つくしは展開に付いていけなかった。


都内の大きな病院のVIPルームにて診察を受けている。
何故か後ろにはあの男が立っていた。
まるで守るように。

 
「左膝は打撲と擦り傷ですね。」


医者の言葉に首を傾げそうになる。
擦り傷とは思えないぐらい、膝は手当てのあと
ガッチリとテーピングと包帯までされている。
通常の処理(大きなカットバンのようなもの)だけでは
道明寺が納得しなかったからだ。


「右手はやはり捻挫のようですね。変な方向に手をついたからでしょうな。
回復には3日…あ、いや5日…。
いえ7日はかかると思われます。」


どんどん延びていく日数につくしは思わず眉を潜める。
院長って捻挫の予測もつかないわけ?


つくしには見えてなかったが、つくしのすぐ後ろでは司が院長に向かって
首を振り続けていた。
7日でようやく首を縦に振り、院長を安心させたのだった。


「日常の生活に支障は…あー、いえ、それもダメ?
いえ、こちらの話です。
右手は1週間使わないこと。
なるべく…いえ使ってはいけません。
治りがますます遅くなりますから。」

「1週間も?明日から月曜日で授業にバイトも…」

「治らなくてもいいなら使えばいいんじゃね?
ただますます期間は延びるぞ。」


つくしはガックリとうなだれた。
司の言う事はもっともだったから。
大袈裟なぐらい右手は包帯を巻かれ、災難にため息がでる。
引ったくりにあったという話は遠い出来事だと思っていたのに…
まさか自分があうとは。
ななめがけを肩から外し、反対の肩にかけようとした時だった。
お財布に鍵、携帯も入っている。
ショックだった。
なんで人のを取るわけ?
お金が欲しいなら働けばいいんじゃないの?
ショックだったけど段々腹が立ってきた。


「大丈夫か?」


優しい声が上から聞こえてきた。
右を見上げると心配そうに私を見つめている。


「あ、うん。病院まで連れてきてくれてありがとう…。」

「当たり前だろ。礼なんかいい。」


特別室を出て廊下を黒づくめの集団に囲まれながら歩く。


「警察には通報したからな。
詳しいことはお前が手当てを受けてる時に話しといた。」

「あ、うん。」

「バッグは絶対に見つかるからよ。」

「あ、そうだ!診療代!」

「もう払った。」

「今度返すね。ありがとう。」


肩をポンポンとされた。
うう、さっき顔も見たくないって言っといて気まずいよー
声も聞きたくないって言っときながら、この世話になりっぷり…。

つくしはチラリと横の男を見た。
視線に気付き、ん?と微笑んでいる。
いきなり顔が赤くなる。
超美形の笑顔って至近距離で見るもんじゃないわ。
心臓に悪すぎる!


「そうか?お前、この顔好きか?」

「んー、綺麗なんじゃない?」

「答えになってねぇよ。好きかって聞いてる。」

「好みではない。」


後ろから不思議な咳が聞こえてきた。
ん?
私また一人言か口から出た?
恐る恐る隣を見ると不思議な顔をしている。
怒ってるような笑ってるような…。


「何?怒ってるの?」

「…わかんねぇ。
好みじゃないと言われてムカついてるが
言いたい事をいうお前が嬉しいような気もする。
そんな女は稀だ。」

「あ、そ…。」


顔をしかめてるくせに、私に合わせてゆっくり歩いてる。
…優しいのか、俺様なのかよくわからない男。
ジャケットは血が付いたからか着ていない。
白いシャツが厚い胸板にを引き立てている。
お姫様抱っこで運ばれてる時、めちゃドキドキしたよ。
パパや進とは違う、男の人。
宝物みたいに私に触れる人。



今はかかってきた電話に出る為
私の怪我をしてない方の腕をそっと引き、近くにあった椅子に座るようにと
誘導してくれた。
少し離れた場所で話している姿を見ながら足をもじもじと動かした。
ポケットに手を入れて携帯で話してるだけなのに
何かの撮影みたい。



近くにあった時計を見た。
22時。
…眠い。
お腹空いた。
明日は何限の授業だっけ。
この手じゃ当分バイトも出来ないなぁ



「…おい。」


目の前に座り、目線を合わせられる。
ありゃ!いつの間に。


「バッグ見つかったぞ。」

「えっ!本当!?」

「おう。中身も無事だ。」


優しい笑顔で言われて、つくしは思わず司に抱きついた。


「やったぁー!!ありがとう!!」


座っていたつくしの前に膝まづいていた司は
飛び込んでくるように抱きついてきた柔らかな体に
頭が思い切りフリーズしてしまった。


「良かったぁぁ!あー、本当に良かったよぉ!」
 

顔の横に、肩の上に、上半身に触れあっているつくしの体の華奢さに司は驚いていた。
ちいせぇ!
シャンプーか?
いい匂いがする。
何だこれ。
何だこれ。


いつの間にか
つくしを引き上げながら立ち上がり、自然に抱きしめていた。


すげぇ、しっくりくる。
俺の体にピッタリ合ってる。 






ん?

つくしは我に返った。


が、ガッチリと抱きしめられている。
身動ぎすると(しぶしぶと)離された。



「ごめ…つい、嬉しくて。」

「おう。良かったな。」


髪をクシャクシャされた。
つくしは司の出した右腕に掴まり、またゆっくりと歩き出す。
リムジンに乗り込むとバッグが差し出され、中身を確認するように言われた。
片手だと時間がかかったが、携帯や財布、鍵、ハンカチ、リップグロスを一つずつ見ていく。
ご機嫌なつくしはさっきは司に持たせなかった紙袋に視線をやり
親友から貰ったのと嬉しそうに言った。
司は紙袋の中身の予想はついていたが、つくしが嬉しそうなので自分も嬉しかった。


そしてつくしの自宅前に着き先ほどは持たせてもらえなかった紙袋を
運んでくれる?と言われ、喜んでドアの前まで持って行った。
つくしはSP全員にお礼を伝えて、道明寺にもお礼を言うと家に入って行く。



リムジンに戻るなり、司は秘書に電話をかけ
今後1週間のスケジュールを変更させた。



つくしは怪我を見て大騒ぎするママに安心させて
ようやく夕食にありつけてホッとしていた。
親子丼を食べながら、不思議な事になったぞ。
どうしようか…と
むぐむぐ食べながら考える。



ま、いっか。
お礼も伝えたし、もう会わないでしょ。



利き手が使えないのは全てにおいて不便だなぁ。
パジャマのボタンも留めにくい。
お風呂も入りにくいし、ドライヤーも進に手伝わせ
ベッドに入ると夢も見ずに朝まで寝た。








朝、まだ寝ているとママが部屋に飛び込んできた。


「つ、つくし!お客様よ!!」

「…もぉ~誰よ朝っぱらから…。」


寝ぼけたつくしが伸びをしながら部屋を出ると
ファッションモデルのような男が
小さな玄関に立っていた。
つくしは一気に目が覚めた。




「迎えに来たぞ。」









そう。

言葉通り、司はつくしから離れないつもりだった。













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