2005年10月13日

共謀罪の対象犯罪は、「はっきりしない」

 犯罪組織でなくても誰でも対象になるとしても、禁錮4年以上の重い罪を共謀した場合だけだから、そんな悪いことしない自分には、やっぱり関係ない・・・のかなあ?

 それがですねえ、何を合意したら共謀罪の対象になるのかは、実際の場面では、たぶんはっきりわからないんですよ。というのには、私が思うところ、ふたつの意味があります。


・4年以上の刑になる罪は、常に新しく発生する

 新しく法律ができたり改正されたりして、長期4年以上の刑になる罪ができた場合、それに連動して、その合意が共謀罪の対象になります。

 例えば、平成17年第162回通常国会において 不正競争防止法の改正が決定しました。これによって今年の11月1日から罰則(第14条参照)が3年以下から5年以下になるので、もし共謀罪が成立していれば、これも新しく共謀罪の対象になることになります。
 実質的な内容としては、例えば「商品の原産地を誤認させるような方法で、経済産業省令で定める外国の国の紋章を使用(第9条)」することを、商品パッケージを企画する中で具体的に話し合った、なんていうのが、共謀罪の対象に新しくなるのでしょう。

 新しい法律ができるたびに、「相談・計画したら罪になること」が増えてくるわけですから、それらを把握しそこなうこともあるのではないでしょうか。実行する前には、罪になるかもしれない感じがするものは周辺の法律を調べるでしょうが、何が飛び出すかわからない話し合いでは、事前に法律で刑の重さを調べておくなんてあり得ませんよね。

 しかも、いったん合意が形成されたのち、「ちょっと待てよ」といって法律を調べたら重い罪だったのでやめた、という場合でも共謀罪は消えないそうですから、共謀罪から無縁のところに身をおくのは結構むずかしいと思われます。


・合意の段階では、最終的にどれくらいの罪になるかがわからない

 例えば誰かに暴行を加えることを合意したとして、それが結果として暴行罪で済むのか、傷害罪になるのかは、究極には、実際にやってみなければわかりません(失敗するかもしれないし)。暴行罪なら共謀罪は成立しませんが、傷害罪なら成立する可能性があります。(参照:自由ネコ通信
 本人たちは怪我までさせるつもりがなかった合意でも、みなす側が傷害罪になる可能性があるとみなせば、共謀罪に問われます。そして、それが実際に傷害罪になったかどうかは、実行していない以上永遠にわかりません。

 この例は、「暴行罪」「傷害罪」と罪名が変わるので特に目立ちますが、どんなものでも罰則は「○年以下の禁錮」などというふうに決められていて、実際にどのくらいの刑になるのかは、裁判で結審しないとわからないはずです。ということは、重大であれば禁錮4年の刑になるかもしれない罪名の、比較的軽微な犯罪を合意した場合には、実感としては重大犯罪の合意とは思えなくても共謀罪に問われることになるでしょう。

 こう考えると、「自分は共謀罪に問われるようなことがらの相談や合意などしない」と言い切れる人は、論理的にいって(なにが対象かハッキリしない以上)、いないのではないかと思います。

niwatori5555 at 00:25│Comments(4)TrackBack(7) 共謀罪 

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この記事へのコメント

1. Posted by ばっきょ隊長   2005年10月13日 22:51
暫くです。
共謀罪の件についてのエントリのリンクを RandomNote 方面に貼らせて頂きました。

関連エントリについてもとても勉強になります。
とり急ぎ、連絡のみで申し訳ないです。
2. Posted by まきこ   2005年10月14日 08:58
しばらくでつー。

みなさま、ばっきょ隊長のとこへ行くには↓
http://blog.livedoor.jp/bakkyo/

サイドバーにRandomNote の入り口があります。
いろんなリンクがあって面白いですよー。
3. Posted by Izumi   2005年10月14日 10:09
やっぱ隊長にもそろそろひと暴れしてもらわないと(笑)
4. Posted by Kuroneko   2005年10月14日 19:51
共謀罪への反論『法務省の大嘘を暴く 思想処罰・団結禁止の共謀罪は廃案しかない!』

《そもそも「適用となる団体」は「犯罪を目的とした団体」であり、通常の労働組合や市民グループ等が対象となることはありません@平沢勝栄》といったトンデモない大嘘が吹聴されています。そうしたペテンに対し徹底的に反論します。
↓《反論の全文はこちら》
http://www.hanchian.org/kyoubouzai-no-uso.html

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