2009年08月

自分の票の価値を知る

MIAUでは今回の衆議院選立候補者に対して、10のアンケート調査を行なっている。MIAU本体では東京都25区と比例区だけだが、僕個人の住まいは別なので、自分ところの選挙区の方に質問状を送付している。

今日までに4人の候補者のうち3人の返答があった。この回答を整理して、政論検索に入力したりしているのだが、いやあこうして自分が一票を投じる相手の政策や考え方にまじまじと対面すると、やっぱり名前とか顔とか、マスコミのイキオイとかで選んだらいかんよな、ということを本気で実感した。

例えば児ポ単純規制の問題は、男性候補者には大変難しい回答であろう。これにコミットするかどうかは、MIAUでも結構思い切りが必要だったのだが、やはり当落がかかっているとなると、なかなか規制反対には動きにくいようだ。

一方女性候補者ではいや冤罪とか普通にまずいでしょ、とばっさり切り捨ててくる人もいて、やはり男女で立ち位置の土台が全然変わるよな−と思う次第である。 ただアンケートしただけだろ、と思われるかもしれないが、選挙事務所や党本部に電話してFAX送付の許可とか郵送のための住所確認とか返事の催促とか、もう全然ネットとかITとか無関係のがっつり実働なんである。

だがこういう活動を通して、どの人に自分の代表として政治家になって欲しいか、自分で調べて自分で選ぶということになる。

この意義は、大変大きいんじゃないかなぁと思う。

日テレ放送事故に関する技術的考察

ずっとしかつめらしいエントリーばかり書いていたので、今日はちょっと違うことを書いてみようと思う。

先日の8月6日、日本テレビの番組「おもいッきりDON!」の番組ラストで、映像がフィードバックする放送事故があった。動画サイトにも上がっているようだが、ここからは特にリンクはしない。

なぜ映像がこうなったのか、興味のある人あるかと思うので、おそらくこうだろう、という原因を推測しつつ、解説してみたい。

事故は、番組の一番最後から、スポット広告に切り替わった瞬間に起きている。すなわち番組送出サーバからCMバンクにラインが切り替わった時である。

番組送出では、映像の最終出力段として「マスタースイッチャ」というものがある。そして番組やCMの送出は、自動番組制御装置(Automatic Program control System:APS / Automatic Program Controller:APC)によってコントロールされる。

APSは、何時何分にどのサーバから何というファイルを再生するのか、そしてマスタースイッチャのライン何番に切り替えるか、ということを制御する。APSの実態は、自動再生のためのプレイリストである。

日テレぐらいのキー局になると、もっとシステムが複雑で、番組用とCM用に別々のAPSを使用し、その上に両方を制御するAPSが動いているのではないかと思われる。筆者は放送局の経験がNHKしかなく、しかもここにはCMバンクがないのでちょっと怪しいが、放送規模と安全対策を考えれば、別々にシステムを持つのが妥当である。

次に、実際に起こった現象だが、これは映像・音声入力が可能で、同時に出力も持つ機器、例えば録画可能なVTRのようなものの、出力と入力を直結した時に起きる、フィードバックである。もちろん、普通にそのような結線をすることはあり得ないが、スイッチャにこの録画VTRのラインも立ち上がっている場合、録画中にこのVTRをスイッチャで選択することで、フィードバックは起こりうる。おそらく番組アーカイブ用に同録していたものだろう。

デジタル放送の画像を見ると、映像が1フレーム単位でループしている。これはデジタル映像機器が、1フレーム単位でバッファを持ち、システムを通ることで起こる遅延を、この1フレームのバッファを使って吸収するからである。

これでマスタースイッチャーが、本来はスポットCMのラインに切り替わらなければならなかったのに、録画VTRのラインに切り替わってしまったのだ、ということがわかる。

単純な例に落とし込んでみると、例えば放送番組は1番、CMバンクが2番、録画VTRが3番だったとすると、1番から2番に切り替わるはずが、1番から3番に切り替わってしまったわけである。

ここまで番組スポンサーのタイム広告には問題なく切り替わり、スポット広告に切り替わる時に事故が起きたということは、おそらく日テレのマスタースイッチャーには、タイム広告のラインとスポット広告のラインが別々に立ち上がっているのだろう。もしかしたら、複数のサーバがあって、もっと多くのラインが立ち上がっているのかもしれない。APSのスクリプトは表組みになっているので、番組とCMの2ラインしかなかったら、数字が一つだけ違っていることにすぐに気づくはずである。

そう考えると、APSのプログラムミスである可能性は低い。これは、APSとしては正しかったのだが、実際にスイッチャに立ち上がってきているスポットCMのラインが、違うもの、今回は録画VTRに物理的に差し変わっていた、とも考えられる。

テレビ局の配線変更は、いちいちケーブルをつなぎ替えたりしない。ルーティングスイッチャと呼ばれる巨大な映像切り替え器で、どの回線をどこに接続、という管理を行なっている。このルーティングスイッチャも、手動とスクリプトによる自動制御の半々で動いているはずである。

もしかしたらこのルーティングスイッチャに、拡張工事などでなんらかの変更が加えられていたのかもしれない。もっとバックエンド側の回線接続によるミスなのではないかと想像する。

一方アナログ放送での現象だが、1フレームのループが徐々に右下に向かって溶けていくような映像になっている。アナログ信号の場合、映像信号は画面の左上から水平に右に行った後、一行下がってまた左から右へ、という具合に流れていく。

アナログ機器で映像のフィードバックが起こった場合、システムを通る、すなわち長い映像回線を通ることで、時間的にわずかに遅延する。したがって映像はループを繰り返し、画質劣化しながら、画面の左上から右下に向かって、少しずつずれていく。瞬時に何百回もダビングを繰り返しているようなものである。

ただ、今回のアナログ側での映像を見る限り、デジタル側で起こった1フレームのループ状態も内包しながら、アナログフィードバックも起きている。これは現在のアナログ放送が、デジタル放送からダウンコンバートされ、DA変換されているからである。

この事故のリカバーは、なかなか見事であった。事故から復帰した映像は、CMの途中からではなく、きちんと頭から始まっている。ループが起こった時間を計測すると、ちょうど15秒なので、スポットCMをまるごと1本飛ばして、次のCMの先頭から復帰するような緊急プログラムを動作させたのだろう。

このような判断と操作は、マスタールームを預かる技術者が手動で行なうのだが、こういう事故はそうそうあるものではないので、緊急対策を焦って余計変なことになりがちである。わずか15秒間の判断で、最善のリカバーであったと思う。

以上が放送技術者として、映像を見た限りで想像できる範囲である。筆者ももう放送の現場から10年近く遠ざかってしまったため、全然違っている可能性も否定できないが、まあだいたいこんなところではないか、と思う。

(追記)
そうか、よくよく考えたらあの番組生放送か? だったら上記の「番組送出サーバ」を「スタジオ副調からのライン」に読み替えてください。
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