トイレットペーパーに赤いものがついていた。生理……ではない。まだ一週間ほど先のはずだ。それに拭いたのは前ではなく後ろなのである。これは一体どうしたことだろう。
 ところで私は十七歳の美少女である。いや美少女は言い過ぎた。どこのクラスにも一人か二人いる清楚で大人しい感じの隠れファンが多そうな少女である。私以外の複数の人間からの証言もあるので間違いではないだろう。
 さてそのような存在である私が便座に腰を下ろしトイレットペーパーを見つめながら思い悩む姿というのはフェティッシュなものがあるだろう。もちろんお尻は剥き出しである。ゆで卵のよう、とまではいかないが、つるんとはしている。折り曲げた膝のすぐ下に薄ピンクのパンツ、そしてゴムの伸びかけた灰色のスウェット。清楚で大人しい感じの隠れファンが多そうな少女がこのような姿を晒していると幻滅されるのだろうが、私以外の誰にも見せるつもりはないので許していただきたい。
 それにしても血である。鮮血である。「ぢ」という一文字が浮かんだが確か本当は「じ」であったはずだ。「やまいだれ」に「寺」だった覚えがあり、頭の中で「痔」という字を思い浮かべ、正解であるなと私は一人深く頷いた。
 しかし私自身が痔であるかどうかはまだ確定しておらぬはずだ。まず私がケツのあ……お尻の穴から鮮血を滲ませたのは今回が初めてだ。そして今は冬である。ケ……お尻の穴が縮こまっていたとは考えられないだろうか。いや大いに考えられる。何より清楚で大人しい感じの隠れファンが多そうな少女に痔というものは似つかわしくないのである。
 そう結論づけ、私はとりあえずケツの鮮血を拭き取り、パンツとスウェットをずり上げ、斜め後ろにある小さなレバーを大のほうに回した。
 トイレを出てすぐのところに居間がある。和室で炬燵が置いてある。弟が炬燵に足を突っ込んで寝転びながらルマンドをサクサクやっていた。炬燵の上にはポットが置いてあり、それとカップと安っぽいティーパックで私は紅茶を二つ淹れ、一つを弟のほうに滑らせた。
「粗茶ですが」
「……かたじけない」
 弟は怪訝そうにしながらも身体を起こし、炬燵の上のカップに手を伸ばす。
「ところで弟よ」
「ん?」
 私は弟がカップに口をつけるのを見計らいながら言う。
「ケツから血が出たのだが」
「ブフッ!」
 無残にも紅茶が噴かれたのであった。せっかく淹れた紅茶を。それにしてもこの私が恥を忍んで相談を持ちかけたというのに噴き出すとは何ごとか。
「……姉ちゃん、学校でもそうなのか?」
 弟がため息混じりに言う。
「失礼な。学校ではちゃんと猫被っておるわ」
「今被ってくれよ……」
 協議の末、多分ちょっと切れただけだろうと弟も私と同じ結論に達したのであった。
「ルマンドいる?」
「いただこう」
 ときどき失礼極まりないこともするが、ちゃんと私にルマンドを分けてくれる優しい弟である。ルマンドうめえ。