“まもなく到着致します。”


内線が聞こえた時、つくしは瞬きをした。
ふわふわしてケタケタ笑っていたけど…
視線をあちこちに向けていく。


目に入ったのはスカートがずり上がり、見える自分の生足。
靴も見当たらない。
クシャクシャになって破れたストッキング。
背もたれに放り投げられたジャケット。

なんと言っても目の前にいる、美貌の男。

シャツは皺だらけで、ジャケットは…私の下に敷いている。
この男の満足げな表情を見なくても分かるだろう。
2人がここで…


「ヤッたって?」


つくしは口を開けたままだ。
ちなみに目も落っこちそうなぐらい見開いている。


「すっげぇ良かったな。」


破廉恥なこの男はハァ、とため息をついた。
スラックスのジッパーを閉める仕草が超絶色っぽい。

満足げなあの顔。
ちょっとうっとりしてる。






…じゃなくて!


「ど、ど、どうしよう。」

「あ?何が?」

「もう着いちゃうじゃない!この格好…!」

「バレバレだな。」


つくしは首が千切れるぐらい激しく縦にふった。


「リムジンの後部座席でいたらぬことをしたってバレちゃう!」

「あ?」

「服、ぐちゃぐちゃ!」

「車でヤッて、何がわりぃんだよ。」


シャツをスラックスに入れ込みながら、しれっと言う。


「狭いのって興奮する。またしような?」



そうだった。

こいつ、恥ずかしさの欠片もないんだった。
どんな顔して出ていくのかなんて微塵も考えない。


「降りる時もマンションにも警護の人達、いっぱいいるじゃない!
どうしよう!」

「ははは、お前は照れ屋さんだなぁ。」

「…は?」

「そこも可愛いんだけどよ。」



厚顔無恥な男はほっぺたを優しく撫でてくる。

つくしはギリギリと奥歯を噛んだ。



大きく息を吸う。
血圧が一気に上がるわ。
平常心、平常心。
何事も無かったような顔で出ていくのが一番。


…って、


「ギャー!ストッキングがビリビリ!!」


司が肩を竦めた。


「我慢出来なくてよ。」

「何とかしろ!!」

「何を?」

「いいから!!」


美貌の御曹司は愉快そうに笑った。


「やっぱりお前は面白え。」


ネクタイを外すと大事そうに畳んだ。
ジャケットに包んでドアの足元に置く。


「何してんの?」

「お前からのプレゼントだ。染みになったら困るだろ。」


ミニバーに手を伸ばし、よく冷えた高級なシャンパンを手に取った。
勢いよく振る。


「何してるの。」

「シャワーといこうぜ。」

「はぃ?」




次の瞬間、つくしが見たものは…


綺麗な男がリムジンの中でシャンパンを爆発させた。


天井で跳ね返ったシャンパンが、水飛沫となって二人に降り注ぐ。


こ、こんな、アホな…


つくしの口は、林檎でもそのまま入りそうなぐらい開いていた。


ゲラゲラと笑う道明寺。

黄金色のシャワーが車内中に飛び散る。


「やっべ、お前の顔おもしれぇ。」


笑いながら2本目にいった。
つくしは顔にボタボタ落ちてくるシャンパンに瞬きをする。
舐めると芳醇な香りがした。


こいつ、本当にどうかしてるわ。


シャンパンの香りにまたフワフワしてきた。







前後をSPの車に挟まれ、リムジンが停まった。

マンションの前で警護の者達が見たものは…

びしょ濡れになった彼らの警護対象と、その恋人の姿だった。

全身から酒の匂いがする。


髪も、着ているものも、びしょ濡れだった。


「車内をクリーニングさせろ。遊び過ぎた。」

「か、畏まりました。」

「やだ!靴の中まで入ってる!このバカ!」

「お。ネクタイは無事だな。」


裸足で履いている靴はキュッキュッと濡れた音がする。
乾いたら全身あり得ないほどベタベタになるだろう。
車内に転がった、目が飛び出るほど高額なシャンパン。
御曹司のオーダーメイドのスラックスのポケットには…
ビリビリに破れたストッキングが入っていた。


「ギャー!バッグがベタベタしてる!こんにゃろー!」


呼吸困難になりそうなぐらい笑い続ける御曹司。









「…司様って笑うんですね。」


任務を終えポツリと呟くSPの一人。
渡米してからの道明寺司しか知らない者達はただ、ただ驚いていた。

有り余るほどの資産と、どの国にもVIP待遇で迎えられる血筋。
世界的大財閥の御曹司という地位。
国家権力をも動かせる力。
そして誰もが目を奪われるほどの美貌。
圧倒的なカリスマ性を持つ男。


全てを持っているのに、ニコリともしない。
分刻みのスケジュールをこなし続け、世界中から美女が群がっていたが
側には寄せつけなかった。
青白い顔をし、朝を迎えて夜を終える。
ジムで身体を動かしていたからではない。
食事代わりにサプリを取るのを見ているSPは一人だけではなかった。

御曹司はどんどん痩せていく。

食欲が無く、常に頭痛に悩まされ、不眠が続く。
御曹司は苦しんでいた。






「司様はな、」


NY前からいるベテラン達は笑みを浮かべた。


「あの方が側にいればいいんだよ。」

「牧野様か?」

「ああ。」


視線の先には、御曹司をバシバシ叩いている恋人の姿があった。








「あー、もうベッタベタ!」

「誤魔化せただろうが。」

「ちょっと!そっち行っちゃダメ!真っ直ぐシャワーに行って!」


つくしは服を着たままシャワーの下に立ち、勢いよくお湯を出した。


「…あー…。気持ちいー。」

「酔っ払い。」

「あんたがシャンパンかけるからでしょ?全身ベタベタだから
洋服に張り付いて気持ち悪い。」

「お前のあの顔な!いやー、笑った笑った。」


つくしの背後に立ち、つむじにキスを落とす。
司は貼り付いている酒臭いジャケットを脱がせ、足元に落とした。
ジャケットの後はシャツ。
長い美しい指が後ろから伸びて、ボタンを一つずつ外していく。


「ちょっと、いいって。自分でするから。」

「いいじゃねーか。」


道明寺は片膝を付けて座り、スカートのファスナーをゆっくりと下ろした。
キャミソールを脱がせ、有無を言わせず下着に手を伸ばす。



つくしの耳にはシャワーの音と、下着を脱がせながら興奮している男のため息が聞こえた。

俺のせいだから洗ってやるよ、って耳元で囁く。


耳たぶを軽く噛まれた。






ああ、クラクラする。
甘い目をしたこの男に…酔っ払ったみたい。












パラリラパラリラ♫
東京に特攻服を着たレディ達が集まっているようです。
リムジンが取り囲まれたようで。
皆さん、安全運転を!

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