司は一家がじゃんけんするのを眺めていた。


‥面白ぇ。

たかが遊びだろ?
誰が外れるかだろ?
あの一家は真剣にしてやがる。


「あー!ママだわ!」

「はい、休みはママに決まった!」 

「じゃあ次は4人でウラウラね。」


うらうら?
手招きされ一家に近付く。
訳が分からないまま、言われた通り腕を出す。


「手の甲か手のひら、どっちを出すかでチーム分けするんですよ。」

「へー。なるほどな。」

「う~ららおーもーてっ!てっ!てっ!」


進の歓声が上がった。


「やった♪俺が道明寺さんとペアだぜ!」

「進教えてやんなさいよ。
私はパパのフォローなんだから。」

「へいへい。」


美貌の男は袖を捲り、バドミントンのラケットを不思議そうに眺めている。


「このシャトルをラケットの面に当てるんですよ。
ほら、こんな感じ。」


司は進を見ながら、見よう見まねでしてみた。
羽に当たりカツッと変な音がして予測した反対へ飛んでいく。


「案外難しいんだよ。」


つくしは、エヘンと咳をした。

これは勝てるかもしれない。
何しろバドミントンはした事がない男だ。
庶民の代表ともいえるスポーツ。
こちとら長年やってるんだぜ。


「勝ち負けの競技じゃないからね。ファミリーバドミントンは
いかに長く続けるかよ。」

「おう。」



何となくで広がり、ペアは前後に並んだ。


「最初は練習だからね、飛ばなくても大丈夫よー。」


つくしの言葉に頷き、司はテニスのサーブのように高くシャトルを上げた。

そしてバネを活かしながら美しいフォームで打つ。
それは誰もが見とれるほど、お手本のような流れるサーブだった。


つくしとパパの間を弾丸のようにすり抜けて飛んでいく。

思わず進とつくしは顔を見合わせた。


“…さすがスポーツ万能は違う。”
“嘘でしょ。”



「羽がないぞ。空振りしたのかな?」


二人はまだシャトルを探しているパパを見た。

司は素振りをしている。
その速さはファミリーバドミントンを遥かに越えていた。



「「 ちょっとタイム!! 」」


司は手首を回しながら、つくしの手招きに歩いて行った。







「よし!じゃあ目標はまず10回ね。
出来る限りペアは交互に打つこと。」

「ちょっと待て。」

「ん?」

「10回?100回じゃねぇのか?」

「あんたね、パパを舐めないでよ。」


つくしの言葉に司が新ペアのパパを見た。


「ようし、今日はパパの格好いいとこ見せちゃうぞ。」

「頑張って〜パパ!」


ママの声援に跳びながら手を振る。
つくしの、下からのサーブで始まった。



パパ向けにゆる〜く。
しかしそれすらも、ラケットの面を明後日の方角に向け
後ろへ飛んでいく。


どうやったらあんな方向に飛ぶんだ!?

司が長い足で追いかけ、進に向けてシャトルは綺麗な弧を描いた。
進は司に向けて上から打つ。
司の美しいバックハンドからのショットをつくしが取り
パパにゆる〜く放った。

そして当たり前のようにパパはまた変な方向へ飛ばす。
司が走る。
打ち返す。


「お前らズリぃぞ!」


進とつくしは片手でハイタッチした。
ニヤニヤしている。


「俺ら楽じゃね?」

「いいフォロー役がいたわ〜。
パパとペアは何倍も走らなきゃだから。」


パパが空振りしてシャトルが頭に落ちた。
まるでコントのよう。

司が顔を横に向け、笑いを堪える。


「凄いわ!11回も続いた!」

「いやぁ今日は調子がいいんだ、ママ。」

「勝負も面白いかもね。道明寺、してみる?」


姉弟のニヤニヤ笑いに、司が手首のストレッチを始めた。


「お前ら、見てろよ。」







美しい庭園は、どんな時でも美しい。
ただそれだけ。
見る人も無く、ただ整備されている場所だった。


だが、今日は違う。

庭でバドミントンをしている御曹司。
楽しそうな笑い声に、道明寺の管理役が顔を綻ばせた。

思わず、兄である道明寺家の執事にメールを送る。
司様がバドミントンをしているよ、と。

初めて見る後継者の笑顔。





「いけっ!進!奥義を出せ!」

「ねーちゃんが出してよ!秘技があるだろ!」

「よし!これが中国3千年の‥とりゃああ!」

「おいっ、それはただの暴投だろーが!」


司が走り回り、牧野家のフォローに回る。



皆が笑って笑って。
司も笑う。
バカじゃねぇの、と言いながらも楽しそうに。


つくしと進ペアが勝った。
(結局いつもパパがいる方が負ける。)



皆が芝生に座り込む。


「いやぁ、惜しかったなぁ。」


パパが汗を拭き拭き、司の腕を叩いた。
司が笑う。


「そうですね。」

「次は勝とうな!」

「はい、お義父さん。‥後からお話が。」

「ん?分かったよ。」


一同は笑いながら別荘に入っていく。




和やかな空気。
家族の団らん。

司には胸が震える程、欲しいものだった。


隣を見るとつくしが気付き にししと笑う。


「パパを舐めてたでしょ。」

「くっ。お前の親父、ほんとスゲーな。」

「いつもならパパ側に3人対ひとりなんだよね。
今日は楽だったー!」

「俺が走り回ったからだろ。」


進が爆笑している。
つくしも笑う。




なんて、なんて、温かな夜。





だが、司にはこの後大仕事が待っていた。




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