「よく牧野様の参加を許されましたね。」

「何だ?」

「飲み会を潰されるかと思いました。」


リムジンの中、司は書類を読むのを止めて秘書を見た。


「仕事の付き合いってやつは俺にもわかる。
それにあいつが道明寺で居心地良くなるなら文句はない。」 


秘書は頷いた。


「既に色んな場所から牧野様要望の声がかかっております。
派遣ではなく、道明寺と契約したのも大きかったですね。
情報漏えいを気にしなくていいですから。」

「まぁな。あいつは優秀だ。」

「ええ。本人の努力は相当なものです。」

「…例の公示はそろそろいいか?」

「司様。時期尚早かと。」


美貌の男は軽く舌打ちをした。
また目線を書類に戻す。


「システム事業部に、報告を昼までには欲しいと伝えろ。」

「明日の正午でしょうか?」

「そうだ。」


秘書が薄っすら笑みを浮かべた。


「システム事業部は早朝会議となりますね。
せっかくの飲み会が一次会で解散とは…でも副社長の要望とあらばしょうがない。」

「会社ってそんなもんだろ。」


司は小さく肩をすくめた。









「牧野さーん、飲んでる?食べてる?」

「もちろん!沖縄料理っていいですねぇ!」


連日食べまくってる気がするけど、世の中は美味しいものだらけ。
そう、食欲は止まらない。


「海ぶどうって思ってたのと違いました。
でも美味しい!」

「ここの豆腐のチャンプルーも美味しいの。
ほら、食べて食べて。」


和気あいあいとした7人のチームに、つくしは混ざって楽しんでいた。
小さな沖縄料理店はチームの行きつけらしい。
急な飲み会でもすんなりと通された。


「牧野さんて受付が主なんでしょ?そりゃあ受付も会社の顔だし大事だけどさ。
うちに欲しい人材だなぁ。」

「へへ、どうもありがとうございます。」

「受付の人達いつもメイク完璧だよね。皮脂って出ないのかな。」


素朴な女子の話に皆が笑った。


「秘書室もだよ〜!
重役秘書のお姉様方は完璧な素敵女子ばかり。」

「でもそんなミス・パーフェクト達も、副社長には見向きもされないらしいじゃない。」


ぶふっ!


「あら、牧野さん大丈夫?」

「だ、大丈夫れす。」


まだまだ女性達はあいつの話題で盛り上がっている。
はぁ、心臓に悪い。
だけどあの職場にいると沢山聞くんだよね。
副社長が受けた取材が、とか
今日のスーツは最高!だとか
あのサインしている姿に萌える〜とかさ。
そして…娘を紹介したい、あらゆる業界の実力者が列を成していると。


…そうだろうな。

社内でもこんなに注目されてんだもん。
だからこそ、ほら…付き合ってることは隠したい。
(いやマジで!)

女子の世界スゴいべ?
学校生活を少しでも過ごした人はさ、分かるっしょ?
分かるよね?
私、抹殺される…


「牧野さんは?彼氏いるの?」

「ようやく話題が副社長から離れたぞ〜。」


何度となく聞かれたこの質問。
このセリフ言いたかったんだ!


「あ、へへ、います。」


盛り上がる中、つくしの頬はお酒と照れで益々ピンクになっていった。








思っていたより早い解散だったけど、楽しかった。
またよろしくねって言われて嬉しい。

つくしは電車を降りると、遅くまで開いているいつものスーパーに寄り帰宅した。






〜♪


「ん?もしもし。」

『よぉ。』

「あ、うん。仕事終わった?」

『終わったとこだ。』

「お疲れ様。」

『サンキュ。お前帰り早かったな。ゆっくりしてるよな…。』


時計を見ると22時半、お風呂から上がった所だった。


「お風呂も入っちゃったよ。どうしたの?」

『あー、いや。身体がちょっとキツくてよ。』

「えっ?風邪?大丈夫?」

『いや、背中がちょっとな。』


つくしは心配になりかけたが…ん?と止まり、笑った。


「マッサージしようか?」

『…マジで?』


嬉しそうな声。
あ、なんかキュンときた。


『遅いけどいいのか?』

「ん。待ってるね。」




電話を切って、はた と止まる。
部屋を見渡して…自分の格好にも気付く。




あいつをうちに入れるの?

わたし、パジャマだし!
スッピンだし!
(そりゃ大して変わらないけど!)



ブ、ブラ付けてないよ!?
マズいよね?


部屋はさっき片付けはしたけど…




ごくっ。


遅くに男の人を部屋に入れたことは無い。
ひぃ〜!
なんかドキドキしてきた!



慌てて部屋干ししていた下着類を取り込む。
加湿の為に干したばっかりの洗濯物…
いや、やっぱりダメだ。
もう一回そのまま洗濯機に投げ入れる。


落ち着け、落ち着け。


と、とりあえず下着付けて部屋着に…







ピンポーン。



「はやっっ!」



パジャマを急いで脱ぎ、箪笥に放り込む。
慌てて厚手のワンピースを頭から被った。




「はーい!」







ガチャッ





うちのドアより背が高くて、冷たそうな空気を纏っている男。
怖いぐらいに綺麗な男。


「…おう。」


でも笑うと可愛いんだ。



「へへ。いらっしゃい、入って〜。」



後ろを振り向き部屋に入った途端。


「あ。」


気づいた。










私、ブラしてない!!!






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