前回から、小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

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□対談:Small Talk

前回に引き続き、今月のお相手は株式会社エイガアルライツの取締役プロデューサー、古瀬学さん。自らもソフトウェアベンダーを営むクリエイターであり、COBRAでおなじみの寺沢武一さんの作品の著作権マネージメントも手がけている。

つい先日も「ニコニコ超会議」の現場でお見かけしたばかりだが、著名作品もオリジナルからの正規二次創作だけでなく、いわゆる同人的な二次創作もある程度許容していかなければ立ちゆかなくなっている。

それは、なぜなのか。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、そこには大きなパワーシフトが起こっている。

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COBRAに見る著作権ビジネス、ホントのところ《第2回》
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小寺 ちょっと、原著作物の状況を一回整理したいんですけど。『コブラ』というコミックは、もとのものは20年ぐらい前からスタートですか。

古瀬 もっとですね。来年、2013年で連載開始35年。

小寺 35年前からオリジナルのコミックが連載されて、今は単行本という形におさまってるわけですね。それは今、何巻まで来てるんですか。

古瀬 何巻って言うとですね……

小寺 編集でいろいろ変わる?

古瀬 出版社変わったりしてるので、「何巻」っては言いにくいんですけれども、現状で言うと、モノクロで12巻かな。あとカラーが……海外のみで出版されているエピソード含めて17巻。

小寺 なるほど。そこが、『コブラ』のオリジナルですね。一次著作物と言える他のものには、何がありますか。

古瀬 寺沢の作品で、『ゴクウ』とか、『(鴉天狗)カブト』『(黒騎士)バット』、『武(-TAKERU-)』、『(新組)GUNDRAGON』というのがありますね。で、これらは寺沢の場合ということである程度限定されるのかもしれないけれども、基本的に著作権がすべて本人にあります。どっかの出版社さんに紐づいてる形にはなってないんです。これはもともと少年ジャンプ出身の作家の中ではわりと珍しいというか、早いうちにそのスタイルを確立しているので、我々がこういうビジネスができるんですね。著作権を寺沢から我々が独占的に預かって、運用するというような形ですね。

DSCF0398株式会社エイガアルライツの取締役プロデューサー、古瀬学さん




小寺 他のジャンプの作者さんたちは、どういう権利扱いなんですか。

古瀬 そうですね……特に最近の人だと、きちんと契約をして……。多分、集英社と「マネージメント契約」みたいな形をしてると思うんです。おそらく権利自体は作家さんご本人に100パーセントあるんだけど、マネージメント契約を出版社とやって。だから信頼してやってる限りは、すごく作家さんとしても楽なはずです。なんでもやってくれるから。売り込みにも出てくれるし。

たとえば最近でいうと『ONE PIECE』みたいに非常に大きい、よく売れる作品の場合は、出版社のほうも一生懸命やるでしょうけども、そうでない作品というのもあるわけで。そうすると──もしかしたら、ですよ。これは実際直接聞いていないのでわからないですけれども、作家さんによっては、もっともっと売ってほしいけど、あんまり力入れてもらえてないな、とかっていうケースもあるのかもしれない。

小寺 なるほど。

古瀬 だったら自分で事務所を立ててやりたいんだけど、契約がそうなってないから、っていうのは、あるかもしれないし。そういう不幸なケースじゃないにしても、何らかの形で出版社もしくは編集部との結びつきが強い、というのが一般的な漫画家さんの形だと思います。

小寺 そういうマネージメント契約って、年数とかで契約を区切ってないんですかね。

古瀬 区切ってると思いますけども、実際それを区切っていたところで、そこを外れて何かやれるの? ってことだと思うんですね。

小寺 そうかー。これまでやったこともない部分に、いきなり人を雇ってマネージメントをやってもらって何ができるか、っていうところはありますね。ノウハウもないし、ってことか。

古瀬 ええ。うちはほぼ寺沢武一専業なんですけども、漫画家さんのバックアップをしますよ、というような会社は、ここ数年でいくつか出てきてるみたいですけどね。

■二次創作が進行する流れ

小寺 二次著作としてはほかに考えられるものとしては、さっき食玩という話がありましたけど、あとカードみたいなものですか。

古瀬 まあそうですね。

小寺 あとはフィギュアがあって……

古瀬 我々からすると、フィギュアみたいなのはおもちゃ系ですね。あともうひとつは、映像系。アニメとかの映像系は、非常に我々からすると強い力を持ってますね。というのは、そこから派生して、という伝播力がアニメとかは強いので。

小寺 なるほど。

古瀬 『コブラ』の場合も、1982〜3年に、テレビシリーズと映画。それがまたフランスでも放映されてけっこうヒットして、っていう状況だったので、それでジャンプを読まない人たちもずいぶん届いた。その結果、この何十年もこのビジネスが続いてる、ということだと思います。アニメとか映像化は、我々は非常に大きい期待を持ってますね。あと、最近だとデジタルコンテンツ系ですか。

小寺 じゃあ階段としては、まずコミックがあって、それがそこそこ売れてヒット作になりましたと。そして、アニメ化っていう大きなステップが一個あって、そこからそこを踏み台をして、またもうひとつ広がっていく、という二段構え、三段構えになってるってイメージでいいですか。

古瀬 そうですね。おそらく他の漫画でも、アニメ化されたものとそうでないもので、商品化──我々はざっくり「商品化」って呼ぶんですけど、二次的著作物としておもちゃなどの商品化のされ方はまったく違うと思いますね。我々がすごくラッキーというか、まあ我々がそういう形にしてるんですけれども……ポイントは、アニメができてたくさんの人が見てくれたわけなんですけれども、それから先の商品化は我々、原作のほうからやってもらうんですよ。

要はアニメを作ってもらう時に、アニメからの再商品化というのを非常に限定的にする。で、「『コブラ』の商品化をやりたかったら原作サイドと契約してください」という形にすることによって、我々としてはわりと大きいビジネスにすることができる、ということですね。

小寺 なるほど。アニメから派生するんじゃなくて、その次の展開は一次側に返してもらう、というイメージですね。

古瀬 そうですね。

小寺 「アニメが伝播力が強い」というのは、やっぱりテレビだからですか。

古瀬 テレビですね。これまではそうですね。

小寺 これまで、ってことは、次は何だと思ってます?

古瀬 非常に典型的な例として、やっぱり最近ではニコ動が『コブラ』の若い人への伝播に非常に役に立っています。ニコ動で「コブラ」とか検索していただくと、『コブラ』自体もちょこちょこ使われてるというのもあるんですけれども、最近だと、『アイドルマスター』と『コブラ』をかけ合わせたMADが、すごい良くできてるんですよ。これで『コブラ』を初めて知った若い人たちがいて。実際、『コブラ』は有料配信とかがいっぱいされてるので、観たらすげえ面白かった、っつって、ニコニコ市場で(Blu-ray)BOXとか、けっこう売れてるんですよ。

小寺 へえ。そのMADというのは、当然グレーなところに入ってくと思うんですけど、そのあたりはどういう風に考えてるんですか。

古瀬 そうですね、我々からすると、我々って原作者サイドって話なんですけども、我々は積極的に黙認してます。

小寺 なるほど。

古瀬 で、こう言っちゃなんなんですけど、それを黒と言うのか白と言うのかは我々次第なんですよ。原著作者なので、「こいつダメだ」っていうような使われ方をするものに関しては「消して」って言うわけですよ。でも、「あ、こ
れは好意的に使われていて、より多くの人が我々の作品に触れる機会になってるな」と思えればそのまま黙ってればいい。みんな楽しんでくれるし、一次著作物にたどり着いて来てくれるので。

そこはなんかうまい共生ができるかなと思うんです。もちろん、積極的にそれをみんなにやってください、とは言いません。言いませんけど、我々としてはそういう状態です。

小寺 なるほどね。そういう意味では、今の日本の著作権法にある親告罪のゆるさ、みたいなのをうまく利用してるということですね。

古瀬 そうですね。

小寺 ということは、今著作権の非親告罪化を進めようとする動きもあるんですけど、そうなってくるとそういう緩い許諾が権利者側でコントロールできなくなっていく可能性がありますね。

古瀬 そうですね、ただ、わかんないですよ。非親告罪化というのが、実際の運用としてどうなるか、っていう問題もありますけれども、だったらこっちから使える素材としてみんなに公開すればいいじゃん、って話でもある。そういうコントロールの仕方もあるので、必ずしも僕自身は、非親告罪化が絶対的にダメか、悪か、とも思ってないですね。そこをもっと慎重に僕は考えたいなと思ってます。

小寺 なるほどなるほど。なったらなったでコントロールのしようはまだあると。ということは、非親告罪化云々は別としても、要するにコンテンツが幅広く人に知られるためには、人に利用されなければならない。ファンに積極的に二次利用や創作を促進していかないと難しいという考え方に現在はある、ということですかね。

古瀬 そうですね。そうなってきてますよね。というのは、テレビの力が相対的に弱まってきていて、それに代わるものってやっぱりネットです。しかも今だとソーシャルで、ってことになりますよね。となるとその中で、話題なりコンテンツなりが独自に、勝手に流通するような扱いにしていかないと、なかなか僕らとしては厳しいだろうな、と思いますね。

■「線」はどこにあるのか

小寺 その二次著作物がどのような態度で作られているか、っていう、非常に判断が難しい……権利者側からはあまりよく見えないところがあるわけじゃないですか。たとえばそれが、パロディなのかパクリなのか、あるいは二次創作なのか、みたいなのって、どう区別してるんですかね。

古瀬 あー……。それは非常に線引きは難しいですよね。我々の中で厳密な運用規定というか、そういうものを持って我々がいろんなものを見ているわけではないです。だから、ひとつひとつ見て判断していくしかない。しかも、全部見れてるわけじゃないと思うんですよ。そんなのずっと追っかけてるわけじゃないんで。

目立つものはいろんなところで教えてもらったり、非常にありがたいことに、ファンから「こんなところで『コブラ』使われちゃってますよ」みたいなことをよくいただくんですよ。それ見て判断したりとか。もう都度判断してる、ってのが現状ですね。

だから、どこからどこまでがどうだ、ってことはないです。で、ひとつ言えるとすれば、我々の──少なくとも我々ですよ、我々のビジネスに悪い影響があるものはダメだ、ってことですね。

小寺 なるほど。それは著作者人格権の問題? それとも、金銭的な面で見てる?作者にとって、そういう意図ではないものだというような使われ方なのか、ビジネス的にプラスなのかマイナスなのかの判断と、ふたつあると思うんですけど。

古瀬 それはですね……実はどちらかという話ではないと思ってるんですよ。両者は非常に近いところにあると思ってます。というのは、すべての作品がそうとは言いませんけども、少なくとも我々の、寺沢作品の場合はですね、お話ってけっこうシンプルなんですよ。それよりもキャラクターの魅力でバーンと立てて、それで押しちゃうようなところがあるので、これって実は非常に設計が難しいんですよ。舞台設定とか、人格とか、きちんと設計されてないとそうならないんですね。

だからそれが、そうじゃない形、つまり作者が意図してない形って、多分ダメなんですよ。面白くならないし、それはビジネスに繋がらないことのほうが多い。我々の中では、それは決して背反するようなことではなく、両方とも繋がってることですね。

小寺 ああ、お互いにとってプラスにならない。つまり、二次創作をする側にとっても「面白くない」と言われて損だし、一次側にとっても、それは売上とかビジネスの上でプラスになんないから、よろしくない。

古瀬 まあ、大枠ではそうです。たとえば今、ハリウッドでの映画化の話が進んでますけれども、やはり実写の映画にするためには、部分的に翻案したりとか、ストーリーの構造を変えたりとか、ということはせざるを得なかったりしますよね。尺に合わせたりとか、バジェットに合わせたり。

そういう翻案は、我々としては全然認められることなんですけども、やっぱりエッセンスみたいなものというのは、そこをきちんと踏まえないと、多分どんなにお金を突っ込んで、どんなに素晴らしい技術を使っても面白くない。似て非なるつまんないものになっちゃうだろうな、ってことにならないよう、そこは非常に気を付けてますね。



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