家の中にラクダがいた。



誰でも目が点にならない?
私はまさにそんな驚きだった。


道明寺がうちのちんまりした玄関に立っている。
私たちの靴の中にいても気にならないらしい。
パジャマから滅多に履かないスカートに着替えたママが
あの男を家の中に招き、 4人がけのダイニングテーブルへ誘導する。


「つくしのお友達かしら?
むさ苦しい所ですがどうぞどうぞ!
お茶を今淹れますね。」

「朝早く押しかけてしまい申し訳ありません。
お邪魔します。」


そんな訳で 厚かましい男は家族に囲まれてお茶を飲んでいる。
(椅子が4脚しかないので進は側に立っていた。) 


道明寺の隣に座り、パジャマ姿で睨む私をチラリと見て
軽く微笑んだ。


「怪我は大丈夫か?」

「…なんなの。あんた、もう関わらないって、」 

「えっ?もしかして昨日の怪我した時を知ってるのかい?
つくしは何も言わないまま寝てしまってね。」


パパがママと顔を見合せる。


「ご挨拶が遅れました。
わたくし、つくしさんと同じ大学の道明寺司と申します。」 

「道明寺…さん?凄い名前だね、ははは。
つくしの先輩かな?」

「はい。」


パパ達は目の前にいる黒いシャツにデニムの男が、あの道明寺司だと気づいてない。
気付く前に追い出さなきゃ!
ママの目からすでにハートが出かけてるし!


「私が家まで送れば引ったくりには会わなかったはずです。
大変申し訳ありませんでした。」


座りながら頭を下げる道明寺に、ほぅ とため息をつく皆。
進なんて口が開いたままだ。
あんた、同じ男でしょ!
パパも!


「責任を持って治るまでつくしさんのサポートを致しますので。」

「あら!治ってからもぜひお願いしたいわ。」 

「ちょっ…!ママ!」

「こちらこそ喜んで。」


ふわり、と笑う超美形にうちの家族はノックアウト。
…こいつ!!


「ちょっと道明寺!こっち来て!」 


つくしは椅子から立ち上がり、ズンズンと自分の部屋に入っていく。
イライラしながら部屋の真ん中で待っていたけど
ハッと気付いて出ようとした。
すると、鴨居に当たらないよう頭を下げながら道明寺が入ってきた。


「ちょっ!タンマ!やっぱりこの部屋はなしなし!
さっさと出てよ!」


今起きた風なベッドも恥ずかしい。
自分の部屋にこいつを呼ぶなんて!
なんでうちは他に部屋がないのよっ!
グイグイと入ってくる道明寺を押しだそうとするけど
鴨居に手を掛けて体が出ないようにしている。


「…お前の部屋か。」 

「見ないでよ!ちょっと出て!」

「女の部屋は姉貴以外で初めてだ。…へぇ。」


嬉しそうに部屋を見渡してる。
女っぽくないと言われる私でも、自分の部屋は水色と白で可愛くしてる。(つもり)


「可愛い部屋だな。」


中に入ろうとグイグイ押してくる。


「…着替えるから外に出て。」 


ジロリと睨むと一気に押し出して、襖をピシャン!と目の前で閉めた。










強く引きとめる家族にまた来ますと挨拶をして、つくしの家を出た。
入り口にはSPが待っていた。
つくしが出てくるまで古い壁に体を倒し、腕を組みながらドアの目の前で待つ。
手で口元を隠すのは笑いが隠せないからだ。

司はドキドキしていた。


女の部屋に入ったのは初めてだ。

ねーちゃんの部屋は何部屋もあるし、邸のインテリアに合わせた華やかさだったな。
つくしの部屋は…狭かった。
俺んちのトイレより狭い部屋。
(家自体もミニチュアハウスのようだった。)

団地?集合住宅っていうのか?
階段もない二階。
古びたアパートなんて昔なら絶対に入らない。
だが 今の俺は、あいつが住んでると思ったら
早く中に入りたくてたまらなかった。

写真に撮ってあいつらに自慢したかったが我慢した。
あいつの家に、あいつの部屋に入れてもらったぞ!
類にぜってぇ言わなきゃな。


水色と白、可愛いらしい部屋だった。
机とベッド、木の箪笥?があったな。あれで洋服はいんのか?
畳んで入れると問題ねぇのかな。
写真もいくつか飾ってあり、間近でじっくり見たかった。

そして部屋は甘い香りがした。
香水じゃねぇ、柔らかな香り。
あいつの香りだ。
嗅いだ瞬間、下半身が反応した。
あいつが側にいるといつもこうなる。
俺も男だったんだな、この歳になって実感するのもおかしいけどよ。



ガチャッ。


司が姿勢を正すと、つくしがゆっくりと出てきた。
(蹴れば簡単に開きそうなドアに今さらながら恐ろしくなる。
セキュリティ強化がまずは第一だな。)


「おう。」


司が笑うとつくしは眉をしかめた。


「待ち合わせじゃないわよ。あんたねぇ!」

「包帯変えたか?」

「は?」


キョトンとするつくしの肩を抱き、階段を支えるように降りていく。


「車で包帯を変えるように用意してある。
ほら、行くぞ。」

「だからね!あんた、人の話を聞けー!!」













英徳大学では、一気に噂が広まった。



あの道明寺司が、外部生と常に二人で行動してると。

外部生の代わりにノートをとる姿が頻繁に見かけるようになった。
二人並んで座り、手を怪我しているらしい女の子の為だろう。
横を向き囁くように話しかけ、黒板とノートを交互に見ている。
その女の子は素っ気ない。
あの道明寺司がノートを代わりにとってくれているのに
ちっとも嬉しそうじゃないのだ。

女の子が左手で書こうとする度に、司がペンを奪い書かせない。
大事にしている様子がありありとわかった。

そのノートを買い取りたいと女子達が嫉妬の炎を燃やす。
どんなにレアなノートかがわかっていない外部生に皆がキリキリとした。







今、二人は学食に座っていた。


そこへ華やかな一団がやってくる。



「よぅ、司!」




つくしはため息をついた。













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