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小2の時にアメリカから帰ってきて、最初に住んだのが兵庫の芦屋でした。
芦屋と聞けば、こっちで言うところの田園調布とかのイメージでしょうか、話せば必ず「ああ~…」と言って、僕の背後に見え隠れするボンボン的なものを勝手に見てとられたりするのだけど、言うまでもなく芦屋と言えども広いのであって、うちは芦屋川が海に流れ込むところのすぐそばの庶民エリアでした。
9月あたま、「気づかいルーシー」の兵庫公演の際、空き時間にちょいと行ってみた。
約32年ぶりということになります。
小学校の名前や、大体の位置くらいしか記憶になかったけど、まあ便利なもので、携帯マップでちょいちょい調べるだけですぐに場所は判明しました。
電車で言うと、芦屋の何駅だったんだろう?と思ったそこは、もろに芦屋駅でした。
小学校のことはすごく覚えている。木造の、その当時で既に築100年ほどの年季の入った校舎だった。初めて見る日本の学校がこれだったから、日本の学校ってのはこういうものなんだと思っていた。ある時、武田鉄矢さんがなぜか一度遊びに来て大騒ぎになった。皆で毎日床に雑巾がけをして、その時の雑巾で濡れた木の床の匂いは昨日のことのように思い出せた。
確か大きい道路のすぐそばにあったなあと思ったそこに、ちゃんと小学校はあった。校舎はさすがに新しくなっていた。震災がきっかけだったのかもしれないし、普通に老朽による限界だったのかもしれない。ちょうど校庭で子供たちが遊んでいて、写真をパシャパシャ撮ろうと思うも、近所の人に不審な目を向けられ、そうか、遊ぶ子供をカメラにおさめる平日午前のおっさんは不審者か。寂しい世の中になったものだと気落ちするも、本当に不審者はいるものなので警戒しておいて良いとも思う。
家までの通学路は、ほとんど変わっていなかった。というか、ああ、こうだったこうだったと見る見る記憶がよみがえっていった。
川沿いにずっと伸びる松の木の乱立した公園。そして小さな道を挟んでマンションやアパート。気持ち悪いほどに記憶と変わらない。記憶になかったのは、豪邸がちらほら。ああ、そっか、やっぱ芦屋は芦屋なのか。こんな豪邸もあったのか、のちにできたのか。
この松の公園でいつも遊んでいた。基本的に野球か、松ぼっくり戦争。その名のとおり、松ぼっくりを投げ合う戦争だ。当時、日本にはこのように松の木がたくさんあるのだと思ってたけど、思い返せば松ぼっくり戦争ができたのは、ここだけだった。記念に松ぼっくりを一つ持ち帰った。リュックの中が、松ぼっくりのじゃばらの間に詰まっていた砂でじゃりじゃりになっていた。
そして最初に住んだアパートというかハイツ。
当時と何一つ変わっていなかった。当時で結構古かったから、もう築何年なんだろうか。震災も乗り越えて、今も変わらずそこに人が住んでいることに妙なタイムトラベル的な感覚を味わった。
いつも行ってた近くの駄菓子屋さんは店を畳んでいたけど、自販機を二つ残して家は残っていた。これもまた相当なオール木造の家であった。ここのかき氷は本当に美味しかった。自販のつぶつぶみかんジュースも奇跡的に美味しかった。つぶつぶみかんはもうさすがになかったので、缶コーヒーを購入。微糖。微々たる気休めでしかない微糖。
帰りは芦屋川を歩いた。こんなキレイな川だったかと、水が本当に清んでいて、透明度がすごい。魚も泳いでいる。よくここでメダカを捕獲していた。一度大雨で水かさが増して、友人が流された。落ち方が面白くて爆笑して見ていたけど、今思えば、かなーり危なかったのだな。その友人は幸いすぐに茂みに捕まって助かったのだけど。
住んでたハイツは、とても小さな間取りで、アメリカの家から比べたら雲泥の差だったけど、逆に狭い中に家族4人がいて、小さい風呂に兄ときゅうきゅうになって入って、毎日が初めて触れる日本の文化の刺激まみれで、日本の駄菓子は目茶苦茶美味しくて、川も公園もあって、あの一年は人生で一番責任のない、ただただ恵まれていただけの日々だったのだなあと、親に改めて感謝の気持ちを寄せつつ、あれ?いま、当時の親の年齢を余裕で越えてる…なんて気付いてしまいつつ、駅前のお好み焼き屋でお好み焼き昼食して、マスターと「昔ここ住んでたんですよー」なんて話してたら、演劇やってるんす、兵庫公演で来たんす。チラシ見せて。はい。と、ルーシーのチラシ見せたら、「芦屋また来てよ!」と話を変えられ、お会計を済ませて芦屋駅に立つのでありました。
「また」か。また、いつ来るかなあ。来ることあるかなあ。もうないかもしれんしなあ。
ここに住んだ一年後に引っ越したのが、すぐ隣の町だった。今度はそっちに行ってみやう。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。

 

【今後の予定
●「気づかいルーシー」


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■あの松尾スズキの絵本がなんと音楽劇に!
芸劇がこどもと大人に贈る「こわかわいい」おとぎ話!

原作:松尾スズキ
脚本・演出:ノゾエ征爾

出演:岸井ゆきの、栗原類、小野寺修二、山中崇、川上友里、山口航太
生演奏:田中馨、森ゆに
北海道公演:札幌市教育文化会館◎9月18日(金)、19日(土)
岩手公演:久慈市文化会館◎
9月21日(月・祝)

新潟公演:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
◎9月26日(土)
チケット絶賛発売中!

http://www.geigeki.jp/performance/theater091/


●はえぎわ本公演
「ゴードンとドーソン~妻と夫と虎の夢~」
作・演出:ノゾエ征爾
出演:村木仁、家納ジュンコ、はえぎわ劇団員
10月23日~11月1日@シアタートラム
前売券、絶賛発売中!
http://haegiwa.net/


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