つくしは豪華なロビーを歩いていた。
超高級なホテルみたい。
職場がこのビルになってしばらく経つが
未だにキョロキョロと見てしまう。

受付の人達はミス・ユニバースみたいだしさ。
その辺を歩いてる人達は皆すっごく仕事が出来そう。
ふわぁ、すごくエリートって感じ。

さすがは日本一の企業だと言われる会社だなぁ。
つくしは一人で小さく頷きながら、段ボールを抱えて職場である郵便局に向かう。


柱の影に来た時、ふいにロビーがザワついた。
つくしが振り向くと…


黒いスーツの一団が正面玄関から入ってきた。
SPの壁に囲まれていても、御曹司の姿はすぐに分かってしまう。
体格のいい護衛達に囲まれながらも、頭一つ分背が高く
物凄く綺麗な顔や、特徴のある髪型は隠しようがないからだ。


人々が道を開ける。
一団は何の障害物もなく混んだロビーを進んで行く。
あいつは緊張感や沢山の視線に気付いているのか。
つくしはこんな風景を見る度に考えてしまう。

遠ざかっていく一団は、特別な空気を残し
役員用エレベーターへと向かって行った。
周りがほぅ…と、ため息を漏らす。


つくしは段ボールを持つ手の場所をずらした。
ゆう○ょのティッシュは軽いけれど、かさ張って
段ボールだけが無駄に大きい。
ずり落ちそうになる段ボールを抱えたまま、つくしは柱の影に立ち尽くしていた。



1週間ぶりの彼の姿。
あいつが出張に行ってから…ずっと寂しかった。
夕べあいつからメールがあって…。


“明日帰るな。夜に一緒に飯食おう。
会いたい。”


すごくすごく嬉しくて、私も会いたいって返してたけど…。


…けど、さ。


つくしは段ボールを持ち直し、郵便局へと戻って行った。
歩きながら、あいつの顔を思い出す。
無表情な顔。
徹夜続きなのにそうは見えなかった。


郵便局前の警備員さんに礼をすると中の事務所へと入っていく。
ちょうどお昼だ。
先輩が私と交代で手を振りながら出ていった。
…お客さんが来る気配はない。
つくしは内線を手に取った。










『はい、副社長秘書室でございます。』

「お疲れ様です。一階の郵便局ですが…西田さんはいらっしゃいますか?」

『失礼ですが、お名前は…。』

「あ、郵便局の牧野です。」

『!失礼致しました。すぐにお繋ぎ致します。』


ふう。
つくしは小さなため息をつく。
一階の郵便局から、最上階へと繋がる回線はすごく遠くて
すごく近かった。


『牧野様、西田です。お待たせして申し訳ありません。』

「あ、西田さん。お忙しい時にすみません!」

『構いません。どうされましたか?
司様にお繋ぎしましょうか?』

「あ、いえ。ちょっとお聞きしたいことが…。」










司は決済書類の一つを閉じた。
しばらく目を瞑った後、首の後ろを軽く揉む。
ノックがして扉が開いた。


「…しばらく入るなと言ったはずだ。」

「申し訳ありません。」


秘書は足早に近付いてきた。
何か問題があったのか?
司は眉を寄せた。


「今日はこれでお帰り下さい。」

「…あ?」


司が顔を上げ、秘書を凝視した。


「顔色が悪いですね。私のミスです。
体調が悪い事に気付きませんでした。
申し訳ありません。」

「……いや。」


一瞬、しらばっくれようかと思った。
だが昨日からの体調の悪さは、今日の朝から段々酷くなっていく。
汗びっしょりで目が覚め、シャワーの間は震えが止まらなかった。
書類は何度か読まなければ頭に入ってこない。
悪寒はいまや、激しい震えになっていた。


「気付かれねぇようにしてたんだが…。」

「私は気付かなかったんです。秘書失格ですね。」

「は?」

「もしかしたら体調悪いですか?と
あの方から連絡があったのです。」


誰が、とは聞かなかった。
司は驚いていた。


「先ほど、支社に着いた所をロビーで見られていたそうです。
ほんの5分ぐらいの事でしたが…。
朝から司様とご一緒していた私は気付かなかったのに、です。
…さすがですね。」


司はゆっくりと頷く。
具合が悪いにも関わらず、グッときてしまった。


「無理をさせてしまったお詫びと申しますか…
郵便局の方をリムジンにお呼びしております。」

「…ああ。」

「今日はこのままゆっくりお休みくださいませ。」




司は一瞬フラついたが、弱っている姿を見せぬよう
真っ直ぐ前を見ながら執務室を出ていった。










はい、短編じゃなくなった~。



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