2007年06月20日

建築基準法の改正

建築基準法の改正
本日6月20日、建築基準法が改正された。特に今回の改正は耐震偽装問題に端を発するもので、構造設計に関わる建築確認申請上の扱いが大きく変更されている。そもそも今の建築基準法は、戦後の混乱期にきちんと建築を作るために作られ、その後の高度成長期に整備されたものであり、現在もその骨格自体はほとんど変わっていない。つまりその趣旨は、できるだけ速やかに数多くの建築を作るために、ごく最低限の基準を満足することだったわけだが 、その後日本社会のあり方や技術レベルが大きく変わったにもかかわらず、これまでほとんど大きな見直しが行われてこなかった。現在の日本の都市や建築が抱える矛盾のかなりの部分に、この基準法の問題が大きく関わっている。
今回の耐震偽装問題も、表面的には単なる構造設計の問題のように見えるし、今回の基準法改正も単に耐震偽装をさせないようにということのみを考えて作られたもののようだ。しかし、もちろん話はそう簡単ではない。まず問題なのは、一級建築士という資格の持つ責任や現代の建築技術レベルと比較して、あまりに資格の取得が簡単で、試験制度自体に個人の能力を見極める仕組みがないことだ。このことが、同じ一級建築士という肩書きを持つ技術者の中に非常にレベルの高い人と低い人が同居するという問題を生んでしまった。
構造に限っていえば、現在の建築基準法は、かなり高度な構造設計手法を認めている。これは、これまでの日本の構造研究者が地震に備えた建物を作るために様々に研究を重ねてきた結果だともいえるのだが、現実にはこうした研究成果を正確に理解して構造設計のできる技術者はごく限られた人数しかいない。もちろん、行政を始めとする建築審査機関に構造設計の実務家はほとんどいないので、高度な構造技術を使って設計した建物は一般の審査機関では審査できない。これまでの基準法では、審査機関が基本的に何でも審査しますと言っていたのだが、耐震偽装問題のおかげでそれが全く不可能であることが表面化し、新基準法では、少し難しいものは2人の異なる専門家がチェックして間違いを少なくし、もっと難しいものは、建築センターなどに全国レベルでの学識経験者等が集まって審査することになったのである。
実際のところ、これまで自分たちの設計してきた建物は、これからは建築センター審査になりそうなものが多い。そうなると、かなり高額な追加審査料と審査期間が必要になってしまう。それなりに規模も大きくて工期や予算に余裕のある建物ならまだしも、住宅などではとても柔軟な設計ができなくなってしまう。これは、デザイン能力で仕事をしている建築家たちにとっては致命的な問題だし、日本の建築文化の発展を考えれば、非常に危機的状況である。今のところ、新しい基準法が実際にどのように運営されるのかよく見えない部分も多いのだが、既に数ヶ月前から各審査機関は完全に逃げの体制に入っていて、難しいものは審査しない方針のようだ。しばらくは、建築家としてデザインの自由度を確保できるように活動するとともに、今後の動向に注目しながら設計を進めてゆくより他は無さそうである。



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