このブログの記事は、最初の頃は大半を音声入力で書いていたのですが、最近は音声入力の使用率が下がってきてしまいました。
一番ネックになるのは、やはり、認識率が完璧ではないという点で、特に、辞書にない単語を入力するときに、キーボードの方が手っ取り早いので、どうしてもキーボードを使いたくなってしまいます。
それと、カーソルの移動やカットアンドペーストなど、修正や推敲にかかわる作業は、音声やマウスでできないことはないけれども、キーボードよりも時間がかかるのも残念な点です。
しかし、音声認識の利用でネックになる点は、それだけではない気がします。
というわけで、音声入力の利点と欠点の補足と、音声認識が普及しない理由を、少し考察したいと思います。
・口だけで良い文章を書くのは難しい
音声入力に否定的な意見では、うるさい所や周囲に迷惑になるところでは使えない、恥ずかしい、認識率が完璧ではない、利用可能範囲が文章入力に限定される、などという分かりやすい欠点の他に、次のような欠点を聞いたことがあります。
「音声入力でキーボードより入力が早くできたとしても、人間の思考がボトルネックになって時間の節約という面では意味がない」
「話しながら文章を考えるのは大変だし大抵の人は慣れることができない」
「話し言葉と書き言葉は大きく異なるので、音声入力した文章は使い物にならない」
これらの点は私も同感で、音声入力した文章のままでは、全く不完全な文なので、推敲をしていくのにカット&ペーストのお世話になりまくりですし、手を入れても、全体的にぎこちない、堅めのつまらない文章になりがちで、音声入力ではキーボード入力以上に自分のボキャブラリーの貧困さを痛感します。
少しずつ慣れてくれば、素早い文章作成の能力が身について、完成の文章に近い形でディクテーションできるようになってくるかもしれませんが、よっぽど有能でないと難しい気がする。とりあえず私には無理かも。
「とりあえず月配列とかのブログ」さんの所で、「プロの「作家」先生でも口述によって本を書く方がいる」と、ありましたが、これとて、いくら有能な人物の口述でも、そのまま単純に音声を文字に変換するだけでは、本に出来るだけの品質になるケースは非常に少ないと思います。
口述を元に文章化するのに、テープ起こし的な作業に加えて、大抵の場合は、ゴーストライターではないけれども、文を推敲・再構築している人物が裏に存在しているはずであって、その作業には、口述作業よりも長い時間を費やしているのではないでしょうか。
口述筆記ができるのは、口述筆記に長けた優秀な人物で、なおかつ、自分の周りに秘書や助手をつけられるような、社会的地位(所得)が高い人物に限られる気がします。
・現在のキーボードが事実上標準になっている
一昔前なら、キーボード恐怖症みたいな人が結構存在していましたので、その頃に完璧な認識率で、なおかつパソコン操作の知識が不要な、音声認識ソフトが発売されていれば、もしかして、キーボードを駆逐していたかもしれません。
でも、今時、パソコンを使えない人というのは、めったに存在せず、誰でもキーボードが普通に使えるのがあたりまえの時代です。
音声入力に限らず、パソコン用の特殊な入力方式のキーボードや、QWERTY配列よりも入力効率が良いといわれるキー配列なども存在しますが、せいぜい奮闘しているのが親指シフト位で、全く普及せずに終了している現状をみても、優劣はともかくとして、事実上標準になってしまったパソコンのキーボードの存在を、ひっくり返すのは、なかなか難しい気がします。
しかも、PC用のキーボードは、1000円程度から売られていて、他の入力機器では価格競争の余地がありません。私もIBMの5576-A01を使っていたり、キーボードに多少のこだわりを持ってたりしていましたが、現実問題として、会社や学校など他所で使うときには、否応なくパソコンに付属する1000円程度のキーボードとかノートパソコンのキーボードを使わざるを得ないわけで、あーだ、こーだ、言っても、どうにもならないし、あきらめて慣れた方が手っ取り早い。
その上、現状の音声認識ソフトでは認識率の問題もあって、キーボード入力よりも実質的に高速でかつ便利に入力できる利用範囲というのは、入力内容が定型的で、使用単語が少なく、思考プロセスを挟まない文章に限られてしまいます。そういう利用範囲というのは、たとえば医療用とか法律用とかその程度? あとは、手書き文字のテキスト文章化は音声入力の方が速いかもしれません。
パソコン用の大語彙音声認識ソフトの事業は、どのメーカーもことごとく赤字なのが現状で、「音声認識分野で世界で唯一、黒字事業化できた」というアドバンスト・メディアでは、大語彙音声認識ソフトをリリースせずに、特定のユーザー市場を狙ったソフトだけをリリースしていることからも、このことが裏付けられています。
したがって、手が痛い(腱鞘炎、肩こり、骨折)とか、上肢障害とか、手がふさがっている利用環境とか、利用者がキーボードの利用が困難な場合では救世主となり得ると思いますが、それ以外では、なかなか、音声入力のメリットは少ない気がします。
あら、音声入力のブログなのに、随分、否定的な内容になったなぁ。
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電脳生活雑感 文字入力についての考察(その他編)
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とりあえず月配列とかのブログ 音声入力はいずれキーボードを駆逐する
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音声入力の利点(1)
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音声入力の利点(2)
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音声認識ソフトの現状(1)
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音声認識の欠点(1)
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音声認識の欠点(2)
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音声認識の欠点(3)
Posted by ninsiki at 23:02│
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今日は時間もないし、ブログやめとこっかな〜、と思ったんですが、ちょっとついつい反応を押さえきれないものがw音声入力について、nisikiさんに、口述を元に文章化するのに、テープ起こし的な作業に加えて、大抵の場合は、ゴーストライターではないけれども、文を推敲・再構
続・音声入力【とりあえず月配列とかのブログ】at 2005年06月28日 01:51