第2回丹後フェス(2015年4月12日)に合わせ、Hello! Ukawa!の第3号をお届けします。前号発行から、ほんとうにさまざまなことがありました。動きはじめてしまった基地と、現在も進行中のさまざまな問題。京都市内での街頭情宣中の経験なども踏まえ、盛りだくさんの内容となりました。以下、全文とファイルを掲載します。いろいろなところで広めていただけるとありがたいです。
vol.1とvol.2も合わせてお読みください。
Hello! Ukawa! vol.3
2015年4月10日 編集・発行:スワロウカフェ
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宇川でいま、起きていることについて知っていますか?
宇川の基地問題の経緯
133番目の在日米軍基地・経ヶ岬通信所が宇川地区につくられ、運用が開始されています。その発端となったのは2013年2月、オバマ・安倍会談での「合意」でした。両首脳は朝鮮民主主義人民共和国の「核・ミサイル活動」に対し弾道ミサイル防衛協力を進めるため、京丹後市にある自衛隊基地に米軍Xバンドレーダーを設置すると発表したのです。その実態は新たな米軍基地の建設でした。計画は、既存の自衛隊経ヶ岬分屯基地の土地約0.5haと民有地約3.5haを米軍専用区域として提供するというもの。約160名の米軍人・軍属が駐留することも明らかになりました。現在までの経緯は次のようなものです。
■日米合意〜京都府知事・京丹後市長の協力表明(2013年2月〜9月)
日米両政府の計画発表後の2月26日、国は京都府と京丹後市に対し経ヶ岬を配備候補地とすると説明しました。国と自治体との調整が進められるなか、京丹後市と防衛省は、同市内で住民説明会を複数回開催しました。参加した住民からは反対の意見が多く出されています。主な論点は、(1)米軍人・軍属による事件・事故、(2)レーダーの電磁波による健康や生活への悪影響、(3)環境の破壊、(4)安全保障上の問題(近隣諸国との緊張関係を高めるなど)でした。国は、「事件・事故の未然防止に努める」「健康や周辺環境への影響はない」「軍事的緊張が高まるようなことはない」など、客観的な根拠を示さない回答をくりかえしました。
にもかかわらず、山田府知事と中山市長は受け入れ条件(電磁波・騒音・水質の調査、米軍関係者の居住場所選定にあたっての地元との丁寧な調整、日米地位協定の継続的な改善、事件・事故の未然防止など)を示した上で、9月19日、正式な協力表明を発表したのです。市民からの批判と不安の声が、国や行政によって誠実に受け止められたことはありませんでした。
■協力表明〜用地取得(2013年9月〜同年12月)
防衛省は用地取得を急ピッチで進めていきました。借地契約の単価は当初説明の190円/1m2から300円にまでつりあげられていきました(一般的な相場は10円程度)。契約を拒む地権者もおられましたが、国はさまざまなかたちで圧力をかけ、強引に契約をまとめていきました。この結果、12月27日には、1名をのぞいてすべての地権者から契約書の提出がなされます。
一方、住民からの再三の要請にもかかわらず、地権者以外への説明会は一度も開催されませんでした。住民をないがしろにする現状に抗議し、12月15日、京丹後市役所前で1300人の反対集会が開催されています。
■用地取得以降(2014年1月〜)
3月27日、宇川地区で集められた反対署名(有権者の半分にあたる561筆)が京丹後市へ提出されました。また京都府には反対署名50,805筆、府議会請願539件が提出されています(2015年2月20日時点)。
しかし2014年5月27日早朝6時半、米軍は基地建設工事の着工を強行。9月20日には米軍人20人、軍属70人が京丹後市に到着し、市内中心部・峰山町のホテルに入り、駐留を開始。さらに10月21日早朝4時半、多くの警察官や機動隊を配置するなか、日米両政府はXバンドレーダー本体の搬入を強行しました。翌10月22日には在日米陸軍「第14ミサイル防衛中隊」が発足。12月26月にはXバンドレーダーの運用が始まってしまいました。
その後、住民が抱いていた不安や懸念は払拭されることなく、国の「説明」とは正反対の実態があらわになっています。日々起こりつづけている問題に、今、私たちがどのように向き合い、声をあげるのかが問われています。
米軍関係者の住居問題
宇川の住民からは、1600人の集落に160人の米軍人・軍属が駐留することへの恐怖や不安の声が多くあがってきました。なかでも、軍人・軍属がどこに住むのかは大きな問題です。そのため京都府と京丹後市は、住居場所の選定にあたり「地元」住民の意向を丁寧に確認し、調整することを求め、国もそれを約束してきた経緯があります。居住地選定まで、米軍関係者はホテルでの集団宿泊を続けていました。
しかし2015年3月、米軍関係者約30人が個人契約で賃貸住宅に住んでいることが国によって公表されました。また京丹後市網野町島津では軍属向けの居住地選定が進み、防衛省は「軍属の雇用企業と、土地をまとめて買う企業との民・民の関係だから、国は基本的に関知しない」という主旨の説明を周辺住民に対して行いました。住民の「合意」のないまま賃貸住宅に住むことや、居住地の選定を強引に進めることはあきらかに約束を破るものです。何度でも住民との話し合いの場をもつことが必要です。
このことは多発する交通事故の問題にもつながっています。
交通事故、多発‥‥
昨年10月22日の米軍部隊発足から軍人・軍属による交通事故が既に14件も起きています(2015年2月19日時点)。これは頻度にして月に3回のペースです。そして2月19日にはついに住民の方が頚椎打撲、全治5日のケガを負う人身事故までもが起きてしまいました。
これらの事故について加害者の軍人・軍属がどのように処分、処罰されたのかの情報はありません。加害者の軍人・軍属が交通講習、運転講習を受けていたかについても分からない状況です。事故のうち、特に短期滞在者によるものが多くありますが、講習の日程は必要に応じて随時ではなく固定されているため、加害者が受講していなかった可能性も大いにあります。また事故の多くはレンタカー利用中のものですが、マイクロバスによる集団通勤というそもそもの約束が守られていないことが原因であるといえます。
さらに軍属の個人車両の利用も急増しています。Yナンバー車がそれですが、京丹後市内において駐留後に京都で購入したと思われる「京都Y」ナンバーの車両10数台が確認されています。Yナンバー車は任意保険への加入がずさんであり、事故が起きても被害者が補償を受けられず、泣き寝入りを強いられるということが大きな問題になってきました。この問題について京丹後市の基地対策室は「プライバシーの問題があって把握できていない」などとしています。
また1月21日には京丹後市久美浜町の府道で速度制限(時速50キロ)31キロオーバーの時速81キロで暴走していた米軍属が京丹後署により検挙・書類送検されましたが、それに対して1月30日に京都地検は「基地からの帰宅途中で公務中であったこと」を理由に日米地位協定に基づき不起訴処分としました。なんとこの事実は2ヶ月たった3月24日になってようやく報道されました。京都府は米軍基地建設を許可するにあたって日米地位協定の改善を国に求めていましたが、全く無視されている状態です。
米軍に対して約束を守らせることすら全くできていないこの関係において、住民の安心を保障することはかなうはずもありません。強い怒りをおぼえます。
低周波騒音問題
着工以前の説明会で、防衛省は「騒音対策は万全に行う」などと説明し、約束してきました。しかし10月21日のXバンドレーダー搬入強行の数日後より、かなり大きな音が昼夜を問わず基地から聞こえはじめ、身体の不調を訴える人が続出しました。レーダーを稼働させるためのディーゼル発電機が発生させる、低周波数成分を多く含む騒音です。その不快さは、離れた民家でも眠れない人が出るほどのもので、基地のフェンス近くでは場所によっては吐き気を催すレベルでした。袖志区の住民の方たちが京丹後市から測定器を借りて計ったところ、騒音の大きさは区内平均で65〜80デシベルというものでした。これは環境省の騒音環境基準を大きく上回るものです。とりわけWHOのガイドライン(1999年)では、80デシベル以上の騒音に長時間さらされると騒音性の聴覚障害が発生するリスクが高まるとされています。
これに対して住民の方たちからは「約束がちがう」と抗議の声があげられました。当然の対応として、騒音対策が行われるまで発電機はただちに停止させられるべきでした。しかし米軍はこうした声を無視してレーダーと発電機を稼働させつづけ、防衛省も京都府も「対策は行っているところ」などとして、米軍に停止要請をすることすらしませんでした。防音マフラーが設置され、騒音が体感上ある程度軽減されたのは、4ヶ月以上もたった2015年3月に入ってからでした。住民の生活や健康よりも、基地の稼働をなによりも優先する米軍・防衛省・行政の態度がここに現れています。
低周波騒音の特性として、症状が騒音に曝露されたあと長い時間が経過してから出てくることが指摘されています。また、マフラー設置後も騒音は発生しつづけており、音のひどさを訴える住民の方も多数おられます。実際どの程度の改善がなされたかなどについては今後継続的に調査を行っていく必要があると考えられます。
問題はほかにも山積み
◎銃を下げた軍関係者がうろうろ‥‥
基地内を銃を持った警備員がうろついています。住民の方たちや車が行き交う道路のすぐそばまでやってきたりするほか、ゲートの外側に出た例も確認されています。大変な恐怖を感じます。彼らはいったい何を守っているのでしょうか。みだりに武器を持って基地の外に出ないことを要請したり、どのような場合に武器を使用するのか、根拠は何かについて米軍に確認するよう、宇川の住民は京都府などに求めていますが、いまだ回答はありません。2015年に入り工事が一段落し、これまで敷地内外を隔てていたフェンスが撤去されました(レーダー本体は厳重に囲われています)。その結果現在、銃を持った軍関係者と私たちを隔てるものはない状況です。
◎占領意識まるだしの看板
2015年3月はじめ、基地のフェンス外側に設置された「立ち入り禁止」の看板の英語部分に、刑事特別法に加えて1950年に制定された米国内の治安維持法に基づくとの表記があることがわかりました。沖縄などでも同様の看板が設置され、日本国内では適用できないと指摘され撤去されていたケースが以前にあります。宇川の件でも外務省が米国政府に申し入れましたが、その結果は該当箇所にテープを貼って「修正」するというお粗末なものでした。米軍が基地(そして宇川)を「占領地」であると考えている意識が、ここから明らかになっていると思います。
◎謎のドラム缶問題
2015年3月22日、大量のドラム缶が基地内に置かれているのが発見されました。当初除草剤ではないかと危惧されたのですが、その正体はエチレングリコールでした。レーダー発電機の冷却剤として使われるものと思われます。これは有毒物質であり、日本国内では保管や取り扱いに法的な規制があるものです。しかしどのような扱いが基地内でなされているのかについては皆目わかりません(おそらく日本国内基準ではないでしょう)。今後も同様の問題が起こってくることが懸念されます。基地内には有毒物質除染のための緊急シャワー設備が設置されており、危険な物質が搬入されることが基地運営の前提となっていることがうかがえます。
◎電磁波問題
Xバンドレーダーはきわめて強力な電磁波を出す装置です。それが人々の健康や、田畑や魚などを含む動植物にどのような影響を及ぼすのか、いまだにわかっていません。しかし防衛省は「なんら影響はない」の一点張りです。レーダー設置の前後に防衛省は電磁波強度についての調査を行いましたが、調査箇所がたった3ヶ所と少なく、測定機材・状況についての情報が十分公開されず、公開されたデータの単位も適切でないなど、多くの疑問を感じさせるものでした。防衛省による調査は住民の方たちに対する安全・安心の保障にはほどとおいものでしかありません。レーダーが本格稼働を開始するなかで、電磁波の問題にはこれからも注意していかねばならないでしょう。
・・・日々起こりつづけている問題に、今、私たちがどのように向き合い、声をあげるのかが問われています。
宇川ってどんなところ?
京丹後市丹後町宇川地区は、京都府北部の丹後半島の北端にある静かな土地です。日本海に面し、大陸と日本との「海の玄関」とも言われてきました。人口は約1600人。農業と漁業中心の生活が今も続いています。宇川の海は豊かな漁場であり、独特の地形を活かした丘の上の「棚田」でも知られています。宇川はかつて「陸の孤島」と呼ばれていたように、2004年4月に6町が合併してできた京丹後市にあって、その中心から離れた場所にあります。高齢化と過疎化が進み、「限界集落という言葉のほうが実感に近い」という住民の方の言葉が重く響く場所でもあります。
<コラム(1)北朝鮮のミサイルが怖い/中国が攻めてくる/基地が平和を守るetc‥‥と思っているひとへ>
◆恒久平和、戦力不保持は侵略したアジアの人々への約束
まずは基本的な歴史の事実を確認しましょう。アジア太平洋戦争における日本と中国・朝鮮との関係は日本が一方的な侵略者でした。敗戦後に恒久平和・戦力の不保持をうたった日本国憲法をもって出直したことを「アメリカから押し付けられた憲法だ」と主張する人もいますが、押し付けうんぬん以前にそれがまずは何よりも侵略・植民地支配によって多大な苦しみを与えたアジアの人々に対する約束であったことを忘れてはならないと思います。
◆東アジアの冷戦構造への加担をやめよう
しかしその約束は戦後すぐに骨抜きにされていきます。その最初の契機となった朝鮮戦争では日本の海上保安官や民間船員など8,000名以上が米軍主体の国連軍の作戦に参加しました。また、朝鮮戦争を契機に警察予備隊が組織され、それが改編して1952年に発足した保安隊が今日の自衛隊の前身です。朝鮮戦争が日本にとって「朝鮮特需」とも言われる経済効果をもたらし、その後の高度経済成長を支えたことを思えば、「日本は戦後、平和により繁栄を享受してきた」とはたしていえるでしょうか?
朝鮮戦争は休戦協定のままであり、いまだに平和条約締結に至っていません。それは朝鮮民主主義人民共和国がアメリカという圧倒的な軍事力を持つ超大国と韓国、そして日本によってつねに銃剣を突きつけられている緊張状態にあることを意味します。「ミサイルが飛んでくる」と脅威をあおるとき、そのミサイル実験がどの時期に行われているか一度確認してみる必要があります。それにはいつも米韓による大規模な合同軍事演習が先行しているのです。
また朝鮮が人工衛星の打ち上げを実施したときも、日本のメディアは「事実上のミサイル」として脅威をあおりました。しかし逆に日本が保有するより高度な人工衛星ロケット(技術的により強力な「事実上のミサイル」)がアジア諸国に与える緊張を考えたことはあるでしょうか?
日本では1969年の国会決議により宇宙開発・利用は「平和目的」に限定されてきたのに、2008年制定の宇宙基本法により軍事利用が解禁されてしまいました。それなのに自国のロケット・人工衛星は「平和のため」で、他国のは「ミサイル」だと考えるのはおかしいと思いませんか?
◆尖閣諸島問題
「中国が尖閣諸島(釣魚諸島)を奪いに攻めてくる」と言ってくる人もいます。日本が尖閣諸島(釣魚諸島)を領土として主張するようになったのは1895年、日清戦争で日本の勝利が確定的になった際に一方的に領有を閣議決定したことに端を発します。中国および台湾の立場からするとそれは大日本帝国の膨張主義によって盗まれた土地であり(台湾自体も下関条約によって清から「割譲」され日本の植民地支配下におかれました)、領有権をめぐる対立関係がありました。
しかし中国との関係でいえば、日中国交正常化交渉において尖閣諸島(釣魚諸島)をめぐる領有権問題については取り上げず、その解決を将来に延ばすという合意(棚上げ合意)が両者間でなされました。1978年の日中平和友好条約締結の際にも「棚上げ合意」は再確認され、さらに翌年には領有権についての争いを回避しつつ油田の共同開発も視野に入れた交渉も持たれるようになっていました。そうやって40年間続いていた関係が、2010年に海上保安庁が中国籍の船を捕獲し船長を逮捕、送検、拘留するという「中国船衝突事件」を契機にくずされ、「主権を脅かす中国」といった脅威論が日本国内でいっそう声高に叫ばれている状況があります。
また台湾で漁業を営む人々にとっては尖閣諸島(釣魚諸島)は戦前より大切な漁場でしたが、日本政府は中華人民共和国政府との関係を重視するために中華民国政府が統治する台湾を交渉の相手として長らく無視し続けていました。ずっとそこで漁業を営んできたのに、日本政府が実行支配を強める過程で「不法」として罰金を支払わされたり、逮捕されることもあるという状況に繰り返し抗議の声があがってきました。2008年には台湾の民間の漁船を海上保安庁が沈没させるという事件も起きています。2012年に日本政府が国有化したことにより緊張がいっそう高まったことを受け、両者間での漁業権についての協議を本格化し、2013年に領有権について棚上げしたうえでの漁業協定が結ばれるに至っています。
歴史をふまえると、尖閣諸島(釣魚諸島)が日本の領土であるという言い分は帝国主義による略奪の正当化を前提にした主張です。それを共有できないとしても、少なくとも「棚上げ合意」は両者が領有権を主張しあっている領土問題が存在しているという認識を前提に、将来に向けて平和的に話し合うという約束です。
「中国船衝突事件」では、民間の中国籍の船が尖閣諸島(釣魚諸島)近海にいたことをもって日本の国家権力である海上保安庁が「領海侵犯」として船を捕獲し、船長を逮捕・送検・拘留までしてしまいました。相手にとっては、「約束を破られた」ととらえられてもしかたありません。そのような経緯を無視して日本政府はこの事件を「中国の脅威」として利用し、主権防衛を名目に軍事増強を図ってきましたが、それは何重にも間違った方向です。
国境線の引き方は当事国それぞれにナショナリズムをたえず喚起させるものであるからこそ、軍事的緊張によってではなく、平和的に話し合うことが必要ですし、「国家」ではなくそこに生きる「ひと」の視線に立ち返ることが大事だと思います(現地の海域は、沖縄で漁業を営む人々にとっても大切な漁場になっています)。一方で日本の主張はかつての帝国主義による膨張政策によって引いた線の上書きであるからこそ、それに怒る声があがっていることも真摯に受けとめる必要があるのではないでしょうか?
◆基地必要論と排外主義
今回、朝鮮脅威論と中国脅威論の問題性について論じましたが、それはこれまで基地への反対を訴えて街頭活動をしてきたときに、こうした主張をもって「基地は必要だ」と言ってくる人々にたびたび出会ってきたからです。しかし、本当は順序が逆なのです。基地を作りたいから、どんどん戦争に参加していきたいからこそ脅威が創られているのです。そしてそのターゲットこそが中国であり、朝鮮民主主義人民共和国なのです。それぞれはまさに日本がかつて侵略し植民地支配を行った相手ですが、脅威に仕立て上げるためには加害の歴史は否定・歪曲・正当化されます。日本の現状では「南京虐殺はなかった」「従軍慰安婦は嘘だ」というような暴言を政治家までもが放言するくらい歴史修正主義がはびこっていますが、それは日本が侵略したアジアの人々に対して更なる苦痛を与えている行為にほかなりません。そしてそのような歴史認識がまかり通る中で、まさに日本に暮らすたくさんの中国人、朝鮮人が「敵国民」として民族差別の標的として攻撃されている現状があります。
基地はそれが押し付けられる土地の人々を差別し暴力に曝します。そして基地はいつも「敵」を必要とするからこそ、「敵」と名指された人々を差別し暴力に曝します。基地による平和はありません。基地は差別と暴力によって存在しているのです。
<コラム(2)「私たち」と宇川>
宇川の米軍基地問題について話すとき、「京都に関西初の米軍基地ができてしまったんだよね」という言い方があります。もちろんそういうとわかりやすいからなのですが、ここでちょっと止まって考えてみたいことがあります。たとえば京都市内に住むひとが「京都」というとき、京都市内のことを指すことが多く、「丹後の宇川」を含んでイメージすることは、ほとんどないに等しいでしょう。歴史的にも丹後の名称は律令制下での丹後国に由来し、「京」とは別のくにとして存在していました。京都府に組み入れられたのは近代以降のことにすぎません。現在でも、約150万人が住む人口密集観光都市である京都市(そのとりわけ市街地)と、第一・第二次産業中心であり過疎に悩む丹後(旧丹後町は人口約7000人、京丹後市全体でも6万人に満たない)は、まったく異なる特徴を持つ地域であるといえるでしょう。
いま仮に京都市内の空き地的な場所(御所とかね)に、宇川と同じ規模の米軍基地の建設が計画されたとしたら、どうでしょうか。おそらく宇川とはかなりちがった展開を見せることになるでしょう。単純に多くの人が住んでいるから、より多くの人が反対するだろうし、基地は観光にとってマイナスになる、などの言い方も比較的説得力を持って受け止められるでしょう。府知事もすんなり賛成はしなかったにちがいありません。
宇川のことについて考えたり、行動するとき、軍事基地や原発がこの国においてどのような地域に押し付けられてきたかという視点をもつことが大事だと思います。それはつねに弱い立場(琉球=沖縄は日本の植民地でした。福島も東北という周縁部にあって、石炭から石油への産業構造転換による衰退と人口流出に悩んでいました)の地域に計画され、カネと政治圧力で地元の人々を分断し、中央ー大都市が受け入れたくないものを受け入れるように強いてきたのです。
こうしたことを考えるとき、「宇川にこそ」米軍基地は作らせてはいけない、と思うのです。そして京都府庁や近畿中部防衛局、京都防衛事務所、米国総領事館などが存在する都市圏に住む<私たち>が果たすべき責任や役割も、見えてくると思うのです。
<米軍基地建設を止めるためにできること>
米軍基地建設を止める、反対する、といっても、どういうことができるのだろう?と思う方も多いと思います。すでにさまざまな意思表示の方法が実践され、つくられています。以下にまとめますので、ぜひ、ご自身のできることを、それぞれのやり方で取り組んでみてほしいです。ぜひ反対の声をあげていきましょう。そして、米軍にとって居心地の悪い環境をどんどんつくっていきましょう。
▼抗議行動に参加する
さまざまな抗議行動が次々に生まれています。街で声をあげよう!
・最新の現地情報は「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」のFacebookをご覧いただくとよいと思います。https://www.facebook.com/ureukai
・2014年8月から、宇川での米軍基地ゲート前での抗議行動がはじまりました。http://uwakadiary.exblog.jp
・その他の抗議行動の予定は、スワロウカフェのblogとtwitter(@nobaseokinawa)で随時情報発信中。
▼抗議の意志を伝える
国や京都府、京丹後市、そして米国政府・米軍に、抗議の意志を伝えよう。専門的知識がなくても大丈夫。おかしいと思うこと、いやだなと思うことを、そのまま伝えればよいと思います。
【防衛省】
○京都・米軍基地建設に関する相談窓口
090−9047−5234
(平日だけでなく、土日祝日も相談を受け付けるホットライン。皆さんの「不安」を「相談」しよう)
○近畿中部防衛局
大阪市中央区大手前4-1-67
TEL 06-6945-4951 FAX 06-6945-7681
goiken@kinchu.rdb.mod.go.jp
○防衛省本省
TEL 03-5366-3111 FAX 03-5261-8018
ご意見箱 https://sec.mod.go.jp/mod/goikenshinsei/goikenbako/index.html
【内閣官房】
TEL 03-5253-2111
意見箱 https://www.kantei.go.jp/jp/forms/cas_goiken.html
【外務省】
TEL 03-3580-3311
ご意見箱 https://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html
【米国大使館】
TEL 03-3224-5000 (代表)
E-mail送信サイト http://japan2.usembassy.gov/j/info/tinfoj-email.html
Twitter @CarolineKennedy(ケネディ大使) @USEmbassyTokyo (代表)
【京都府】
京都府は「国、米軍を監視していく」と口では言っていますが、その機能をほとんど果たしていません。山田知事にしっかりとプレッシャーをかけてください。
○京都府知事へ直接メッセージを送る
「知事へのさわやか提案」 http://www.pref.kyoto.jp/teian/index.html
○総務部総務調整課(米軍基地建設に関する窓口部署)
京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
TEL 075-414-4030
FAX 075-414-4048
somucho@pref.kyoto.lg.jp
【京丹後市】
京丹後市基地対策室
TEL 0772-69-0012
FAX 0772-69-0901
Eメール somu@city.kyotango.lg.jp
「平成の大合併」で誕生した京丹後市。その周辺に位置する宇川を切り捨てるな、蚊帳の外にするな、と声をあげてほしいです。
【マスメディア】
○『京都新聞』「窓:読者の声」欄への投稿
mado@mb.kyoto-np.co.jp
「投稿は、500字以内。添削する場合あり、匿名は不可。郵便番号、住所、名前、職業、年齢、電話番号を明記」(京都新聞紙面より)
編集・発行:スワロウカフェ
blog: http://blog.livedoor.jp/noarmydemo/
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【カンパ宛先】ゆうちょ銀行口座『スワロウカフェ』記号:14480 番号:10190191
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2015年4月10日 編集・発行:スワロウカフェ
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133番目の在日米軍基地・経ヶ岬通信所が宇川地区につくられ、運用が開始されています。その発端となったのは2013年2月、オバマ・安倍会談での「合意」でした。両首脳は朝鮮民主主義人民共和国の「核・ミサイル活動」に対し弾道ミサイル防衛協力を進めるため、京丹後市にある自衛隊基地に米軍Xバンドレーダーを設置すると発表したのです。その実態は新たな米軍基地の建設でした。計画は、既存の自衛隊経ヶ岬分屯基地の土地約0.5haと民有地約3.5haを米軍専用区域として提供するというもの。約160名の米軍人・軍属が駐留することも明らかになりました。現在までの経緯は次のようなものです。
■日米合意〜京都府知事・京丹後市長の協力表明(2013年2月〜9月)
日米両政府の計画発表後の2月26日、国は京都府と京丹後市に対し経ヶ岬を配備候補地とすると説明しました。国と自治体との調整が進められるなか、京丹後市と防衛省は、同市内で住民説明会を複数回開催しました。参加した住民からは反対の意見が多く出されています。主な論点は、(1)米軍人・軍属による事件・事故、(2)レーダーの電磁波による健康や生活への悪影響、(3)環境の破壊、(4)安全保障上の問題(近隣諸国との緊張関係を高めるなど)でした。国は、「事件・事故の未然防止に努める」「健康や周辺環境への影響はない」「軍事的緊張が高まるようなことはない」など、客観的な根拠を示さない回答をくりかえしました。
にもかかわらず、山田府知事と中山市長は受け入れ条件(電磁波・騒音・水質の調査、米軍関係者の居住場所選定にあたっての地元との丁寧な調整、日米地位協定の継続的な改善、事件・事故の未然防止など)を示した上で、9月19日、正式な協力表明を発表したのです。市民からの批判と不安の声が、国や行政によって誠実に受け止められたことはありませんでした。
■協力表明〜用地取得(2013年9月〜同年12月)
防衛省は用地取得を急ピッチで進めていきました。借地契約の単価は当初説明の190円/1m2から300円にまでつりあげられていきました(一般的な相場は10円程度)。契約を拒む地権者もおられましたが、国はさまざまなかたちで圧力をかけ、強引に契約をまとめていきました。この結果、12月27日には、1名をのぞいてすべての地権者から契約書の提出がなされます。
一方、住民からの再三の要請にもかかわらず、地権者以外への説明会は一度も開催されませんでした。住民をないがしろにする現状に抗議し、12月15日、京丹後市役所前で1300人の反対集会が開催されています。
■用地取得以降(2014年1月〜)
3月27日、宇川地区で集められた反対署名(有権者の半分にあたる561筆)が京丹後市へ提出されました。また京都府には反対署名50,805筆、府議会請願539件が提出されています(2015年2月20日時点)。
しかし2014年5月27日早朝6時半、米軍は基地建設工事の着工を強行。9月20日には米軍人20人、軍属70人が京丹後市に到着し、市内中心部・峰山町のホテルに入り、駐留を開始。さらに10月21日早朝4時半、多くの警察官や機動隊を配置するなか、日米両政府はXバンドレーダー本体の搬入を強行しました。翌10月22日には在日米陸軍「第14ミサイル防衛中隊」が発足。12月26月にはXバンドレーダーの運用が始まってしまいました。
その後、住民が抱いていた不安や懸念は払拭されることなく、国の「説明」とは正反対の実態があらわになっています。日々起こりつづけている問題に、今、私たちがどのように向き合い、声をあげるのかが問われています。
米軍関係者の住居問題
宇川の住民からは、1600人の集落に160人の米軍人・軍属が駐留することへの恐怖や不安の声が多くあがってきました。なかでも、軍人・軍属がどこに住むのかは大きな問題です。そのため京都府と京丹後市は、住居場所の選定にあたり「地元」住民の意向を丁寧に確認し、調整することを求め、国もそれを約束してきた経緯があります。居住地選定まで、米軍関係者はホテルでの集団宿泊を続けていました。
しかし2015年3月、米軍関係者約30人が個人契約で賃貸住宅に住んでいることが国によって公表されました。また京丹後市網野町島津では軍属向けの居住地選定が進み、防衛省は「軍属の雇用企業と、土地をまとめて買う企業との民・民の関係だから、国は基本的に関知しない」という主旨の説明を周辺住民に対して行いました。住民の「合意」のないまま賃貸住宅に住むことや、居住地の選定を強引に進めることはあきらかに約束を破るものです。何度でも住民との話し合いの場をもつことが必要です。
このことは多発する交通事故の問題にもつながっています。
交通事故、多発‥‥
昨年10月22日の米軍部隊発足から軍人・軍属による交通事故が既に14件も起きています(2015年2月19日時点)。これは頻度にして月に3回のペースです。そして2月19日にはついに住民の方が頚椎打撲、全治5日のケガを負う人身事故までもが起きてしまいました。
これらの事故について加害者の軍人・軍属がどのように処分、処罰されたのかの情報はありません。加害者の軍人・軍属が交通講習、運転講習を受けていたかについても分からない状況です。事故のうち、特に短期滞在者によるものが多くありますが、講習の日程は必要に応じて随時ではなく固定されているため、加害者が受講していなかった可能性も大いにあります。また事故の多くはレンタカー利用中のものですが、マイクロバスによる集団通勤というそもそもの約束が守られていないことが原因であるといえます。
さらに軍属の個人車両の利用も急増しています。Yナンバー車がそれですが、京丹後市内において駐留後に京都で購入したと思われる「京都Y」ナンバーの車両10数台が確認されています。Yナンバー車は任意保険への加入がずさんであり、事故が起きても被害者が補償を受けられず、泣き寝入りを強いられるということが大きな問題になってきました。この問題について京丹後市の基地対策室は「プライバシーの問題があって把握できていない」などとしています。
また1月21日には京丹後市久美浜町の府道で速度制限(時速50キロ)31キロオーバーの時速81キロで暴走していた米軍属が京丹後署により検挙・書類送検されましたが、それに対して1月30日に京都地検は「基地からの帰宅途中で公務中であったこと」を理由に日米地位協定に基づき不起訴処分としました。なんとこの事実は2ヶ月たった3月24日になってようやく報道されました。京都府は米軍基地建設を許可するにあたって日米地位協定の改善を国に求めていましたが、全く無視されている状態です。
米軍に対して約束を守らせることすら全くできていないこの関係において、住民の安心を保障することはかなうはずもありません。強い怒りをおぼえます。
低周波騒音問題
着工以前の説明会で、防衛省は「騒音対策は万全に行う」などと説明し、約束してきました。しかし10月21日のXバンドレーダー搬入強行の数日後より、かなり大きな音が昼夜を問わず基地から聞こえはじめ、身体の不調を訴える人が続出しました。レーダーを稼働させるためのディーゼル発電機が発生させる、低周波数成分を多く含む騒音です。その不快さは、離れた民家でも眠れない人が出るほどのもので、基地のフェンス近くでは場所によっては吐き気を催すレベルでした。袖志区の住民の方たちが京丹後市から測定器を借りて計ったところ、騒音の大きさは区内平均で65〜80デシベルというものでした。これは環境省の騒音環境基準を大きく上回るものです。とりわけWHOのガイドライン(1999年)では、80デシベル以上の騒音に長時間さらされると騒音性の聴覚障害が発生するリスクが高まるとされています。
これに対して住民の方たちからは「約束がちがう」と抗議の声があげられました。当然の対応として、騒音対策が行われるまで発電機はただちに停止させられるべきでした。しかし米軍はこうした声を無視してレーダーと発電機を稼働させつづけ、防衛省も京都府も「対策は行っているところ」などとして、米軍に停止要請をすることすらしませんでした。防音マフラーが設置され、騒音が体感上ある程度軽減されたのは、4ヶ月以上もたった2015年3月に入ってからでした。住民の生活や健康よりも、基地の稼働をなによりも優先する米軍・防衛省・行政の態度がここに現れています。
低周波騒音の特性として、症状が騒音に曝露されたあと長い時間が経過してから出てくることが指摘されています。また、マフラー設置後も騒音は発生しつづけており、音のひどさを訴える住民の方も多数おられます。実際どの程度の改善がなされたかなどについては今後継続的に調査を行っていく必要があると考えられます。
問題はほかにも山積み
◎銃を下げた軍関係者がうろうろ‥‥
基地内を銃を持った警備員がうろついています。住民の方たちや車が行き交う道路のすぐそばまでやってきたりするほか、ゲートの外側に出た例も確認されています。大変な恐怖を感じます。彼らはいったい何を守っているのでしょうか。みだりに武器を持って基地の外に出ないことを要請したり、どのような場合に武器を使用するのか、根拠は何かについて米軍に確認するよう、宇川の住民は京都府などに求めていますが、いまだ回答はありません。2015年に入り工事が一段落し、これまで敷地内外を隔てていたフェンスが撤去されました(レーダー本体は厳重に囲われています)。その結果現在、銃を持った軍関係者と私たちを隔てるものはない状況です。
◎占領意識まるだしの看板
2015年3月はじめ、基地のフェンス外側に設置された「立ち入り禁止」の看板の英語部分に、刑事特別法に加えて1950年に制定された米国内の治安維持法に基づくとの表記があることがわかりました。沖縄などでも同様の看板が設置され、日本国内では適用できないと指摘され撤去されていたケースが以前にあります。宇川の件でも外務省が米国政府に申し入れましたが、その結果は該当箇所にテープを貼って「修正」するというお粗末なものでした。米軍が基地(そして宇川)を「占領地」であると考えている意識が、ここから明らかになっていると思います。
◎謎のドラム缶問題
2015年3月22日、大量のドラム缶が基地内に置かれているのが発見されました。当初除草剤ではないかと危惧されたのですが、その正体はエチレングリコールでした。レーダー発電機の冷却剤として使われるものと思われます。これは有毒物質であり、日本国内では保管や取り扱いに法的な規制があるものです。しかしどのような扱いが基地内でなされているのかについては皆目わかりません(おそらく日本国内基準ではないでしょう)。今後も同様の問題が起こってくることが懸念されます。基地内には有毒物質除染のための緊急シャワー設備が設置されており、危険な物質が搬入されることが基地運営の前提となっていることがうかがえます。
◎電磁波問題
Xバンドレーダーはきわめて強力な電磁波を出す装置です。それが人々の健康や、田畑や魚などを含む動植物にどのような影響を及ぼすのか、いまだにわかっていません。しかし防衛省は「なんら影響はない」の一点張りです。レーダー設置の前後に防衛省は電磁波強度についての調査を行いましたが、調査箇所がたった3ヶ所と少なく、測定機材・状況についての情報が十分公開されず、公開されたデータの単位も適切でないなど、多くの疑問を感じさせるものでした。防衛省による調査は住民の方たちに対する安全・安心の保障にはほどとおいものでしかありません。レーダーが本格稼働を開始するなかで、電磁波の問題にはこれからも注意していかねばならないでしょう。
・・・日々起こりつづけている問題に、今、私たちがどのように向き合い、声をあげるのかが問われています。
宇川ってどんなところ?
京丹後市丹後町宇川地区は、京都府北部の丹後半島の北端にある静かな土地です。日本海に面し、大陸と日本との「海の玄関」とも言われてきました。人口は約1600人。農業と漁業中心の生活が今も続いています。宇川の海は豊かな漁場であり、独特の地形を活かした丘の上の「棚田」でも知られています。宇川はかつて「陸の孤島」と呼ばれていたように、2004年4月に6町が合併してできた京丹後市にあって、その中心から離れた場所にあります。高齢化と過疎化が進み、「限界集落という言葉のほうが実感に近い」という住民の方の言葉が重く響く場所でもあります。
<コラム(1)北朝鮮のミサイルが怖い/中国が攻めてくる/基地が平和を守るetc‥‥と思っているひとへ>
◆恒久平和、戦力不保持は侵略したアジアの人々への約束
まずは基本的な歴史の事実を確認しましょう。アジア太平洋戦争における日本と中国・朝鮮との関係は日本が一方的な侵略者でした。敗戦後に恒久平和・戦力の不保持をうたった日本国憲法をもって出直したことを「アメリカから押し付けられた憲法だ」と主張する人もいますが、押し付けうんぬん以前にそれがまずは何よりも侵略・植民地支配によって多大な苦しみを与えたアジアの人々に対する約束であったことを忘れてはならないと思います。
◆東アジアの冷戦構造への加担をやめよう
しかしその約束は戦後すぐに骨抜きにされていきます。その最初の契機となった朝鮮戦争では日本の海上保安官や民間船員など8,000名以上が米軍主体の国連軍の作戦に参加しました。また、朝鮮戦争を契機に警察予備隊が組織され、それが改編して1952年に発足した保安隊が今日の自衛隊の前身です。朝鮮戦争が日本にとって「朝鮮特需」とも言われる経済効果をもたらし、その後の高度経済成長を支えたことを思えば、「日本は戦後、平和により繁栄を享受してきた」とはたしていえるでしょうか?
朝鮮戦争は休戦協定のままであり、いまだに平和条約締結に至っていません。それは朝鮮民主主義人民共和国がアメリカという圧倒的な軍事力を持つ超大国と韓国、そして日本によってつねに銃剣を突きつけられている緊張状態にあることを意味します。「ミサイルが飛んでくる」と脅威をあおるとき、そのミサイル実験がどの時期に行われているか一度確認してみる必要があります。それにはいつも米韓による大規模な合同軍事演習が先行しているのです。
また朝鮮が人工衛星の打ち上げを実施したときも、日本のメディアは「事実上のミサイル」として脅威をあおりました。しかし逆に日本が保有するより高度な人工衛星ロケット(技術的により強力な「事実上のミサイル」)がアジア諸国に与える緊張を考えたことはあるでしょうか?
日本では1969年の国会決議により宇宙開発・利用は「平和目的」に限定されてきたのに、2008年制定の宇宙基本法により軍事利用が解禁されてしまいました。それなのに自国のロケット・人工衛星は「平和のため」で、他国のは「ミサイル」だと考えるのはおかしいと思いませんか?
◆尖閣諸島問題
「中国が尖閣諸島(釣魚諸島)を奪いに攻めてくる」と言ってくる人もいます。日本が尖閣諸島(釣魚諸島)を領土として主張するようになったのは1895年、日清戦争で日本の勝利が確定的になった際に一方的に領有を閣議決定したことに端を発します。中国および台湾の立場からするとそれは大日本帝国の膨張主義によって盗まれた土地であり(台湾自体も下関条約によって清から「割譲」され日本の植民地支配下におかれました)、領有権をめぐる対立関係がありました。
しかし中国との関係でいえば、日中国交正常化交渉において尖閣諸島(釣魚諸島)をめぐる領有権問題については取り上げず、その解決を将来に延ばすという合意(棚上げ合意)が両者間でなされました。1978年の日中平和友好条約締結の際にも「棚上げ合意」は再確認され、さらに翌年には領有権についての争いを回避しつつ油田の共同開発も視野に入れた交渉も持たれるようになっていました。そうやって40年間続いていた関係が、2010年に海上保安庁が中国籍の船を捕獲し船長を逮捕、送検、拘留するという「中国船衝突事件」を契機にくずされ、「主権を脅かす中国」といった脅威論が日本国内でいっそう声高に叫ばれている状況があります。
また台湾で漁業を営む人々にとっては尖閣諸島(釣魚諸島)は戦前より大切な漁場でしたが、日本政府は中華人民共和国政府との関係を重視するために中華民国政府が統治する台湾を交渉の相手として長らく無視し続けていました。ずっとそこで漁業を営んできたのに、日本政府が実行支配を強める過程で「不法」として罰金を支払わされたり、逮捕されることもあるという状況に繰り返し抗議の声があがってきました。2008年には台湾の民間の漁船を海上保安庁が沈没させるという事件も起きています。2012年に日本政府が国有化したことにより緊張がいっそう高まったことを受け、両者間での漁業権についての協議を本格化し、2013年に領有権について棚上げしたうえでの漁業協定が結ばれるに至っています。
歴史をふまえると、尖閣諸島(釣魚諸島)が日本の領土であるという言い分は帝国主義による略奪の正当化を前提にした主張です。それを共有できないとしても、少なくとも「棚上げ合意」は両者が領有権を主張しあっている領土問題が存在しているという認識を前提に、将来に向けて平和的に話し合うという約束です。
「中国船衝突事件」では、民間の中国籍の船が尖閣諸島(釣魚諸島)近海にいたことをもって日本の国家権力である海上保安庁が「領海侵犯」として船を捕獲し、船長を逮捕・送検・拘留までしてしまいました。相手にとっては、「約束を破られた」ととらえられてもしかたありません。そのような経緯を無視して日本政府はこの事件を「中国の脅威」として利用し、主権防衛を名目に軍事増強を図ってきましたが、それは何重にも間違った方向です。
国境線の引き方は当事国それぞれにナショナリズムをたえず喚起させるものであるからこそ、軍事的緊張によってではなく、平和的に話し合うことが必要ですし、「国家」ではなくそこに生きる「ひと」の視線に立ち返ることが大事だと思います(現地の海域は、沖縄で漁業を営む人々にとっても大切な漁場になっています)。一方で日本の主張はかつての帝国主義による膨張政策によって引いた線の上書きであるからこそ、それに怒る声があがっていることも真摯に受けとめる必要があるのではないでしょうか?
◆基地必要論と排外主義
今回、朝鮮脅威論と中国脅威論の問題性について論じましたが、それはこれまで基地への反対を訴えて街頭活動をしてきたときに、こうした主張をもって「基地は必要だ」と言ってくる人々にたびたび出会ってきたからです。しかし、本当は順序が逆なのです。基地を作りたいから、どんどん戦争に参加していきたいからこそ脅威が創られているのです。そしてそのターゲットこそが中国であり、朝鮮民主主義人民共和国なのです。それぞれはまさに日本がかつて侵略し植民地支配を行った相手ですが、脅威に仕立て上げるためには加害の歴史は否定・歪曲・正当化されます。日本の現状では「南京虐殺はなかった」「従軍慰安婦は嘘だ」というような暴言を政治家までもが放言するくらい歴史修正主義がはびこっていますが、それは日本が侵略したアジアの人々に対して更なる苦痛を与えている行為にほかなりません。そしてそのような歴史認識がまかり通る中で、まさに日本に暮らすたくさんの中国人、朝鮮人が「敵国民」として民族差別の標的として攻撃されている現状があります。
基地はそれが押し付けられる土地の人々を差別し暴力に曝します。そして基地はいつも「敵」を必要とするからこそ、「敵」と名指された人々を差別し暴力に曝します。基地による平和はありません。基地は差別と暴力によって存在しているのです。
<コラム(2)「私たち」と宇川>
宇川の米軍基地問題について話すとき、「京都に関西初の米軍基地ができてしまったんだよね」という言い方があります。もちろんそういうとわかりやすいからなのですが、ここでちょっと止まって考えてみたいことがあります。たとえば京都市内に住むひとが「京都」というとき、京都市内のことを指すことが多く、「丹後の宇川」を含んでイメージすることは、ほとんどないに等しいでしょう。歴史的にも丹後の名称は律令制下での丹後国に由来し、「京」とは別のくにとして存在していました。京都府に組み入れられたのは近代以降のことにすぎません。現在でも、約150万人が住む人口密集観光都市である京都市(そのとりわけ市街地)と、第一・第二次産業中心であり過疎に悩む丹後(旧丹後町は人口約7000人、京丹後市全体でも6万人に満たない)は、まったく異なる特徴を持つ地域であるといえるでしょう。
いま仮に京都市内の空き地的な場所(御所とかね)に、宇川と同じ規模の米軍基地の建設が計画されたとしたら、どうでしょうか。おそらく宇川とはかなりちがった展開を見せることになるでしょう。単純に多くの人が住んでいるから、より多くの人が反対するだろうし、基地は観光にとってマイナスになる、などの言い方も比較的説得力を持って受け止められるでしょう。府知事もすんなり賛成はしなかったにちがいありません。
宇川のことについて考えたり、行動するとき、軍事基地や原発がこの国においてどのような地域に押し付けられてきたかという視点をもつことが大事だと思います。それはつねに弱い立場(琉球=沖縄は日本の植民地でした。福島も東北という周縁部にあって、石炭から石油への産業構造転換による衰退と人口流出に悩んでいました)の地域に計画され、カネと政治圧力で地元の人々を分断し、中央ー大都市が受け入れたくないものを受け入れるように強いてきたのです。
こうしたことを考えるとき、「宇川にこそ」米軍基地は作らせてはいけない、と思うのです。そして京都府庁や近畿中部防衛局、京都防衛事務所、米国総領事館などが存在する都市圏に住む<私たち>が果たすべき責任や役割も、見えてくると思うのです。
<米軍基地建設を止めるためにできること>
米軍基地建設を止める、反対する、といっても、どういうことができるのだろう?と思う方も多いと思います。すでにさまざまな意思表示の方法が実践され、つくられています。以下にまとめますので、ぜひ、ご自身のできることを、それぞれのやり方で取り組んでみてほしいです。ぜひ反対の声をあげていきましょう。そして、米軍にとって居心地の悪い環境をどんどんつくっていきましょう。
▼抗議行動に参加する
さまざまな抗議行動が次々に生まれています。街で声をあげよう!
・最新の現地情報は「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」のFacebookをご覧いただくとよいと思います。https://www.facebook.com/ureukai
・2014年8月から、宇川での米軍基地ゲート前での抗議行動がはじまりました。http://uwakadiary.exblog.jp
・その他の抗議行動の予定は、スワロウカフェのblogとtwitter(@nobaseokinawa)で随時情報発信中。
▼抗議の意志を伝える
国や京都府、京丹後市、そして米国政府・米軍に、抗議の意志を伝えよう。専門的知識がなくても大丈夫。おかしいと思うこと、いやだなと思うことを、そのまま伝えればよいと思います。
【防衛省】
○京都・米軍基地建設に関する相談窓口
090−9047−5234
(平日だけでなく、土日祝日も相談を受け付けるホットライン。皆さんの「不安」を「相談」しよう)
○近畿中部防衛局
大阪市中央区大手前4-1-67
TEL 06-6945-4951 FAX 06-6945-7681
goiken@kinchu.rdb.mod.go.jp
○防衛省本省
TEL 03-5366-3111 FAX 03-5261-8018
ご意見箱 https://sec.mod.go.jp/mod/goikenshinsei/goikenbako/index.html
【内閣官房】
TEL 03-5253-2111
意見箱 https://www.kantei.go.jp/jp/forms/cas_goiken.html
【外務省】
TEL 03-3580-3311
ご意見箱 https://www3.mofa.go.jp/mofaj/mail/qa.html
【米国大使館】
TEL 03-3224-5000 (代表)
E-mail送信サイト http://japan2.usembassy.gov/j/info/tinfoj-email.html
Twitter @CarolineKennedy(ケネディ大使) @USEmbassyTokyo (代表)
【京都府】
京都府は「国、米軍を監視していく」と口では言っていますが、その機能をほとんど果たしていません。山田知事にしっかりとプレッシャーをかけてください。
○京都府知事へ直接メッセージを送る
「知事へのさわやか提案」 http://www.pref.kyoto.jp/teian/index.html
○総務部総務調整課(米軍基地建設に関する窓口部署)
京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町
TEL 075-414-4030
FAX 075-414-4048
somucho@pref.kyoto.lg.jp
【京丹後市】
京丹後市基地対策室
TEL 0772-69-0012
FAX 0772-69-0901
Eメール somu@city.kyotango.lg.jp
「平成の大合併」で誕生した京丹後市。その周辺に位置する宇川を切り捨てるな、蚊帳の外にするな、と声をあげてほしいです。
【マスメディア】
○『京都新聞』「窓:読者の声」欄への投稿
mado@mb.kyoto-np.co.jp
「投稿は、500字以内。添削する場合あり、匿名は不可。郵便番号、住所、名前、職業、年齢、電話番号を明記」(京都新聞紙面より)
編集・発行:スワロウカフェ
blog: http://blog.livedoor.jp/noarmydemo/
(Hello! Ukawaのバックナンバーも読めます)
twitter: @nobaseokinawa
facebook: https://www.facebook.com/noarmydemo
mail: noarmydemo@gmail.com
【カンパ宛先】ゆうちょ銀行口座『スワロウカフェ』記号:14480 番号:10190191
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