新「人間裁判」原告☆当事者通信

生活保護基準引下げ違憲訴訟(千葉県)の一原告が、国の不法・不当を糾 すなかで、「にんげん」が生きることの本来のあり方への探求を発信します。

十大費目・社会的必需各項目について生活保護世帯・一般世帯の比較を見る=第3回検証手法検討会

 1月28日は千葉・生活保護基準引下げ違憲訴訟の期日でした。氷雨もようの、外出を避けたくなるようなコンディションだったことも災いしたのか、原告側の傍聴者も数人でした。法廷は裁判所と原告側・被告側との短いやり取りの後、閉廷しました。白井康彦さん(元中日新聞記者、フリーライター)は今回も原告支援のため、名古屋から「身銭を切って」駆けつけてくれました。閉廷後の「報告の集い」では白井さんからは名古屋地裁での結審、6月の判決言い渡しや原告側・被告側の主張・反論などについて様子を聞くことができました。
想えば2016年11月付『新「人間裁判」原告☆当事者通信№4』で生活扶助相当CPIを使った厚労省のデフレ調整なる「物価偽装」について記載し、それに対して白井康彦さんから「物価下落率を過大にして生活保護費を過剰削減した行政処分は、詐欺行政なのです。ものすごく重大な話です」というメールをいただきました。それ以来、私は白井さんから提供していただいた「物価偽装」研究の成果・資料から学んできました。
「物価偽装」との格闘の基礎には、生活保護受給者の消費者物価だけが4.78%も下落したというフィクションに対して「何か変だな」という白井さんの実感があります。私も共有するに至ったその実感を敗訴判決で消し去ろうとしても、その論理はさらなるフィクションの作文と化すのみです。下手を打てば、厚労省も裁判所も自ら墓穴を掘ることになりかねないのです。

 私は高齢者単身世帯の生活保護受給者で、冬季の暖房は昼間は600Wのヒーター1台を、就寝時は電気毛布を用いています(アパートは灯油などは使えません)。数年前の脳内出血での入院以来、何かと体調が優れず、肝硬変・肝炎も進行し(今月は、肝ガンの疑いで造影剤を注入してのCT検査を実施したところです)、加えて脊柱管狭窄症のための痛み止めの薬なしでは一時も眠ることもできない状態です。室温が低い日々は薬を服用しても下肢がうずき、就寝時は痛みで目覚めて反転を繰り返します。起床時、着替え時、貼り薬の貼付時(上半身裸になるので)など火傷しそうなほど近寄っても、身体は冷え切ってしまいます。エアコンで室内の空気そのものを暖めることができればと、その度に思います。一人暮らしの老人は、身体の保温が十分でないと「こころ」まで冷え切ってしまいます(夏にはエアコンがないために、必ずと言ってよいほど熱中症の危険を感じてきました)。そしてエアコンがあっても安心してそれを使用できる電気代が保障されるのでなければ、「絵に描いた餅」です。
私の、この冬の電気とガス(LP)の料金の請求額は電気代が11月=4087円、12月=7279円、1月=9220円です。ガス代は11月=4345円、12月=4587円、1月が6221円です。これに対して、生活保護の冬季加算はⅥ区の2級地ー1の1人世帯で月2800円です。「10大費目別の消費支出割合等の状況」(厚労省)の「光熱・水道費」の項目で、電気代は一般世帯が5578円、生活保護世帯が4119円、生活保護高齢者世帯が4003円、ガス代は一般世帯が2483円、生活保護世帯が3550円、生活保護高齢者世帯が3067円です。厚労省社会・援護局保護課によれば、「冬季加算の趣旨」は「冬季における光熱費等の増加需要に対応するものとして、11月~3月の生活扶助基準に上乗せして支給するもの」とのことです。冬季加算の基準額は、1973年まではⅥ区については「夏季と冬季の光熱費の差額」で設定していたのですが、1974年からは各区とも「前年度基準額に生活扶助基準改定率を乗じることにより設定」されることになりました。私は、こういう設定方法では「冬季における光熱費の増加需要に対応」した冬季加算にはならないと考えます。2015(平成27)年の生活保護基準部会「報告書」でも指摘されているように、光熱費の増加は季節の条件によっても様々に変動するものであり、冬季における生活保護受給者の健康で文化的な最低限の生活が当該加算額によって実際に賄えるものかどうか──それが検証されるべきであると考えます。

 生活保護・人権のたたかい★私の予定
●2020年5月1日(金)午前11時00分【生活保護変更決定処分取消請求事件=生活保護基準引下げ違憲訴訟】千葉地裁601法廷
 *この裁判の原告を支援してくださる方の、法廷での傍聴、その後の報告の集いへの参加と原告への励ましのお声掛けをお願いいたします。報告の集いは弁護団主催で、千葉県弁護士会館会議室に移動して行います。不審な点は、弁護団または原告にお尋ねください。

 十大費目・社会的必需各項目について生活保護世帯・一般世帯の比較を見る=第3回検証手法検討会

「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」第3回が、昨年9月30日に開かれました。議題は「最低限度の生活に関する検討」(これは第2回と同じ)及び「現行の検証手法の課題、その他」です。今回は、第2回検討会における委員からの依頼資料として、事務局から「生活保護世帯における質の面からみた消費支出や生活実態等の分析について」が提出されています。この資料によって、例えば「10大費目別の消費支出割合」が生活保護世帯と一般世帯の全世帯・第1/十分位世帯、生活保護の高齢者世帯・母子世帯と一般世帯の高齢単身無職世帯・高齢夫婦世帯・母子世帯とで各々比較して把握できます。また「社会的必需項目の不足に関する指標における生活保護世帯と一般世帯との比較分析」が、必需13項目について全世帯・高齢者世帯・母子世帯・単身世帯について各々生活保護世帯と一般世帯とで比較して把握することができます。
「何らかの基準にもとづいて把握された状態が、社会的に改善・解決を必要とすると社会的に認められた場合に、その状態をニード(ニーズ、要援護状態)」(三浦文夫の定義)とし、それを充足するのも生活保護の役割であるとみることができると考えます。そのような意味で私はこの調査の内容と、生活保護受給当事者としての自分の生活実感また実情とを照らし合わせることによって自分の「ニーズ」を表すことができると考えます。

  10大費目別消費支出割合の比較
ここでは生活保護の全世帯・高齢者世帯と一般の全世帯・第1/十分位世帯・高齢単身無職世帯との比較について特徴的なところを見ます。
等価世帯人員1人当たりの消費支出は、生活保護全世帯が10万9911円(支出割合100%)、一般全世帯が16万4558円、一般の第1/十分位が11万1672円、生活保護高齢者世帯が10万2412円、このうち食料費は生活保護全世帯が3万3795円(支出割合30.7%)一般全世帯は4万91円(24.4%)、一般の第1/十分位は2万9427円です。教養娯楽費は生活保護全世帯が5669円(5.2%)、一般全世帯が1万7246円(10.5%)一般の第1/十分位が1万631円(9.5%)、諸雑費・こづかい・交際費など「その他の消費支出」が生活保護全世帯が1万885円(9.9%)、一般全世帯が3万3111円(20.1%)、一般の第1/十分位が1万8737円(16.8%)です。
生活保護受給の高齢者はさらに厳しい生活を余儀なくされています。消費支出は生活保護高齢者世帯が10万2412円、一般高齢単身無職世帯が15万2178円、このうち食料費は生活保護高齢者が3万3127円(32.3%)、調理食品5986円(5.8%)、
外食2082円(2.0%)、一般高齢単身無職が3万4928円(23.0%)、調理食品5016円(3.3%)、外食5950円(3.9%)です。住居費が生活保護高齢者が3万1073円(30.35%)、一般高齢単身無職が1万5647円です。教養娯楽費は生活保護高齢者が4551円(4.4%)、一般高齢者が1万9755円(13%)、諸雑費・小遣い・交際費などを含む「その他の消費支出」が生活保護高齢者が9911円(9.7%)、一般高齢者が3万5457円(23.3%)で、このうち交際費は生活保護高齢者が1837円(1.8%)、一般高齢者が1万8739円(12.3%)となっています。とくに教養娯楽費や交際費の実態を見るとき、生活保護受給の高齢者が社会的排除の状況に置かれていることが容易に推察できます。

  社会的必需各項目の不足状況の比較
「社会的必需項目」とは、先行研究「2011暮らしに関する意識調査」(社会的必需品調査)において回答者の50%以上が「必要である」と判定した13項目です(その内容は、『当事者通信№41」に記載してあります)。この資料では、生活保護全714世帯・一般/1万9402全世帯、生活保護310高齢者世帯・一般5475高齢者世帯、生活保護369単身世帯・一般4278単身世帯、そして母子世帯について、金銭的に余裕がないことを理由として「相対的剥奪状態」にある(「無い」と回答)世帯数・%、不足項目数別世帯数・%が明らかにされています。ここでは、全世帯・高齢者世帯・単身世帯の生活保護世帯を中心に、比較的に該当世帯数の多い項目について見ます。
まず「新しい下着の購入の頻度(1年に1回以上)」について「ほとんど購入しない」のは、生活保護全世帯が81世帯・11.3%、一般全世帯が1565世帯・8.1%、生活保護高齢者世帯が39世帯・12.6%、一般高齢者世帯が603世帯・11.0%、生活保護単身世帯が38世帯・10.3%、一般単身世帯が622世帯・14.5%です。
親族の冠婚葬祭への出席」について「ほとんど・まったく出席しない」のは、生活保護全世帯が120世帯・16.8%、一般全世帯が198世帯・1.0%、生活保護高齢者世帯が39世帯・12.6%、一般高齢者世帯が65世帯・1.2%、生活保護単身世帯が58世帯・15.7%、一般単身世帯が100世帯・2.3%です。
急な出費への対応」について「対応できない」のは、生活保護全世帯が572世帯・80.1%、一般全世帯が5042世帯・26.0%、生活保護高齢者世帯が248世帯・80.0%、一般高齢者世帯が1284世帯・23.5%、生活保護単身世帯が296世帯・80.2%、一般単身世帯が1399世帯・32.7%です。
生命保険等の加入(死亡・障害・病気等)」について「加入していない」のは、生活保護全世帯が301世帯・42.2%、一般全世帯が1541世帯・7.9%、生活保護高齢者世帯が121世帯・39.0%、一般高齢者世帯が591世帯・10.8%、生活保護単身世帯が153・41.5%、一般単身世帯が589世帯・13.8%です。
社会的必需13項目のうち、自分の世帯に幾つの項目が不足しているか、その不足数については、該当「なし」が生活保護全世帯が74世帯・10.4%、一般全世帯が1万3040世帯・67.2%です。生活保護全世帯だけについて見れば、不足数が1項目は259世帯・36.3%、2項目は227世帯・31.8%、3項目は96世帯・13.1%、4項目以上は58世帯・8.1%です。
*等価可処分所得(生活保護世帯は等価実収入)階級別の剥奪指数(平均)の比較については、『当事者通信№41』に記載してあります。

  検証の比較対象と統計データの限界について
事務局提出の資料によれば、現行の検証手法に関する検討課題のうち、今回は「水準検証における比較対象の設定」や「検証に使用する統計データ」の問題が議題に上がっています。
生活扶助基準の改定について生活扶助基準と一般国民の消費実態との均衡を図るとする「水準均衡方式」の考え方が1984(昭和59)年以降に採用されました。この考え方のきっかけとなった1983(昭和58)年の検証では、「変曲点」の概念を用いた検証が行われました。「変曲点」とは、ある所得以下になると急激に消費支出が低下する点であり、この点以下の水準では最低限度の生活を営むことが困難になると解釈されます。1983年の検証で、この「変曲点」が年収階級第2.99/五十分位に見られたので、これ以来、年収階級第1/十分位(第1~5/五十分位)の平均消費水準が生活扶助基準の比較対象とされてきたのでした。
さらに2017(平成29)年の検証では、消費支出階級別の消費データを用いて家計の固定的経費の支出割合が上昇する点の分析を行いました。この結果2017年の検証では、夫婦・子1人世帯(モデル世帯)の「変曲点」の消費支出額(20万2千円)と家計の固定的経費の支出割合が上昇する点が、双方ともに年収階級第1/十分位世帯の平均消費支出額(20万2000円)と同水準であることをもって、これが生活扶助基準の比較対象とされてきたというのが経過です。
2017年の検証の生活保護基準部会「報告書」では、夫婦・子1人世帯(モデル世帯)の生活扶助基準額については年収階級第1/十分位の生活扶助相当支出額との均衡を確認しましたが、そこから展開した諸々の世帯類型の生活扶助基準額については一般低所得世帯と均衡を確認することはできませんでした。その結果、夫婦・子1人世帯では生活扶助基準額は、一般世帯の年収階級第3/5分位の生活扶助相当支出額の60%を超える見込みですが、高齢者世帯の基準額は50%台に落ち込んでしまう見込みとなりました。
ここから、一般低所得世帯との均衡で生活保護基準の水準を検証することの問題、「モデル世帯」を設定してこの消費実態から諸々の世帯類型に展開するという検証の考え方の問題、高齢者世帯の水準検証の問題が検討課題とされます。
生活扶助基準の検証にあたって統計データとして、現在は総務省による全国消費実態調査が使用されています。このデータはサンプル数は約5万6400世帯と多いのですが、5年ごとの実施で、家計簿の調査期間が2人以上世帯が9月~11月、単身世帯が10月~11月ということで、一般世帯の消費実態を見るうえで限界があることは2017年検証の生活保護基準部会「報告書」においても指摘されたところです。しかも、全国消費実態調査は今年度から「全国家計構造調査」に変更され、2人以上世帯の調査月が短縮されるとのことです。今後は、厚労省による社会保障生計調査を充実させて、生活保護世帯の家計の具体的な姿を把握できるようにすることが課題となると考えられます。

  委員の議論から
山田篤裕委員(慶應義塾大学教授)は、生活保護世帯の交際費、教養娯楽費が非常に低くなっていること、「急な出費」のための余裕を持たせるということを生活保護の中でどのように行っていくのかという問題に注意を促しています。
岩永理恵委員(日本女子大学准教授)は、「急な出費」に生活保護世帯が対応できないことについて、最低生活費が不足しているからか、あるいは制度的な制約のためなのか、運用の問題なのかという点を疑問として上げています。「急な出費」に対しては、一時扶助等その他の仕組みを使うとか、ケースワーカーによる対応はできないのかということです。
駒村康平座長(慶應義塾大学教授)は、生活保護世帯の余裕がなく制約のある生活の中での「急な出費」と、一般世帯での「急な出費」との意味するものの違いを考えなければいけないとコメントしています。
阿部彩委員(首都大学東京教授)は、生活保護では「急な出費」への対応や「生命保険」は制度的に許されてはいないので、これを剥奪状態の項目に含めると一般世帯との比較が難しくなっていると指摘します。また今回の資料で、一般世帯と比べて生活保護世帯はどの項目の剥奪率が高いのかが分かったと指摘します。阿部委員は、「冠婚葬祭に出席できない」「下着を購入できない」などはその費用が現在の生活保護費によっては賄われていないからと解釈すべきで、これは制度的な制約であると述べています。
検証に用いる統計データが今年度から「全国家計構造調査」に変更になることと関連して駒村座長は、生活保護基準部会委員が「これまで当てにして使っていた」統計データが変更になれば、検証の結果も変わってくる可能性があると述べ、山田委員も2人以上世帯の調査月が減少することなどについて懸念を表明しています。
阿部委員は、現行の検証手法を想定した上で、どこを比較対象にするかとか、モデル世帯をどこにするかということより、新しい検証手法の開発のために検討会が設けられたことを踏まえて、もっと根本的な問題の議論に踏み込むべきことを主張します。例えば、MIS(A minimum income standard、最低所得水準)は理論生計費から入る手法で、現在の消費実態から入る手法とはまったく違うことから、それを全部取り入れることは難しいとしても、一部を取り入れて部分的に変えていくことができるかという議論が必要であると述べます。阿部委員は、検証手法を部分的にでも変えて行くことによって、健康で文化的な生活を送るために最低限必要な費用に近づくことは可能ではないかと主張します。
岩永委員は、高齢者世帯をモデル世帯として設定する必要と関連して、生活保護全世帯の中で大きな比重を占める高齢者世帯の生活実態を把握しておくことの重要性を指摘します。岩永委員によれば、75歳から基準額がいきなり4000円ほど下がってしまうのであり、それは制度に制約されてそうなってしまうが、生活保護受給者の普通の感覚からすれば納得しがたいことであろうと述べています。
【原告☆当事者通信 №43 2020年1月29日 水野哲也hikarumenoneko@yahoo.co.jp】

 






 

厚労大臣による裁量権の逸脱・濫用について千葉弁護団の主張を振り返る

   12月16日には千葉地裁で、私たちの訴訟について進行協議が行われました。原告側は私(原告)を含む6名、被告側は4名、裁判所から判事ら2名が出席しました。私の感想としては、裁判所は名古屋の状況、それに続いて先行しているのはどこかという点と、千葉の原告側の主張はすべて出たか、あるいは意見書はさらに追加するのかという点についての情報を求めているようでした。来春までに見込まれる名古屋での結審、判決言い渡しを踏まえ、千葉でも来夏までに尋問、口頭弁論を終結したいというのが裁判所の思惑のようです。千葉地裁での判決言い渡しは、おそらく全国で3,4番目ではないかとの見通しなので、私たちのたたかいはますます緊迫した様相を呈していくものと思います。朝日訴訟と並んで歴史に語り継がれるであろうこの訴訟の原告を支援しようとの意思のある方には、後顧の憂いを残すことの無いよう、法廷での傍聴、その後の集いへの参加を改めてお願い申し上げます。  
  今年8月に引き続き11月にも血液検査を行い、12月21日の診察時に結果を教えてもらいました。一言で言えば、「肝臓の力が半減している」そうです。 
肝機能を中心に、自分で数値の意味を調べてみました。ALBが低すぎるのは肝臓での合性能(分解に対する)の低下、AST(GOT)・ALT(GPT)が高いのは肝細胞の破壊が進んでいること、PLT(血小板)が少ないのは肝臓の予備能力(復元力)の低下で、肝硬変の指標であること、AFPが高いのは肝細胞がんの腫瘍マーカー・・・ということで肝炎と肝硬変は確実、肝細胞がんは疑いという状況です。アルコールの摂取量と関係があるγGTPだけは意外に正常値でしたので、お酒を飲むことに問題はないかと思います。
先に行ったエコー検査でははっきりしなかったので、1月に入ってすぐ造影剤を静脈投与してCT撮影を行います。肝がんの疑いが消えれば、肝硬変・肝炎の治療を始めることになるようです。人間の身体の60兆個程の細胞の内、8000個ほどが日々、細胞分裂で生まれた新しい細胞と入れ替わります。その際に遺伝子(細胞の設計図=DNA)のうち、がん抑制遺伝子に傷が付き、それが蓄積して突然変異が起き、突然変異した細胞が勝手に増殖していくのががん細胞です。加齢によって、がん抑制遺伝子の傷が増えてがん細胞が増えやすくなるとともに免疫細胞(リンパ球)の力も低下します。がん細胞1個は1000分の1ミリでも、細胞分裂を30回繰り返せば10億個、1センチ位になります。
私もこの12月には73歳になり、特に肝がんや肝硬変でなくても極く当たり前に「死」に近くなっています。私にとって大切なのは、自分のスピリチュアリティを深くて鮮明なものにすること、治療法などは自分自身の主体的な判断・選択によること、そのために必要なことを学ぶこと──です。

  生活保護・人権のたたかい★私の予定
●2020年1月28日(火)午前11時00分【生活保護変更決定処分取消請求事件=生活保護基準引下げ違憲訴訟】千葉地裁601法廷
 *この裁判の原告を支援してくださる方の、法廷での傍聴、その後の報告の集いへの参加と原告への励ましのお声掛けをお願い致します。報告の集いは弁護団主催で、千葉県弁護士会館会議室に移動して行います。

  厚労大臣による裁量権の逸脱・濫用について千葉弁護団の主張を振り返る

  裁決から第1回口頭弁論まで
私は2013年9月13日に千葉県知事に対し生活保護変更決定についての審査請求を提起しました。その趣旨は、2013(平成25)年7月18日付けの保護決定通知書で流山市健康福祉部長によって行われた生活保護変更決定の取消しを求めるものでした。しかし2014年7月17日付け裁決書による千葉県の判断は、「法第8条第1項は、『保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基と』する旨規定しており・・・国会及びその委任を受けた厚生労働大臣の裁量に属する事項であるから、当庁の審査権は及ばない」がゆえに、「本件審査請求を棄却する」というものでした。私は、この裁決書に記載された「教示」に従い、「原処分である保護変更決定については、この採決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に流山市を被告として、保護変更決定が違法であることを理由として、保護変更決定の取消しの訴えを提起」しました。
2013年1月から生活保護の受給を開始(当時66歳)して以来、この時に初めて私は「要保護者の需要」と「厚労大臣の裁量」について現実的・具体的に知ることになり、また公権力の行使に対する不服の訴訟を提起する権利が私にもある(行政事件訴訟法)ということを知りました。
旧憲法下では行政上の争訟は、東京に設置された「行政裁判所」という一種の行政の部内機関が管轄していたのですが、現行憲法になってこのような特別裁判所は否定され、すべての争訟の裁判は司法裁判所が行う制度になりました。この制度の下では行政権の自律は認められず、行政権の行使のすべては司法権の審査の対象となります。従って裁判所は厚労大臣の裁量権の行使について生活保護法違反の判断はもちろん、国会で決められたいかなる法律も憲法違反の判断を行なうことによって無効にすることができます。

千葉地裁に「訴状」が提出されたのは2014(平成26)年11月28日で、新聞社の取材や記者会見も行われました。しかし第1回口頭弁論が行われたのは、半年以上も経過した時点である2015(平成27)年6月12日でした。なぜ裁判が始まらないのか、いったい何が起こっているのか原告である私にも情報はまったく届かず、ただジリジリと待つのみでした。私は、第1回口頭弁論の後の弁護士会館での「集い」での弁護団による経過説明を聞くことによって初めて状況を理解し、生活保護受給者が実際に訴訟を提起し、公権力の違法な行使と争うことの困難さを改めて痛感したのです。
訴訟を起すためには裁判所への手数料を支払う必要があり、「訴状」に収入印紙を貼付しなければなりません。手数料の額は、訴え(処分取消など)の内容に相当する金額によって異なります。憲法で「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(第32条)という規定があっても、裁判費用・当事者費用を負担する資力がなければそれこそ「絵に描いた餅」でしかありません。従って民事訴訟法には、その当事者に勝訴の見込が無いとはいえないとの条件を充たせば、裁判所は手数料など裁判費用の支払いを猶予するという「訴訟上の救助」の制度が規定されています。当然、千葉の原告ら訴訟代理人弁護士(弁護団)は訴訟救助の申立てを地裁に対して行ったのですが、これに対して千葉地裁は「民事訴訟法82条1項の『訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払いにより生活に著しい支障を生ずる者』に該当するとの疎明がないとして、これを却下」したのです。「疎明」とは法律用語で、当事者の言っていることは一応確からしいという「心証」程度のことであって、「証明」とは異なります。私はこの事実には、千葉地裁が生活保護受給者をはじめ貧困状態にある国民の暮らしの実態からどれほど離れたところで生活していることか、憤懣やる方の無い気持ちを持たざるを得ませんでした。
このため千葉弁護団は東京高裁に対し、千葉地裁が訴訟救助「却下」の決定を取消しその付与を認めるようと主張して抗告しました。2015年2月26日、東京高裁は「抗告人らは、いずれも生活保護法による扶助を受けていることが認められる。・・・そうすると、生活保護を受けているという事実自体によって、その者が衣食住に関し最低限の需要を満たす程度の生活を送っているものと推定することができ、・・・訴訟の準備及び追行に必要な費用を支払うと生活に著しい支障を生ずるとの疎明があるというべき」という、極く当たり前の判断を行いました。已むにやまれず訴訟救助のお願いをしてきた生活保護受給者に対して、裁判所に支払う十分な資力に欠けるのでは・・・という「疎明」=心証も形成できないほど、千葉地裁は人間的な感性を失っているかと疑わざるを得ません。

第1回口頭弁論は2015年6月12日、午前10時から千葉地裁601法廷で行われました。法廷では弁護団が「訴状」の骨子を陳述し、原告本人の意見陳述には私が立ちました。被告側は原告本人の意見陳述は不相当・不必要と主張しましたが、裁判所の判断によって実施しました。弁護団事務局の報告では、当日は原告と代理人弁護士(弁護団)が11名、被告側当事者が21名の出席で、傍聴人は原告側その他が18人、被告側が14人でした。当日に至るまでの経過を踏まえ、伊東達也弁護団長や弁護団事務局は「この種の裁判は大変狭き門であり、裁判所が緊張感を持って裁判に臨むよう、傍聴者の目が必要」、「多くの方に傍聴していただくことで、裁判所も真剣に問題を考えるようになります。当弁護団では、傍聴された方が、裁判で何が行われているのか、きちんと分かっていただけるよう訴訟を進めていくつもりです」とました。
私も弁護団のこの熱情に応えたいと思いました。この訴訟の原告として名を連ねながらも、貧困や生活保護受給者という立場に対する様々な偏見・差別によって、市民社会に自分を晒すことに躊躇せざるを得ない者たちがいます。私はその切実な「声無き声」を呈して、2016年4月半ばの脳内出血による救急搬送・入院を挟んで、今日まで体調の許さなかった日以外の期日には必ず裁判所まで脊柱菅狭窄の痛みをかばいながら、足を運んできました。

  裁量権と裁量の統制について
現在、私の手元にある「訴状」や原告ら「準備書面」からその主張を振り返ってみます。
生活保護法は憲法25条の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定を国民の具体な権利として規範化するものであり、告示等によって具体的な基準を示します。生活保護法は「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」(1条)のであり、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものと」し(8条1項)、この「基準は、要保護者の年齢別性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、且つ、これをこえないものでなければならない」(8条2項)と規定しています。さらに「被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない」(56条)としています。生活保護基準の設定・改定の権限は、生活保護法8条1項によって「厚労大臣の定める基準」として定められています。基準は国会の直接の統制によって決めるという仕組みもあり得るのですが、今のところ厚労大臣の行政裁量(告示)によって決めるという方法が採用されています。
以前、地元の低所得者団体の指導者が、厚労大臣の裁量権について「大臣の胸先三寸で保護費を決めることです」と教えていたのですが、これは正しくありません。8条2項は、厚労大臣が裁量権を行使するに当たって「必要な事情を考慮」しなければならず、それは要保護者の年齢・性別・世帯構成・所在地域・その他保護の種類に応じて必要な事情というように列挙されています。これは反面から見れば、「考慮」するべき事項以外のことを「考慮」するのは裁量権の行使の範囲を逸脱し、権限を濫用したことになり、生活保護法に違反したことになります。「大臣の胸先三寸」は許されていないどころか、許されている裁量権の幅は極めて限定的なものなのです。
千葉の原告側「第10準備書面」で被告側の反論の問題点として指摘されている「朝日訴訟判決・傍論」の問題とは、1997年5月24日の朝日訴訟・第3審・最高裁(上告審)判決の「なお、念のために、本件生活扶助基準の適否に関する当裁判所の意見を付加する」として述べた、「原判決が本件生活保護基準の適否を判断するにあたって考慮したいわゆる生活外的要素」の問題です。そこでは「国の財政状態」、「生活保護を受けている者の生活が保護を受けていない多数貧困者の生活より優遇されているのは不当であるとの一部の国民感情および予算配分の事情」などについて「以上のような諸要素を考慮することは、保護基準の設定について厚生大臣の裁量のうちに属する」とされています。しかし、基準の設定・改定において厚労大臣がこのような「生活外的要素」を「考慮」の対象にするのは、裁量権の逸脱・濫用であり生活保護法8条2項違反となるのは明白です。

  生活保護基準部会の役割と専門的知見・検討について
千葉の原告側「第20準備書面」では、岩田正美さん(日本女子大学名誉教授)が作成した意見書に基づいて、原告側の主張を述べています。
岩田さんが「公的扶助論に関する知見において第一人者」であることは、著作等その業績の一端に触れただけで明らかに分かることです。厚労省の設置する社会保障審議会などとの関わりについても、2001年の社会保障審議会委員への就任以来、生活保護基準の見直しを検討する審議会委員、生活保護基準部会委員、2013年には同部会長代理を務めました。その立場から、2013年5月16日の生活保護基準改定に先立つ基準部会において検証に関わりました。岩田意見書は、まさに専門的知見をもって審議会の職務を体現してきた証人の「怒り」さえ感じさせる証言であると私は受け止めました。
千葉の「訴状」では、厚生大臣の下に設置された審議機関の役割について、それは生活保護法の作成担当者であった小山進次郎の意思──保護基準は、法的に根拠を有する場において認められた、合理的な基礎資料によって算定されるべきであるという意思を踏まえて、厚生(労)大臣の裁量権に対する統制の役割を果たしてきたことを明らかにしています。厚労大臣は審議機関とそれを構成する専門的知見とを、国民の生活の最低限を生活保護基準として具体的に定めるために用いてきたのであり、それをもって厚労大臣の裁量の正当性の根拠としてきたのです。基準部会が表明する意見は決して、単なる「専門家の参考意見」で済ますことはできないのです。
専門的知見による審議が、国の生活保護行政の政策上の枠組みや全国消費実態調査などデータの限界の下においても、基準の妥当性やその改定による影響を論議した上で一定の見解を表明し基礎資料を提供してきたのであり(それは「火中の栗を拾う」ような仕事なのかもしれませんが)、もし厚労大臣がその審議・見解から遊離して生活保護基準を改定すれば、それは裁量権の逸脱・濫用と言わなければなりません。

2013年の改定では、平成21年全国消費実態調査のデータを基にした「歪み」調整で90億円、平成20年以降の物価動向を勘案した「デフレ」調整で510億円の生活扶助費引下げが強行されました。しかし、生活保護基準部会では「デフレ」調整の審議は行っていません。「部会メンバーとしては遺憾」と岩田正美さんが意見書で述べられた所以です。2013年1月16日の第12回生活保護基準部会では事務局(厚労省)に対して、山田篤裕委員が「この部会では今例示で挙げられた消費者物価指数とか賃金の動向については何も議論していないということを明確にしていただければと思います」、阿部彩委員が「おっしゃったように全く議論していないところです。私たちは平成21年のデータを使って見ているだけですので、物価の状況とかも全く見てもおりません」と各々語気を強めて確認を迫っています。
厚労省が独自に創作した計算方法による「生活扶助相当CPI」が「物価偽装」であることは明白ですが、そもそも「物価の動向」を生活扶助費算定の根拠とすること自体が厚労大臣の裁量権の逸脱となります。
1983(昭和58)年、厚生省の審議機関である中央社会福祉審議会の意見具申によって水準均衡方式によって生活保護基準の検証が行なわれてきました。水準均衡方式では主に全国消費実態調査の家計調査のデータを用いて、生活保護世帯と一般低所得世帯との相対比較を行った上で、2003年の生活保護の在り方に関する専門委員会は水準均衡方式による生活扶助費を妥当な水準であるとしました。それまで「消費」データによって検証してきた生活保護基準を、審議会の関与から離れたところで「物価の動向」を根拠として「デフレ」調整と称して改定したのは、明らかに厚労大臣による裁量権の逸脱・濫用であると言わざるを得ません。
【原告☆当事者通信 №42 2019年12月29日 水野哲也hikarumenoneko@yahoo.co.jp】


  

社会的必需項目の剥奪についての生活保護世帯と一般世帯との比較分析=第2回検証手法検討会

  千葉地裁の期日(10月25日)での弁護団による「原告第20準備書面ー岩田正美教授の意見書に基づく主張」で示され、「岩田意見書の概要」として陳述された内容の予兆のようなものは岩田正美さんの幾つかの論文や講演において、私は既に断片的に感じとっていました。大原社会問題研究所の2016年度研究員総会での岩田講演「現実は研究より奇なり─貧困とセーフティネットを追いかけて」はその一つです。この講演で岩田さんは、自分は2013年から厚労省の社会保障審議会に関わって、生活保護の生活扶助基準の改定作業を担ったが、それは概ね扶助基準・加算の引下げであった。引下げたのは政府だったが、審議会が一種の証拠資料のようなものを作った──と述べています。岩田さんは日本女子大学人間社会学部の教授の職務と並行して2001年に社会保障審議会の委員に就任し、生活保護基準引下げが行われた2013年には生活保護基準部会の部会長代理を努めていました。その間、母子加算等の引下げに関連してある母子家庭の母親がある集まりに呼ばれて実態報告を行い、その後に岩田さんは詰め掛けていたマスメディアその他から「あんなにかわいそうなのに、なんとも思わないか」など、2時間ほども「吊るし上げ」られるということもあったそうです。これについて岩田さんは、この母子家庭の母親のおかれた状況は一つの事実であることは確かだが、生活保護という「制度の議論」をするには「レアなケース」であることが推察された──と述べています。そして、こういう「レアな」事例を突き付けるのは例えばNPOが寄付金を集める時には効果的かもしれないが、これで「政策を覆す」のは難しいと述べています。
岩田正美さんは生活保護基準部会での議論の中でも、政府統計の信頼性の問題を指摘しています。併せて大原社会問題研究所の講演でも「貧困は政策によって定義され、再定義を繰り返している」のであり、政策の立案は根拠(エビデンス)を基礎にしたものであるべきなのに根拠としての統計調査には限界があるという矛盾、その矛盾の中で政策が決められていることを政策批判はもっと突く必要がある──と述べています。
千葉弁護団による「第20準備書面」の中でも、「専門的審議が保護行政の一定の政策的枠組みに取り込まれており、その限界の中での基準の妥当性および基準改定の影響等を探索した資料と議論を提供している」と述べています。岩田さんは講演の中で、自分が国土交通省の社会資本整備審議会・住宅宅地分科会臨時委員を務めているときに、基本計画案のスタンスは住宅政策の根幹=少子高齢対策であり、それが現政府の政策重点であった──と述べています。岩田さんは「単身化が進んでいるのに、単身世帯に対する住宅政策をやらなくて良いのか」と思ったが、役所では「単身世帯に良い住宅を」ということは書く訳には行かないということだったそうです。そういう限界、矛盾に直面する状況の中で岩田さんは職務を果していたのだと推察します。それは、しかし「セーフティネット設定」という観点から見れば、そこには国交省には単身世帯を含めての最低居住水準・誘導居住水準の設定があって、これが生活保護の住宅扶助の審議において大変に
重要な根拠資料なった──という事実もあるのです。あることについて、どれほど「これは生活保護受給者の生活実態であり、切実な要求なのだ」と主張しても、その根拠となる証拠を示して所得再分配についての国民的合意を得るということができないなら、生活保護裁判で裁判官の共感を得ることも難しいし、それは単なるイデオロギー的な論議に終わると私は思います。
岩田さんには今後も、これまでのように自称「調査屋」、「地べた派」、「一介の貧困研究者」として、「臭いや汚れ・・・貧困を生きていかねばならない人びとの葛藤や絶望」(『貧困の戦後史』あとがき)をそこに感じるような著作を書き続けてくださることを私は期待します。
  11月14日に、循環器・消化器系統の内科医に診てもらいました。脳内出血の後遺症などで診てもらっている別の内科医が「私は心臓が専門なので・・・」ということだったのです。8月の血液検査では、TST(GOT)、ALT(GPT)、HCVRNAの数値が高く、肝細胞の破壊、肝炎ウィルスの活動といったことが問題になるようです。「ウィルスを叩き出す」など作戦を立てるため、とのことで改めて検査のための採血を行いました。脊柱菅狭窄で整形外科の薬も服用しているので、肝臓も一方で傷め付けられ他方で手を差し伸べられるという状況で、訳が分からなくなっているようです。

 生活保護・人権のたたかい★私の予定
●2019年12月16日(月)午前11時00分【生活保護変更決定処分取消請求事件=進行協議】千葉地裁
●2020年1月28日(火)午前11時00分【生活保護変更決定処分取消請求事件=生活保護基準引下げ違憲訴訟】千葉地裁601法廷
 *この裁判の原告を支援してくださる方の、法廷での傍聴、その後の報告の集いへの参加と原告への励ましのお声掛けをお願い致します。報告の集いは弁護団主催で、千葉県弁護士会館会議室に移動して行います。

社会的必需項目の剥奪についての生活保護世帯と一般世帯との比較分析=第2回検証手法検討会

第2回「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」は、2019年6月21日に開催されました。事務局の猪狩社会・援護局保護課長補佐による資料1「最低限度の生活に関する検討」、資料2「生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支出や生活実態等の分析の概要」の説明が行われ、その各々に基づいて委員による議論が行われました。
後者の内容は、①生活保護世帯の生活の質の面から見た消費支出・生活実態の分析による家計内容の把握、②等価収入別にみた社会的必需項目の不足に関する指標における生活保護世帯と一般世帯との比較分析です。
〔1〕「最低限度の生活」に関して
貧困概念について絶対的貧困としてS.ラウントリーの一次貧困・二次貧困、相対的貧困としてP.タウンゼントの相対的剥奪およびOECDの貧困線の捉え方、さらに社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)、A.センの潜在能力アプローチなどを上げています。
生活扶助基準の毎年度の改定は、1948(昭和23)年~1960年は絶対的な方式であるマーケットバスケット方式、1961年~1964年は絶対的な方式であるエンゲル方式、1965年~1983年は相対的な方式である格差縮小方式、1984年~現在までは相対的な方式である水準均衡方式によって実施されてきました。とくに格差縮小方式と水準均衡方式による改定については、「最低限度の生活とは何か」について考慮の外に置いたままの作業であったと言えます。
生活保護制度で保障されるべき最低生活の水準は、一般世帯の生活水準との比較において検証されてきました。昭和58年検証は家計調査を用いて「変曲点」分析を行い、第2.99/五十分位の生活扶助相当支出との均衡をもって、平成15・16年検証は家計調査をを用いて第3~5/五十分位の生活扶助相当支出との均衡をもって、平成19年検証は全国消費実態調査を用いて年収第1/十分位の生活扶助相当支出との均衡をもって検証しました。平成29年検証は全国消費実態調査を用いて、年収第1/十分位の生活扶助相当支出との均衡、年収階級別の「変曲点」分析、消費支出階級別の家計消費構造の分析をもって検証されたとしています。
私は、これらとは別個に生活保護基準部会の委員から報告されたという手法である「MIS=最低所得水準」手法及び「主観的最低生活費」測定に注目してきました。「MIS」については、「最低生活に何が必要か」を市民の幾つかの異なるグループで話し合い、それを複数回行って合意の形成を導き出す方法です。グループではある架空の市民を設定し、個人単位のニーズをそれはどこで・どのように入手するかを含めて考えるのです。「主観的最低生活費」はインターネットを利用した調査によって、一般市民が「切り詰めるだけ切り詰めて、最低限いくら必要か」及び「つつましいながらも、人前で恥かしくない社会生活を送るためにいくら必要か」導き出す方法です。 
〔検討会の議論〕 
岩永理恵委員(日本女子大学准教授)は、生活保護が保障する最低限度の生活は「基準」だけで決まるものではなく、資産保有、自立支援やケースワーカーの業務を含めて総合的に保障されるものであり、その際に「質的な要素」が注意されるべきであることを指摘します。
阿部彩委員(首都大学東京教授)は、検討会での議論はまったくのフリーハンドで行われるのではなく、価値観の多様化した今日の状況下にあっても憲法25条の健康で文化的な生活を保障するということ、また社会生活・社会参加の必要性など今まで社会保障審議会や基準部会で行われてきた議論を踏まえたものであるべきことを強調します。
山田篤裕委員(慶応義塾大学教授)は、ある経済主体が資産を維持しながら消費する額としての所得ということに触れ、単に消費の額だけで必要な最低限を考えることは出来ないことを指摘します。資産としての人的資本や健康資本をすり減らしてでも消費しなければならない人との比較を前提に置くことは出来ないからです。
渡辺久里子委員(国立社会保障・人口問題研究所研究員)は、①資産が何も無い状況でフローのインカムだけが入っても最低限度の生活は成り立たない上に、突発的な支出にも耐えられないのであるから、最低限度の生活に必要な資産要件ということも考えなければいけないこと、②1990年代半ばから所得・消費が下落している状況で、経済が向上していた時代に作られた水準均衡方式からは脱して、新たな最低限度の算定方式を提起することが必要となっていること、③マーケットバスケット方式などの算定方式は、常に専門家だけが決めるものであり恣意性が排除できないことが指摘されてきたことから、市民の合意形成という方法によるMIS手法を用いるのが良いこと──を指摘しました。
〔2〕生活保護世帯の家計内容の把握・分析
 ● 生活保護世帯の家計内容について、社会保障生計調査(平成24年度~28年度、5年分)の個票データ、平成29年度検証で用いた支出費目分類に従った集計、世帯類型別固定的経費割合及び10大費目別消費支出割合の状況などの資料を用いての分析です。消費の支出弾力性は、消費支出額が1%変化する際に財・サービス各費目の消費が何%変化するかということであり、支出弾力性が1未満の消費支出費目を固定的経費、1以上の消費支出費目を変動的変動的経費とします。10大費目とは、食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服・履物、保健・医療、交通・通信、教育、教養・娯楽、その他の消費支出です。
集計結果の概要は、平成24年度~28年度平均の固定的経費割合が72.3%、このうち最高が高齢者世帯の75.4%、最低が母子世帯の65.7%、同時期のエンゲル係数は32.5%、このうち最高が高齢者世帯の34.1%、最低が母子世帯の27.6%です。因みに、平成28年「家計調査」による一般世帯の2人以上世帯で年収階級第1/十分位のエンゲル係数は30.8%、全体平均は25.8%です。10大費目別の消費支出割合は、高齢者世帯で支出割合の高いものは「食費」の魚介類、野菜・海藻、果物、「住居」の家賃・地代、低いものは「被服・履物」のその他の洋服、「交通・通信」のその他の交通費、母子世帯では支出割合の高いものは「食費」の菓子類、「被服・履物」のその他の洋服、他の被服、履物類、「教育」の授業料等、補習教育、「教養・娯楽」のスポーツ用品、教養娯楽サービス月謝類、他の教養娯楽サービス、低いものは「住居」の家賃・地代です。
 ● 生活保護世帯の生活実態・生活意識と等価実収入及び等価消費支出との相関関係を、平成28年「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の「1日2回以上の食事」など58項目と平成28年度「社会保障生計調査」データとの連関係数を用いて分析したものについては、ほとんどの項目において明確な相関が示されていません。
〔3〕「社会的必需項目」による分析
「社会的必需項目」とは、先行研究である「2011暮らしに関する意識調査(社会的必需品調査)」(厚生労働科学研究費補助金・政策科学総合研究事業<貧困・格差の実態と貧困対策の効果に関する研究>平成22~24年度、研究代表者=阿部彩)の調査結果において、50%以上の回答者によって「必要である」と回答された項目です。
その項目と、それが「必要」との回答の%は①1日2回以上の食事(89%)②肉・魚・豆腐などタンパク質を毎日摂取(75%)③野菜を1日1回以上摂取(75%)④新しい下着の年1回以上購入(60%)⑤必要な時に医者に掛かれること(95%)⑥必要な時に歯医者に掛かれること(93%)⑦炊飯器の保有(75%)⑧電気掃除機の保有(63%)⑨固定電話の保有(66%)⑩携帯電話(スマホを含む)の保有(66%)⑪親戚の冠婚葬祭への出席(53%)⑫急な出費への対応(57%)⑬生命保険等への加入──です。
イギリスのP.タウンゼントが1900年代に「剥奪、deprivation」アプローチによる生活水準の計測方法を開発しました。これは、人びとが「1日3食べることが出来るか」「冷蔵庫を持っているか」「病気になった時に医療サービスを受けることが出来るか」等、実際の生活を送る上で必要なもの・サービスを選び出してその欠損を調べることによって貧困の測定を行おうとするものです。調査される項目は、その社会での人びとの生活において意味のあるものが選ばれます。タウンゼントは、食事から交友関係まで50以上の項目の不充足数を合計して「剥奪指標、deprivation index」を作り、ある数以上の得点をもって「相対的剥奪、Relative   deprivation」状態であると定義しました。
その後、別の研究者が、調査される項目のリストを提示して、その各項目が「すべての人が持つことが出来るべきもの」か否かを一般市民に問う事前調査を行い、その過半数が「絶対に必要」と答えた項目を「社会的必需品、Socially Perceived Necessities」と定義しました。従って、「社会的必需項目」という概念は、人びとが生活を送るために「何が必要であるか」についての社会的合意が前提されていると見ることができます。(「貧困統計ホームページ」、阿部彩さん他の研究)
日本では阿部彩さん他が、「福祉に関する国民意識調査」(2002年)で全国の成人男女2000人(有効回答数=1350)を対象にして「社会的必需項目の構築」の試みを行っています。この調査では「現在の日本の社会において、ある家庭がふつうに生活するためには、最小限どのようなものが必要だとおもいますか。ここにあげる項目について、『ぜったいに必要である』
『あったほうがよいが、無くても良い』『必要ではない」の中から、あなたのお考えに近いものをあげてください」と問い掛けています。
私は、当『原告☆当事者通信』の№22(2018年4月)に「社会的必需項目と相対的剥奪状況について=第34回生活保護基準部会・資料5から」、№24・25(2018年6月・7月)に「私の貧困実態、生活保護受給の以前・以後=剥奪状況を調べる」を書いています。後者は、その内容を千葉県弁護士会シンポジウム(2018年7月)の場において、私(生活保護受給当事者)の生活実態報告として発言する機会を頂いたものです。その際に私は、社会的承認また合意の裏づけを持った項目を「ものさし」として、生活保護受給の直前と以後の生活実態とを比較し、それを「剥奪数」の変化として表す試みをしてみました。
今回の検証手法検討会では、平成28年「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」、平成28年度「社会保障生計調査」を用いて等価消費支出階級別の「社会的必需項目」の剥奪指数・不足数を集計しています。
〔4〕「社会的必需項目の不足」について生活保護世帯と一般世帯との比較
検討会では、一般世帯について等価可処分所得階級別、生活保護世帯については等価実収入階級別に「社会的必需項目の剥奪指数・その平均、不足数別世帯数、平均不足数」(全世帯、世帯類型別、世帯人員別)を集計し、その比較分析を行っています。
●「剥奪指数」は、全世帯平均値が生活保護世帯が11.4、一般世帯が8.5であり、生活保護世帯(10万円未満~16万円以上、等価実収入)・一般世帯(10万円未満~300万円以上、等価可処分所得)のどの収入・所得階級でも、剥奪指数は生活保護世帯の方が大きく、生活保護世帯と一般世帯との較差は収入・所得が増加するほど大きくなっています。
収入・所得の変化と剥奪指数の変化との関連については、一般世帯については可処分所得の増加に伴って剥奪指数は減少していきますが、生活保護世帯についてはそのような傾向は見ることができません。
●社会的必需項目の「不足数」は、全世帯平均値が生活保護世帯が1.8、一般世帯が0.5であり、較差など「剥奪指数」の場合と同様の傾向が見られます。不足数の「該当なし」は生活保護世帯が10.4%、一般世帯が67.6%、不足数「1項目」は生活保護世帯が36.3%、一般世帯が21%、「2項目」が生活保護世帯が31.8%、一般世帯が7.0%です。
収入・所得との関連については、生活保護世帯については実収入の増加に伴う不足数の変化はほとんど見られませんが、一般世帯では可処分所得が増加すれば社会的必需項目の不足数は減少しています。例えば不足数「該当なし」は、生活保護世帯の実収入「16万円以上」階級で12.9%ですが、一般世帯の可処分所得「16万円~17万円未満」階級では66.6%となります。
〔検討会の議論〕
社会的必需項目の世帯類型別・剥奪指数を見ても、例えば「高齢者世帯」について一般世帯の可処分所得階級別に見ると、所得が上がれば剥奪指数は下がっていきますが、生活保護世帯の実収入階級別に見ると10万円未満=10.4、10万円以上~11万円未満=11.1、15万円以上~16万円未満=10.7、16万円以上=11.4というように、収入が上がっても剥奪指数は下がってはいません。山田篤裕委員は、それをどのように解釈すればよいかという疑問を提起しています。それに対して阿部彩委員は、それは生活保護世帯の実収入の10万円~16万円のカテゴリーの中で最低生活費が各家庭のニーズに応じて細かく対処できていることの一つの表れであると指摘します。それは、生活保護費の実収入階級の中で剥奪の大きいところと小さいところという較差を作らないように、最低生活費の仕組みがうまくいっていることの表れと解釈できるということです。阿部委員は、問題であるのは同じ収入・所得階級なのに、剥奪指数は生活保護世帯の方が圧倒的に高いということであると指摘します。
渡辺久里子委員は、3点について猪狩社会・援護局保護課長補佐に確認しています。
①「社会保険等への加入」など「社会的必需項目の不足に関する指標の算定項目」は生活保護世帯にも当てはまるか⇒生命保険の保有に関する生活保護制度上の取扱いについては、貯蓄性の高い保険は解約して最低生活に充てるか、掛捨て型の生命保険は最低生活費の1割位の保険料ならば加入してよいという取扱いになっている。
②炊飯器、電気掃除機は生活保護世帯で保有の認められている財ということか⇒基本的にはそのとおり。
③生活保護の医療扶助があるから、金銭的な余裕が無いから「必要な時に医者(歯医者)にかかる」ことが出来ないというのは考えにくい⇒そのとおりだが、この調査は意識の調査なので、本人がどう感じるかということもある。
阿部委員は、「生活保護世帯の家計内容の把握」につき「10大費目」の消費支出割合を高齢者世帯と母子世帯とで世帯類型別に見てもあまり意味が無い──これをシェアではなく実際の数値で出せば、一般世帯との比較の議論が出来る、ということを指摘しています。
岩永理恵委員は、生活保護世帯には生活の基盤となるような基礎資産が欠けており、生活保護世帯の社会的必需項目の「剥奪指数」が高いという結果に生活の脆弱さが現れていると述べています。また「社会保障生計調査」など家計簿調査に協力できるのは210万人の内の3700世帯であり、それは「まめな」世帯に限られていることを指摘しています。
【原告☆当事者通信 №41 2019年11月27日 水野哲也hikarumenoneko@yahoo.co.jp】















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