カジュアルフロアから、スーツが並べてあるフロアへ入っていく。


ふわー。

なんか、もう。
スーツが綺麗。シャツや小物まで綺麗なんだもん。
2着でいくらも凄くいいんだけど、これはもう…
そう、勝負スーツだ。

布をそっと触る。

…あいつがいつも着てるスーツみたい。
めちゃくちゃいい布って感じ。



そしてタグを探す。



さり気なく、さり気なく…

ピラ。




ふぉー!!!




び、び、びっくりした。


いやいや、私でもね買えるよ。
お金おろしてきたし。

でもさ、見慣れた進やパパの買い物と違い過ぎて…

あーーーびっくりした。




つくしは美しくディスプレイされたネクタイを見つめた。

道明寺のスーツ姿が浮かんでくる。


鍛え抜かれた身体に、モデルのような長身。
雑誌やテレビで見るあいつはいつもビシッと決めたオーダーメイドのスーツ姿だ。
つくしのイメージは皆が見ている姿と少し違う。

ジャケットを脱いだり、ネクタイを緩める仕草。
カフスをはめたり、時計をつける時の綺麗な長い指。

ああいうのを色気っていうんだと思う。
本当に綺麗なんだもの。



ネクタイ…これなら選べそう。

センスがイマイチでも、あいつが持ってる何百本の中に埋もれるだけだし。
(全身UNI○LOコーデなら自信あるんだけどさ。)


この深い青きれいだな。
あ、この黒地も似合いそう…

つくしはネクタイを手に取り、恋人を思い浮かべながら選び始めた。








「何処だって?」

「お買い物をされた後、今はカフェで休まれているようです。」

「買い物?また重たいものじゃねぇだろうな。」


司が眉を潜めるのを、西田は見逃さなかった。


「こないだは特売だったので買いすぎたようですが、今日は衣料品でしたので。」

「場所は?」


西田が伝えると、司は恋人に電話をかけ始めた。


RRRRRR




『…んっと、もしもし?』


声を聞いた瞬間、自分の口角が上がるのがわかった。
西田に言わせると目元も違うらしい。
しょうがねぇよな。
これは条件反射ってやつだ。
この女の声だけで、俺は幸せになれる。


「おう。」

『うん。どうしたの?』

「あー、次の予定まで少し時間が空いた。」

『そうなの…あ、ありがとうございます。』

「なんだ?」

『今カフェでね、ランチ頼んでたのがきたんだ。』


司が笑った。
明らかに嬉しそうな声色が可笑しくて。


「何頼んだ?」

『えっとね、今日のランチはミックスフライ定食。
揚げたてだから切るね。』

「ぶっ、分かった分かった。」

『お仕事頑張って、あ!西田さんに無理言ったりするんじゃないわよ。
ちゃんとお昼も食べてよね。』

「はいはい。」

『はいは一回!じゃ。』


司は電話を耳から外しながら、やってきたエレベーターに乗り込んだ。


「…ミックスフライに負けたのかよ、俺。」


どんな女でも、どんな奴でも何より俺を優先にするはずだ。
この道明寺司の視界に入る為なら、記憶に残る為なら何だってするだろう。


…たった一人を除いて。


俺を普通の男と思っているんだ。
それが何て…嬉しいのだろう。

司はニヤニヤ笑う口元を手で覆わずに、1階までさっきの会話を楽しんだ。
そして美味しそうに食べる姿を想像してまた笑う。


大財閥の御曹司の斜め後ろ。
優秀で有名な秘書も上司の気持ちが分かり、また微笑んでいた。









“今日は遅くなる。先に食べててくれ。”

「はーい、っと。」


ポチリと返事をした後、軽く夕飯を食べ
ゆっくりとお風呂に入った。
長めに足のマッサージをし、凝りをほぐしていく。

遅くなる、という事は0時を超えるだろう。
あいつは海外にいる時以外は、私の元に帰ってくる。

移動も大変だろうし、昔のように自分の邸に帰ればいいのに。
それかメープルに泊まるとか。

つくしは小さくため息をついた。




明日は仕事だし早めに休もうっと。
髪を乾かし、身体を冷やさないうちにベッドに入った。

キッチンテーブルには今日買ったプレゼントと小さなメモを置いてある。
私はあいつにプレゼントを買って渡した事がほとんどない。
昔は手作りのものをリクエストされていたから。

…喜んでくれたらいいな。







《道明寺へ。ネックレスありがとう。
これは似合いそうだったので私からプレゼントです。つくし》




あいつどんな顔で受け取るのかなぁ?

つくしは微笑みながら眠りに落ちた。






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