監視カメラを見ていた1人が慌てた声を出す。

「牧野様が2階の仮眠室へ向かったぞ!」 



今日マンションの警護室に居たのは5人だった。


“牧野つくし”警護チーム副主任の上野が動いた。
腰の警棒を外してテーブルに置くと
ドアに急ぐ。


エレベーターに乗って装備を外しているかをチェックした。


警棒なし。
無線機なし。
イヤホンマイクなし。


女性SPの仮眠室となっている、奥の部屋の前で    
牧野つくしが何かを持って立っていた。


「こんばんは。」
上野が挨拶をすると、つくしが気付いた。

笑顔を見せながら
「あっ!こんばんは!」と返した。


「体調良くなったんですか?」上野が聞くと、はにかみながら頷く。

「こないだ病院に付き添うと言って頂いてありがとうございました。
お礼を言うのが遅れてしまって…」

「もう良くなりました?」
もちろん知っていたが。


「はい。風邪をこじらせただけなので。」
へへへ、と笑う。


それだけじゃないことももちろん知っている。
肺炎になり入院したことも。
一時は危なかったことも。

警護チームは姿を見せない予定だったが、倒れそうなつくしを放ってはおけずに
上野だけ顔を出すことにしたのだ。


「あの、これ」
そう言い、まだ温かいお皿を渡す。


「お口に合わないかもしれませんが、肉じゃがを作り過ぎてしまったので。」

「え…。いいんですか?」

「もちろん!お礼に肉じゃがも変ですけど。ふふ」と笑う。


「…嬉しいです。ありがとう。
ぜひ頂きます」

「お皿は玄関に出しててください。
それでは。お休みなさい」
ペコリと一礼して、つくしは部屋に入っていった。


温かいお皿を両手に持ち、上野は立ち尽くす。


…この料理のままの人だな。
温かく、素朴で優しい。



何年も警護したので人なりはわかっていた。



ゴミの日は、マンションの二軒隣に住む
一人暮らしのお婆さんのゴミをいつも一緒に持っていく。
(足が悪い事に気付いたつくしが
朝から置いてて下さいね、と声をかけたのだ。)


小学生がマンション前で落としたという100円玉も、見つかるまで一緒に探していた。


瓦の屋根の下に、蜂が巣を作りかけてると気付いてお宅訪問したり。
(老夫婦から、お礼にとらっきょを一瓶貰っていた)



お皿の温かさに
じんわりと心まで温かくなる。

お皿を持ったまま、警護室へ戻った。




警護チームの事務所は、3部屋の間の壁を取り払ったマンションの一階にある。

コンピュータールームと、ミーティングルーム、休憩室、仮眠室(女性用は二階)

一番広い部屋は、畳12畳が部屋の真ん中にあり訓練も出来る部屋だ。


備品室には、私服(任務用)や
警備会社の制服
(今はセ○ムをちゃんと揃えてある)など。

武器庫には鍵がかかっており、私  上野と
ボスの尾上が鍵を持っている。


基本は全員黒のスーツ(支給される)

靴は男性は革靴。女性は黒のスリッポン。
(ヒールは走れないし、音がする)



警備室に戻ると、皆がお皿を見ていく。
「カメラ担当以外は休憩しましょう。ちょうど夕飯時間だから」
やったー!腹減ったーという声があがった。


出入りは最小限に留める為に
交代で料理をし、任務にあたる。


「肉じゃが、うまい!」
「まだ温かいよ。嬉しいなぁ」



「「「さすが牧野様だな。」」」
うんうん、と皆で頷く。


道明寺財閥の警護班の尾上さんに
声をかけられたのは6人。
(うち1人は私の妹だ)

尾上さんの弟が2人
(大学生と大学院生なので、フルではいない)
合計8人で牧野様を守っていた。



『ある人の為の警護チームを作る。』

 
知人だった尾上さんから声がかかった。

シングルマザーの私は家族のいる日本に帰っていて
職探し中だったのでとてもありがたかった。

アメリカで夫と離婚し、10歳の息子を連れて実家に帰ったのだ。
夜勤の時は息子は実家にみてもらえるので
助かっている。

仕事だから、どんな人でも守るし
実際アメリカでは銃撃戦もあった。
色んな人を警護したが、牧野様は別格だった。


ただ仕事だからと守っていたが
(何から守るのかは知らされていなかった。が、お人好しだから男性の産業スパイが狙いやすいのか?ぐらい)

人柄を知ってからは自主的な事が皆多くなった。


街コンのポスターは尾上さんの弟達が大量に剥がしてきて、また大量に新しいポスターを貼っていた。
絶対悪い男にだまされる!と言って。



「牧野様が出かけたぞ」

コンピュータールームから内線のマイクがなった。
皆一斉に立ち上がる。


「二人警護につく!美鈴と田中お願い!」

「「了解!」」
二人が飛び出していく。
 

「山田、服装は?」 

「さっきの部屋着だな。そして財布のみ」

「なら、いつもの自販機ね。」

 


紅茶○伝を買いに行く牧野様を皆で見守る。



1週間に3回目だ。


安全の為に、明日同じ自販機をマンション前に増設。と業務日誌に記入した。

(ストレートよりロイヤルミルクティーがお気に入り、とも。)





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