みおつくし、3周年になりました。
ファミリーでメンバーでもある、皆様いつもありがとう(^^)
皆さんにもファミリーと坊っちゃんがついていますからね。
これからもよろしく♡








古びたアパートの目の前に、滑るように止まったピカピカのリムジン。

後部座席のドアが乱暴に開いた。

飛び出すよう降りてきたのは、オーダーメイドのイタリア製スーツを着こなしているモデルのような男。
SPが開けるより先に物凄く機嫌の悪そうな顔で飛び出してきた。


「牧野様はご自宅に、……いらっしゃいます。」


御曹司は報告を聞く前に行ってしまった。
SP達は慌てて向かっていると建物内の仲間に伝える。

司様の2週間の出張は珍しい事ではない。
アメリカに本社がある世界的企業だ。
本来なら2週間とはいわず、数カ月ごとに行き来する仕事量。

だけど、司様には日本を離れたくない理由があった。



御曹司はエレベーターを降り、待機している護衛を手を振って下がらせた。

リムジンに乗っている時からポケットの中でずっと触っていた
小さな鈴のついた鍵。 


自分でも分かっている。
大統領と話をした時だって、緊張なんかしなかった。

あんな小さな女を…
この俺が心底恐れていることを。



22時半過ぎ。
まだ起きてるよな。

鍵が開き、司は勢いのままに部屋に入った。



灯りのついたキッチン。
大きな目が見開き、ポカンとした表情の女がこちらを見ていた。
呑気に何か食ってやがる。


「へ?帰ってくるのって明後日じゃなかった?」

「…おまえ何食ってんだよ。」

「これ?出前○丁だけど。」


食べてるものを聞いたワケじゃねぇ。

それでもホッと力が抜けた。


「何で電話しねぇんだよ。」


司は部屋に上がると恋人の前にドサリと座った。


「メール返したじゃん。」

「電話してくれ、必ず出るって何度送ったよ。
お前3日間1回も電話しねぇし、俺から掛けても出ねぇしよ。」


長い足を組み、少し斜めに座ったままつくしを睨む。
綺麗な指がコツコツとテーブルを叩いていた。



「ほら、忙しいかなって、」


はふはふと麺を食べ始める。






「…あの報道はガセだからな。」

「あ、うん。」

「何もないから。」

「分かってるって。」



気にしてないように装い、はふはふとラーメンを食べ続ける。

じっと目の前で私を見つめる男。





…ビックリした。

まさかこいつがスケジュールを押して帰ってくるとは。

パジャマのまま夕飯のラーメンを食べていた所に
いきなり道明寺がやって来た。

いつもなら私が電話しないことを、言いに来たりしない。

さすが野生。

感じとったんだろうな。
私のマイナス思考を、さ。



信号待ちをしているとビルの大画面に流れたゴシップニュース。

“米国大統領の愛娘、道明寺司氏にアプローチ”
“パーティーで道明寺司氏に一目惚れ!”
“大統領も俄然乗り気で後押し中”

そして二人が並んで写っているパーティーの写真。


ガツン、ときた。


もうね、ゴージャスの一言。
ブロンドの迫力美人は背も高くて、ヒールを履くと道明寺と変わらないぐらい。
文句なしに綺麗で自信に満ち溢れている。

二人並んでる写真はお似合いの一言に尽きるの。
家柄、地位、財産、どれをとっても最高の相手

しかも米国大統領の娘だよ?
マンガみたいでしょ。

これ以上のひとはいないだろう。




大画面を、沢山の人達と眺めている自分。

いつもテレビで見ているアナウンサーがあいつの名前を言う。

“ビッグカップル誕生ですかね?”
“これが本当なら日米間の関係は良好になりますね”
とか。


あいつからの着信にわざと出なかったのは認める。
だって怖かった。
いつもみたいに“ガセだからな”とか“俺を信じてくれ”じゃなかったら?

あいつの家や会社にとってこんなにいい縁談はない。
周りのプレッシャーも相当強いだろう。

道明寺が板挟みになる姿は見たくない。
巨大な企業を今では大事に思ってるのも分かっているから。




いつもは大好きなラーメン。
なのに今日は味が分からない。

…ちゃんとラー油も入れたのにな。




ハァー…、道明寺がテーブルに顔を埋めた。

大きなため息にビクッとなる。


「な、何よ。」


まだ顔を上げない。

デカい身体が小さな二人用テーブルに突っ伏している。


「疲れたの?」

「………。」

「なにかあった?」

「……った。」

「え?」


小さな声。


「…いよいよ愛想尽かされたかと思った。」


つくしはゆっくり瞬きをした。


「…お前ズルいよな。俺をビビらせて楽しいかよ。」


本当に小さな声なの。
胸がギュッとなる。

世間ではさ、フラれるのは私だと誰だって思うでしょ?
(私ですらそう思ってる)

だけどこの男は違うの。
自分がフラれると思ってる。



「記事を抑える前に流れたからよ。お前が怒ってんのかと。」

「怒ってない、よ。」

「嘘つけ。」

「嘘じゃないって。」

「じゃあ何で電話に出ねぇんだよ。」

「ちょっと…いじいじ気分だったっていうか…、」

「はぁ?意味わかんねぇ。」



むぐむぐむぐ。

ん?

ラー油の味がしてきたぞ。



「おい、呑気に食ってんなよ!」

「だって伸びちゃう。」



またため息。


「…俺の事好きか?」


むぐむぐむぐ。


「うん。」

「愛してるか?」


むぐむぐむぐ。


「うん。」

「もう何百回言ったか忘れたけどよ。」

「…ゴク。はふ、そんなに睨まないでよ。何?」

「結婚してくれ。」

「いーよ。」









…ごくん。





目の前には、時が止まっている綺麗な男が一人。

すごく驚いた顔をしている。


ちなみに私もそう。
目を見開いたまま、口を押さえていた。 

い、い、今さ。
私何て言った?



「…いいよって言ったよな?」

「う。」

「いいよって言ったな?」



傍から見ると、大きな男が詰め寄っているように見えるだろう。
小さなテーブルに身を乗り出して、ジリジリと近づいてくる。






ぷっ。

見てよ、この顔。



「お前、撤回するとか言ったらぶっ飛ばしてやるならな。」

「…言わないよ。」



道明寺の目を見つめながら答える。



「あんたが好きだもん。」





とっくに分かってたんだよ。


あんたは本当にどんな女性がアプローチしてもなびかない。
私だけをずっと想ってる。

制服を着ていた頃から、私だけを見つめてくれていた。

このまま続くわけないって思われていた恋。


私を泣かせるのも、心配させるのも、幸せな気持ちになるのも。
あんただけ。


好きって気持ち。

あんたを大事にしたい。
幸せにしたい。


一番大事な事でしょう?


私は何も持ってない。
お金も美貌も権力も、なーんにもない。


だけどこれだけは言える。
道明寺司を幸せに出来るのは私だけ。






大きな身体にきつく抱きしめられた。


「…マジ?」

「うん。」

「マジで?」


くすぐったくて照れくさい。
つくしは小さく笑った。



「取り消しとか出来ねぇぞ。」

「もーしつこいって。」

「録音したからな。」

「……は?」



こんな頭おかしい奴、私以外誰がいるっての?



道明寺が笑った。
幸せそうに。



あんたの(重すぎる)愛情。





やっと私、あんたに追いついたね。

今まで待たせてごめん。




うん。
私も覚悟を決めました。







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