一瞬、見知らぬ天井にドキッとした。




そうだ。
ここはメープルの…



うわ。

…珍しい。 


道明寺はまだ寝てる。
つくしは隣に眠る恋人を見つめた。


薄明かりの中、とても綺麗な男が隣で静かに眠っている。
微かな寝息がくすぐったい気持ちにさせるんだ。

キュッと上がった眉毛に長いまつげ。
毛穴って知ってる?と言いたいぐらいツルツルの肌。
僅かに開いた唇は静かに寝息をたてて…


ヤバい。こりゃたまらん。


…あ。顎にうっすら髭が生えてる。
触りたくて…ウズウズしてしまう。


何だろう。
綺麗なのに男っぽくて、色っぽくて。


起き上がって触ろうとした。
けど中々起き上がれない。

…こいつのせいだ。
んもう。



「…お邪魔しま〜す。」


小声で囁きながら、にじり寄って腕の中に入った。
へへへ、あったかい。
いー匂い。



18歳から知っている男。
我儘でヤキモチ焼きで、口が悪くて王様な性格で。
こいつにどんだけ振り回されたか。
しょうもない赤紙で他人の人生をめちゃくちゃにしてさ。
私がよっっっっ…ぽど、前世で何かしたのかと思ったよ。


18歳から…何があっても私を愛し続ける男。



つくしは目元を軽く拭った。





…まだ寝てる。 

こんなに熟睡してるの珍しい。

よっぽど眠たかったのかなぁ。
起きる時間は分からないけど、まだ寝かせててあげようっと。
  
 
えいやっ、と起きて つくしはシャワーを浴びに向かった。
(身体がダルい、ヒリヒリする。理由が分かって顔が赤くなった。)







シャワーを浴びて出てくると…
まだ寝てる。

 

ぶっ。



さっきより陽が入って明るくなった部屋の中。
サイズが大きいバスローブの袖を折り返しながら、ベッドに近付く。



寝顔めっちゃ可愛い。


…ちょっとだけ。



つくしはバッグから携帯を取り出し、寝顔を撮った。


へへ。


やった!
これは貴重だな。





気配でなのかシャッター音でなのか、美しい男がゆっくりと目を開けた。


「へへ、おはよ。」


道明寺がハッとした。
よだれものの上半身を起こして目頭を軽く押さえる。


「あんた、よく寝てたよー。」

「…頭がまだボーッとする。」


こどもみたいなひとり言。
めっちゃ可愛い。


「もしかしてずっと寝てたのか?」

「うん。気持ちよさそうだったから起こさなかったよ。」


頭を軽く振る仕草まで、何かの撮影みたい。


「…すげー、よく寝た。」


ベッドに座ったつくしが笑うと、その頬に手を伸ばした。


「お前の側だと安心出来る。」


胸がきゅうっとなった。
あいつが優しく笑うから。


「シャワー浴びてくるわ。」

「あ、うん。」


立ち上がってバスルームに行く男神にギョッとした。


「ちょ、ちょっと!何か着てよ!」

「あ?」


朝日の中、素っ裸の男はいくらなんでも…!


「わりー、わりー。元気なままでよ。」

「ちょ…!」


わざとこっちに向かって歩いてきた。
慌てて近くにあった枕を投げる。
ゲラゲラ笑いながらも枕を受け止めて後ろに放った。


「きゃ…!」


ベッドに押し倒され、大きな身体が伸し掛かってくる。
ギシッと音を立てるキングサイズのベッド。


「スケベ。」

「は?」

「一点ばかり見てんぞ。お前、お気に入りだよなぁ?」



ばふっ!!

今度こそ枕を顔に投げつけてやった。











「え?」


スイートに運び込まれた朝食は、見た目も美しい完璧さ。
白い丸テーブルで向かい合う男がすっごく綺麗で。
白いシャツって最強かもしれない。


「今日は休め。」


完璧な作法で美しく食べる男。
バターナイフを気軽に渡せる関係って何かいいよね。

ネクタイをする前の、白シャツだけって色っぽい。


「でも…、」

「無理させただろ。
お前の会社にも休むって伝えてあるからよ。」

「はぁ?あんた勝手に…」

「社長が終日、営業回りにしとくってよ。」



営業!?

そうだ、昨日会社に…


「うちの会社と取引するの?」

「ああ。」

「なんで急に…」


ロールパンを軽くむしると私の口に入れてきた。


「…むぐ。まだあったかい!…じゃなくて!」

「お前が世話になったから。」


上目遣いで私を見ながらパンを食べた。
理由なんてそれだけで十分、みたいに軽く言う。


…ヤバい。
涙出そうになる。

だけと桁が違う、桁が!


「営業次第で取引も変わるもんだ。
これからのお前の頑張りによるな。」

「はぁ?何を頑張るのよ。」

「ベッドの中で、…いてっ!自分の男を蹴るな!」


笑い声が響くスイートルーム。
こいつは昔からそう。

ふざけて、からかうんだよね。
私にだけ。
全く、甘えんぼなんだから。


「このままここでゆっくりしていけ。
俺がキープしてる部屋だから遠慮するな。」


…社会人としてどうなのよと思うけど、確かにちょっとキツイかな。


「うん。じゃあお言葉に甘えて…。」


道明寺が嬉しそうな顔をした。
自分の部屋に、私がいるのがそんなに?
(私ならメープルのスイートを自分の部屋とは思わないけど。)




「あのベッド処分しとくからよ。鍵寄こせ。」

「え?いーよ。」

「いいから。鍵。」


渋っていたら、鍵無くても入れるが一応礼儀としてとか何たら。
何こいつ!


「新しいベッドとかいらないから。」

「俺が隣で使ってたのを持ってく。それならいいだろ。」


ヨーグルトにたっぷりの旬のフルーツ。
味わっている時には反論しづらいったら。

頷くと、頭をわしゃわしゃされた。


「昼は適当に運ばせる。何かあったら連絡しろ。」

「ん。ありがとう。」


2人でゆっくりコーヒーを飲む。
こんなひとときが持てるなんて嬉しい。

あいつの携帯から短い着信が聞こえた。


「時間?」

「ああ。」


あいつが立ち上がりバスルームへと向かった。
こっそり後を追う。
(歩き方がよたよたなってるけど)



おおおお。


道明寺の歯磨きなんてちょーレアでしょ。
にしし。



カシャッ。


写真を撮っても眉を片方上げただけ。
鏡越しに見つめてくる。

歯を磨く仕草まで絵になるなんておかしいよね。
なんだか可愛く見える。



「…俺の肖像権いくらか知ってるか?」




ぐっ。



「ぶー。いいじゃん、ケチ。」

「見逃してやろうと思ったが、どうせ俺はケチだからな。」

「いや、うそうそ!心が広い、よっ!日本一!!」


携帯をサッと後ろに隠し、ゆっくり後ずさる。
あいつが長い脚で近付き私を抱き締めた。


「…もー、写真ぐらい…」

「合鍵。…作ってもいいか?」


広い胸に抱きしめられながら、つくしは目を見開いた。


「う、ん。」

「じゃあ許してやる。」


言葉とは裏腹に、うっれしそーな声しちゃって。



綺麗な顔がゆっくり近付いてきた。
柔らかな唇がそっと触れる。


「…歯磨き味だ。」

「お前はヨーグルト味だな。」

「…ちょっと。」

「……。」

「なんか当たる。」

「ちょっと。」

「うるせーな。朝からもするつもりだったのによ。」


暴れだしたつくしをぎゅっと抱きしめる。


「また夜な。」

「…体力を考えてくれ。」

「優しくすっから。」

「…話を聞け。」

「な。またベッド壊そうぜ。」





華やかな男はジャケットを掴み、重厚な扉を開け
可笑しそうに笑いながら出ていった。


対するつくしは、頭皮まで真っ赤になりながら叫んでいる。




護衛たちは、扉からエロガッパと聞こえてきた声に
目を丸くした。









ああ、なんて幸せな朝。


サイン一つでGNPを変えると呼ばれる男は、リムジンに乗ってからも
手の平に握りしめたキーホルダーを大事に大事に見つめていた。






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