東京都が改正を予定している青少年健全育成条例に関して、多くの人が「非実在青少年」のインパクトの強さに打ちのめされているようである。今日、このブログが公開されるぐらいの時間に、EMAと地婦連が改正反対の記者会見を行なっているはずだ。あいにく僕は別の打ち合わせがあって、その場には居ない。

今回の改正の柱は、児童ポルノ撲滅と銘打って、二次元や文学などの表現規制に踏み込む部分と、子どものネットおよびケータイ利用についての新しい規制の、豪華2本立てである。後者のほうを問題視している人は殆ど居ないが、こっちもかなり危ない。むしろ前者は後者をスルッと通すための派手なブラフじゃないかと思われるほどである。

改正案を現条文とマージしたものを兎園氏が公開しているので、これを見て貰うとわかりやすいのだが、僕が問題視しているのは、

・第十八条の六
都が青少年に対して行なわれるインターネットの利用に関する啓発についての指針を定めるとある。しかしその指針内容は、誰が決めるのか。おそらくこの改正案をまとめた東京都青少年問題協議会だと思われるが、MIAUがパブコメで指摘したように、この協議会の方向性がすでに著しくバランスを欠いたものとなっており、指針を定める機関としては適切ではない。ある意味、この指針次第でやりたい放題の規制が可能となっている点は見逃せない。

・第十八条の七の二
「保護者が携帯電話のインターネット利用状況に関する事項の閲覧を可能とする役務を利用すること等」とあるが、携帯キャリアのうちこれに該当する機能を有しているのはNTT DoCoMoしかなく、すべての保護者が該当のようなサービスを利用できるわけではない。これはある意味、都が率先してNTT DoCoMoへ消費者を囲い込む結果となっており、何か裏があると勘ぐられてもおかしくない。

また上記のサービスは、本来は自分の携帯の履歴を参照するためのものであり、ペアレンタルコントロールには使えない。なぜならば、閲覧のためのパスワードは、参照したいケータイ、すなわち子どものケータイに送られるのである。子どもはこれを見て、親が自分のアクセス履歴を見ようとしていることがわかるし、そのパスワードを親に教えなければならない。

そもそもネットのアクセス履歴というものは、本来プライバシーが守られるべきものではないだろうか。大人の階段を上り始めた思春期の子どもに対して、自分でパンツさげてケツの穴を見せろと強要するようなことは、僕にはできない。

そもそもペアレンタルコントロールは、親が子どもが何をしているのかを、さりげなく子どもに知られぬように見て、状況を把握しつつ見守り、育んでゆくという、デリケートな行為なのである。それを行なうには、現状のツールではまったく不十分なのである。まずはそういう目的のツールが可能かどうかの検討が先であるべきだ。

・十八条の八
ここが本当に問題である。まず下の条文を見て欲しい。

3 行政機関は、その業務を通じて、青少年がインターネツトを利用して自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為をし、又は犯罪若しくは被害を誘発したと認めたときは、これを知事に通報することができる。
4  知事は、青少年がインターネツトを利用して自已若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為をし、又は犯罪若しくは被害を誘発したと認めるとき は、その保護者に対し、当該青少年について再発防止に必要な措置をとるとともに、そのインターネットの利用に関し適切に監督するよう指導又は助言をすることができる。
5 知事は、前項の指導又は助言を行うため必要と認めるときは、保護者に対し説明若しくは資料の提出を求め、又は必要な調査をすることができる。

東京都の親の皆さんに聞きたいんですが(僕は埼玉県民なので)、これだけの権限を、石原慎太郎氏一人に集中させて大丈夫ですか? 彼はネットリテラシーに明るい人物ですか? 彼はネットのメリットも、デメリットと同じように理解していますか?

当然石原知事一人でこれだけのことをやるわけではなく、知事の名を借りてどこかの部署が実際には運用するわけだろうが、彼らは信用に足りますか? 親権が侵害されるようなことはないと、自信を持って言えますか?

世界が情報社会へと進むなかで、権力を集中させようとする動きには、十分に注意しなければならない。これは民主主義の根幹に係わることなのである。