横浜は近いのだ
1時間足らずで行けるし乗り換えも無い

駅前の様子もずいぶん変わった
どこもかしこもそうなのかもしれない
渋谷の駅前はもうなんやかんや15年くらい工事をしている
都会は終わらない宿題を抱えている

まったく動かないマネキンのふりをするという芸をしている男がいた
人だかりができていた
ちらっと見るとほんとうに微動だにしない
この日は風が強かったのだが髪すら動かないのには驚いた


へそまがりに着くと利岡さんと沢田ナオヤが煙草を吸っていた
閉店前の店だからあんなにひしめいていた漫画の大群はすっかり無くなりずいぶんと片付いていたけど
不思議なことに何かが欠けている感じもなく
人が立ちあがったあとの椅子に残った尻の温度があった

ナオヤんは前日深夜ライブだったらしくナチュラルハイになっていた


お客さんもちらほら来てくれて
開演間際に三輪二郎氏が上陸した

三輪さんはぼくは一方的にファンであり
ライブは何度も観ていたがちゃんと話すのは初めてであり
尊敬しているせいもあってひどく緊張していた
友部正人以来の緊張である
緊張をたずさえたまま自分のライブをしたら歌詞が3回も飛んでしまった
なにかの紐でつないでいないと心臓が風船のようにどっか行ってしまいそうだった


反対にナオヤんは始まる前から、ええなあ、今日めっちゃええな、たのしいわ、を連呼
演奏中も終始リラックスしていた
それでもロック
つまずいてもロック
起き上がりざまにロック
寝起きでジャンプ
ナオヤんのライブを観ていて
ああ、僕は知らず知らず彼の言葉や音楽に影響されていた
そのことがまざまざとわかった
出会った時から友人そして師匠だった


三輪さんの演奏がはじまると
ぼくはもうただのキッズだった
ギターを弾いているというより
ギターのほうから指に吸いついてゆく
その演奏の強弱、大小、瞬発、溌剌、けだるさ、きらめき
すべてが魅力と刺激にあふれ
ぼくは画鋲でとめられたかのように茫然としていた
ああ、このひとはうれしいときもかなしいときも
ずっとずっと昔からギターを弾いてきたひとだ
歌ってきたひとだ
ラグタイムごっこじゃない
ブルースごっこじゃない
三輪二郎だ


最後に三輪さんが3人でなんかやろうといきなりの無茶を呈してきて
即興がおっぱじまり
たじたじとなりつつ
たじたじとした演奏をした
火事場の馬鹿3人


終演後はそのまま飲み会と化し
ビール日本酒焼酎なんでもござれの大宴会
こんなんでええんかい
がちゃがちゃに酔っ払い
早歩きで駅まで全速前進
すべりこみセーフで終電車にかみつき
着座した瞬間に気絶
終点高砂高砂~のアナログ放送
自宅まで30分の全速前進
夜は春だな
ナオヤんは無事だろうか
たとえばぼくらはさみしさを馬鹿のふりをしてごまかしている


image1