第52回 「気づかい」

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こどもも楽しめる演劇ということで「気づかいルーシー」という作品に取り組んでいる最近でありますが、そのワークショップで、松本、富山、広島に行ってきた。
劇中にあるダンスと、ちょっとしたお芝居を一緒にやりましょうといったものであったが、
ふとワークショップ中に立ち止まり、こどもに自分はどう見えているのだろうかと、ふと思ったのであります。
自分がちびっこの頃に接した40過ぎの男の人を思い出してみると、例えば、あの先生は今思えばそれくらいだったのかとか、あの遠い親戚もそれくらいだったのかということをチロチロと思い出されてくるのであるが、どの人もものすごくおじさんなのである。
自分がその領域に入っていることに驚くというか、自覚がないことに驚く。
そんなつもりでこどもたちと接していなかった、どころか、もっとなにか、おかあさんといっしょのお兄さんのような、そんなつもりだった気がする。
要はそれは、ものすごく違ったのだ。
自分は紛れもない‘おじさん’なのであり、ちびっこから「おっさんが無理してはしゃいでんじゃねーよ」と思われている気がして、おもむろに声色がひるむ。
おじさんはおじさんらしく、私が接してきた歴代のおじさんたちのようなきちんとしたおじさん臭を発していくべきなんじゃなかろうか。発していくべきなんじゃなかろうかというか、そんなものはとっくに漂いまくっていて、つまりだから、おっさんのくせにはしゃいでんじゃねーよってことになってるんじゃなかろうか。いや、そうなのだ。
そんなことがグルグル頭の中を巡り出し、もう今日は帰ってしまおうかと思ったその時、ちんちんに強烈なパンチが入った。ちびっこだ。お尻にも打撃が入る。腕を引っ張られる。服を脱がされそうになる。そしてまたチンチンにパンチが入る。
ああ、遊んでくれてる…遊び相手として認定してもらえた…。おじさんはそう思った。
ちんちん痛いけどおじさん嬉しい。もう、おじさんでもなんでもいい。おじさん、めいっぱいはしゃぐね。
そうしておじさんはまたはしゃぎ始めた。
ワークショップが終わるころ、おじさんはふとまた思った。
もしかして、ちびっこたちが気を遣ってくれているだけなのか…?
だって、自分もちびっこの頃、大人には随分気をつかったもの…。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
『気づかいルーシー』
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原作:松尾スズキ 脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:岸井ゆきの、栗原類、川上友里、山口航太、山中崇、小野寺修二、ノゾエ征爾
2017年7月21日~30日 @東京芸術劇場・シアターイースト
8月4日(金) @ハーモニーホールふくい
8月6日(日) @まつもと市民芸術館
8月11日(金)・12日(土) 富山市婦中ふれあい館
8月16日(水) はつかいち文化ホール さくらぴあ
http://www.geigeki.jp/performance/theater148/


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第51回「金沢というか隣人」

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以前住んでたマンションの隣の部屋に、たまたま友人の友人が住んでまして、
ほどなくして、元々の友人を介してその隣人とも友人となり数年。
たまにどちらかの家でラフな食事会などもしたりと‘友人’っぽいこともしつつも、それはごく稀であって、基本的には、すれ違えば近況を軽く話したりといった、言うなれば、程よい距離感であった。そして、お芝居はいつも必ず観に来てくれるというとても感謝な人であった。
やがて私の部屋の目の前にドンと立派な家が建ち、ドンと景観が塞がれてしまい、ほぼそれによって私は引っ越した。隣のマンションへ。
よって、隣の部屋だった隣人は、隣のマンションの隣人となり、つまり隣人という関係には変わりはなかった。
そんな‘永遠の隣人’な隣人が、少し前に、ご実家の事情で地元だという金沢に戻った。
その元隣人に会いに行ったわけではないのだが、結果的にはたまたま会うことになったのだが、金沢に行ってきた。数日。初めて。
古都古都とは聞いていたのだが、駅を降りてまずその近代感に襲われそうになった。
古都じゃないじゃん。
と思ったのは駅周辺のわずかなエリアくらいで、古都な感じが徐々に徐々にリアルに押し寄せてきた。
2日間ほど、めちゃめちゃ歩いた。
歩いたというか、歩きたくなる町だった。
不意に現れるザ・古民家。不意に、小道。小道に誘われ歴史臭バリバリの家並みの合間を進んで行くと不意に立派な庭園。はたまた不意に崖。崖からの開けた眺望。と思いきや不意に超デザイナーな建物。そして、不意に80歳のお婆ちゃんが営む最古参のバー。
写真撮りたい欲は止まらず、結局何枚撮っただろうか。と、そろそろ帰る時間が近づいてきたなと思った時に、不意に浮かんだのが、元隣人だった。
急いで電話してみると、元隣人は元隣人らしく、ちょうどすぐ近くにいた。金沢に戻っても隣人感が褪せないとはさすがである。
そして新幹線の時間ギリギリまで飲んだ。
そうして別れてから気が付いた。せっかく再会した元隣人の写真を撮っていなかった。
うん、程よい距離感なのであります。
ちなみにこれが、金沢で撮った最後の一枚なのでした。
街並みでもなんでもないじゃんって。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
世田谷パブリックシアター@ホーム公演
「チャチャチャのチャーリー ~愛しのお姫さま~」(新作)
2017年6月11日~12日 
於:世田谷区内の高齢者施設、障害者施設、福祉施設、十数か所
作・演出:ノゾエ征爾
出演:山本光洋、たにぐちいくこ、井本洋平、ノゾエ征爾
音楽協力:田中馨
https://setagaya-pt.jp/performances/201706athome.html

第50回「いまさらながら、ロンドン」

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というわけで、いまさらながら、ロンドンに行ってまいりました。
‘いまさら’というのはもちろん自分の置かれている状況基準での‘いまさら’であって、つまり私の周りにはロンドン行ったことあるって人がかなり多いというか、「行ったことないの??」と激しく驚かれることがとても多いという状況を基準にした‘いまさら’であって、さらに言えば、欧州自体も初めてでありました恥ずかしながら。って恥ずかしいなんてことは何もないし、世界各地を見て回った人間が何かに秀でているとか素晴らしい人間になっているということも何もない。ただただ、初欧州、初ロンドンでありました。
好きか嫌いかで言えばすごく好き。歴史が深いとかそういうのは置いといて、ひたすらに魅了されて街すべてに、カメラ欲が止まらなかった。言ってしまえば、初めて行く場所は大抵そうなんだけど。
8日間滞在して7本芝居を観て、パブの奥にある小さな劇場からいわゆる大き目なところまで基本的に飛び込みで観てどれもすごく面白くていやはやこれがさすがロンドンってやつなのかあと感心してたら最終日に観たものがそれまでに観た全てを帳消しにしてしまうほど残念なもので、あ、そうだよね、さすがのロンドンでもこういうのあるんだよねとちょっと‘リアル’に触れられた気もしてそれも良かった。
一つ残念だったと言えば、撮りまくった写真の何割かが消えてたことでしょうか。まあ、それはそれとして。

ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
世田谷パブリックシアター@ホーム公演(高齢者施設巡回公演)
『チャチャチャのチャーリー ~愛しのお姫さま~』(新作)
2017年6月中旬~下旬 
於:世田谷区内の高齢者施設、障害者施設、福祉施設、十数か所
作・演出:ノゾエ征爾
出演:山本光洋、たにぐちいくこ、井本洋平、ノゾエ征爾
音楽協力:田中馨

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