司はネットで調べていた。


「お返しなら…有名な店のスイーツ…、限定のホワイトデーギフトBOX…
なんだ、菓子ばっかりだな。
…あんまり重たいのはNG…。重たい?重たいって何だよ。」


コホン、と目の前にいる男が咳をした。


「気持ちだけでいいという事でしょう。
高価なものや、仰々しいものはあまり…、」

「じゃあ、マンションどころか車も駄目か?」

「車…ですか?」

「運転手付きのな。」

「………。車、ですか。」

「何だよ。」

「牧野様は受け取らなさそうな気もします。」


小さな舌打ちが聞こえた。


「恋人に菓子だけなんて有り得ねぇだろ。
おい!」

「は。」

「今日時間作れよ。いいな?」

「…かしこまりました。」


有能な秘書は、その後の分刻みのスケジュールを脳内でパズルのように動かし
どうにか45分(無理やり)空けた。










「司様、お待ちしておりました。」


ズラリと並んだ重役たち。
大名行列のように後ろに引き連れ、超一流デパートへと足を踏み入れた。


「どうぞ。こちらでございます。」


司は支持した物を見に、VIPルームへと入っていく。

そこにはまるで小さなデパートのように、あらゆるものが並べてあった。
司は目を細めてざっと見渡す。


「まずはこちらから…、」

「説明はいい。自分で選ぶ。」


姉が着そうな華やかなドレスやバッグ、靴には目もくれず
アクセサリーを並べてある場所へ歩いていった。

派手過ぎるものは却下。
あいつに似合うもの。

その時、華奢なチェーンで小さなトップが目に入る。


「随分華奢だな。」

「こちらは、取り外さず付けたままにする方が多いです。」

「外さないのか?」

「気になる方は外しますが、お守りのように付けたままでも
重さも違和感を感じにくいです。」

「…へぇ。」


ハート、クロスなどの定番のデザインからじっくりと見ていく。

司の目がとまった。

アクセサリーが並べられているベルベットのケースを
指でトントンと指して合図を送る。


「このモチーフを。」

「かしこまりました。バタフライですね。」


それは小さな蝶のデザインだった。


「ホワイトゴールドじゃなく、ゴールドかプラチナはあるか?」

「確認してまいります。」


司はガラスケースから目線を上げた。


「これなら気軽だろ?」


近くにいた西田がゆっくりと頷いた。


「お待たせいたしました。ゴールドとプラチナ、どちらもございます。」

「どっちも似合いそうだ。」


しばし悩んだあと、司はプラチナを指さした。


「こっちだ。あいつの肌に合う。」


ネックレスを包んでいる間、有名な菓子やお洒落なBOXを手にとってみていた。
ふ、と笑う。


「あいつ、箱取っておくのが好きだからな。これもくれ。」

「ありがとうございます。」


自分がプレゼントを貰ったように微笑む上司を見て
西田も口の端が上がっていた。





RRRRRRR.

「おぅ。何してた?」

『んー、だんご汁作ってた。』

「は?だんご?」

『ケンミ○ショー見てたら美味しそうでね。しかも薄力粉で作れるんだよ!
今からびよよ〜んって伸ばすとこ。』

「何だそりゃ。」


クックッ、と重役やスタッフに囲まれながら恋人に電話をし
美しい男は、楽しげに笑う。


『あ!!』

「どうした?」


やだもー、とか、うわっとか電話の向こうが騒がしい。


『もー、1個落としたー!勿体ないー!』

「…ったくお前はよ。」


綺麗な男が可愛くてたまらないという表情を見せた。
スタッフ達が目を見開いたあと、深いため息が広がる。


「夜に食べさせてくれ。」

『はいはーい。じゃねー。』

「おう。後でな。」


プレゼントを受け取り、首を軽く傾げて小さな袋を眺める。


「喜びそうだ。」


普段なら表情がない、冷たく見える顔が少し優しく見える。

優秀な秘書が進み出た。


「司様、お時間です。」


振り向き、秘書やSPを連れてその場を後にする時は
誰もが知っている冷静沈着な御曹司そのものだった。
ダークネイビーのスーツ姿は近寄り難く、危険な雰囲気が漂う。
いつもと違うのは…
可愛らしい紙袋を持っていることだった。









喜ぶ顔がみたい。



司の思いは、
司の願いは、



たった一人の為だけに。










ああ、幸せだなって思う。


お前の側にいるだけで。






「俺だ、もう着く。」





単純だろ?


だから、幸せにしてくれ。






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