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以前住んでたマンションの隣の部屋に、たまたま友人の友人が住んでまして、
ほどなくして、元々の友人を介してその隣人とも友人となり数年。
たまにどちらかの家でラフな食事会などもしたりと‘友人’っぽいこともしつつも、それはごく稀であって、基本的には、すれ違えば近況を軽く話したりといった、言うなれば、程よい距離感であった。そして、お芝居はいつも必ず観に来てくれるというとても感謝な人であった。
やがて私の部屋の目の前にドンと立派な家が建ち、ドンと景観が塞がれてしまい、ほぼそれによって私は引っ越した。隣のマンションへ。
よって、隣の部屋だった隣人は、隣のマンションの隣人となり、つまり隣人という関係には変わりはなかった。
そんな‘永遠の隣人’な隣人が、少し前に、ご実家の事情で地元だという金沢に戻った。
その元隣人に会いに行ったわけではないのだが、結果的にはたまたま会うことになったのだが、金沢に行ってきた。数日。初めて。
古都古都とは聞いていたのだが、駅を降りてまずその近代感に襲われそうになった。
古都じゃないじゃん。
と思ったのは駅周辺のわずかなエリアくらいで、古都な感じが徐々に徐々にリアルに押し寄せてきた。
2日間ほど、めちゃめちゃ歩いた。
歩いたというか、歩きたくなる町だった。
不意に現れるザ・古民家。不意に、小道。小道に誘われ歴史臭バリバリの家並みの合間を進んで行くと不意に立派な庭園。はたまた不意に崖。崖からの開けた眺望。と思いきや不意に超デザイナーな建物。そして、不意に80歳のお婆ちゃんが営む最古参のバー。
写真撮りたい欲は止まらず、結局何枚撮っただろうか。と、そろそろ帰る時間が近づいてきたなと思った時に、不意に浮かんだのが、元隣人だった。
急いで電話してみると、元隣人は元隣人らしく、ちょうどすぐ近くにいた。金沢に戻っても隣人感が褪せないとはさすがである。
そして新幹線の時間ギリギリまで飲んだ。
そうして別れてから気が付いた。せっかく再会した元隣人の写真を撮っていなかった。
うん、程よい距離感なのであります。
ちなみにこれが、金沢で撮った最後の一枚なのでした。
街並みでもなんでもないじゃんって。


ノゾエ征爾
ノゾエさん

のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【次回予定】
世田谷パブリックシアター@ホーム公演
「チャチャチャのチャーリー ~愛しのお姫さま~」(新作)
2017年6月11日~12日 
於:世田谷区内の高齢者施設、障害者施設、福祉施設、十数か所
作・演出:ノゾエ征爾
出演:山本光洋、たにぐちいくこ、井本洋平、ノゾエ征爾
音楽協力:田中馨
https://setagaya-pt.jp/performances/201706athome.html