不動産の売買は、単純に言えばお金と不動産を交換することですが、現実には幾つもの細かい作業を積み重ねる必要があります。

 そんな細かい作業の一つに「諸費用の精算」がありますが、今日はその中の「賃料の精算」について取り上げたいと思います。


テナントが入居中の物件を売買する場合、テナントから受け取る賃料を売主・買主間で日割精算することが一般的です。
(引渡日の前日までを売主の収益、引渡日以降を買主の収益とするのが通例です。)

例)1月13日引渡、月額賃料31万円、敷金62万円(2か月分)の場合

 売主収益:31万円×12日分/31日分=12万円
 買主収益:31万円×19日分/31日分=19万円

 前家賃(月末までに翌月分の賃料を支払う)であれば、売主は既に当月(1月1日~31日)分の賃料31万円を受け取っているはずなので、その中から買主に帰属すべき19万円を決済の時に支払うことになります。
(実際には、買主が支払う売買代金の中から、賃料精算金を差し引いて決済を行うことが多いです。)

ところが、決済の時点でテナントが賃料を滞納している場合もあります。
この場合の精算の仕方としては、幾つかのパターンが考えられます。

パターン1)売主がその賃料を受け取っていると仮定して精算を行う。

 上記の例で言えば、テナントから入金が無い状態であるにもかかわらず、売主から買主へ19万円の精算金を支払い、当該未収金については売主が引続き回収にあたることになります。
 このパターンでは、滞納を担保するためにテナントから預け入れられている敷金は買主へ承継してしまうため、売主が未収金を回収できないリスクが非常に高くなります。

パターン2)決済時には精算を行わず、売主が未収金を回収できた段階で精算を行う。

 上記の例で言えば、決済後も当該未収金については売主が引続き回収にあたり、テナントから未収金31万円全額を回収した後で、売主から買主へ19万円の精算金を支払うことになります。
 1)に比べるとお互い公平だといえますが、売主が会社清算を予定しているようなケースだと、決済後に債権債務が残ってしまうことが問題となることもあります。

パターン3)未収賃料債権を買主へ承継する。

 当月分の未収賃料債権を売主から買主へ承継するという方法もあります。
 この場合、テナントからの未収金の回収リスクは買主が負うことになります。
 そのうえで、売主に帰属すべき部分(上記の例でいえば12万円)について、パターン1)あるいはパターン2)のいずれかの方法で精算をすることになります。

パターン4)敷金から未収金を回収する。

 敷金とは、賃料その他の賃借人の債務を担保するために賃貸人へ差し入れられた金銭であり、賃借人が賃料不払等の債務不履行をした場合には敷金から当該不履行した金額を控除することができます。
 売買に際して、現賃貸人である売主が敷金から未払い分を控除し、控除後の金額を敷金として買主へ承継するということも理論的には可能です。
しかし、敷金と未収金を相殺してしまうと、それ以降の不払いや明渡し時の原状回復費用に対する担保が少なくなってしまうわけで、買主にとってはあまり好ましい方法とはいえません。

未収金がある場合の精算方法について、売買契約書の中で取り決めをしているケースはあまりありません。
そのため、売主と買主との間で未収金の取扱いについて意見が対立することもあります。

どの方法がベストとは一概にはいえませんが、簡便さではパターン1)、公平性という点ではパターン2)がよいと個人的には思います。