何かが妙~な、光景でした。
黒人の男女が、テニスボールを交互に壁に当てて遊んでいます。
すんごい素敵ではないですか!と思って、まずは遠目からパシャ。
も少し寄ってパシャ。もう少し寄ってパシャ。
もう少し、もう少し。
今度はこっちの角度から。
真後ろから。
真横から。
シャッター音のほとんどしないカメラだったので、彼らは気づきません。
と思いきや不意に気付かれる。
凍る。
ここは、ニューヨークのハーレム。
恐る恐る、「…picture OK…?」。
しばしの間。
首を縦に振るでもなく、横に振るでもなく、男女は壁当てをつづけた。
不思議だったのは、彼らに会話がないこと。
ほぼ、いや、まったくと言っていいほど会話がない。
ただ黙々と、交互にボールを壁に当て続けている。
そして上手ではない。
なんとも、その空間だけ、周りから切り取られているような、妙に浮いた空気がそこにあった。
男と女。快晴な昼下がり。テニスボールの壁当て。そして無言。
二人は、お付き合いはじめたばかり?
それとも、告白しようとしてて、なかなか言い出せないでいるのだろうか。
逆に、二人とも、もう終わりを分かっていて、言葉にできないでいるのかもしれないし、
既に、別れ話をしたあとで、無言の最後のヒトトキなのかもしれない。
もしくは、お腹に赤ちゃんができて、独特な祝い方なのかもしれない。
とっくに夫婦なのかもしれないし、仲のいい兄妹か、いとこってこともありうる。
はたまた、昼休みの隙間をぬっての、不倫。プラトニックな不倫。
それか、男が一人で遊んでいたところに、通りすがりの女性が唐突に割り込んできて、男は、ただただ、どうすればいいのか分からないでいるのか。ボクをじっと見たのは、ボクに助けを求めてたのか。
男の顔は、ベン・ジョンソンに似ていた。
周囲の景色にカメラを向けた少しのすきに、二人はいなくなっていた。
ノゾエ征爾
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年
の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。
■今後の予定■
●ノゾエ征爾:脚本
「1万人のゴールドシアター2016」
~埼玉から発信する世界最大級の「大群集劇」~
総合演出:蜷川幸雄
出演:一般公募による65歳以上の出演者&さいたまゴールド・シアター
2016年12月7日(水)
@さいたまスーパーアリーナ
☆65歳以上の出演者を大募集です!
経験不問!お父さま、お母さま、お爺ちゃん、お婆ちゃん、ご親戚、ご近所さん、みなさんにどうぞおススメくださいませ!
募集期間:2016年4月5日(火)~5月31日(火)
●ラジオ出演
FM世田谷 劇ナビ!
インタビュアー:植本潤(花組芝居)
2016年5月4日 22時~23時
http://www.fmsetagaya.com/gekinavi/
●ノゾエ征爾 脚本・演出
PARCO劇場・クライマックスステージ
「ボクの穴、彼の穴。」
2016年5月21日(土)~2016年5月28(土)
原作:デヴィッド・カリ、イラスト:セルジュ・ブロック、訳:松尾スズキ(千倉書房
)
出演:塚田僚一(A.B.C-Z)
渡部秀
http://www.parco-play.com/web/program/bokuana/
●はえぎわ 新作本公演
@イマジンスタジオ(ニッポン放送地下)
2016年8月27日(土)~9月7日(水)
作・演出:ノゾエ征爾