空間に合わせた修正はさして心労はない。心労はないどころか、とても新鮮だ。劇場空間もそうだけど、特に立地が。
劇場が、駅周辺などからは少し離れた所にあるところが多く、周辺にはほとんど何もなかったりする。(写真は、ハーモニーホールふくいの劇場前にて)
こんなところまでお客さんは見に来てくれるのだろうか?と心配になるが、どこも車社会なので、なんの問題もないそうで、おっしゃる通り、幕が開いてみるとたくさんのお客さんで賑わっている。
東京に比べるとお子様連れがとても多いし、それが多いからというわけでもなく、
それにしても客席が沸く。
演劇を観る機会が少ないとのことで、本当にみなさん楽しみにして来てくださっている。
笑う、喋る、泣く。全ての出来事に反応が起きる。
演劇をやる原点や楽しむ原点、大衆にとっての演劇というもののそもそもの原点のようなものに触れているような気持ちになり、やっている僕らはどんどん多幸感に包まれ、しまいには、自分たちは最高に面白いんだと、若干勘違いの領域に踏み込みそうになり、
その都度東京に戻ってきては、いやいやそれはそれ、これはこれと自分を落ち着かせる。
それでも、そういう場所があり、東京という場所があり、またさらに違う場所があり、そんなところを、演劇作品で回れたならば、回れるのは、最高の喜びだなと、暑い真っ盛りに汗を服に染み込ませながら、身に沁みているのであります。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
SPAC『病は気から』
原作:モリエール、潤色・演出:ノゾエ征爾
2017年秋 静岡芸術劇場にて
http://spac.or.jp/le_malade_imaginaire_2017.html


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第52回 「気づかい」

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こどもも楽しめる演劇ということで「気づかいルーシー」という作品に取り組んでいる最近でありますが、そのワークショップで、松本、富山、広島に行ってきた。
劇中にあるダンスと、ちょっとしたお芝居を一緒にやりましょうといったものであったが、
ふとワークショップ中に立ち止まり、こどもに自分はどう見えているのだろうかと、ふと思ったのであります。
自分がちびっこの頃に接した40過ぎの男の人を思い出してみると、例えば、あの先生は今思えばそれくらいだったのかとか、あの遠い親戚もそれくらいだったのかということをチロチロと思い出されてくるのであるが、どの人もものすごくおじさんなのである。
自分がその領域に入っていることに驚くというか、自覚がないことに驚く。
そんなつもりでこどもたちと接していなかった、どころか、もっとなにか、おかあさんといっしょのお兄さんのような、そんなつもりだった気がする。
要はそれは、ものすごく違ったのだ。
自分は紛れもない‘おじさん’なのであり、ちびっこから「おっさんが無理してはしゃいでんじゃねーよ」と思われている気がして、おもむろに声色がひるむ。
おじさんはおじさんらしく、私が接してきた歴代のおじさんたちのようなきちんとしたおじさん臭を発していくべきなんじゃなかろうか。発していくべきなんじゃなかろうかというか、そんなものはとっくに漂いまくっていて、つまりだから、おっさんのくせにはしゃいでんじゃねーよってことになってるんじゃなかろうか。いや、そうなのだ。
そんなことがグルグル頭の中を巡り出し、もう今日は帰ってしまおうかと思ったその時、ちんちんに強烈なパンチが入った。ちびっこだ。お尻にも打撃が入る。腕を引っ張られる。服を脱がされそうになる。そしてまたチンチンにパンチが入る。
ああ、遊んでくれてる…遊び相手として認定してもらえた…。おじさんはそう思った。
ちんちん痛いけどおじさん嬉しい。もう、おじさんでもなんでもいい。おじさん、めいっぱいはしゃぐね。
そうしておじさんはまたはしゃぎ始めた。
ワークショップが終わるころ、おじさんはふとまた思った。
もしかして、ちびっこたちが気を遣ってくれているだけなのか…?
だって、自分もちびっこの頃、大人には随分気をつかったもの…。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
『気づかいルーシー』
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原作:松尾スズキ 脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:岸井ゆきの、栗原類、川上友里、山口航太、山中崇、小野寺修二、ノゾエ征爾
2017年7月21日~30日 @東京芸術劇場・シアターイースト
8月4日(金) @ハーモニーホールふくい
8月6日(日) @まつもと市民芸術館
8月11日(金)・12日(土) 富山市婦中ふれあい館
8月16日(水) はつかいち文化ホール さくらぴあ
http://www.geigeki.jp/performance/theater148/


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