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その1994年(平成6年)の始めの事です。
都内の書店で、私は、一冊の本に出会ひました。それは、『湾岸報道に偽りあり』と言ふ題名の本でした。
内容は、この題名が示す通り、あの湾岸戦争(1991年)の際の報道を徹底的に検証する物でした。
著者は、木村愛二と言ふジャーナリストでした。
それまで全く名を知らない人でしたが、経歴からは、左翼リベラル的な人であることが窺(うかか)はれました。
その時、私の目を引いたのは、その本の表紙でした。それは、あの湾岸戦争(1991年)の際、私に強烈な印象を与えたあの油まみれの水鳥の絵だったのです。
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私は、その表紙に目を奪はれました。そして、思はず、その本を手に取りました。そして、立ち読みをすると、その本は、あの湾岸戦争の際に、私が抱いた問題意識と共通する問題意識で書かれた本である事がわかりました。特に、私は、その本の次の箇所に目をとめました。
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「ナチス・ドイツによる大量虐殺についても、数字の誇張ありという疑問が出されている。『ユダヤ人』自身の中からさえ『シオニストの指導者がナチ政権と協力関係にあった』という驚くべき告発がなされている。事実、第二次大戦がはじまるまでのナチ政権は、『ユダヤ人』に対して差別と同時に『出国奨励策』を取っていた。財産の大部分を没収するなどの迫害を伴う政策だったが、それでも狂信的なシオニストは、迫害をすら、パレスチナ移住を促進する刺激として歓迎したというのだ。(中略)シオニストの『被害者スタンス』には、かなりの誇張と巧妙な嘘、プロパガンダが含まれているらしい。『選民思想』も克服されていないどころか、一部では、さらに狂信の度を加えている。しかも、批判者には、『極右』武装集団による脅迫、殺人に至る暴行傷害が加えられた事実さえ報告されている」
(木村愛二(著)『湾岸報道に偽りあり』(汐文社・1992年)より)
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書店で、この本のこの箇所を読んだ時、私はとても驚きました。
皆さんは、イスラエルを建国したシオニストの指導者たちが、ユダヤ人を差別・迫害したナチスと協力関係を持って居た事を御存知でしょうか?
驚かれると思ひますが、ドイツでナチスが台頭し始めた1930年代から第二次大戦中まで、ナチスとシオニストたちの間には、一定の協力関係が有ったのです。ユダヤ人国家の建国を求め、戦後、実際に、パレスチナにイスラエルと言ふ新しい国を建国したシオニストたちと言へば、ナチスとは不倶戴天の敵同士であったと思って居る方が多いに違い有りません。実際、一面においては、確かに「敵」同士だったのですが、その一方で、その不倶戴天の敵同士であった筈のシオニスト指導者たちとナチス指導部の間には、実は、隠れた協力関係が有ったのです。
「そんなバカな!」と思ふ方もおられる事でしょう。しかし、これは本当です。何故、シオニストとナチスの間に協力関係が有ったかと言ふと、20世紀前半、ヨーロッパのユダヤ人の間では、実は、シオニズムには人気が無かったからです。シオニストたちが、「ユダヤ人の為の新しい国を作ろう」と呼びかけても、ヨーロッパで豊かな暮らしをして居たユダヤ人達は、ヨーロッパ以外の土地に移住する気など起こさなかったからです。つまり、シオニストたちの呼び掛けに応じて、ヨーロッパから出て行こうとするユダヤ人は、余りにも少なかったのです。
その事に焦りを感じたシオニストたちは、実は、ナチスの台頭を歓迎したのです。これには、例えばシオニスト指導者の一人ヨアヒム・プリンツが書いた文章などが証拠資料として挙げられますが、ユダヤ人の間で人気の無かったシオニズムは、1930年代、ナチスが台頭した事で、やっと、ユダヤ人の間の支持を拡大する事が出来たのです。
一方、ナチスの側は、ユダヤ人をヨーロッパから追放したいと思って居ました。ですから、そのユダヤ人をヨーロッパからパレスチナに移住させようとするシオニストたちの運動は、ナチス指導部にとっては好ましい物だったのです。
そうした事から、ナチスとシオニストは、ユダヤ人をパレスチナに移送する為の協定まで結んで居ます。驚く型もおられると思ひますが、これは、少し調べればすぐに確認できる史実です。
しかし、こうしたナチスとシオニストの間の協力関係が、日本のマスコミや出版物で語られる事は非常に稀です。
私は、1987年頃からこの事を本で読み、知って居ましたが、当時も今も、ナチスとシオニストの間の協力関係について知識の有る日本人は極めて稀です。
ところが、1994年の始め、私が、偶然手にしたこの本の中で、著者の木村愛二氏は、そのシオニストとナチスの協力関係に言及して居たのです。
これを読んだ時、私は、木村愛二氏が、この極く一部の人しか知らない史実を知って居る事に驚きました。そして、その時、「このジャーナリストなら、『ホロコースト』の事実関係に、実は、疑はしい点が多数有ると言ふ私の話を理解しくれるのではないか?」と思ったのでした。
そして、私は、この本の著者、木村愛二氏の電話番号を調べて、電話を掛けたのでした。
(続く)
2015年(平成27年)3月31日(火)
西岡昌紀(にしおかまさのり)
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