あまりに派手な男の登場に、誰もが目を奪われた。


威圧感のある185センチの身長。
モデルのような抜群のスタイル。
超美形と絶賛される顔。
オーダーメイドのダークスーツに、スタイリッシュにカットされた特徴ある髪型。



「…おい、ウソだろ…。」


つくしの近くに座っていた男が、弾かれたように立ち上がった。


「道明寺…さん!ですよね!?」

「…あ?」


名前を呼ばれ司がそちらを向くと、親戚の男の表情がぱあっと明るくなった。


「ちょっ…、嘘だろ!本物だ!」


両手を頭の上に置き、嬉しい驚きを隠せない様子。
それを見た周りの親戚たちは、この息子の為の来客だと思った。


「貴方のお客様なの?」

「そうだよ!うわぁ!信じられねぇ!」


わらわらと息子の元へ家族が集まってきた。


「どんなお知り合いなの?見たことある気が…、」

「道明寺って…あの道明寺家か?」

「そうだよ父さん!
あの!道明寺財閥だよ!!」


このいきなり現れた美しい男が何者なのか。
ようやく本家の者達が気付いた。

あちこちから叫び声があがった。
いや、ほとんど悲鳴かもしれない。


「一年アポを取り続けてたんですよ!
秘書室はようやく繋いでくれたんだ。ありがとうございます!」


大興奮の若い男に、司が眉を潜めた。


「流石、本家の長男だ!」
「こんな大物と付き合いがあるなんてなぁ!」
「将来安泰だ!」
「いやぁここはいい息子を持って幸せものだな。」
「道明寺財閥といえば大金持ちじゃないか。」
「世界的にも有名なんだぞ!」


やんや、やんやと大フィーバーな広間で。
ある家族だけはお互い顔を見合せていた。




誇らしい気持ちで鼻を膨らませてる男に、御曹司が冷たい視線を送る。


「何だ、お前。」

「えっ。」


ようやく御曹司の冷たい目線に気付き困惑した。


「あのですね、裏山の権利を一部譲って頂けないかと、ずっと御社に…、」

「知らね。」


興味無さそうに軽く手を振る。


「あ、あの…道明寺さん、」

「気安く話かけんじゃねーよ。」



違うのか?
知り合いじゃないのか?
じゃあ何で大金持ちがここに?
周りがシーンとなる。

その時、鼻歌が聞こえてきた。




フンフンとご機嫌な様子で、御曹司に気付かずに広間に入ってくる。


「ん?静かだな。」


相変わらずご機嫌なパパがハンカチで手をふきふき歩いてきた。


「まさか…開いてる?
ママにまた怒られちゃうな。」


「晴男さん!あんたこんな時に呑気だね!」
「凄い人が来てるんだよ!」
「滅多にお会い出来る人じゃないんだよ!」


パパは社会の窓チェックから、ようやく顔を上げた。



「あれ?何でここに?」

「晴男さん!
本家のお客様なんだからじっと見ちゃ失礼だよ!」


パパがしゃっくりを一回。





「お義父さん。」


素晴らしくよく通る美声が、ピン!と広間に響き渡った。


「おお。どうしてここに?」

「ニューヨークから直行しました。こちらだと伺ったので。」


大財閥の御曹司は晴れやかに笑いながら、長い脚で歩いてくる。
そして晴男の前に立った。

背の低い晴男の為に、少し身を屈みながら頭を下げる。


「やぁ。調子はどうだ?」


晴男からポンポンと腕を叩かれ(肩は届かず)御曹司は笑顔を見せた。


「上々ですよ。」


晴男の横に立ち、いくつか話をしながら顔を上げた。


「お義母さんは…、ああ、いました。」


酔っている晴男を支えながら、千恵子を見て笑顔を見せた。

千恵子は、周りの珍獣でも見る目付きにひきつりながら小さく手を振る。


「こないだ沢山フルーツありがとう。ワインも美味しかったわ。」

「ああ、良かった。
あれはうちのワイナリーで作ったものなんですよ。」


千恵子はコクコクと頷いた。
おばさま達は更に凝視してくる。


「このままお連れしますよ。
温泉もあるんでのんびりして貰えますから。」


御曹司が進に笑いかけた。


「よぉ。」

「あ、どうも。」

「どうもじゃねーよ。お兄さんて呼べ。」

「へ?あ、はい。ははは。照れるなぁ。」

「照れるなよ。うつるだろーが。」



つくしは瞬きを繰り返す。
何しに来たのかわからないけど、めちゃめちゃ上機嫌。
進は手招きされ、尊敬してやまない道明寺のもとへ行ってしまった。



「荷物もう運んだぞ。」


急に話しかけられ、はっとなる。


「は?荷物?」

「あんな崩れそうな所泊まんじゃねーよ。父ちゃん達腰悪くするぞ。」 

「ちょっ…、運んだってどこによ?」

「うちの別荘だよ。ったく、近くにあるんだから使えよな。」


近くって、あの…
例の噂になっていた…


「お言葉に甘えて…つくし、行きましょうか。」

「あ、うん。」


静まりかえった広間で、いつも通り家族で会話していた事を思い出した。


つくしは母を支え立ち上がる。


「ちょ、ちょっと!千恵子さん!こ、この方は…」


本家の奥様が青い顔をしながら、千恵子の腕を引いた。


「…ああ。ご挨拶が遅れまして。」


よく通る、低めの美声。


「つくしさんの婚約者の、道明寺司と申します。」

「あの、…道明寺さん?道明寺財閥の…」

「そうです。」



ポカーン…
広間は驚く顔が集まっていた。


沢山の息を飲む音。




千恵子が周りに頭を下げて挨拶をした。


「は、晴男さん。千恵子さん。
もう来ないかもしれないなんて水くさい。」
「そうだよ。うちに泊まってってよ。」
「この家は部屋数だけは沢山あるのに。なんでまた他で部屋を取らなくても。」
「疎遠になってたのが不思議だよ。」
「困った時は親戚で助け合ってきたじゃないか。」


にこにこにこ。



しかし、その笑顔も本家の息子の言葉で次第に曇り始める。


「…あんた達が俺の仕事の邪魔をしたのか?」

「は?」

「冷遇されたとかあること無いこと、道明寺さんに吹き込んだんだろう。」

「はぁ?」


つくしは進と顔を見合せた。


「何言いがかりを…、」

「一年間アポも取れなかったのは、あんた達が邪魔したからだろう!」


つくしは指をさされ、急に非難を浴びた事に驚いた。


「相手するな、ほら行くぞ。」

「う、うん。」


SP達が一家の周りを取り囲む。


「ちょっと待てよ!」


つくしに向けられた非難に、司が氷のような視線を送る。


「こんな事教えてやる義理はないんだが。
こいつの親戚のよしみで忠告してやるよ。
俺にアポを取ろうとする人間は星の数ほどいる。
だからイチイチ相手にしない。」

「な、なら今からは親戚なんだし協力してくれてもいいだろう。」

「…親戚?」

「そ、そうよ!親戚は助け合わないと。」

「晴男さん達が困った時は私達が手を差しのべたんたから。」


おばさま達は団結し、道明寺に媚びてきた。

いきなり道明寺が笑いだす。


「そうだったのか?」

「そうよ、晴男さんがリストラされた時も沢山助けたのよ。」

「ふぅん。」



クックッ、と笑う道明寺はゾクリとなるほど綺麗だ。


「あれは…何年前だ?お前が17歳の時だったかな。」

「…多分。」

「一家を漁村に迎えに行ったのは俺だ。」


皆が固まった。


「長い付き合いなもんでね。
こいつの親戚がすっげー親切で優しかったのを今でも覚えてるよ。
じゃあ失礼。」


頭を下げながら歩くつくしの肩を抱く。


「…あんたが迎えきたっけ?」

「いたじゃねーか。あーくそ、思い出した。
あの頃は俺にとっては暗黒史なんだよ。」

「荒れてたわよねー。」

「お前のせいだろーが。」

「なんであたしのせいなのよ。」


ぎゃあぎゃあと賑やかに玄関まで進む。



あわてて追ってきた親戚達は、黒塗りの高級車がズラリと並ぶ姿を目にした。
リムジンのドアを開けられ、まるで重鎮のように乗り込む一家。

護衛の車両に挟まれ、ピカピカのリムジンがゆっくりと動き出す。
その一行はまるで皇○のよう。


「まさかそんな…。」


別荘に向かう一行を、親戚達は呆然と見送った。








「はー、疲れたわ。」

「お疲れ様、ママ。」


ママの肩を揉み始めたパパを見て、皆が笑った。


「まさかあんたが来るなんて。ビックリしたぁ。」

「親戚んちなんて珍しいからよ。見てみたかったし。」


リムジンの車内には一家と道明寺。
珍しい組み合わせだ。


「早く挨拶したかったしな。」

「挨拶?挨拶って…」


道明寺のニヤニヤした顔でハッとなる。


「やべぇ、顔が緩むわ。」

「ちょっと!え?もう言う気!?」

「当たり前だろ。
何のためにジェット飛ばしてきたと思ってんだ?」




え、え、え!


「道明寺さん、これ飲んでいいっすか?」


ミニバーにはしゃぐ進。


「道明寺さんじゃねーよ。ったく。お兄さんって言えよな。」

「えー、照れるなぁ。」


くらっっ…。








牧野家はある重大な局面を迎えようとしていた。

世界的大財閥 道明寺家の御曹司。
道明寺司がこの平凡な一家。

牧野家の婿になろうとしていた。




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