2011年08月

フジテレビの韓流ゴリ押しは事実か

8月21日に計画されていた、フジテレビに対するデモは決行されたようだ。筆者はいくつかUstreamで見ただけで実際に現場には行っていないが、相当の人が集まったようである。番組単位での抗議や批難などはまあまああるが、放送局全体の姿勢に対して電話などではなく、リアルにこれだけの人が集まって抗議したケースは、かなり珍しいだろう。代表者は抗議文を渡そうとしたが、フジテレビ側は受け取りを拒否したといくつかのネットニュースが報じている。

デモに参加した方への取材記事や考察記事なども、今週中にはいろいろ上がってくることだろう。一足早くTwitterでは、実際に参加した方へ取材した結果がまとめられている。これによれば、参加者はフジテレビの韓流ゴリ押しや偏向報道に対して、テレビはあまり見ていないがネットで情報を得た人が多かったようだ。ここでは本当にゴリ押しや偏向があったのかの検証が必要ではないか、と指摘している。

おそらくデモに参加された多くの方は、ネットで情報を知ったのは事実だろう。なぜならば、テレビ放送はどんどん流れていくわけだから、たまたまそれを見た人、あるいは録画していた人の情報が元にならざるを得ない。それを共有するのは、ネットしかないからだ。

なぜフジテレビばかりがやり玉に挙げられるのか。たぶん番組ピンポイントで偏っているのではないかと感じるものもあっただろうが、それよりも放送局全体に対しての不信感がここまで高まったことのほうが、問題が大きいと思っている。おそらくそれほど流行ってはいないものを、いかにも大ヒットしているかのように報道すること、番組中にわざとらしく露出されるステルスマーケティング的手法に対しての不快感から、不信感が生まれているのではないか。

これには他局との比較など、定量的なデータが必要だろう。過去放送されたテレビの情報を調べるには個人の力ではなかなか難しいところがあるが、そこは良くしたもので、そういうことができる機器がある。「ガラポンTV 弐号機」は、マルチチャンネル対応のワンセグ放送録画機だ。これの検索機能を使えば、過去放送された番組情報と字幕に含まれる語句が検索できる。製品の詳細は以前レビューしているので、そちらをご覧いただくのがいいだろう。

筆者宅にこれをお借りしていて、現在約1ヶ月間のNHK2波と民放5局のテレビ番組がストックされている。これでいろいろ調べてみることにした。

まず番組情報に、「韓国」という単語が含まれている番組数を抽出した。番組情報とは、番組タイトルのほか、EPGに含まれる番組の説明文なども含んでいる。サンプリング期間は7月23日から8月21日までのほぼ1ヶ月、総出現数は133である。

番組情報数


このグラフは、放送局別に番組数をカウントしたものである。TBSがダントツの71番組となっているが、これは8月27日に開催される「世界陸上」の番宣番組が異常に多いからである。今回の世界陸上は「世界陸上韓国テグ」が正式名称なので、これがひっかかってくるわけだ。TBSは例年世界陸上の放映権を取っており、これが終わってみないと正確な値はわからない。

続いてテレビ東京が多いのは、韓国ドラマ枠がいっぱいあるからだ。ついで3位がフジテレビとなっている。他社の冷め具合からすると、上位3社は多いと言えば多いが、ゴリ押ししている状況は見えてこない。

WS002続いて字幕情報を検索してみよう。字幕情報とは、ケータイなどでワンセグ放送を見たことがある方にはおわかりだろうが、音声をリアルタイムで字幕化したデータも同時に流れている。このデータも検索可能で、要するにタレントやアナウンサーが「韓国」と発言したデータがほぼ全部拾えるわけである。検索結果はこのようになる。

ここから、「韓国」と発言した番組数をカウントする。一つの番組中で何度も見つかるものもあるが、これは一つとカウントしている。総出現数は310番組。グラフ化すると次のようになる。

字幕情報数


それなりにどの局も韓国に関する発言はしているが、それなりに偏りは出ている。1位はNHK総合の67で、内訳は大半がニュースか経済・産業番組だ。文化・バラエティ系は民放よりも少ない。続いてTBSとフジテレビが2位タイの57となっている。TBSでは番組タイトル数で71もあるのに、実際の発言では57しかない。いくつか世界陸上の番組を見てみたが、番組タイトルには「韓国テグ」まで入っているものの、ナレーションや発言では「世界陸上」としか言っていないものが多かった。このため、番組数より発言番組のほうが少なくなっている。

一方フジテレビの場合、番組数が17しかない割には、発言数でTBSと同じ57ある。数としてはかなり多い。その差、40番組。番組情報に韓国を含まない番組これだけの番組内で、韓国韓国言っているということになる。報道が多いNHK総合を除けば、民放では一番差が大きい。差と言うことでは日本テレビの38、テレビ朝日の36も大きい数字だが、元々韓国を謳う番組数が少ない。これがステルスマーケティングだとするならば、そちらのほうがやり方が上手い、ということになる。

過去テレビ番組を散々作ってきた側からすると、報道を別にして、利害関係のない話題がこれだけの数うっかり露出されるということは、まずないと考えていい。必ずその先の何かに対しての導線がある。テレビ番組とは、そこまでちゃんと計算して作るものだからである。

もし仮にデモの影響で、フジテレビが番組の方向性を変えてくるような事があれば、今から1ヶ月後にまたデータを取ることで違いが出てくるかもしれない。ただあいにく筆者宅のガラポンは8月末までという約束でお借りしているだけなので、来月までまたがる調査ができない。これはどなたかお持ちの方にお願いするしかない。

さらに今回の調査には発言の内容、話題にした時間などが含まれていないため、これだけのデータでフジテレビにのみブーム捏造があったと言うには、若干根拠が薄いだろう。しかしテレビにおけるステルスマーケティングの手法を研究するには、格好のサンプルである。

このような形で、一般の個人や団体でもテレビ番組に対しての定量的な調査ができるようになれば、もっとテレビ放送の公平性に対して、国民が根拠を持って発言できるようになるはずである。

そのためには、このようなことができる録画機器、ガラポンや東芝 CELL REGZA、この秋に発売されるPTP 地デジ版SPIDER PROなどに対して、放送局側から不当な圧力がかからないよう、しっかり法改正の動き、ARIBやDpaの動向などもチェックしておかなければならない。筆者やMIAUだけではいかんともしがたいので、ぜひ皆さんの力をお借りしたい。

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「嫌なら見なければいい」に感じるズレ

フジテレビに対するネットの反感に対して、複数のタレントが「嫌なら見なければいい」という趣旨の発言をしたことが波紋を広げている。これに対する推理作家の深水黎一郎氏による、「そうではなく、マスメディアのあるべき姿が問われているのだ」という反論は、民営によるテレビ局運営の根幹に関わる問題を指摘している。

本来ならば元テレビマンである筆者がその点を深く掘り下げるべき立場なのだが、その前に「嫌なら見なければいい」という発言に感じる違和感について、少し思うところを話しておきたい。

「嫌なら見なければいい」と同じようなことは、TwitterやBlogでもたびたび起こっているが、ネットならばこの理屈は通ると思う。ネットのサービスの大半は、見たい人が情報を引っ張るPull型サービスであり、読者は「わざわざ見に行ってる」わけである。しかも個人が非営利でやっていることに対して、嫌なら見なければいいと本人が言う分には、まさにその通りだ。

しかし、テレビ側のタレントがそれを言うことは、事情が違う。理由は3つある。

電波の公共性ということはすでに深水氏が指摘しているところなので省くとして、テレビは点けている限り強制的に情報を送りつける、Push型メディアであるという点で特殊だ。受け手側には、テレビを消すか、チャンネルを変えるぐらいしか選択肢はなく、そもそも見たいコンテンツを選択する方法がない。

そのメディアに対して、見なければいい、というのは、筋が違うように思える。見たいわけではないのに、送られてくるわけである。そもそも放送枠が元々「韓流ドラマ」であれば、番組表を見てそれを避けることはできるだろう。しかし通常のバラエティ番組の中にネタが差し込まれてくると、事前に知ってそれを避けることはできない。

2つ目は、民放の商業性である。民放の事業モデルはご存じのように広告モデルであるわけだが、これは番組視聴率が上がることで広告がより露出されるという、単純な図式で成り立っている。それをメディアで露出しているタレントが「見なければいい」というのは、民放テレビ局の事業モデルを否定することになる。テレビでメシを食うタレントは、それを言う立場にない。筆者はもうテレビの仕事をしていないが、もし現役のテレビマンの立場だったら、「そりゃないよー」と思うだろう。

3つ目は、「見なければいい」とするコンテンツと視聴者に、発言者が無関係である点だ。これが自分の出演する番組、あるいは制作した番組のことを言うなら、まだ話はわかる。それだけ自分の仕事に対して誇りを持っているということだろう。しかし今回は韓流ものに対して、視聴者に「見なければいい」と言っているわけである。もちろん批判することは誰にでも権利があるが、作品に対する評ならまだしも、視聴者の行動を週刊誌やラジオなどのメディアでタレントが評するのは、ちょっと筋が違うだろう。


だがその一方で、テレビタレントがこのような発言をするということ自体、かなりこれまでとは事情が変わってきたということを感じる。おそらくタレント自身も、すでに韓流押しには無理があるということがわかっているのだろう。気がついちゃった人はもういいから、ほっといてくれよ、という心の叫びなのかもしれない。あからさまにテレビ局批判ができない中で、視聴者に唯一残された抵抗、「見ない」ということで落としどころを付けたいという思いがあったのではないか。実際それが一番効果的である。

前回のコラムで、テレビ局の意識を変えるには視聴率が5%変わるぐらいの人数が必要として、250万人という数字を出したが、これを実際のデモの参加人数と勘違いした人も居たようだ。これは言葉が足りなかった。リアルで集まる人数の話ではなく、視聴率5%に影響を与える規模の不視聴運動が、テレビ局側にとっては一番可視化されるよ、ということを言いたかった。

もう一つこの数字で言いたかったのは、ネットとテレビのスケール感の違いである。例えばブログで10万PV取るとか、Twitterのフォロワーが20万人というと、ものすごい数だと感じる。あなた自身がそれだけのビューを取れるかどうかを考えると、このあたりは非常に生臭い数字に映ることだろう。

しかしテレビ放送を相手にする場合、ネットとは桁が違う数字を常時扱っている巨大メディアなのだということを、今一度意識する必要がある。番組の視聴率5%などたいしたことないと皆さん思っているわけだが、たかだか5%という数字で、250万人が見ていることになる。ネット民数万人が集まって何かやっても、テレビ局のスケールからすると、もう測定されないほどの小さな数字なのである。

話が逸れてしまった。タレントの発言の話に戻すと、彼らがそう発言するようになったもう一つの背景として、ネットの個人個人の意見が、もうタレントまで届いているという点がある。ほんの数年前まで、テレビタレントでネットをよく見ている人というのは少なかった。テレビという業態はその中で自己完結しているので、、ネットの情報を知らなくても、テレビの中での情報さえ知っていれば不便は感じないのである。

従ってタレントがダイレクトに視聴者あるいはファンの意見を目にするのは、ファンレターかブログのコメント欄程度であった。大物タレントになるほど、それらは事務所が間に入って整理するので、ネガティブな意見をダイレクトに目にする機会はほとんどなかった。

しかし現在では、多くのタレントが自分からネットの評判を気にして見るようになっている。ネットでフジテレビと韓流が批判されていることは、テレビや週刊誌があまり取り上げないが、それでもタレントがその事実を詳しく知っているということは、タレントへの情報入力ルートもすでに昔とは変わってきているという証拠である。

タレントも今回の騒動で、どのように立ち回るべきか、もはや踏み絵のようになっているのではないか。大衆に愛されるタレントを目指すか、テレビ局に愛されるタレントを目指すか。俳優の高岡蒼甫氏がフジテレビ批判で事務所を辞めることになったのも記憶に新しいところだが、テレビ側から切られた俳優を大衆が救うことは大変難しい。いくら応援するといったって、1ヶ月もすれば忘れてしまう。テレビ業界とは悲しいかな、コロコロ変わる大衆の「付和雷同的興味本位」をすくい上げることで成り立っているものなのである。

今後もネットの批判が肥大化すれば、テレビ側が表現を変えてくることは、十分にあり得ると思う。火付けがバレたからには、それ以上やっても無駄だからだ。ただし偏向やねつ造があったという確証が出てこない限り、謝罪などはないだろう。いつの間にかやらなくなった、ということになる。民放は編集番組が多いので、仮に一斉にやめたとしてもOAまでは1週間から2週間ぐらいバラバラのタイムラグが発生するからである。

次は別のメディアを使って、着火することだろう。ラジオ、新聞、雑誌などのメディアは、テレビに対して抗議をするような人々とはまた違った層を持っている。特にラジオはPushメディアであることに加え、最近ネットで見直されている点、番組単価が安いため簡単にてこ入れできる点で、可能性が高い。人は多方面のメディアから攻められると、「もしかして本当に流行ってるのか?」と思ってしまうものである。

ネットの登場により、人の好みは非常に分散した。狭い範囲の趣味でも、仲間を見つけることができれば、その状態を維持できるからである。筆者もそれを楽しんでいる一人だ。国民を巻き込んだ大ブームという現象に夢を見続けているマスメディアと、人の生き方のズレが顕著になり、その軋轢がこの騒動の奥底にあるように思える。テレビが示す世の中とネットが示す世の中は、今後も加速度的にズレていき、我々はいつかそれを容認せざるを得ない時が来るだろう。

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フジテレビの韓流騒動について

この件に関しては静観を決め込むつもりだったが、もうテレビの話を書くついでなのでこれも書いちゃおうかと。フジテレビが韓流ゴリ押しであるとして、ネット民から批難されている件である。

過去テレビ局というのは、ブームを追い、それを報道することでさらにブームが加速するという構造を持っていた。グッズ、ファッション、タレント、ショップなど、テレビによって取り上げられ、それが全国に飛び火するという傾向が70年代から80年代前半あたりまでであろう。なめ猫、キン肉マン消しゴム、ルービックキューブ、ハマトラといったブームは、元々は雑誌が火付け役だったが、テレビにより全国隅々まで押し込まれる形で大きく広がったと言っていい。

80年代も後半に入ると、今度はテレビ局自身がブームを作るようになってきた。つまり流行ったあとから他人のブームに便乗しても、もう利益構造には割り込めない。しかし権利関係を押さえておいて自分でブームを作れば、利益誘導できる。その時点で、フジテレビは非常に仕掛けがうまかった。おニャン子クラブで夕方の高校生層を押さえ、オールナイトフジで女子大生ブームを作り、月9でトレンディドラマを流行らせた。

90年代を過ぎてバブル崩壊のあおりを受け、広告収入が減ると、フジは自社リソースを商品化することで番組制作費を大幅に削減した。いわゆる女子アナブームである。女性アナウンサーは正社員なので、いくら売れても給料据え置きである。社員をタレント化することで、外部タレントの発注を押さえて番組を成立させる方向にシフトした。一時期は男性アナウンサーを司会に、女子アナが運動会のようなことをやるような番組さえ登場した。やってることは大規模な社員運動会である。

さらにお台場移転をきっかけに、その敷地内をテーマパーク化して観光スポットに仕立て上げた。場所的には非常に不便にも関わらず、執拗に情報番組内で露出することで、地方からの観光客にとって行ってみたい観光名所として定着させてしまった。こういうことをやって成功した局は、フジテレビ以外にない。

今回の韓流ゴリ押し騒動もこういった流れで見れば、音楽著作権を大量に保有しているK-Popも実は自社リソースに過ぎず、それを売るためにブームを作ろうとしているということがわかる。過去80年代から何度も繰り返してきた手法なのである。

それがここにきて、大きな反発を受けることになったのはなぜか。それはたぶん、思ったように利益が上がっていないのだろうと思う。つまり、ブームの火付けに失敗したのだ。

韓流ブームのそもそもは、03年にNHKで「冬のソナタ」が放送されたのがきっかけである。そこから先韓流ブームが継続しているように思われているが、経済効果としてはほぼ1年~2年足らずで収束している。韓流ドラマ、K-Popの版権が安いとされているのは、おそらく事実であろう。円高ウォン安の影響ももちろんあるだろうが、それ以前に経済的価値が低いからである。

それから何度かメディアが再点火を試みたが、うまくいっていない。もちろんその背景には、韓国という国からの広告宣伝費も出ていると思われる。韓国は国策としてコンテンツ産業育成を行なっており、海外への売り込みにも国から予算が出ている。

テレビの王者フジテレビとしては、安く仕入れたものを自分たちのブーム着火力にものを言わせて商売するつもりであったのだろう。もちろん韓国からの広告宣伝費も相当入っているだろう。しかし、うまくいかなかった。そこで次第に焦りが見え始め、過剰なまでに露出をエスカレートさせることになったのではないかと思われる。

これまでのフジテレビの火付けは、スマートだった。いや実際にはスマートとは言えない部分もあったが、少なくとも仕掛けに行っていると大半の視聴者にバレない程度には引きどころをわきまえていた。しかし今回の韓流ゴリ押しは、多くの視聴者が「そんなわけないだろ」というレベルにまでエスカレートした。

もう一つ反感を買っている原因は、売ろうとした商品が「韓国」であったこともあるだろう。日韓の関係は従軍慰安婦問題から竹島、ワールドカップ、オリンピックまで、非常に摩擦の多い間柄である。日本には少なからず反韓感情は芽生えているだろう。これまで作ってきたブームは、無風の中から立ち上げてきたが、今回は逆風をひっくり返そうというのだから、大変だ。

韓流ゴリ押しには、非常に大きな圧力がかかっているのも、また事実であろう。例えば「笑っていいとも!」のランキングによるゴリ押しだけ考えても、おおごとだ。最近は視聴率が下がっているとは言えあれだけの長寿番組のプロデューサー、ディレクター、構成作家、大物出演者まで全部ネゴして回らなければ、あれだけのことはやってのけられない。

もちろん公共の電波を使って私腹を肥やすべきではない、という意見には一理ある。しかし実際にはこれまでも、すでに散々やってきたことなのである。それをどこまでエスカレートしたからダメだ、というのは、誰がどのような線を引くのか。米国のようにマスメディアの権利保有を分散する仕組みもあるが、日本では法が通らないだろう。米国ではテレビよりもハリウッドのロビーが圧倒的に強いので、テレビはかなり透明性が高い経営が求められる。しかし日本の場合、新聞社とテレビ局が一体化しているために、メディア力+ロビー力で、とても規制に動かせるものではない。

8月7日にフジテレビ周辺で非公式な抗議デモが行なわれたそうである。本番は21日だそうだが、こういったストレートな抗議行動をテレビ局は右翼から以外に受けたことがないので、どのような反応を示すのか、非常に興味がある。

ただ人数が数千人程度では、7日同様、黙殺の可能性は高いだろう。テレビ局の場合、視聴率が5%ぐらい変わるほどの影響力が必要だ。ということは、250万人ぐらいの人がなんらかのアクションを起こさないと、影響力を行使できないのではないかと考える。

スポンサーに訴えるというのは一つの方法ではあるが、花王の製品に対して事実ではないことを書き込んだり、風評を立てるような運動は、よろしくない。こういうものは、たとえ事が解決しても依然として悪評だけが生き残り、ダメージを与え続けるからである。主張が組み入れられたら撤回し、現状復帰できるような方法を選択すべきだろう。

一部のネット民が騒いでいるだけ、という見方をされてしまったら、伝えたいことも伝わらない。いちテレビ局に対して具体的な抗議行動というのは日本でこれまであまり例がないのだが、視聴者の意見が反映された好例となるような、前向きな活動と決着を望みたいところである。

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東海テレビ放送事故の不思議2

前回のエントリーを上げたあと、東海テレビが簡単な検証番組を放送しているYouTubeのリンクを教えて貰ったので、見てみた。厳密に言えば、番組制作者である東海テレビ自身がアップロードしたものではなさそうなので、この動画は違法アップロードであろう。いくら相手に落ち度があるとはいえ、ネット側がなんでもやっていいということにはならない。MIAUの代表理事という立場上、こういう動画を参考にエントリーを書くという事に躊躇はあるが、事故再発防止の役に立つかもしれないという点で、社会的利益はあるだろう。今回はそちらの方を優先させるべきと判断した。

検証番組中では、前日に放送で使用するテロップ類をタイムキーパー(TK)がチェックすることになっているようである。そしてCG担当者が悪ふざけで作ったものを、TKが訂正の指示を出したものの、担当者は訂正の依頼だと受け取らなかった、とある。

この部分だけでもいくつか説明が必要なようだ。テロップをCG(Computer Graphics)と呼ぶことに対して、いちいちテロップをMayaやLightwaveで作るのか、という指摘があった。MayaやLightwaveは3DCGを制作するためのソフトであるが、2Dを制作するペイント系、ドロー系のソフトで作ったグラフィックも、CGと呼ぶ。実は昨日のエントリーの下書きではその説明も書いていたのだが、さすがにそれはわかるだろうと思って削除してしまった。読者に配慮が足りなかったようだ。申し訳ない。

80年代から90年代までは、このようなテレビ用のテロップは、クオンテルのPaint Box、Harry、Harrietといった装置で作っていた。これらは動画を下敷きにしてその上にぐりぐりとフリーハンドで絵が描ける装置である。たぶんPaintboxを世界的に有名にしたのは、AhaのTake on Meのプロモーションビデオである。曲もいいので、興味のある人は見てみるといいだろう。

しかし現代はこのような高価な装置を使うまでもなく、Windows PCで十分作れるようになった。CG担当者は50代というから、筆者よりもさらに年上である。筆者が業界入りしたときにはCGなどという職種は存在しなかったので、のちにこの職業に転職したということだろう。おそらくは元々セット美術さんか、印刷会社のデザイナーか、写植屋さんだった方ではないだろうか。最初からテレビ業界だったとすると、相当の大御所である。

一方TKという職種は、あまり説明されることが少ない。タイムキーパーは生放送などのときに、番組の時間的な進行具合をチェックし、時間ぴったりに番組が終われるよう管理する仕事である。台本には大まかな進行時間が書かれており、それに対して現場がどれぐらい時間的に押しているか、あるいは巻いているかを計算し、ディレクターに伝える。ディレクターはそれに応じて、次のコーナーを巻いたり伸ばしたりして、放送終了時間にめがけて時間調整していく。

TKさんは、伝統的に女性である。まあ広い世の中、男のTKさんも存在するかもしれないが、寡聞にも筆者はお会いしたことがない。通常TKさんは局員ではなく、完全なフリーランスか、映像専門の派遣会社からの派遣である。どうやってTKさんという職業になるかというと、筆者の知る限り「弟子入り」が最短コースだ。最初は先輩TKさんにくっついて雑用をやりながら仕事を覚え、テレビ局スタップに顔を覚えて貰う。仕事を覚えて1人でできそうだ、というところまでになれば、先輩TKさんが持っている番組を「のれん分け」してもらい、独り立ちする。技術者というよりは、メイクさんやスタイリストさんに近い職業である。

■女工哀史
検証番組の内容からは、おぼろげながらスタッフ間の人間関係が把握できる。東海テレビでは、テロップの確認は前日にTKが行なうという。しかしこのワークフローは、問題がある。普通このような演出上の確認ごとは、ディレクターか、もしくはディレクターの下で働くAD(アシスタントディレクター)の仕事である。そのような業務をTKさんに振っていたということは、おそらくこの番組にはADが付いていないのではないか。人手が足りないので、TKさんにADの代わりをさせているのかもしれない。

TKさんは局員ではなく雇われている立場なので、そういう「○○ちゃんこれもやっといてよー」というリクエストに弱い。これは連綿と続く、女工哀史的な話である。今は女性のADやディレクターも結構多いが、昔はテレビ関係の職種で女性がほとんどいなかったために、TKさんが女性特有の気を回す細かいことをやる立場になりがちであった。まあ逆にベテランTKさんになると、遅れてきたディレクターの代わりに本編の編集の指揮を執るような豪傑もいたが、本来はADがやるような仕事、例えばコーヒーを注文するとか灰皿を変えるとか、そういうこともなんとなーく女性であるという理由だけでやってきたという歴史がある。職種と職種の関係を円滑につなぐ役目、というのが、テレビの現場で働く唯一の女性に求められてしまった結果である。

50過ぎのベテランCG屋さんと女性TKさんでは、立場的にはTKさんのほうが弱い。悪ふざけを注意するにも、かなり気を遣った言い回しをしないといけなかっただろうということが想像できる。それがゆえに、訂正の依頼だと受け取られなかった可能性は高い。

きちんと演出サポートの役割を担うADを使わず、TKさんを便利に使っていた番組スタッフの構造に、まず問題がある。

■システム設計の問題
次のポイントは、実際にそのテロップが放送に出てしまった経緯である。検証番組では、スタジオ内のモニターに絵を出すため、いったんVFに映像をコピーする、と解説されている。ここは技術者としていろいろ疑問が残るところだ。

VFとはおそらく、Video Fileの事だろう。静止画用のファイル送出機であろうと想像する。実はこの辺の略号というのは、放送局によっていろいろ違うので、同じテレビマンでも話が通じないことが多い。元々はVFナントカという機材の型番だったのではないか。局の人はその呼び名が世界標準だと思っているので、このような検証番組でも平気で使ってくるわけである。

このVFに映像をコピーするために、放送用のスイッチャーを経由する、と解説している。ということは、このVFなる装置は、FTPなどによるファイル転送をサポートしておらず、ビデオ映像を入力して、それをキャプチャする機器だということがわかる。FTPをサポートしていれば、そんな面倒なことはしないはずだ。ということは、たぶんこの機械は、以前はテロップ出しのメインで使われていた、古いタイプのものだろう。新しいテロップ装置を導入したために不要になったものを、スタジオ内のテレビモニターに絵を出すための装置として流用したのではないか。

しかし、コピーするためにはスイッチャーのOAかNEXT(プレビュー)ラインに出す必要があるというシステム設計には、正直首をかしげる。やってることが雑すぎるのだ。

番組に写ったスイッチャーを見ると、3ME仕様で各MEごとに4キーヤー、DSKが2系統という、かなり大がかりなものであることがわかる。当然、AUXバスも複数あるはずだ。AUXバスというのは、本番のラインとは関係なく出力できるラインで、外部機器に映像を送り込むために存在する。なぜVFの入力にAUXバスを使わないのか。AUXバスがいっぱいなら、せめて上段のME列の独立出力に繋ぐべきだろう。

筆者は生放送の送出はNHKしか経験がないので民放の感覚的なことがわからないのだが、OAラインはそのまま放送に出てしまうし、NEXTもTAKEボタンを押せば一発で本番に出てしまうようなところだ。そういうところを仕込みの段取り回線に使うというのは、かなり剛胆である。もうちょっと慎重な設計にすべきではないか。

■そして最終的にはスタッフ構成の問題
検証番組の中では、実際にテロップが出てしまったのは、TKさんがテロップをVFにコピーするために、NEXTではなく、OAラインに出してしまった、とされている。このとき番組はVTR送出に切り替わっており、スタジオ副調内では次のコーナーのリハーサルを行なっていたという。ここにもいくつか疑問がある。

そもそも、VFにコピーしなければならない段階まで番組が進んでいたのに、まだダミーテロップのままだったのはなぜか。もしかしたら、完成した最終のテロップは別にできていて、問題のテロップは単にダミーの消し忘れだったのではないか。

普通はあまり使わないT2にVFコピー用のテロップを入れているというが、今回の事故では問題のテロップは、T1に入っていたとされる。これは、T2には完成品を送り込んであったが、T1のほうは前日あたりに間違って流し込んでおいたものを消し忘れたのではないかという推測が成り立つ。

2つめの疑問は、なぜVFにテロップをコピーするというような技術的な仕事を、TKさんがやっているのか。てか技術者じゃない人に、放送中のスイッチャーを触らせるという感覚が、もうどうかしている。まあこれがポストプロダクションの編集室や、スタジオ事前収録だったらわからないでもない。失敗しても止めてやりなおせるからだ。しかしOA本番で、TKさんにスイッチャーを触らせただダメだろう。

これは前段でも書いたが、このTKさんは、時には演出側の人間としてADの仕事をし、本番では本業のTKの仕事もしながら、技術者の助手の仕事もしていた事になる。これをTKさんの操作ミス、と言えるのか。元放送技術者としては、スタジオの信号フローが頭に入ってない人に、本番に直接出てしまう機材を触らせるようなワークフローにしたという管理責任を問うべきではないかと思う。

もう一つの疑問は、いくらVTR送出中とはいえ、技術の人間が誰もOAの画面を見ていなかったのか、という点だ。検証VTRによれば、技術者は「技術責任者」と呼ばれる1人しかいないようだ。その1人までもリハーサルに加わったのだろうか。このようなケースでは、普通2名の技術者を用意して、1人は必ずOAのモニタをするべきである。これも技術者としては、考えられない杜撰さだ。

番組送出は、アナログ時代とは比べものにならないほどに自動化、合理化されているのは事実である。しかし生放送はほとんどがマニュアルであるので、昔ながらのノウハウとあまり変わりがないはずだ。テレビに関わるスタッフは、それぞれが何か「資格」を持っているわけではなく、厳密には誰がどの役割をやってもダメではない。しかし責任の所在をあきらかにするために、越権してはならない部分がある。

今回の事故は、もちろんふざけたテロップを本当に作った担当者のモラルが第一に問われる点は揺るぎないが、それ以外では現時点で検証番組を見る限り、TKさんをいいように使っていたテレビ局側の人的リソース管理、外部スタッフの待遇の問題が浮上したと思う。今回の一件では、この点を指摘する人がいないまま、CG担当者とTKさんの責任として、契約を切って終わりにしてしまうのではないかと懸念している。

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東海テレビ放送事故の不思議

Twitterでお題を貰ったような気がするので、久しぶりのブログ更新である。

東海テレビが生放送中に、スタッフがふざけて作ったテロップを誤って23秒間放送したことで、様々な波紋を呼んでいる。もちろん、不謹慎にもほどがあるし、関係者が激怒するのも当然だろうと思う。ただ元放送技術者としては、なぜこういう事故が起こったのか、ということのほうが気になるところだ。

東海テレビのシステムがどうなっているのかは知らないのだが、当該の番組は情報バラエティの生放送だということなので、制作は報道局だろう。送出は情報番組用のスタジオとそれに付いている副調整室を使って行なっていたと想像される。

問題のテロップは、CGで制作されたものと聞いている。この手のテロップは、すべてデータとしてファイル上でやり取りされる。フリップ専用機で制作され、そのファイルはテロップなどの静止画を順次送出するためのこれまた別の専用機に送られる。この送出機で、台本の順番通りに送出順に並べ、ほとんどの場合は単に「TAKE」とか「送出」とかいったボタンを押すだけで順番に1枚ずつ呼び出される仕組みだ。

それをどのタイミングでテレビ放送画面に出すのかは、TD(テクニカルディレクター)がスイッチャーと呼ばれる画面切り替え器を使って、操作している。ただTDがカメラ割りなどで忙しい場合は、テロップだけはサブの技術スタッフが入れる場合もある。スイッチャーは、そうやって手分けして作業できるようにも作られている。

こういった電子テロップ装置では、フリップのような紙ものになるタイミングはない。内容の確認は、放送開始前の技術打ち合わせで確認するのが普通だが、そのときはスタジオのフロアとかで行なうので、副調整室内にあるテロップ送出機の内容や順番は確認はしていないのではないか。おそらく放送直前に担当ディレクターが、画面上で一通りチェックするというというワークフローになっているのだろう。

Wikipediaの記述を信じるならば、不祥事となったテロップは、プレゼントの発表とは無関係の内容の時に誤って送出されたという。一番考えられるのは、最初からテロップの並び順が間違えていたか、放送中にコーナーの順番を入れ替えるなどしたために、テロップの順番変更がおかしくなったか、というところだろう。

プレゼント発表のテロップがダミーとなっていたのは、放送中に抽選するために、事前に当選者を入れ込んでテロップが作れないという事情があったのかもしれない。そのあたりは、放送を毎週視聴していた人に聞くしかない。

ダミーのテロップは、普通ははっきりダミーとわかる内容で作っておくものである。しかしいくらダミーとはいえ、ああいう不謹慎ネタを仕込むのは、いくら外注の制作スタッフとはいえ、モラルが問われて当然だ。

しかし謎はまだ残る。まったく無関係のコーナーで該当テロップが、23秒間ものあいだ送出されたという点だ。23秒というと、皆さんも時計とか見ながら測って貰えればわかると思うが、相当長い。特にテレビ的な「間」としては、かなり長い。この間、誰も間違っていることに気づかなかったのか。

間違いに気づけば、ディレクターがTDに指示を出して、いったんスタジオカメラに戻すなどの措置ができるはずだ。普通「ヤバい!」と思ったら、5秒以内でそれらの判断、措置はできておかしくない。早ければ3秒。秒数が問題ではないのだが、それでも傷口は最小にできる。

これは想像だが、もしかしたら出すテロップを間違えたのではなく、テロップに切り替えるタイミングではなかったものが、誰かが誤って別の系統のテロップ送出ボタンを押したのではないか。テロップは、同時に2枚出すこともあり得るので、通常は2系統ないし3系統の送出ができるようになっている。

今回送出されたのは、画面内にスーパーインポーズされるテロップではなく、画面全体を取り切るタイプのフリップだ。普通画面全体を取り切るものは、カメラ回線などと同じようにラインそのものを切り替えるのが普通だが、キーヤーと呼ばれる合成用の機能でも同様に画面に出すことができる。

キーヤーは複数の段階にわかれて用意されており、信号の流れ的にどのキーヤーがONになっているかは、メインの操作を行なっているものが把握するのが普通である。ただ、DSK(ダウンストリームキーヤー)と呼ばれる最終ブロックのキーヤーは、生放送では時報とか緊急テロップなどに使うため、あまり積極的に使わないケースもある。(これは各局のシステム運用がどうなっているかによる。時報や緊急テロップは、スタジオ副調のさらに後ろにあるマスター調整室で入れることもあるだろう。)

おそらく23秒間もテロップが放置された原因は、スイッチャーのどこでこのテロップがONされたのか、瞬時に把握できなかったことが原因ではないか。普段は使わないはずのキーヤーのボタンを誰かが台本か何か置いた拍子に押されてしまったら、TDとしてはたまったものではない。

もちろんすべての元凶は、ふざけたテロップを作ったスタッフ、それを容認してきたスタッフのモラルである。ブラックジョークは時には人を和ませ、精神を健全に保つ働きもあるが、それは口だけにして、実際に作っちゃったらさすがにダメだろう。

今回事件を教訓として、民放各社はワークフローの見直し、スタッフのモラル向上に務めていただきたいと思う。


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小寺信良
WEBに巣食うモノカキ。
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