「ちょうど近くに居たんだ。」 


後ろから、ゾクッとするほど艶のある声がした。
わざと耳元で言われた気がするんだけど!


「あ、そ、そうなんだね。」


道明寺のコロンの香り。
振り向かなくても存在を強く感じる。
つくしはリビングとして使っている部屋に、司を通した。


「適当に座ってて。お茶持ってくるね。」

「おう、サンキュ。」


つくしがキッチンへ向かうと、司はキョロキョロと部屋を見回した。
白い棚には沢山のテキストがあり、いくつか引き抜いて表紙をチェックする。
今勉強中なのだろう、付箋が付いているのを手に取る。
見てギョッとした。

【バーベキュー検定】!?
【箸検定】!?
そんなのあんのか?
そして【きのこ検定】…


カチャカチャと聞こえるキッチンを見て、気付けば肩を震わせていた。
面白すぎんだろ、あの女。


そしていくつもある写真立てを見ていく。
(もし男が写ってたら顔認証システムで誰かを調べねぇと。)
家族だろう(弟が写っている)4人の写真。
制服で丸顔の女とピースしている写真
(制服!!だけどあんまり変わらねぇな。)
よし、男は写っているのはねぇな。


「ご飯は食べたの〜?」

「ああ、会食だったからな。」


部屋の真ん中に白い低テーブル(床に座るんだよな?)
テーブルの後ろにあるソファーは、3人ぐらいは座れそうな大きさだった。
(俺だと二人分か?)
テレビの周りには置物。
可愛らしいが、ゴチャゴチャしていない。
あいつらしい部屋だった。


俺んちの風呂より狭いし、天井は低いしよ。
くつろげるかといったら正直微妙。
(昔の俺なら声に出して、けなしてるかもしれねぇ。)


だが、玄関に入った時からあいつの香りがして
スゲー嬉しいんだ。
狭かろうが汚かろうが、俺はここに来る。
あいつがいいって言えば俺もここに住む。


…くっ。
あいつらが想像する以上に俺はイカれてる。

5分でも顔を見れたら良かったんだ。
それだけで俺は…、






パタパタとつくしが戻ってきて、低いテーブルに湯呑みを2つ置いた。
お揃いの湯呑み。
それだけでグッとくる。


「サンキュ…、」


顔を上げて、目の前に座るこいつを見たらドキッとした。

スッピン!?
だよな?

周りは化粧濃い女ばかりで、これまで女のスッピンなんて見たことなかった。

うわ。
可愛いじゃねーかよ!!


「何?あ、顔?」

「スッピン初めて見た。」

「だってお風呂上がりだったんだもん。」

「お前、スッピンも可愛いな。」


ボンッ!と、みるみる赤くなる。


「いや、えーと、ありがとうございます。恐縮です。」

「ぶっ!どういたしまして。」

「あーもー、恥ずかしいなぁ。ほら、そこに横になって!
バスタオル敷くから。」


テーブルを横にずらし、ネイビーの大きなバスタオルを敷く。


「上着、ほらそこのハンガー使ってくれる?」

「これか?」

「そう。ネクタイも外してね。」


マッサージ場所をセットして振り向いたら…



うっひゃ〜!
上着を脱ぐ姿や、ネクタイを緩めるのがすっごいカッコいいんだけど!
めっちゃ色っぽ!!
パパや進は何ともないのに、何でこの男だと目を奪われるのか。



「…お前、ヨダレ垂れそうだぞ。」

「へ?」


ハッとして、慌ててベッドがある部屋に行った。
身体に掛けるタオルケットを持ってくると、白いシャツに
スーツのスラックス姿の道明寺がポケットに手を入れて立っていた。


「背が高いから、ここが別の部屋に見えるよ。
あんたには狭すぎるよね。」

「まぁな。」


道明寺がラグに敷いたバスタオルにゆっくりと
横になった。


「少しでいい。」

「ん。」




小さな手が肩甲骨辺りを触った。


「…お前の手が好きだ。あったけぇ。」

「ふふ、そう?」


ゆっくりと、じんわりと擦るようにほぐしていく。


「ああ、…いい気持ちだ。」

「へへ、良かった。」


肩や背中、腰をゆっくりとマッサージしながら今日の飲み会の話をした。
道明寺がどうだったかと聞いてくるから、沖縄料理美味しかったよ
今度一緒に行こうって言うと、道明寺は嬉しそうだった。


マッサージで体温が上がると、華やかな男の香りが更に強くなった。
特別なコロンに混じって、あたたかい人間の匂い。
男の匂い。
すると否応なしに道明寺の身体を意識してしまう。
熱を感じて、筋肉を感じて、硬さを感じて…
男の人を感じる。
マッサージ店をしてた時は意識しなかったこと。



「…身体が生き返る。」

「ん?そんなにキツかったの?」

「いや、お前といると温かくなるからよ。
…あんなに寒かったのが嘘みてぇだ。」




つくしは手を止めた。




いつもSPの壁に囲まれた、富と権力に溢れた唯一無二な男。
誰もが羨むモデルのような美貌。
自信満々で、余裕たっぷりで、超攻めな男。
受付にいると周りの空気まで変わるのがわかるんだ。
空気まで支配してしまう。
あれが道明寺司だと誰もが思う。



「サンキュ。」


道明寺がゆっくりと起き上がった。
うつぶせになっていたからか、少し崩れた前髪を鬱陶しそうにかき上げる。
つくしは思わず手を触れた。


「…ふふ、思ったより柔らかい。」


道明寺はうっとりするように目を瞑った。


「やっぱりお前すげぇ腕いいよな。今日も寝そうになっちまった。」



つくしは司の目の前に膝を立てて座った。


「まき、」


そしてゆっくりと道明寺を抱きしめる。










ハッ、と小さな吐息が聞こえた。





「…もう寒くない?」



そう聞いた時、司がつくしの身体に手を回した。
左手でつくしの頭をしっかりと支えながら、巻き付くように
強く強く抱きしめる。



「…お前がいれば寒くねぇ。」



大事そうに抱きしめられて、私の中の女の子がキャパオーバーになりそうだ。



「あったけぇな。」

「ふふ、私って湯たんぽみたいだね。」






ゆたんぽ?司が口を開こうとした時。






ふにっ。





今、柔らかなものが顔に当たっ…

思考が停止した。








ん?




つくしが司のフリーズに気付いた。

へ?
なに?








「ぎゃああああ!!」





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