「牧野様、お出かけです。」

「了解。」


警護チームは、アパートを出て来た女性にいつも通り護衛を始めた。
人数は2人。
怪しまれないよう少人数、私服で後ろを歩いていく。


警護対象者は黒のコンパクトなTシャツ、ベージュのロングスカート
黒のスニーカー姿で家を出て来た。
モノトーンのドット柄トートバックを肩にかけ、颯爽と歩いていく。

あのトートバックは、警護チームには見覚えがあった。
UNI○LO×マリメ○ココラボの大胆な水玉模様。
大人気のブランドが低価格コラボバッグ発売と、女性の間でかなり話題になっていた。
そしてコラボバッグ発売の日。
チーム全員が出動していた。
ご友人と長蛇の列に並ぶ牧野様と一緒に、チームもUNI○LOに並んでいたのだ。
(万が一買えなかったら、司様が特注すると言われていたので安心。)
無事に牧野様はバッグを手に入れ、我々も任務を達成し
喜びの声をあげた事は記憶に新しい。



テクテクテク


皆が買い物に行くものと思っていた。
いつものスーパー。
もしくは足を伸ばして激安スーパーか。


が。
向かった先は駅。
そして…まさかの…JRに飛び乗ったぁぁぁ!!
(駅に着いて司様に連絡をされたようだ。司様から直ぐに追え!と指令が下る。)


我々、警護チームは電話やメールを把握出来るわけではない。
牧野様が行動を起こして初めて目的を知るのだ。

まさかの一人旅。
山の上のホテルに出たキャンセルを牧野様が知り
(気分転換か?)急遽旅に出たようだ。

迎えに来たホテルのリムジンバスには、テレビの撮影のように
空からヘリが追っている。
リムジンバスから宿泊するホテル名が判明したが、電話をしても
運悪くゴルフツアー客で満室とのこと。
なので日帰り客を装い、ホテルにいるしかなかった。




「あ、もしもし?優紀?へへ。面白かった?
ぷぷ、写メ笑えたでしょ?
ホテル前で撮ってみた。ん?そーそー、ひとりだよ。
…えー、だってさ。トラベルギフト券、期限切れたら勿体無いじゃん。
一万円分あるんだよ!?一万円だよ?
いーの、一人で。思い立ったら吉日って言うじゃん。
一泊2日で夕飯と朝食付きなんだよー。安かったの!
…まぁねぇ。“眺望があまりよろしくない”とは言ってたけど、そんなの平気でしょ。
ん?どんな眺めかって?それ聞いちゃう?
ぷぷ、目の前ね壁なんだよ(笑)」

「…ぶっ!ゲホゲホ!」


ラウンジでお茶を飲んでいたつくしの後ろで、誰かがむせたようだ。


「安いのは理由がある、だよね。
でもね温泉もあるし部屋でご飯食べれるらしいの。
それか食堂みたいな所でもいいって。
…まぁねぇ。壁見ながら食べてもねぇ。」


友人とだろうか。
女性は身振り手振りをしながら電話の相手と話していた。


「ん?道明寺?いないいない、一人旅だって。
急に思い立ったし、旅行券一人分だったし。
びっちりスケジュール詰まってるだろうから、西田さんに迷惑かけるわけいかないしね。
東京から2時間だよ、すぐでしょ?
それがねぇ、ゴルフ客メインなわけだよね。山しかない。」


ケラケラと笑いながら、うんうんと頷いている。


「だから温泉には4回は入るよ!温泉と食事がメインだもん。
うん。わかったー。また連絡するね!」


つくしは電話を切るとチェックインしに、受付へと歩いて行った。











「………それで?」


優秀な秘書は小さくコホンと咳をした。


「牧野様はホテルのリムジンバスに乗られた後、到着されチェックインされました。このホテルは…、」

「それはもうホームページを見た。次!」

「建物と建物に挟まれたシングルルームにお入りになり…、」

「は?オーシャンビューとかじゃねぇのか?」

「はい、えー…牧野様は景色にはこだわりがないようで…。」


美しい男はオーダーメイドのスーツを隙なく着こなし
執務室の自分のデスクに座っていた。
秘書を睨む。


「たった一泊だろ。」

「申し訳ございません。」

「何とか出来ねぇのか!?」

「本日は大事な会議、会食、パーティーと分刻みでございます。
お察し頂きたい。」


ペコリ、と一礼したあと秘書は執務室を出ていった。

……ハァ。

司はため息をついた。

分かっている。
何ヶ月も前から組まれているスケジュールだって事は。
…だけどあいつの旅行に付いて行きたかった。
ホテルに行って驚かせたかった。
一緒に散歩したり、一緒に食事したり。
浴衣姿のあいつ可愛いだろうな。




…浴衣!?

ちょっと待て。
俺以外はあいつの浴衣を見れるのか?

司は一気に機嫌が急降下していった。


「西田!!来い!!」










警護チームは困惑していた。

先ほどチェックインしてから牧野様はお部屋にお荷物を置くと
ミニバックを持ち、早速ホテルの周りを散策始めた。
手にはホテルおすすめのヨーグルトドリンク。


「うわ、おいっし!」


また一口。


「濃いなー!これ買って帰ろうっと。」


散歩から帰ると早速、大浴場へと向かう。
その後を女性のSP達が追いかけて行った。


「お風呂あがりにはコーヒー牛乳だよね♪」


浴衣を着てお風呂を出てきたつくしを見て、警護チーム(男性)は一斉に目を反らす。
絶対に浴衣姿を見るなと言われ、非常に困惑しながらも警戒を続ける。
そんな事は露知らず、つくしはコーヒー牛乳を買った。


「あっ!濃厚ソフトクリームって美味しそう!」




……ご飯前にまだ食うんかい!!


警護チームは一斉にツッコんだ。









「うっわ!豪華〜!!一人じゃ勿体無いなぁ。
あ!写メ撮らなきゃっ!」


つくしがレストランでSPに囲まれ、幸せに食べている頃…




令嬢が司のタキシードの袖にそっと触れた。






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