「お笑いが盛んだ」と言いながら、不当に無視されている分野があまりに多い。ある時期より前の芸とか、海外のものとか。全く見もせず、明らかに勝手なイメージだけで語られているモノの数々。

 むしろ今の日本の「お笑い」は進歩ではなく、様式美化して閉塞を強めているように思え、危機感を覚える。(観客にすら)単純化された”お笑いメソッド”が流通しているのは、本当に「理解が深まった」ことなのか?

 そもそも「お笑い」とは何か?ギャグの部分を分解しさえすれば、「お笑い」の部分が分かったと言えるのだろうか?

 「日本のお笑いの流儀」があるように言ってるが、それらは結局テレビに流通しやすいものばかり安易に受け入れられているに過ぎないのでは?(そう考えると発端は80年代マンザイブームまで遡ってしまう)


 これらの疑問をきっかけに、日々「お笑い」の作品を見る日記を立ち上げてから丸二年。7月から三年目に突入します。

 と言っても当初はどのように書いていいか分かりませんでした。今期の半ばくらいから、相変わらず長いけれど、文章的には多少読みやすくなってきた…本人としてはそのつもりでいるのですが。


 さて2009年上半期に取り上げたCD、DVDは全部で118本。

 丸二年も見続けてきて、見るものもだいぶ減ったかと思いきやそうでもない。今期はひとつのアイディアをよく発展させた秀作にいくつも出会った印象があります。

 今期もそれらのオススメ作品をランキング形式で総まとめ。

 このブログを今後ともヨロシク!

まずはこちらもオススメ、ランキング次点ですが印象に残る作品から

東京ゾンビ [DVD]
東京ゾンビ(2005年・日本)

 B級映画が好きな人は是非。ラストも良かったなぁ。

夜ごとの美女 [DVD]
夜ごとの美女(1952年・仏)

 ルネ・クレール監督とジェラール・フィリップが組んだ、”夢”モノコメディ。クレールの後期作品ですが、彼の魅力が十分発揮されています。

26世紀青年 [DVD]
26世紀青年(2006年・米)

 500年後の世界はバカだらけになっていた!とにかく規格外のバカをいくらでも登場させられる設定。社会全体バカ過ぎて、もはや今のまともは通用しない!

スクリーミング・マッド・ジョージのBOY IN THE BOX 完全版 [DVD]

BOY IN THE BOX 箱の中の少年(2003年・日本)

 監督はスクリーミング・マッド・ジョージなんて名前だが日本人。日本語で楽しめる、シュールレアリズム映画の短編。


落語をまとめて

 まず志ん朝・小三治のCD「落語名人会」シリーズの総まとめをやりましたね。小三治の「初天神」や「死神」を聞いたのも今期。

 また満を持しての桂枝雀特集、開始。最初の二枚「高津の富」「寝床」で改めて枝雀ってスゴイなと思い、「植木屋娘」の幸右衛門の独壇場に圧倒され、大作「地獄八景亡者戯」に感心した。

 枝雀を聞き始めて、師匠の米朝シリーズも再び進めることに。よくできたコメディで、ヒッチコックのアレにも似てる「算段の平兵衛」が面白かったな。あと「野晒し」の関西版、「骨釣り」も良かった。


いよいよランキングだ!

 今回は秀作揃いで甲乙つけ難い作品ばかりでした。以下ランキングにはしてみたけど、一位までほとんど差はありません。

第十三位

陽気な幽霊 [DVD]
陽気な幽霊(1945年・英)

 のちに「戦場にかける橋」や「アラビアのロレンス」といった超大作映画を手がけるデヴィッド・リーン監督の初期作。幽霊モノのコメディです。

第十二位

大きな鳥と小さな鳥 [DVD]
パゾリーニの鳥(大きな鳥と小さな鳥)(1966年・伊)

 ちょっと当時の社会状況なども扱われていて現在では分かりにくい部分もあるかもしれないが、独特のコメディでかなり好き。
 思想や宗教のメタファーが詰め込まれた”観念コメディ”。美しい白黒映像を撮るパゾリーニ監督も僕のひいき。

第十一位

スーパーバッド 童貞ウォーズ コレクターズ・エディション [DVD]
スーパーバッド 童貞ウォーズ(2007年・米)

 フラット・パック関連のオススメ。下ネタ満載だが面白い!

第十位

俺たちは天使じゃない (1955) [DVD]
俺たちは天使じゃない(1955年・米)

 マイケル・カーティス監督、ハンフリー・ボガード主演の「カサブランカ」コンビによるコメディの秀作。

第八位(同率二本)

ヘアスプレー [DVD]
シリアル・ママ



ヘアスプレー(1988年・米)
シリアル・ママ(1994年・米)

 今年の初っ端が悪趣味映画の代表、ジョン・ウォーターズ特集でした。最新作の「ア・ダーティ・シェイム」は再び悪趣味路線全開のコメディ、こちらもまあまあ面白くてオススメ。


 ややコメディ色が薄いのでどこにランキングするか迷ったのですが、しかし「ヘアスプレー」は音楽映画の傑作としてもっと評価されても良いように思います。

 「音楽映画」というと実は潜在的に、バンドものしかり、ミュージカルしかり、「演奏する人」を主役にしたもののイメージが強いのかもしれません。

 それに対して「ヘア・スプレー」の音楽の扱いは、むしろその時代の空気を伝えるような、例えば「アメリカン・グラフィティ」で60年代の音楽がいろいろ流れてくるような感覚でしょう。
 プレイヤーが演奏するのではなく、既存の楽曲を貼り付けているだけだから、なんとなくそっちのほうが軽く見られてしまうのかな?

 しかし「ヘアスプレー」の曲を選ぶセンスは抜群です。うまいクラブDJは選曲の妙で、曲を全然違うように聴かせたり、聴くものをドンドン盛り上げたりします。
 「選曲」だって音楽表現になりうるのであって、それを映画的な推進力としてフルに生かしているのだから、「音楽映画」の傑作と言わずしてなんと言おう。是非そこのところを注目して見て欲しいです。

第七位

ズーランダー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
ズーランダー(2001年・米)

 現在のアメリカのコメディを語る上で絶対外せないのが「フラット・パック」。うちでもカテゴリを作っていろいろ見てきましたが、かと言って全部が全部面白いわけではありません。大ハズレは少ないけど、「コレはっ!」という作品もさほど多くないのも事実。

 そんな中、ひとつ頭抜けてよくできているのが「ズーランダー」でしょう。今アメリカのコメディを云々するのに、コレを見ていなければはじまりません。アメリカの笑い、直球ストライクの好作。

 ということでフラット・パック関連では「ズーランダー」と「スーパーバッド 童貞ウォーズ」の二本がオススメ。

第六位

ツイン・ドラゴン [DVD]
ツイン・ドラゴン(1992年・香港)

 ジャッキー映画は相変わらず見進めている途中ですが、作品の出来としてはこの時期が彼の全盛期なのかもしれませんね。
 当ブログで取り上げたのはコメディの「ツイン・ドラゴン」だけですが、香港ノアールの影響を受けてシリアス路線の「新ポリス・ストーリー」、久々の古典カンフースタイルだがお茶を濁さず、昔の「酔拳」に絶対負けないものを作るという気合が漲っている「酔拳2」、と素晴らしい作品が並んでいます。

 ジャッキー自身が監督した「プロジェクト・イーグル」も面白かった。

第五位

ときめきサイエンス [DVD]
ときめきサイエンス(1985年・米)

 今回のランキングでココが一番自信が揺らいでます(笑)、ジョン・ヒューズ監督の「ときめきサイエンス」をここに入れるのは同意してくれる人がどれだけいるんだろう。
 僕はコレ、”夢”タイプの映画だと思うんだよね。高校生の妄想がどんどん実現するのに、そこから自分を見つけて成長する。

 障害を乗り越えることで大人になるのが一般的な青春映画だと思うのだが、逆に恵まれ過ぎの中から自分を見出すのが普通と反対で面白い。

 ジョン・ヒューズのデビュー作「すてきな片想い」も佳作。

第四位

恋はデジャ・ブ [DVD]
恋はデジャ・ブ(1993年・米)

 いくら起きても同じ朝に戻ってしまう…というアイディアを徹底的に掘り下げた作品。
 同じ日を何度も何度も繰り返すにしたがって、主人公の気持ちが様々に変わってゆくところが共感できる。

第三位

運命じゃない人 [DVD]
運命じゃない人(2005年・日本)

 内田けんじ監督、劇場用長編デビュー作。いわゆる「パルプ・フィクション」タイプの映画だが、「うまいこと時間軸を入れ替えた」以上の面白さをしっかり表現できている!

第二位

ベリー・バッド・ウェディング 完全版 [DVD]
ベリー・バッド・ウェディング(1998年・米)

 悪趣味コメディのトップを飾るのはジョン・ウォーターズかと思いきや、それを塗り替えてしまったのが「ベリー・バッド・ウェディング」。見た目に反して相当な悪趣味路線のブラックコメディ。

 でも映画とは、コメディとは、観客を心地よくこちょばすだけが能ではないはずです。
 不快の中に笑いがあってもいいし、あるいは笑えない笑いすらも、映画的な満足感を満たしてくれればそれはひとつの立派な映画体験として、笑いの表現として”コメディ映画”足り得るのではないでしょうか。

 それはひいては「お笑いとは何か?」という問いに対する僕の答えでもあります。

第一位

まぼろしの市街戦 [DVD]
まぼろしの市街戦(1966年・仏)

 キチガイが無人の街に溢れ出してしまう…のだがそれが戦争との対比でもある。幻想的なシーンが魅力を放つ素晴らしいコメディ。

 様々な要素が奇跡的にうまく噛み合った、この作品を一位として今期のまとめを終わりたいと思います。

 下半期もまた面白い作品がいろいろ見られますように!

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