今回の飛行機は、初めてシンガポール航空に乗った。これがなかなか快適で、機内食は旨いし、CAは小柄だしで、とても満足した。いやこれが米国系航空会社だと、CAが巨大なおばちゃんだったりして、通路をぎしぎしきしらせながら怖い顔でドスドス歩いてくるので、通路側だとおちおち寝てられないというね。

帰りの便での話だが、飛行機に乗り込む前からずーっと電話で話している東南アジア系の男がいた。その男は通路を挟んで僕の斜め前だったんだけど、機内に乗り込んでからもずーっと電話している。皆荷物も棚に入れ終えて、着席して、シートベルトして、CAがあんたそろそろいいかげんにしなはれやと言いに来るまで、ずーっと電話しているのである。

旅慣れた感じはするので、離着陸時の電子機器の使用制限を知らないわけでもないだろうが、海外ではたまにこう言う人を見かける。我々ネットワーカーが、公衆無線LANがあると繋がずにはいられないように、そのタイプの人にとっては、誰かと話し続けることは、習慣というか娯楽というか、半ば依存症気味になっているのではないかという気がする。

話し好き、という人は世の中に沢山いるが、「会話依存症」などと呼ばれることはない。人とコミュニケーションすること、面白い話を聞くことというのは、人間の基本的な欲求なのだろう。それがメールやMixiやTwitterに変わっただけで、依存症扱いされるというのは、考えてみればおかしなことである。

人の話というのは、面白い。酒の席などではみな相当無責任な話をするわけだが、そういう根拠の無さとかウラの取れてないうわさ話というのは、大抵尾ひれが付いていて、おもしろおかしくなるようにできている。たぶん落語のように、人から人へ伝わる間に、起承転結の構成や落ちなどが付いていって、一つのエンタテイメントとして完成していくのだろう。

みんなも自分がおもしろいできごとに遭遇したら、会う人ごとに話すわけだが、何人かに話している間に、だんだん話として完成していくという経験はないだろうか。

映画やテレビ番組など、プロの手にかかった完成されたシナリオを楽しむことだけがエンタテイメントではなく、人の話こそがエンタテイメントの原点であったはずだ。もちろん、その話をより面白く受けてくれる人の存在というのも、重要である。金を払って一方的に楽しませて貰うという娯楽が勃興した20世紀の反動が、今来ているのだとしたら、21世紀は「人の話」の時代になるのだろうか。その兆候はすでに、現われ始めているような気がする。

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