全く、桜子は人を呼んどいて居ないんだから。


学食を出て、桜子がいるというカフェに行った。
何回か一緒にお茶に入ったことはある。
だけどフザけた金額設定と、入った瞬間一斉に見られる感じがどうも…。
(桜子はそれがいいとか言う。意味わかんない。)
きらびやかな人達の中にいると、全身UNI○LOが気後れしちゃう。

ぶるぶる!
つくしは首を振った。

日本が誇るファストファッションよ!
(たぶん。ファッション用語はイマイチ意味が…。)


それにしても、何を食べたらあんなに大きくなるんだろ?
カフェの入口にいた男は恵まれた体型をしていた。
見上げる程の身長に、広い背中、腰が高くてめっちゃ足長かったよね。
進がいたら、羨ましがりそう。
一生懸命 腕立て伏せしたり牛乳飲んでるけどさ。
あんまり効果が…。(言えないけど。)
パパが150センチ台だもんね。
私の160センチでも御の字かも。
大学にいる女の子は皆、背が高くてつくしは不思議だった。
ヒールを履いてるコが多いからかなぁ。


 
~♪


「もしもし。」

『先輩、今どこですか?』

「さっきカフェに行ったら居なかったよ。
もー出てきちゃった。」

『トイレいたんですよ。中で待ってれば良かったのに。』 

「あの空気の中待てないわよ。
用ってなに?」

『お土産を持ってきてるんです。後で図書室行きますよ。』


桜子がカフェを好むように、つくしが図書室に入り浸るのも
もちろん桜子は知っていた。
大体、学食か図書室にいるからだ。
後は敷地の端にある桜の木の下のベンチ。



電話を切った後、つくしは自販機でカフェオレを買い
図書室に入って行った。

週6(いや、週7かも。)バイトを入れている。
ずっと試験期間中と大学の予定以外はコンビニと飲食店と単発のバイトをしていた。
飲食店はまかない付きがありがたい。
遊べる時間を削って、勉強とバイトをがむしゃらに頑張った。

就職活動を初めた今はバイトも削っている。
まかない付の飲食店は必ず行って、コンビニは日にちを減らしていた。
コンビニ辞めようかと思ってたら人手が足りなくなるんだもん。
言い出しにくいわよね。 


就職したら…つくしは一人暮らしをするつもりだった。
今は2DKで家族と4人暮らしだ。
友達を呼ぼうにも中々狭いし、帰りが遅くなったりすると
家族にも気を使うしね。
ワンルームでいいんだ。
自分だけの部屋で気ままに暮らしてみたい。
その為にずっと貯金をしている。 



~♪
LINEを開くと、桜子が着いたと知らせてきた。


「桜子、最近カフェ率高いね。」

「争奪戦なんですよ、あの方達がいるから。
早朝から並んでテーブルをとるんです。
あ、そのお土産気に入りました?」

「うん!ダッフ○ーだよね?ポーチ可愛い!
お菓子もありがとう!」

「いえ、まぁ、そのポーチの為に並んだんですけどね。
この私が。
誰かのを見て可愛いなって言ってる人がいましたからね。」


つくしが眉を潜めた。


「ところで、先輩。一つお願いしていいですか?
可愛い後輩の為ですよ。」

「………イヤな予感がする。」

「鈍感な先輩にも予感ってするんですねぇ。」

「は?」

「一人言です。あのですね…。」











次の日、つくしはブツブツ言いながらカフェに向かっていた。
ランチを一緒にとりたいと桜子にお願いされたのだ。
あのカフェは居心地悪いのに。
たま~に嫌味な女子もいるしさ。
しかし、月に一度のランチバイキングdayらしく
二人以上じゃないと席の予約が出来なかったと。
バイキング券をプレゼントされ、まぁタダなら…と受け取ったのだ。


実は前から行ってみたかったの。
あのカフェのランチバイキングは豪華で美味しいらしい。
つくしは昨日のまかないも軽めにし、朝食は野菜ジュースだけ。
全てをバイキングにオールインだ。
今日はお腹がラクなワンピース。
グレーと白のボーダーで白いレースが胸元にある可愛らしいワンピだ。
トップスはぴったりめ、ウエストからはフレアになっていて
試着した時、優紀に絶賛されたものだった。


カフェの前で桜子が待っていた。


「どこに座ります?」


ん~、とフロアを見ていたつくしはバイキングの側を選んだ。
笑いながら桜子が頷く。


「先輩、何回も取りにいくつもりですね?」

「当たり前。5回は行くわよ!」


今日はカップルも多く、カフェはいつも以上に賑わっていた。
バイキングならまだ来やすいかも。
つくしは荷物を置き、早速料理を取りに行った。







そろそろ、大学を出る時間だった。
着いてすぐ学食に行こうとしたら、総二郎とあきらに捕まり
いつものようにここに連れて来られた。
ランチバイキングデーとかで、急にカフェがざわつき始めている。


「出るか?」


総二郎の問いかけに司が頷いた。


「出る。何でバイキングなんかするんだ?
煩くてしょうがねぇ。」

「女の子には人気なんだよ。俺もデートで付き合うぞ。
ケーキバイキング以外なら。」


あきらの嫌そうな顔に皆が笑った。
ケーキやスイーツの匂いは家でたくさんだと思っているのを知っているから。


「ケーキ。取ってこようかな。」

「類、他で食べろ。表参道にいい店あるんだ。
腹も減ったし、そっちに行こうぜ。
司、お前もうそろそろ時間だろ。」


総二郎が立ち上がると全員がそれに続く。
特別フロアを出て階段を降りながら司が呟いた。


「何回もおかわりしに行くとかあり得ねぇ。
女捨ててるぜ。
見ろよ、あの女。皿にてんこ盛り…。」




司の足が止まった。




グレーと白のボーダーのワンピース。
スラリとした細い足が白いスニーカーに続いている。
艶やかな黒髪を耳にかけ、てんこ盛りにした皿を両手で持ち
くるりと振り返った。
にしし、と嬉しそうに笑っている。




「…ここで食う。」




司は彼女から目を離さなかった。
人混みの中をするすると移動し、二人がけの席についた。
周りは男も多い。
もしかして…男と一緒か?
胸がドクン、と跳ねた。
だが杞憂に終わる。
派手な女が彼女の目の前に座ったからだ。


ある方向を凝視している司を、親友達は怪訝な顔で見ていた。


「は?食うって?お前、ここで?」

「あれ桜子じゃね。」


あきらが総二郎に合図する。
それを聞き逃す司ではなかった。


「知り合いか?」

「パーティーで会うぜ。
幼稚舎から英徳だよ、旧家の一人娘。
友達は…見たことねぇな。」


桜子が席を立ち、水を取りにいく。
友人の分を取って来ていたようだ。


「あの桜子が気を使ってるぞ。へぇ。」

「…上に連れてきていいぞ。」


そう言うと司はまた上のフロアに戻っていく。
あの司が女を連れてきていい、なんて珍しい。
あきらと総二郎が目を合わせる。
だが女っ気も欲しいと思ってたところだ。
あきらがニヤリと笑い、桜子に声を掛けに向かった。









司はソワソワと待っていた。
階段を昇る音がして、姿勢を正す。
あきらと総二郎が知り合いの女と一緒に上がってきた。


…いねぇ。
帰ったのか?


「…類は?」

「下でケーキ選んでた。」


彼女は?
聞こうとすると、女が挨拶してきた。


「こんにちは、道明寺さん。お邪魔します。」

「…ああ。もう一人は?」

「先輩なら料理を取りに行きました。」


それを聞き、司は立ち上がった。


「俺も取って来る。」


急いで階段を降り、料理コーナーに向かう。
皿を持ち選んでいる彼女が見えた。
司は滑らかな動きでトレーと皿を取り、彼女の横に立った。













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