2019年07月21日

 安倍晋三が後継にハト派を選ぶ理由


 安倍晋三が参院選の応援演説で「令和の時代は岸田文雄さんではないか」と、党政調会長の岸田を「ポ20190711_165400スト安倍」として持ち上げたのは、ほとんど本音だろう。

 彼が岸田を後継に考える最大の理由は、敵対する石破茂にだけは政権を渡したくないと考えていることにある。イデオロギー的にはタカ派の石破のほうが自分に近いはずなのに、ハト派の岸田を候補の筆頭に選んだのは、自分に弓を引き続けてきたこの政敵に対する怨念が強いことを示している。

 ハト派を後継にする理由はほかにも考えられる。長いタカ派政権のあとにまた似たような政権が続けば、自民党への安定した支持が後退するかもしれないと懸念しているのではないか。党内のハト派とタカ派が代わるがわる政権を担ってきたことが、この党の長期政権を支えた要因のひとつであることは、戦後の政治史が物語っている。

 憲法9条の改正に安倍ほど熱心でない岸田に次の政権をまかせるのは矛盾しているように見える。だが、改憲は自分の政権のときにしかできないと考えているとしたら、つじつまは合う。実際、本気で改憲を目指している自民党議員がどれだけいるか。ふるいにかければ、ゼロに近づくのではないか。

 それに、もし運よく改憲をやり遂げたとしても、それに反発し続ける国民は少なくないはずだ。それをなだめるにはハト派政権のほうがいい。60年安保改定を強行した祖父の岸信介の政権にあと、ハト派の池田隼人の政権で国民の支持とつなぎとめたように。

 それにしても、肝心の安倍自身はどこまで本気なのか。憲法改正に積極的とはいえない今の国民世論を考えれば、改憲に突き進むことは政治生命を失うリスクを覚悟しなければならない。安倍は参院選で憲法について議論するかどうかが争点だと訴えただけで、憲法を変えればどんないい未来があるかということには触れなかった。そこに彼の及び腰が垣間見える。

 安倍晋三は憲法改正の願いをかなえられないまま退場し、改憲は永田町の主要テーマではなくなる可能性が今のところ最も高いように思える。


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                 『流砂』16号                            


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Posted by nkmrrj04fr at 18:41│Comments(0)