第64回 「あたりまえだ」

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‘すさまじき先生’の、舞台が終わっちまいました。
4月末から稽古始めて、二ヶ月半か。それで約45ステージ。
こんなに長ければ、そりゃあ色々とあるもので。
胃を傷めたり、腰を傷めたり、心を痛めたり、飲み過ぎに後悔したり、台詞忘れたり、台詞忘れた人の挙動に吹いたり、かなり痩せたのに終盤からまた元に戻ってきてしまったり。
誰かが誰かを好きになったり、誰かと誰かが怪しいんじゃないかと噂がたったり、とまあ、挙げたらキリはないわけなのですが、
それにしても、一か月半、43回もの本番を、誰一人欠けることなくやりきるって、当たり前のようで、相当すごいことだよなと。
スタッフさんも含めると100人近く。
こんだけ人がいたら、誰かに不慮の何かが起きてもおかしくないわけで。
誰かに何かが起きてしまう不運と同じだけ、誰にも何も起こらなかった幸運というのもかなりのものだ。
と同時に、全てのステージで、満席であるという幸福。
全部、当たり前ではないのだ。
だからして、幸福にまみれた二月半を経て、これを当たり前と勘違いするなよと、
そんなのあたりまえだと、自分をまた戒めて、酷暑と下半期の活動へとまた踏み出すわけなのです。


ノゾエ征爾

ノゾエさん
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【今後の予定】
ゴールド・アーツ・クラブ×ノゾエ征爾
「病は気から」
2018年9月29日~10月8日
@彩の国さいたま芸術劇場・大ホール

http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/5646


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第63回「先生、すさまじき」

ノゾエ

ちょうど20年前の1998年に、私は、とある演劇クラスに通い始めた。
その先生は、少々怪しいいで立ちながらも、作り出す作品はアナーキーでパンクで才気に溢れていた。
クラスに入るにも、オーディションを通過せねばならない程の人気だった。
無事クラスに入れた生徒たちは、その秋、先生の大きな舞台に全員がちょこっと出してもらえることになった。
私は心が躍ったし懸命に挑んだ。
したら、稽古時に足を骨折した。いただいてた役も当然全部なくなった。泣いた。
したら先生は、松葉杖でも出れるシーンをわざわざ作ってくださった。また泣いた。
クラスは一年で終了し、わたしは劇団を立ち上げた。
先生も度々観に来てくださった。
時折、映像の現場に呼んでくれたり、先生の代役などもやらせていただいたりした。
数年ほどして、また先生のちょっとした公演に呼んでいただいた。
それはちょっと特別な企画公演で、1ステ限りのものだった。
しっかりとやって、舞台上で恩返ししようぞと意気込んだ。
したら、刑事の役なのに大事な拳銃を持ち忘れた。渋々手で銃を作った。心で泣いた。
それでも先生は多くの交流をしてくれた。
クラスを卒業して10年ほど経った頃、また大きな舞台に呼んでくださった。
本番3日ほど前の頃、先生がそばにやってきて、10行ほどの台詞の箇所を、あそこ日替わりでやってみてと言った。
お客さんは、まさか僕が日替わりで言ってるなんて思わない。先生が書いたものと思って観るに違いない。そんな責任を任せてくれたことにまた心で泣いた。
約30ステ、毎朝エヅきながらも、なんとか日替わりで頑張った。と思う。
その後、僕は戯曲賞をいただいたり、先生原作のモノを舞台化したり、たまに大きめな舞台をやらせていただいたりと、
成長のスピードとしては随分と遅くはあるのだが、なんとか活動の幅を広げていった。
その度に、先生は目を細めて喜んでくれた。
そんな先生の真横で、今、シアターコクーンに立たせていただいている。
先生と、師弟の関係の役だ。
出会いから20年。
老いるどころか、凄みを増している先生の横顔を毎日舞台上で眺めては、その真の凄さを日々身にしみて感じている。
松尾スズキ、凄まじき。


ノゾエ征爾

ノゾエさん
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【今後の予定】
『ニンゲン御破算』
出演。
2018年6月7日〜7月1日 シアターコクーン
7月5日〜15日 森ノ宮ピロティホール
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_ningen/


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第62回「さようなら」

NOZOE

人前で泣くなんてことはほとんどないわけですが、
つい先日、久々におこぼれしたことがあった。
演劇を始めて20年強、
30代を超えて、40代を超えてとやってくると、
別の道に進んでいく仲間はたくさんいるわけで、
最近もまた、数年間一緒に活動していた役者が卒業していくことになった。
彼へのはなむけとして、彼を送り出すような作品にしたのだが、
湿ったらしいエンディングは嫌だもんで、泣くもんか!的なことで、「涙くんさよなら」みたいな作品にした。
それで、その初日、終演後にお客さんに挨拶しているときに、
さようならしたはずの涙くんと、率先していらっしゃいませしてしまったわけなのです。
お客さんはポカンみたいな。
まあ、でもそりゃ、これまでのあれやこれやが思い起こされますし、
場をわきまえず感極まってしまうこともあったっていいじゃないか。
って、卒業していく当の本人に「何泣いてんすか!」とつっこまれたのが一番恥ずかしかった。
畜生。卒業していくくせに俺よりプロ精神でいやがって。
二度と泣くもんか。涙くんさようならだ。


ノゾエ征爾

ノゾエさん
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【今後の予定】
『ニンゲン御破算』
出演。
2018年6月7日〜7月1日 シアターコクーン
7月5日〜15日 森ノ宮ピロティホール
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_ningen/


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