興味が持てない様々なことを学びたい…そんな無責任な前向きさからはじまったこのコラム。
ついに完成いたしました。家系図。
いや、正直、このコラムを開始した当初、まさかここに行きつくことになるとは思ってもいませんでした、家系図。
だって、家系図ですよ。
武士でもねーのに。
たいした家系でもねーのに。
作ったからといって、徳川家の血筋を引く…なんてこともまったく判明しないわけですし、もうこればっかりは清々しいほどに、ただ
作った!
それだけです。
受け止めて! この清々しさ!
そして必要なかったら各々空に放って!
あたいの家系図は大気圏を超えて宇宙へ!
宇宙人に見つけられてブラックホールへ!
ブラックホールで粉々になって、その塵がやがて再び地球に到達し、花粉症ならぬ、池谷家家系図症にでもなればよいわ!
こうして悪態をついてみたものの、家系図とは感慨深いものですね。
自分たちで知っていることなんて、ほんと一握りだな…って思います。
家系をたどることによって、坂井さん、松本さん、冬木さん、木村さん、富田さん…という苗字が自分の血に関係していることを知ると、このまま枝葉を伸ばしていけば、関係ない苗字の方なんかいるのだろうか…最終的には人類みな兄弟的なキャッチコピーは真実なのではないだろうか…とすら思ってしまいます。
いままでごくごく普通の苗字に思っていた、坂井さん、松本さん、冬木さん、木村さん、富田さんが、急に身近に感じるもの…なんなら、やさしくしたくなるもの…。
だから、坂井さん、松本さん、冬木さん、木村さん、富田さんも、池谷さんにやさしくしてね…。
つい最近、人は何百回と生まれ変わるから経験しない人生や人格などない…みたいな文章を目にしたのですが、そう考えると、ああ…あの人の嫌いな態度も、あの人のあこがれる部分も、自分が経験した(する)ことなのかなぁと思い、他人事とは思えなくなるものですね。
そんな人類愛のような豊かな気持ちも生まれる反面、結果、家系図を作成して思ったのは、ああ、池谷家も私の代で途絶えるのだな…という確信です。
ごめんなさい、ご先祖様!
という申し訳ない気持ちばかり。
だって、こんなにも命を紡いできたのにね。
いよいよラスト池谷です。
お婿さんを迎えればいいですって?
そんな宇宙に行くよりも難しい課題のクリアは無理です。
とはいえ、最近はお婿さんを希望する方々の婚活サイトもあるんですってね。
すごい世の中になりました。
友人知人で、婚活サイトや合コンでお相手を見つけた方々もたくさんいますし、かつてのお見合いというものの進化形なのかもしれませんが。
きっと、家系図のご先祖さまたちも、いまのような自由恋愛というよりは、俄然お見合い世代ですものね。
人生がそうやって決まっていくことが、うらやましいような、うらやましくないような。
でも確実に、そうした時代だったからこそ、婚姻というものが確実に人生の中にあって、家系が繋がってきたのでしょうね。
家系が続くということも、各々の家によって重要性も違うとは思いますが、何にしろやはり、途絶えさせてしまうことに罪悪感がないといえばうそになります。
どこに謝ったらいいのかわからないので、取り急ぎ家系図に謝るしかないですね。
婿をもらえるような人間性がなくてすみません! ご先祖さま!
この場をお借りして謝罪いたします!
とどけ、ご先祖さまへ!
こうなったら、せめて歴史や人々の記憶の中に、池谷という名前を残すしか手段はありませんが、とりたてて人々の記憶に残るような才能があるわけでもないので、具体的な手段としては犯罪くらいしかおもいつきません。
それこそ、もっとご先祖さまに謝罪せねばなりませんね。
そこだけはなんとか踏みとどまらねばなりません。
さて、家系図も完成しましたので、「池谷のぶえの国語、算数、理科、社会」としてのコラムは、次回でひとまず卒業いたします。
卒業…甘酸っぱい響きですね。
ここのところ、何からも卒業してないので、ちょっと新鮮です。
卒業につづく


池谷のぶえ
いけたにのぶえ94年より04年の解散まで劇団「猫ニャー」の劇団員として活動。解散後は、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、NODA・MAP、蜷川幸雄演出作品など数多くの舞台に出演。




