ノゾエ

ちょうど20年前の1998年に、私は、とある演劇クラスに通い始めた。
その先生は、少々怪しいいで立ちながらも、作り出す作品はアナーキーでパンクで才気に溢れていた。
クラスに入るにも、オーディションを通過せねばならない程の人気だった。
無事クラスに入れた生徒たちは、その秋、先生の大きな舞台に全員がちょこっと出してもらえることになった。
私は心が躍ったし懸命に挑んだ。
したら、稽古時に足を骨折した。いただいてた役も当然全部なくなった。泣いた。
したら先生は、松葉杖でも出れるシーンをわざわざ作ってくださった。また泣いた。
クラスは一年で終了し、わたしは劇団を立ち上げた。
先生も度々観に来てくださった。
時折、映像の現場に呼んでくれたり、先生の代役などもやらせていただいたりした。
数年ほどして、また先生のちょっとした公演に呼んでいただいた。
それはちょっと特別な企画公演で、1ステ限りのものだった。
しっかりとやって、舞台上で恩返ししようぞと意気込んだ。
したら、刑事の役なのに大事な拳銃を持ち忘れた。渋々手で銃を作った。心で泣いた。
それでも先生は多くの交流をしてくれた。
クラスを卒業して10年ほど経った頃、また大きな舞台に呼んでくださった。
本番3日ほど前の頃、先生がそばにやってきて、10行ほどの台詞の箇所を、あそこ日替わりでやってみてと言った。
お客さんは、まさか僕が日替わりで言ってるなんて思わない。先生が書いたものと思って観るに違いない。そんな責任を任せてくれたことにまた心で泣いた。
約30ステ、毎朝エヅきながらも、なんとか日替わりで頑張った。と思う。
その後、僕は戯曲賞をいただいたり、先生原作のモノを舞台化したり、たまに大きめな舞台をやらせていただいたりと、
成長のスピードとしては随分と遅くはあるのだが、なんとか活動の幅を広げていった。
その度に、先生は目を細めて喜んでくれた。
そんな先生の真横で、今、シアターコクーンに立たせていただいている。
先生と、師弟の関係の役だ。
出会いから20年。
老いるどころか、凄みを増している先生の横顔を毎日舞台上で眺めては、その真の凄さを日々身にしみて感じている。
松尾スズキ、凄まじき。


ノゾエ征爾

ノゾエさん
のぞえせいじ○75年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の99年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。11年 の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2014年には初の主演映画『TOKYOてやんでぃ』が公開された。


【今後の予定】
『ニンゲン御破算』
出演。
2018年6月7日〜7月1日 シアターコクーン
7月5日〜15日 森ノ宮ピロティホール
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_ningen/


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