行かない旅 - お笑い編

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−桂三木助

ひと段落(桂三木助)

NHK落語名人選(60) 三代目 桂三木助 ねずみ・長短
NHK落語名人選(60) 三代目 桂三木助 ねずみ・長短
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「NHK落語名人選60 三代目桂三木助」(POCN-1100)

 三木助シリーズ、これにてひと段落。どのCDにも一本は十八番と言える出来の噺が入っていて、おなじみ「芝浜」以外でもしっかり聞かせてくれる。

・ねずみ

 江戸時代の名彫り師左甚五郎モノの落語のひとつ。桂三木助シリーズで取り上げた「三井の大黒」も同じく左甚五郎モノだったが、今回はこれの続きのようなストーリー。

 「三井の大黒」では江戸の大工政五郎のもとに居候していた左甚五郎。政五郎が亡くなって息子が名前を継ぎ、十年も江戸に暮らしていた甚五郎はまた旅に出ることにする。
 ここまではやや長めに地でしゃべっている。

 仙台の城下町で子供の客引きに呼び止められて、ねずみ屋という小さな宿に泊まることに。そして店の主人はもともと、ねずみ屋の向かいにある仙台一の旅籠寅屋の主人だったこと、腰がたたなくなり店を追い出されたいきさつを語る。
 ねずみ屋の主人右兵衛によるとても長い独白。自分からしゃべり出すのがあれっと思ったが、丁寧にしっかり語っていくうちに気にならなくなっていった。

 これまで聞いた三木助の噺は古典的なテンポの中、どれもよく刈り込んで締まった印象だが、この「ねずみ」はゆったり語られて、ひとつの場面が長めにとられている。とはいっても無駄はないので、ダレさせずにずっと聞いていられるかんじでとても良い。

 さて主人にいきさつを聞いた甚五郎は店が少しでも繁盛するようにと、ねずみの彫り物を作って置いてゆく。甚五郎のねずみは動き出すと評判になり店も大繁盛。向かいの寅屋は対抗して、有名な別の彫り師に虎の彫り物を作ってもらう。

 ギャグは多くないが、「腰がたたないが筆は立つ」などのクダらな過ぎるダジャレをさらっとやるのが逆にちょっと面白い。あと後半にでてきたこちらのギャグも。

「腹をたてたから腰が立ったんじゃないんですな。腰はもう二年前に立っていたんですけども、立たないと思って立たなかったから立たなかった。」

・長短

 やたら気の短い短七と、やたら気の長い長さんは、気性が全く違うが小さい頃からの友達同士。ふたりの会話のごくごく軽い噺。

 やや体の動きのギャグがある。とてつもなくゆっくりしゃべる長さんも、火がつく前にたばこをはたいてしまうほど気が短い短七も、どっちもどっち。本編は10分程度の簡単な噺だけど、バカバカしくてこれはこれで面白い。

昼と夜が見えてくる(桂三木助)

NHK落語名人選(59) 三代目 桂三木助 化け物使い・さんま火事
NHK落語名人選(59) 三代目 桂三木助 化け物使い・さんま火事
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「NHK落語名人選59 三代目桂三木助」(POCN-1099)

 NHK落語名人選シリーズの桂三木助はあと二枚でおしまい。

・化け物使い

 ちょっと前にも志ん朝で聞いている。

 しかし三木助が古い世代とは言え、冒頭で木助が仕事を紹介してもらうところから、かなり刈り込んでずんずん話を進めてゆく。こんなハイペースで大丈夫なのかなと思って聞いてみると、やはり全体的に刈り込んでいるが、他の人には出てこない要素もポツポツ入っているみたい。

 例えば木助が「隠居の人使いは荒いというよりもヘタ」ということを伝えるためのエピソードは、豆腐屋だけでなく、着物の脱ぎ方とふんどしの替え方も加えて3つになっている。どれにもくすぐりが入っている。

 また引越し前に木助がなじみの親方にひげをあたってもらうシーンもはじめて聞いた。田舎のひげそりのくすぐりが入る。

 どのギャグも内容的には悪くないのだが、”ふんどし”のくすぐりや、田舎のひげそりで使われる”田舎”像が薄れていることなどから、どちらも今は使いにくい部分かもしれない。

 他にも細かい部分で加わっている要素はあるのだが、逆に終盤で化け物が現れるところでは、三人目の女性ののっぺらぼうは出てこない。これは演じたときの時間の都合でカットしたのかもしれないが。

 全体的にはまとまってとても良い出来。後半、隠居が引っ越し先の家で夜を迎える部分で、すーっと引き込むように空気が変わるのが鮮やか。それまでは全部明いうちの話、そこからはちゃんと夜の話に聞こえてきます。もちろん構成感もくっきり出る。

・さんま火事
 長屋の向かいにあるケチな油屋。ハマグリの殻を捨てたのを注意して持ってこさせたと思ったら、冬にそれを使って膏薬を売り出したり、子供の落書きにかこつけて炭を集めたり、かんざしを落としたなどとでまかせを言って草むしりをさせたり。長屋の連中はいいように利用されてばかり。

 なんとか一度ぎゃふんと言わせてやろうと、長屋のみんなでたくさんのさんまを焼いて煙を出し、火事だと思わせて脅かしてやることに。

 これは初めて聞く噺かな。落語にはケチのネタがいくつかありますが、この噺で前半に出てくる油屋のエピソードは面白いです。
 でもケチっていうより、セコくてズル賢いヤツですね。いいように利用するやりかたがあんまりにあけすけ過ぎてバカバカしい。ケチの笑いの中でもこういうかんじのは珍しいかも。

 後半での長屋の連中の作戦も、ズラッと並べてさんまを焼いているイメージもなかなか印象的だし、軽めだけどよくできた噺ですね。三木助の出来はこちらも良いです。

小三治にさらに磨かれた(桂三木助)

NHK落語名人選(35) 三代目 桂三木助 宿屋の仇討ち
NHK落語名人選(35) 三代目 桂三木助 宿屋の仇討ち
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「NHK落語名人選35 三代目桂三木助」(POCN-1075)

・宿屋の仇討
 武蔵屋という宿に万事世話九郎という侍が泊まることになるが、静かな部屋をとって欲しいと頼む。続いて江戸の魚河岸の若い衆三人がやってきて、となりの部屋に宿泊をする。

 若い衆三人は芸者を呼んでドンチャン騒ぎをはじめてしまい、侍は店の者伊八に頼んで静かにしてもらうように伝える。一旦は静かになったものの、話が盛り上がるうちに今度は相撲をとりだしてドタドタ大騒ぎ、再び伊八が呼ばれる。

 また注意されてしまった三人は、布団に入って女の話をする。そのうちにひとりが見栄を張って、「人をふたり殺して、三百両を持って逃げたことがある」と言い出す。

 これは小三治のバージョンがとても面白かった。

 三木助の出来はまあまあ、かな。前半はあまりたいしたことのないギャグをしっかり演ったり、言葉の説明をしたりするところが、ちょっと古い世代を感じるまどろっこしさ。
 もちろん古い世代でも十八番中の十八番は無駄なく引き締まっているモノであり、そういう意味では全体的にまだ微妙にそこまで練りこまれてはいないかんじ。悪くはないんですけどね。「やや十八番」くらい。
 でも後半はだいぶノってきます。脚本的に良く出来ている面白い噺なので、その部分はちゃんと演じられています。

 これを聞くと小三治は古典を踏まえつつさらにブラッシュアップして、自分のものにしていますね。

全体のためにはカットも必要(桂三木助)

NHK落語名人選(34) 三代目 桂三木助 味噌蔵・道具屋
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「NHK落語名人選34 三代目桂三木助」(POCN-1074)

 三木助のシリーズがまだ途中だったので聞く。

・味噌蔵

 ケチの旦那が奥さんの出産祝いに出かけている間に、店の者たちは羽を伸ばして酒盛り、と思ったら予定よりも旦那が帰ってくるという話で、このブログでも何度か紹介しました。

 三木助の十八番のようで、軽めの噺ですが出来はよい。先日聞いた小三治のバージョンは前半と後半のふたつに分かれて感じてしまいましたが、こちらはちゃんとひとつにまとまっています。

 小三治の「味噌蔵」は古典を踏襲するように演じていたので、使っているセリフもほとんど変わっていないように聞こえるんですがね。それでもこれだけ違ってしまうのが落語の不思議、そして”演出”というものの不思議。

 具体的にはどこに原因があったのか、考えてみると。

 この噺は各場面に面白くなる要素が入っているんですね。ケチな旦那のエピソードも、夫婦の寒い夜も、旦那が小僧を連れて家を出るところも、宴会も、旦那の帰宅も、全部ちゃんと面白い。

 小三治はそれぞれの面白さを、彼の優れた演技力の中で見つめ直す。その結果各部は均等に力が入ってしまって、全体の構成感が崩れてしまった。ストーリーの焦点が前半と後半で入れ替わってしまうような印象になってしまった。

 部分で面白くても、全体のためには軽くしたほうが良いこともあるってことですね。

・道具屋

 与太郎が路上の古道具屋をはじめてみる噺。

 与太郎モノですね。客がきてはおかしなやりとりをする、という繰り返しで、どこで切ることもできるタイプの噺。三木助の出来もたいしたことはない。

話芸でのアクションシーン(桂三木助)

NHK落語名人選 (15) : 三代目 桂三木助
NHK落語名人選 (15) : 三代目 桂三木助
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「NHK落語名人選15 三代目桂三木助」(POCN-1015)

・たがや
 花火の日にたくさんの人でごった返す橋の上。馬に乗った侍とたが屋がはち合わせしてなかなか動きがとれない中、たが屋が持っている竹がはじけて侍の笠に当たってしまった。

 屋敷へ来い、と怒る侍。屋敷へ行ったら殺されてしまうことは分かっているので詫びるのだが、聞き入れてもらえない。我慢しきれなくなったたが屋は啖呵を切り、馬上の侍、お供のふたりと斬り合う。

 まくらで解説していますが、たが屋の”たが”とは桶のたが。つまり桶を修理する職人が主人公です。

 話の肝は、昔かたぎでない世界にもいたたが屋と、偉そうな侍達とのアクションシーン。

 今でもひとつの話の中で、例えば人情ドラマあり、笑いあり、そしてひとつの要素としてアクションシーンを話芸で表現するのはアリだとは思います。

 しかしこれはこのチャンバラの聞かせるためだけにフリやサゲがあるような噺。
 のちの話芸のために「アクションを話芸でこう表現できる」という蓄積を取っておくのは大切で、それが文化の厚みでもありますが、この噺単体で見ると現在演じるリアリティはだいぶ薄れてしまいますね。

 今のアクション映画の、進化したアクションシーンのインパクトに対して、話芸の美学だけで対抗するのは厳しいでしょう。そういう意味では娯楽の少なかった時代の名残を感じる噺。


・三井の大黒
 大工が仕事にケチをつけられたので怒るが、棟梁がとめに入る。どうやらその人は上方の大工のようで、ひょうひょうと変わった人柄から一緒に働くことになる。
 いつも変な仕事ぶりで不思議がられるが、実はその人こそ彫り物大工の名人左甚五郎だった。

 左甚五郎が登場する落語のひとつ。

 なんか水戸黄門みたいな話ですね。正体を明かさない理由はきちんとつけてあって、一応そこにイヤらしさは感じないようにはできている。解説によるとどうやら元は講釈から移された噺のようです。

 大工という職人の世界で、一緒に生活しているような気分を感じられるのが楽しい。

おなじみ古典的名演(桂三木助)

NHK落語名人選 (13) : 三代目 桂三木助
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「NHK落語名人選13 三代目桂三木助」(POCN-1013)

・ざこ八
 眼鏡屋の息子鶴吉と、大身代の雑穀商ざこ八の娘お絹が養子婚礼することになったが、婚礼の日に鶴吉の行方が知れない。以来お絹は病に伏し、また別にもらった養子のために店もつぶされてしまった。

 十年後、帰ってきた鶴吉は深く反省して再びお絹の婿に入り、身を粉にして働いてざこ八をより大きな店に立て直す。

 これは初めて聞いたけど、変な噺だなぁ。

 前半は鶴吉の軽率な身勝手によってざこ八とお絹がどんどん落ちぶれてゆく、かなり陰鬱な話。人情噺のメロドラマストーリーの前フリなのかなー、と思って聞いているのだが、ときどき入るナンセンスなくすぐりが全く合ってない。

 中盤は鶴吉が身代をどんどん大きくしてゆくのを地で語るのだが、ここのくすぐりのバカバカしさは悪くない。

 そして終盤は立て直されたざこ八。ところがお絹が「先の仏、先の仏…」と言う、きっとこれは何か理由があるのだろうと思いきや、たいしたことのないギャグのサゲに繋がってオシマイ。拍子抜けにもほどがある。

 結局人情噺のドラマが生まれるわけでなし。三木助はなんでこの噺をやったんだろう。

 解説によると他に「先の仏」とか、若干演出が変わったバージョンで「二度の御馳走」というタイトルのときもある。もとは上方落語のようで、他の人の録音を見かけたら聞いてみたい。


・芝浜

 「芝浜」といえば三木助の古典的名演はおなじみ。僕も以前に聞いている。

 女房も魚屋も、基本的には感情移入は少なめで様式寄りの端正な演じ方。
 そこへ芝の浜での風景描写、キセルの使い方から財布を海から引き上げるところ、さらに店が大きくなってからの大晦日の夜の描写など、視覚、臭覚、聴覚など五感に訴える気持ちいい聞かせ所をうまく演じる。

 無駄なく、かつ余裕を持って演じている。改めて聞くと、やっぱり古典的な演じ方もまたこれはこれで良いんです。

桂文楽にも似た無駄のないスタイル(桂三木助)

NHK落語名人選 (14) : 三代目 桂三木助
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「NHK落語名人選14 三代目桂三木助」(POCN-1014)


 先日1月2日深夜、NHKで「新春蔵出し! まるごと立川談志」という番組をやっていた。これは以前BSでやっていた、談志を特集する10時間番組(!)を再編集したもので、それでもほぼ5時間(!)にわたって放送。

 ドキュメントとともにいくつかフルの落語も放送する中で、「へっつい幽霊」の録画があった。これは古くは三代目桂三木助の十八番らしいのだが、僕はまだ未聴。

 桂三木助というと「芝浜」の名演がクラシックとしておなじみで僕も聞いたことがあるが、他のネタはほとんど聞いていない。せっかくなのでこれを機会に三木助をいろいろ借りてみることに。

・へっつい幽霊

 実は「へっつい幽霊」の談志版は、「まるごと立川談志」の放送以前に、「立川談志 ひとり会 落語CD全集 第二集」のDVDですでに聞いている。

 桂三木助は桂文楽も思わせる非常に無駄のないスタイルで自分のものにしている。ややカッチリめで古めのテンポ感(世代的に当たり前)だが自然で聞きやすい。

 展開が多い噺だがよく整理されているし、くすぐりもよく選ばれていて、今聞けば多少古さはあっても、生半可じゃ他のギャグに入れ替えてブラッシュアップなぞできないだろう。

 また登場人物の設定の生かし方など、もともと噺自体うまくできているのだが、細かい部分の話のつじつまの合わせ方もいろいろ工夫されている。

 例えば幽霊と博打を打つ前にサイコロの確認をするシーンがあるが、これが入ることによって、熊さんがハナから博打でかすめとる計略だったわけではないことが自然に分かるし、グッと間を取ってクライマックスに向かう前の集中力もひきつける。

 こういう脚本の積み重ねのウマさから生まれる骨太さは、落語も映画の場合も同じだろう。


・崇徳院

 こちらはちょっと前に志ん朝のバージョンを聞いた。いくつかのくすぐりや、細かい部分の現代化を除けば、三木助とほとんど変わらないですね。大旦那、病気の若旦那、熊さんのキャラクター作りも同じ。すでにほぼ完成されています。

 三木助版にしかないギャグでは「オレの腰はわらじだらけだよ」というのがなかなか面白い。ただ志ん朝版には「元気ならぶつよ、もう」というサイコーのギャグ(ツッコミか)が加わっていたからなぁ。

 志ん朝は完成されていたものに真正面から挑んで、決して見劣りしない…ということは実質比較すればあとから出てきたものはわずかにでも越えていなければそうは見えてこないはずなので、見事に拮抗できる結果を出した、ということなのでしょう。
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