2011年01月

撮像素子はフル35mmなくても問題ないというが…

先日ProNewsラウンジってのをUSTしたんだけど、後半はソニーのPWM-F3を持ち込んでの解説となった。その中でちょっと気になった話の流れがあったんだけど、現場では上手く言えなかったので、ここで整理したい。

ソニーのF3、あるいはPanasonic AF105など、最近プロ用カムコーダでレンズ交換式、大判センサーを搭載したモデルが出てきた。大判といってもフル35mmではなく、F3はスーパー35mm(いわゆるハーフとだいたい同じ)、AF105はフォーサーズである。

大判センサーで動画を撮るという流れはキヤノンの5DmIIから出てきたわけだが、こちらはフル35mmセンサーである。これに対する、プロのカムコーダ屋からの答えが、この両社というわけだ。

もちろん動画専用のカムコーダは、HD-SDIが出るとかXLR音声入力があるとか、5DmIIにはないスペックも差別化ポイントである。しかしセンサーはフル35mmなくても十分、という根拠の説明が、番組では不十分だったように思う。番組中では、

・35mmフルサイズだとボケ過ぎて縦方向の芝居が取りにくい

・せっかくのレンズを絞らないといけない

・だからフル35mmより小さい方がいいよね

という話の流れだったのだが、よく考えたらこのロジックには穴がある。まずレンズの特性で一番おいしい部分というのは、F4、F5.6、モノによってはF8ぐらいに絞ったあたりだ。このあたりが収差が少なく、しゃきっとした絵が出てくる。それぐらい絞ってもまだボケ過ぎというなら仕方がないが、ボケ過ぎ目にも振れる余裕を残してある環境のほうが、いろいろ使い出があるんじゃないかと思う。

もう一つは、フル35mmセンサーだと、昔の35mm用レンズがそのまま使えるので、特性的にもおいしいところが使えるというメリットがあるということだ。

マイクロフォーサーズなどはフランジバックが短く、さらに豊富なマウントアダプタで様々なレンズが付けられるが、画角が狭くなってしまう。せっかく24mmのワイドレンズを持ってきても、35mm程度の普通の標準レンズ相当にしかならないというデメリットがある。それよりも、24mmのレンズであれば24mmの画角で写るほうが、光学設計的にも正しい特性で絵のおもしろさが出るはずだ。

F3のメリットは、PLマウントが基準なので、映画用のPLレンズがそのまま使える、というところのメリットをもっと押すべきだったし、映画をやっている人は今までのボケの感じと同じだから移行しやすいという点を強調すべきだった。つまり、撮像面積が小さい方がメリットがあるという論調は、ちょっと行き過ぎだった。

レンズ交換できるカムコーダは、キヤノンがDV時代に出していたこともあり、当然この流れへの参入も計画しているだろう。今キヤノンのプロ用センサーは1/3インチ止まりだが、大判への移行で今更Super35mmサイズのセンサーを積んでもしかたがない。だけどそういうの出してきちゃうんだろうなー。空気全然読めてないからなー。

5DmIIのおもしろさの本質はなんだったのかというと、写真用のレンズで動画を撮るおもしろさなんじゃないかと思う。そういう、たくさんのレンズの素の特性が引き出せるという方向では、5DmII、F3はストーリーが繋がるが、AF105はそのストーリーからは外れたところで勝負するということになる。

ただ現実問題、今映画撮影の需要はほとんどなく、フィルム経験のあるカメラマンの需要も減ってきている現状で、PLレンズの資産を持っている会社がF3を買ったとして仕事があるか、という問題がある。CMは大きな市場だったが、ご存じのようにテレビ局の広告収入が減少する中、CMの制作費もコストダウンが進み、5Dでいいよ5Dで、という流れは止められないのではないか。

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まねきTV裁判こぼれ話

昨日のまねきTV最高裁判決特番は、初めてのスタジオかつ借り物のマシンでのエンコードで、かつマシンの調子が今ひとつだったのでぶつ切れになってしまって申し訳ない。今回の反省を生かしてスタジオでも配信用マシンの変更などを考えているようなので、引き続きよろしくお願いいたします。

今回の最高裁判決、キモは「自動公衆送信」というものの法定義が改めて行なわれたことであろう。ヤバイ方向に。

というのも今回の判決文では、送信相手が1対1に限定されるなど著作権的にセキュアな対策が取られている機器においても、公衆回線の電気通信回線に接続されて、外からユーザーのリクエストに応じてデータを出せばそれは自動公衆送信だし、その装置も自動公衆送信装置である、と判断された。

ざっくり字面だけを見ればそう言えないこともないかもしれないが、その実態というか意味するところはものすごく広くなる。ネットに繋がったパソコンやサーバはもちろんのこと、ルーターまでその範囲に入る可能性がある。SeverManのようなアプリを入れればスマートフォンももちろん入る。じつはものすごく広い定義というか、ネットに繋がっている機器ほぼ全部が自動公衆送信装置であることになる。

そして判決では、「送信可能化」というのは、自動公衆送信するための準備をした段階を指すということになった。つまり実際に送信するかどうかは関係なく、送信できる準備をしただけで送信可能化権の侵害になり得るという。

そうなると困ることはいろいろ出てくる。たとえば文章や音楽、あるいは書類でもなんでもいいが、著作物制作の過程で業務として人の著作物をクラウドサービスにアップした段階で、共有設定とかしてなくても、送信可能化権云々の話が出てくることになる。

さて本日の放送後に小倉先生と雑談中に、面白い指摘を聞いた。自動公衆送信するための準備をしたのが誰なのかという論点で、本裁判ではテレビのアンテナ線をロケフリ親機に接続したまねきTVである、と指摘している。では接続しなくて勝手に電波受信したらどうなるのか。

たとえばワンセグチューナーを搭載した、ロケフリ的な機器はどうなのか。ワンセグチューナーはわざわざ線を接続しなくても、アンテナから勝手に受信する。誰も入力してない。それは送信可能化したという条件に入るのか。

まあはっきりいって、こうなるともう所詮水掛け論の域にである。そもそも今回争われている公衆送信権というのは、日本とオーストラリアでしか採用されていない考え方だ。正直ネットサービス後進国である日本が振り回していい権利ではなかったのではないか。もっと先進国の事情に習ってからでも遅くなかったのではないか。立法当初は何らかの意味があったかもしれないが、今となってはネットの利用者にとって無意味にハードルの高い概念となっているのではないか。そんな気がしてくる。

テレビ局も多額の金を使って、何十人程度しか利用していないサービスをつぶす事に、コスト的な意味がどれだけあるのか。そんなことにお金使うんだったら、ヤバい事になってる会社経営のほうをなんとかしたほうがいいんじゃないか。

テレビ局は億単位の損害賠償請求をして、類似サービス登場に対する牽制にするつもりなのかもしれないが、元々資本金が1000万円ぐらいしかない会社にそんな支払い能力はない。勝ったとしても裁判費用すら取れないだろう。

テレビが強いコンテンツを持っていたのは、過去の話になりつつある。みんな番組を欲しがっている? いや10年前にもっとネットに進出してればねぇ。視聴率を見ればわかるように、もはやテレビは、選択肢の一つでしかない。

こんなところで小競り合いを続けるより、ネットサービスと手を組んで、生き残り作戦をちゃんとやったほうがいいんじゃないのかなぁ。そうしないともうネット企業は、テレビ局とは関わり合いたくなくなってくるんじゃないかと思う。

本当はこういう解説記事をどこかのニュースサイトで書かせてくれるといいんだけど、ITmediaとか連載終わっちゃったし、書かせてくれるところがない。世知辛い世の中なのである。どこかで現象思考みたいな連載、やらせてくれないかなぁ。


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突発的生放送決定!

今日新しく白金台にオープンするUSTスタジオ「師縁塾」を見に行ったところ、1月末まで8組限定で、無料でスタジオを貸してくれるキャンペーンをやるという。サイトではまだ16日までとなっているが、社長さんがちょっと無料キャンペーンやりましょうよという話に乗ってくれて、1月末まで、ということになったのである。太っ腹ですな。本来は医療関係の情報番組をやるためのスタジオだそうだが、一般にも貸すのだという。

Twitterで誰か番組やらない? と声をかけたところ、KNNの神田敏晶さんがトーク番組やりたいーというので、とんとん拍子に日程などの段取りが決まった。

1月25日の20時から、神田敏晶さんと小寺信良、スペシャルゲストとしてCerevo Camでおなじみの和蓮和尚さんを交えて、2時間ぐらいのUST生放送をやります。

テーマは「UST機材、スタジオ、放送、テレビの未来」。現場のUST機材から持ち込み機材、いつも持ち歩いてるUSTグッズなどもご紹介。神田さんはUSTなど影も形もないころからネットで放送をやっていた人なので、黎明期の面白いお話も聞けることだろう。Cerevo Camは以前AV Watchでレビューしようとしたことがあったのだが、掲載のタイミングが合わずに見送ったことがある。そのお話も伺っていこう。

テレビの未来では、期待のPTP「地デジ版SPIDER」の話から、CESで見てきたスマートTVの話、まねきTV裁判、録画補償金裁判など、いろいろネタは盛りだくさん。

「師縁塾」スタジオの場所はこちら。恵比寿からは歩くと15分ぐらい。道はわかりやすいんだけど、歩きはちょっと遠いかな。最寄り駅は南北線・都営三田線の白銀台で、徒歩約10分。なるべく歩きたくない人は目黒駅からバスもあって、都営バス橋86「新橋駅行き」か「東京タワー行き」に乗って、白金6丁目で降りる感じ。

エントリーしていただいた見学者さんは、19時半から20時ぐらいまでのあいだにスタジオに来てねー。あ、エントリーしてない人は急に来ても入れませんからねー。つか、物理的に入りきれませんのでねー。

出演者および技術協力の人は、19時にスタジオに来てねー。

では25日に、白金台スタジオからお目にかかりましょー。

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緊急具合が尋常じゃない件

今日洗濯物をたたんでいて気づいたんだけど。

ないのよ。ものすごい勢いで。

靴下のかたっぽが。

数えてみたら、23足ですよ。家族全員分合わせて。

靴下かたっぽしかないのが。

どう考えても普通じゃないでしょこの数は。

緊急事態ですよ。

オレが国ならもうね、軍出してるレベル。

まさかどこかの足フェチが片方だけ盗んでるんじゃないよな。

明日からオレ達の靴下ライフは一体どうなっちゃうんだろう。

似たようなのをはくしかないのか。

足寒い。

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入門書ひきこもごも

新春にふさわしい話題か、と言われるとたぶんそうでもないのだけど、インプレスの「できるシリーズ」編集部から年賀状が来ていて、そういえばできるシリーズからお呼びがかからなくてずいぶんになるな、と思い出した。たぶん最後にだしたのが「できるビデオカメラ」というやつで、2006年のことである。これがびっくりするぐらい全然売れなかった。

これまでPC系の入門書というのは、初めてそれを触るという人に使い方を教えるもので、それこそ「できるWindows」とか「できるWord」とかが10万部20万部売れた時代があった。一般書籍でも10万部売れればベストセラー扱いなので、PCの入門書でそれをやってのけるのだから、どれだけ大きい市場だったかがわかる。たぶんそれらが一番売れたのは、2000年から2004年ぐらいのことであったろう。そのときに他社からも類書がたくさん出た。

類書が出たから飽和したのだ、というわけではない。多くの人がネットに繋がることで、わからないことはネットで調べるようになった。わからないことの質が変わったとも言える。そして多くの入門書は、ネットサービスの使い方に矛先をシフトしてきた。

もちろん未だWordの使い方というのは需要があると思うが、アプリケーションの操作そのものではなく、多くの人が知りたいのはもっと根源的な、フォーマルな文章の書き方であったりするのかもしれない。たぶん文章の書き方というコーチングの需要は今も昔も潜在的にはあるのだが、ぜんぜん掘り起こせていない。そこはそれ、もうみんな学校で習ったしできるでしょということで、クリアされていることになっている。しかしその不安の矛先として、とりあえずWordの使い方、というところが出てきたのではないかという気がする。

ネットサービス、特にコミュニケーションサービスの使い方は、全体像が掴みにくいことがあって、解説書は便利だ。「これができることは知ってるんだけどどっからその設定するんだよ」ということがよくある。シンプルなサービスから始まったSNSも、次第に建て増し建て増しの箱根の温泉旅館みたいになってきていて、トータルで見るとなんでこんなことに、というところも出てきているからね。

しかしそういうジャンルなら、もっと根源的な、ネットを使ったコミュニケーションのやり方みたいなHow Toがあってしかるべきだろう。リアルの知り合いだけで仲良くやっていく小規模なコミュニケーションは、Mixiの自らの死によって崩壊した。どうやって見ず知らずの他人と仲良くなって、知り合いを広げていくか、というHow Toを知りたい人は多いはずだ。

しかしそれは一般論にできるか、という問題がある。一つは性格的な違いもあり、炎上マーケティングで一気にネットの人気者に浮上することもいとわない神経の持ち主と、そうでない人の差は簡単には埋まらない。性格別にそういう人付き合い論を語ると、なんだか占い本みたいな気持ち悪さが出てきてしまう。

「できるビデオカメラ」も、ビデオカメラを使って子どもの行事を撮るHow To本としては前人未踏の分野に切り込んだ本で、未だに本質的な内容は古くなっていないと思う。当時の最新鋭のカメラがHDVなので、その辺の古さは仕方がないのだが。ただ問題は、そういうことを書いた本があるということが知られていないということで、少なくとも本やに行かなければ、そして棚に並んでいなければ出会うことができないという点で、不幸だった本である。

こういうものも電子ブック化によって、日の目を見るときが来るのだろうか。たぶん、ないだろうなぁ。


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プロフィール

小寺信良
WEBに巣食うモノカキ。
原稿依頼、取材などのご連絡は、nob.kodera(at)gmail.comまでお願いします。

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