2015年03月21日

宿屋で一時

 生まれつき盗賊な者などいない。だが、盗賊になるしかない者はいる。
 生まれながらの境遇、社会への反抗心、そして、盗賊としての天賦の才。
 すべてを兼ね備えていた君は、ほとんど何の疑問もなく盗賊として生きてきた。

 優秀なのは確かだが、ここネグラレーナ市には来たばかり。
 第二の人生をスタートさせつつある新参者だ。腕はあっても不案内なのだ。


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ネグラレーナの説明がしばらく続きますが、まぁ大体カーレ(←やめなさい)

「この街はきっと、あなたにぴったりよ」

エルフの盗賊・ニナの顔を思い出す。
行くあてを失った俺を、この古くて新しい街に招いてくれた女だ。

俺は今日、そのニナと待ち合わせている。
ここ【奇妙な猫の瞳】亭は、ネグラレーナでもまぁまぁ大きな宿屋である。
そして、この宿屋には、街の人々が知らない“夜の顔”がある。

この街にはいくつもの盗賊ギルドが存在する。
ここ【奇妙な猫の瞳】亭は、もっとも大きなギルドである「夜の猫」が
拠点としている場所なのだ。

ここで待ち合わせをしているということは・・・まぁそういうことだ。





約束の一時をだいぶ過ぎた。
ニナは一向に現れる気配がない。

おかしい。
彼女は確かに「次の一時に」ここに来るように言ったはずだ。

彼女は「次の一時」と言った。

次の一時。

・・・そういうことか。
彼女が「夜の妖精」と呼ばれていたことをすっかり忘れていた。

どうやらあと12時間、時間をつぶさなきゃならなくなったようだ。




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