2014年09月30日 23:32
はやぶさ
すぐれたエンジニアだった糸川秀夫に因んで火星外側を永久に回る微惑星のひとつにイトカワと命名し、此れに糸川がむかし設計開発した陸軍戦闘機隼にやはり因んで隼と名付けた宇宙探査機を向わせ、微惑星の表面の物質をさらって地球に持ち帰ったという。大した離れ業というべきだ。此のたび隼２を開発して打ち上げ、宇宙ができ上った謎や生命発生の理由を探るという。うまく行くといいね。
戦闘機隼は太平洋戦争中、「エンジンの音ごうごうと…」という主題歌付きで映画になり、当時の日本の少年たちの間で大人気だった。戦中は知られていなかったのであるが、戦後、三菱の堀越二郎技師が設計開発した海軍零式艦上戦闘機、通称ゼロ戦、なる軍用機があったことが広く知られるようになった。初期のゼロ戦はもの凄く強かったそうだ。高度の運動性能とスピードと航続力と備砲の強力な20ミリ機関砲で連合国軍機を常に圧倒したという。
然し戦争が長引くとどうしても殆ど無傷のまま敵手に落ちる機体が出てしまう。アリューシャン水域でこうしたことが発生して、米軍は鹵獲したゼロ戦を本国に送って徹底的に分析し同機の総ての長所、欠点を探り出した。最大の欠点は機体が軽すぎるためスピードは出るが急降下性能が著しく劣っているということであった。
ゼロ戦がdog fighting（巴戦）を仕掛けてきたら米軍機は先ず急降下して此れをかわし、次に急上昇してゼロ戦の上に出てゼロ戦の両主翼の付け根にある燃料タンクを狙撃するという戦術を取ることとした。此れ以後はゼロ戦は次つぎと撃墜されていって、空の覇者の座を降りざるを得なくなってしまったという。アメリカがanti-ゼロ戦機を幾種類も開発していったのに対して日本はゼロ戦に改良に改良を施して対抗しようとした。石神井町の隣町の東大泉という処にもと海軍航空隊の整備兵だったという人が住んでいたが、ゼロ戦は改良する毎に操縦席前の計器が増え、一方此れに乗る飛行兵は新米ばかり、とても計器を読みきれず飛ぶのがやっとこさ、撃墜されるために出撃していったようなものだったという。やりきれない話だ。
隼、ゼロ戦に較べるとずっと知名度は低く量産された様子もなかったが、かなりの高性能を有していたらしい陸軍の戦闘機鍾鬼というのがあった。設計開発したのは森重信という技師で、実は一時筆者の翻訳仲間であった。（ショウキとは鬼を取って投げるという空想上の豪傑である。）森先生は東京帝国大学工学部機械工学科を出て直ちにフランスに留学、其処で軍用機製造を学び、帰国して鍾鬼開発に当った。「ドイツのメッサーシュミットとの間で模擬空中戦をやらせたよ」なんておっしゃっておられた。語学力も優れていて、いちばん得意な外国語はフランス語、次がドイツ語、英語だとのことだった。大変な秀才である。仏、独語の翻訳を回してあげることは殆どできなかったが英語翻訳は何度か頼んだ。常に確実性の高い翻訳をして下さり、大いに援けられた。森先生からの年賀状は棄てずに束ねて保存してある。
戦闘機隼は太平洋戦争中、「エンジンの音ごうごうと…」という主題歌付きで映画になり、当時の日本の少年たちの間で大人気だった。戦中は知られていなかったのであるが、戦後、三菱の堀越二郎技師が設計開発した海軍零式艦上戦闘機、通称ゼロ戦、なる軍用機があったことが広く知られるようになった。初期のゼロ戦はもの凄く強かったそうだ。高度の運動性能とスピードと航続力と備砲の強力な20ミリ機関砲で連合国軍機を常に圧倒したという。
然し戦争が長引くとどうしても殆ど無傷のまま敵手に落ちる機体が出てしまう。アリューシャン水域でこうしたことが発生して、米軍は鹵獲したゼロ戦を本国に送って徹底的に分析し同機の総ての長所、欠点を探り出した。最大の欠点は機体が軽すぎるためスピードは出るが急降下性能が著しく劣っているということであった。
ゼロ戦がdog fighting（巴戦）を仕掛けてきたら米軍機は先ず急降下して此れをかわし、次に急上昇してゼロ戦の上に出てゼロ戦の両主翼の付け根にある燃料タンクを狙撃するという戦術を取ることとした。此れ以後はゼロ戦は次つぎと撃墜されていって、空の覇者の座を降りざるを得なくなってしまったという。アメリカがanti-ゼロ戦機を幾種類も開発していったのに対して日本はゼロ戦に改良に改良を施して対抗しようとした。石神井町の隣町の東大泉という処にもと海軍航空隊の整備兵だったという人が住んでいたが、ゼロ戦は改良する毎に操縦席前の計器が増え、一方此れに乗る飛行兵は新米ばかり、とても計器を読みきれず飛ぶのがやっとこさ、撃墜されるために出撃していったようなものだったという。やりきれない話だ。
隼、ゼロ戦に較べるとずっと知名度は低く量産された様子もなかったが、かなりの高性能を有していたらしい陸軍の戦闘機鍾鬼というのがあった。設計開発したのは森重信という技師で、実は一時筆者の翻訳仲間であった。（ショウキとは鬼を取って投げるという空想上の豪傑である。）森先生は東京帝国大学工学部機械工学科を出て直ちにフランスに留学、其処で軍用機製造を学び、帰国して鍾鬼開発に当った。「ドイツのメッサーシュミットとの間で模擬空中戦をやらせたよ」なんておっしゃっておられた。語学力も優れていて、いちばん得意な外国語はフランス語、次がドイツ語、英語だとのことだった。大変な秀才である。仏、独語の翻訳を回してあげることは殆どできなかったが英語翻訳は何度か頼んだ。常に確実性の高い翻訳をして下さり、大いに援けられた。森先生からの年賀状は棄てずに束ねて保存してある。
