小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。
「金曜ランチボックス」は、この対談以外にも社会系コラムや製品レビュー、Q&Aコーナー、そしてこれまでブログで書いてきた小ネタなど沢山のコンテンツでお楽しみ頂けるようになっています。よろしければ、下記2箇所の配信先バナーからご購読をお願いします。
□対談:Small Talk
毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。
今月の対談のお相手は、インプレスジャパン刊『デジタルカメラマガジン』の編集長を務める、川上義哉氏にお願いしている。
デジカメ盛衰のあれこれを語りながら、今後のトレンドを紐解く最終回。世界の国の中で、こんなにたくさんカメラを製造しているメーカーがひしめき合っている国はない。国内市場が旺盛だった時代に支えられてここまで来たわけだが、もうそんな時代は過去のものだ。メーカーの統廃合も徐々に進みつつある中で、日本のカメラはどういった戦略で生き残れるのか。
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マーケットから見たデジカメの世界《第4回》
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小寺 カメラにフィルターが乗るっていう流れ、それはある意味、コンパクト一眼、ミラーレス一眼どまりなんですかね? この流れは本格一眼までいくのか。
川上 ここはまだ、業界的には議論はあるんですけど。
中井精也さんという、鉄道写真家で有名な方がいて、彼の書籍をつくったんですよ(著者注:『世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書』)。それはすごく売れたんですけど。なんと、今日9刷とか決まって、びっくりしちゃったんですけど。
小寺 ほお。
川上 すっごく売れてるんです。で、その本はRAWの話……1ページしか載ってないんですよね。やれるんですよ、もちろんプロの方だから。でも編集会議のとき、これを最初の一冊にしたいから、カメラの設定だけ、撮った瞬間そこに出てきたものが見た目と変わる喜びを出そう、っていうんで、カメラ内で設定をさせて、それから撮りましょう、ってやってるんですよね。
それがこんだけ本として売れちゃうと……どっかでやっぱり、一歩踏み出す時が、上の機種でもある。まだまだ、メーカーとしては決めにくい状況ではあると思いますけど。
小寺 そこで気になるポイントがあって。アートフィルターをかけて撮って、最初にみるビューが、カメラの後ろ側の液晶モニタじゃないですか。で、液晶モニタの表示が果たしてそんなに正しいのか、っていうことが気になるんですよ、テレビ屋さんとしては(笑)。
川上 なるほどね。
小寺 テレビ屋さんってほら、マスターモニタ以外では色は作れない世界なので。でもカメラの液晶モニタって、なんか標準規格もないし、機種ごとに発色なりコントラストがかなりが違うので、そんなのでいじっちゃって、フィニッシュがどういうイメージになるのかわかってんのか。僕なんかはそこの不安感がどうしてもあるんだけど、そんなことは杞憂なんですかね?
川上 そこは、フィニッシュとは何か、みたいなことが、さっきの話からつながってくると思うんですけど。ものすごく希薄になってると思う。
小寺 うん。
川上 正直、プリントする、っていうのが撮影枚数に比例して伸びてるかというと、逆だと思うんですよ。すごく減っちゃってる。ま、ここぞ、ってものはあるかもしれないけど。
うちの読者アンケートをとっても、RAW現像、RAWを知っていて、やったことある人って9割近くいるんですけど、じゃあみんながそれをいつもRAW現像してますか、っていうと、してる頻度というのは少ないですよね。たくさん撮って、ここぞというものの一部をRAW現像して、叩いて仕上げはするけど、全部はやってはいない。それでなに何かやるかっていうと、プリントもほとんどしなくて、「『GANREF』のフォトコンテストにアップする」みたいな(笑)。
小寺 ああー。
川上 ……流れだったりする。PCのディスプレイでも見るんでしょうけど、その違いに気づいてるかっていうのもなかなか。ま、環境光も違いますよね。元は外で撮ってるわけだから。もちろんディスプレイのガンマの問題とか、輝度の問題があっても、気にしてない可能性が高くて。
逆に言うと、カメラメーカー側がなぜアートフィルターみたいなものをその場で設定できるようにしちゃったかのひとつの理由には、もしかしたらそこがあるかもしれないですよ。どっちにしたっていくらか合ってないんだから、カメラの液晶で満足したらそれでいいじゃん、みたいなね。「それが出力なんだ」と。
小寺 ああ、なるほどね。
川上 ……という割り切りもね、あるのかな、と思ったりはします。
■「アウトプット」という意味
小寺 フィニッシュの絵を大きく見たいというニーズは、どうなんでしょうね。プリントつったってせいぜいL判じゃないすか。ただ多くのデジカメにはHDMI端子がついていて、HD解像度でテレビで見ろよ、ということを促している中で、でっかく見たいというニーズが本当にどこまであるのか、というのが、今のとこよくわかんないんですよね。
動画を撮れば、動画のディスプレイはテレビ以上がないので、テレビ繋ぐのはわかるんだけど、写真をテレビで見るというモチベーションって、カメラメーカーさんが皆さん仰るように、本当にあるのかなー、というのが僕にはよく見えないんですけど。そのへん……
川上 ない、って思います。
小寺 ないか(笑)。ないんだ。
川上 僕もやったんだけど。僕はなんか、かみさんの親にずいぶんお世話になったんで、クリスマスはうちの実家へ、年末年始はあっちの実家みたいな感じで。
そうすると、年末年始におせちを作ったりなんだりして年越しをするときに、僕の仕事は、一年間の子どもの成長をですね、スライドショーにして。でかいテレビにですね、夕飯、年越しのときに流しながら飯を食う、なんてことをここ2年やってるわけですけど。あ、こういうのってあるんだなとは思いました。
イメージだけで言えば、仲間内で、家族4組ぐらいでキャンプに行きました、と。帰ってきたらまた集まりがあるじゃないですか。お父さんたちが撮ってたものをガッチャンコして、子どもたちが遊んでて、お父さんたち酒飲んでる、みたいな。奥さんたちは悪口言ってて。
小寺 (笑)。
川上 そういうシーンで流れてる、ってのはあるだろうと思うんですけど。ま、そういう世界ってのがもう、どんどん死に絶えてくというか……。人は関係性を持ちたがる存在であることは変わらないんだけれども、生々しいそういう集まりとか、家族関係みたいなものがどんどん希薄になってる。結婚しない人も増えてるし、子どもなんかいない人もいっぱいいるし、そもそも近所付き合いしないし、みたいなことが増えてく中では、あんまり大きい画面でみんなで見て共有するようなことを求めるシーンがないんですね。
小寺 うんうん。
川上 で、個人的なものであれば、携帯で見るか、パソコン使って流しながら見てる、っていうんで全然よいので。テレビというのは……意思決定する人たちの世代ではたしかにいいと思うんです。40代、50代、60代の人には。でもこれから30代になってく人、いまの20代、30代の人には、ほとんど効かないんじゃないかなぁ。それはよく小寺さんも仰ってたように、もうテレビからどんどん人が離れていくでしょう、ということとつながるんではないかと思うんですけどね。
小寺 アメリカとかの事情を考えると、アメリカ人って、本物のスライドショー指向というか。写真をポジで撮って、スライドにして、部屋を暗くして、プロジェクタで上映、みたいのって昔から一般家庭で普通にやられてたみたいなんですけど。
川上 そうですね、ええ。
小寺 宗教的な理由もあるのかもしれないですけど、ファミリーが集まってなんかする、みたいなのをすごく大事に思っているところがある。そこの、ファミリーに対しての情熱というかガッツ感みたいのが、どうも日本と違うんじゃないかな、という気がするんですよね。
川上 おっしゃるとおりですね。ま、でもアメリカの話を聞くと、あそこはより格差というか、地域ごとに違うみたいで。今の共和党と民主党の勢力図みたいなもんですけど、民主党系って言うのかな。今の南部の保守的な地盤の人たちは未だにそういうのがあって、そこで生まれ育った人は、都会に行っても、「やっぱりクリスマスは家に帰るでしょ!」みたいなことらしいんですよ。
それに対して、4、5年前にすごく売れた『Sex and the City』みたいなね(著者注:『Sex and the City』のTV版の放映時は1998年から2004年。映画一作目の公開が2008年)。都心で働く女性で、シングルで、という人たちはそういう価値観がなく生きてる可能性が高い。単純には言えないですけど。
小寺 以前さ、ニコンがプロジェクター付きのカメラを出したじゃない(著者注:最初のモデルはCOOLPIX S1000pj、2009年発売)。あれは、うまくいかなかったの? なんか最近あんまり噂にならないってことはうまくいかなかったのかなあ。
川上 こないだ──去年新モデルが出たんです。それが相当良くなって。以前はやっぱり出力が弱くてですね、役に立たねーじゃん、みたいなことがあったみたいです。……まあ、市場作れたほどではないんですが、そういうところもいま、コンパクトカメラが煮詰まってる、というんでしょうね。
小寺 そうなんだ。ビデオカメラの世界では、逆にソニーさんがプロジェクターの機能をほとんどのラインナップに載せてきてですね。いま上位モデルのほとんどがプロジェクターが載ってるんですけど。
川上 え、じゃあ、撮ったらそこでびゃーっと観れる……?
小寺 あのね、寝るときに、家族で川の字になって、天井に打つんだって。
川上 あっ、すごい……!
小寺 それを発見したら、ユーザー間でものすごく広がって。これはいいね! って話になって。
川上 いいですね。
小寺 でね、小さい子とか特に、自分が映ってるのを観るのが大好きなので、寝かしつけに最高なんだって。
川上 あー、ちゃんと寝てくれるのか(笑)。
小寺 そうそう、だまーって上観てるから(笑)、そのうち寝ちゃうのよ。
川上 いいねえ。しかもずーっと観てたら退屈だしね、たぶん。わははは(笑)。
小寺 そうそうそう。寝かしつけに最高のソリューション、っていう。
川上 それは面白いなあ。カメラだって、あっていいですけどね。さっきの子どもの話ですけど──ま、こういう仕事やってるんで、たぶん人よりも……一年で数千枚撮っちゃうんですけど。で、それを整理してるじゃないですか。すると子どもが来てずーっと見てますからね。
小寺 見たいんだね。
川上 見たいんでしょうねえ。たとえば数百枚撮ったのをずっと流しとけばいいですし。電源的にもちっちゃいですもんね、カメラ。あらー、それは言うてやろ、ニコンさんに。
小寺 (笑)。ああそうそう、それとね、ドラマチック感というかね、演出感が凄いのがよくわかった。暗くするとさ、体のすぐ脇からプロジェクタの光がこう、放射状に出てるのがわかるじゃない?
川上 まわりが暗くて、ぼやーっと。
小寺 なんかイベント感があるのよ、すごく。毎日がイベントみたいな感じがあるのね。
川上 夜寝るのが楽しみな時間になっちゃいますもんね。すごい。それはすごいなあ。
■どこへ行くカメラメーカー
川上 あの……ビジネスの流れみたいな話で最近注目してんのはやっぱり、メーカーと販社が分かれてるケースが多くて。そうすると、日本の販社の肩身がどんどん狭くなってる感じがしますね。
小寺 ふうん。というのは?
川上 やっぱり日本は台数出せないので。中国のマーケットとかだと、10倍ぐらいあるわけですよね。北米も大きいし、EUとかもどんどんやってると。
でも限られたラインでカメラ作って出してると、世界で同じ時期に発売するわけです。中国が「うちは100台売るよ」っていうときに、日本は「10台押さえといてね」って言っても、「いや、あんたのとこは3台にして、7台こっちに持ってきてよ」みたいな戦いがあるみたいで。
小寺 ああー。
川上 何が言いたいかっていうと、肩身が狭いというよりも、「日本のマーケットでこういうものが必要だから作ってくれ」って言うじゃないですか。たぶんその意見がだんだん……
小寺 ああ、通らなく……
川上 なってくる。それでも日本のメーカーだから日本の声には敏感だと思うんですけど、でもそれがワールドワイドでコストを考えていったときに、そこをやるとぼーんと値段が上がっちゃうようなことを選ぶか、っていうと、もう難しくなってくると思うんですよね。
小寺 日本人のニーズを突き詰めていくと、ワールドワイドレベルからすると過剰品質になるじゃないですか。
川上 ほんとですね。
小寺 だけど、それを満たさない限り、日本の市場ではあんまり評価が高くなくなっちゃう。世界では売れてるんだろうけど、日本でのイメージはイマイチ、みたいな感じになっちゃうところが、これから出てくると思うんですよね。最初から国内を見ていないメーカーとか出てきてもおかしくない。
たとえば、iPhoneとかで、けっこうよく撮れるようになっちゃったじゃないですか。
川上 なっちゃった。よく撮れますよ、あれ。
小寺 で、あんなんでいいよねっていう層は、確実にいるわけじゃないですか。しかも、ネットワークに常時つながるから、コミュニケーションツールとして写真が使える。こないだ、CESの時にポラロイドが出してたカメラが、もうOSがAndroidそのものなんですよ。
川上 ほお。
小寺 アプリも自分で入れられる、本当のAndroidマシンなんだけど、デジカメの形してんですよ。「これかー」って気がしましたね(笑)。
川上 僕自身もいろんな各メーカーの、キーマンまで行かないけど中堅の方々と、非公式にはよく意見交換をしてるんですが。共通してみんな言ってるのはそこの部分ですよね。ただ単にiPhoneなりなんなりがコンパクトカメラの市場をとるのかとらないのか、というレベルじゃなくて、それはどの部分がいちばん効いてるのか、と。加工の部分の面白さとか、アプリケーションをしょっちゅう変えられるとか。
メーカーがやるとですね、メーカーが全部アプリケーションまで提供するわけですよ。それでは競争できないわけですよね。AndroidってOSは作るけど、あとはユーザーが勝手に自分の責任でアプリ入れてくれて、加工で遊んでる。もう、コストも競争力も全然違うよねと。スキームが全然違いますと。
で、それをニコンさんがやれないの? やるの? まあニコンさんに限らず、他のメーカーでも、やれないの? やるの? ってのはすごい議論してるんだけれども。
正直日本は、キャリアとの絡みとか、物の供給の問題とか、関係者の問題でできないことを考えると、海外でできるんだったら海外でやる可能性は高いと思うんですよね。それで生き残るのであればやっちゃう。そんなことをはっきり言う知り合いは一人もいませんけど、考えてるのはひしひしと感じるような議論はずいぶん、いろんな人とこの1年、2年、しましたねえ。
■拡大する歪み、その先は
小寺 一方で、中国ではキヤノン EOS 5D Mark IIとかがめっちゃ売れてるでしょ? で、多分機能もほとんど使ってないんだけど、一応買っとく、みたいな富の象徴みたいなところがあるわけじゃない。
そういうところの動きって、明らかに必要があって買ってるわけじゃないので、歪んでるわけじゃないですか。でも、その歪みがカメラ業界全体にに利益をもたらしている。
川上 ええ。
小寺 で、その歪みに応えていってると、将来的にはものすごく大きな形ではじけちゃうんじゃないか、っていう不安がものすごくあるんです。今考えられる、拡大による歪みの形って、どんなことが考えられますか。
川上 中国がすごく売れてるといってもまだまだ……なんて言うんでしょうね。人口的には一部の人しか持ってなくて、憧れのレベルになってる。さっきお話しされてた、歪みの部分が歪みじゃなくなるのは、憧れが憧れじゃなくなった時だと思うんですよ。そういう意味でいうと、まだまだすごーく階層があるので。
小寺 なるほど。まだ先があるんだね。
川上 ものすごくあるから、その人たちの自尊心を満足させられなくなるようなコモディティ化はまだ相当先までない。富の象徴であることは、なぜいいか、じゃないんですよ。持ってるのがいいんだ、理由なくいい、というものが多分ずっと続くと思うんです。
で、それじゃまずいと思う人たちもいっぱいいて。キヤノンなんかはすごく立派だな、と思うのは、そんだけ売れてる中で、ちゃんと地域のキヤノン写真教室みたいなのを相当やってんですよね。日本と同じように──日本の雑誌も撮影だけの雑誌じゃなくて、「レンズを愛でる」みたいな記事もいっぱいあって、それがカッコイイ、みたいな文化を持ってくわけですけど。
中国ではほとんど雑誌とかが自由に出せないので、メーカー側でやってるんですね。だから、日本に比べると、メーカーに情報を取りに行く人の率が高いんですよ。メーカーのWebサイトがすごく充実していくような形。だから必ずしも物を売るだけじゃなくて、キヤノンがそういう風に自分で活動もして、ただ単にステータスとして持ってるだけじゃない部分を一生懸命作ろうとはしてるように見えます。
それに対する他の会社は、そういう風にやってるように見えないので、そこは引っかかりますけど。さっき申し上げたように、まだ持ってない人がすごくいるので、しばらくは……歪みは事実としてあるんですけど……歪みのまま(笑)行くんだろうな……って。
小寺 あー(笑)。
川上 僕らからすると歪みですけど、ある意味僕らも昔、「いい車乗りたい」みたいなね、あったじゃないですか。
小寺 あっ、そうだよね。そうだった。それは歪みじゃなくて、消費者として洗練されてないっていうことなんだよね、きっと。
川上 おっしゃる通りだと。
小寺 洗練されてないままに経済が回る、というのが日本の80年代ぐらいまであって。要はあの状況なんだね。
という意味では、日本だけ、たぶん消費者は先に行きすぎたんですよ。アメリカでさえ、消費者ってそんなに洗練されてなくって、“ブームが起きる”ってこと自体が、消費者として洗練されてない証拠だと僕は思うんですよね。一斉に買う、みたいなのがあるってことは、大半がバカってことじゃないですか(笑)。
川上 はっはっは(笑)。誰かの価値観に依存しちゃうからね。
小寺 そうそうそう。それはやっぱ洗練されてないからだと思うんですよね。ある意味日本は先に行きすぎたところがあるから、いろんな国の遠い将来のモデルではあるかもしれないですけど、今の、ワールドワイドでビジネスするところにとっては、日本の市場を細かく分析することにあまり意味はないのかもしれないですね。
川上 今のおっしゃることは、よりメーカー側が思ってることかもしんないんですよ。売らなきゃいけないのにいちいちうるせえことばかり言いやがって、と。しかもクオリティも高くないと嫌だ、値段も下げろと言うと。そんなところのために一生懸命作れるか、みたいなことを──そんなこと言うとは思いませんけど、作り手としては思うだろうなと。
それよりもねえ、ちょっとデコレーションして、1万円ぐらいの値段にして、3世代前ぐらいのエンジンでも全然いいね、ってドッカン売れたら、「どんどん作れよ」というほうが、まあ普通の考え方だと思うので。そういう意味では日本のマーケットは特殊になっていってるのかな……。
面白いのは──サムスンさんは昔、デジタルカメラを日本でやってたんですけど、撤退したんですよね。でも彼らはずっと日本のことを見てる。ワールドワイドだと今、シェア4位ぐらいなんですかねえ。キヤノン、ニコン、ソニー、次にサムスンぐらいなんですけど。
で、いつかは日本でやりたいと思ってるんですけど──思ってることがアリアリなんですけど、「やるの?」って訊くと「いやあ……」って言うんですよね。だからおっしゃるような意味では、日本って特殊だし、やってもコストかかるなあ、って思ってる。だけどカメラの世界で言うと、日本で当たってるということが、ひとつの世界的な宣伝になると思ってる部分があるみたいなんですよね。
小寺 ああー、なるほどなるほど。「あんなうるせー奴らに認められたんならきっと良いだろう」と、洗練されてない国の消費者が思う、という構図ですね(笑)。“全米が泣いた”みたいなやつだ。
川上 あはは(笑)。まさに。IT系も“Made in Japan”に復帰するのが増えてる、っていうのは──よくそういう話をされますよね。レノボが結局中国で製造するのをやめて、またこっちで作るとか言いだしてたりする。あれもやっぱり、中国のメーカーであるというよりは、日本で作ってるんだ、みたいなことが、世界的には実はいい、という考え方も持つところが増えてる。
小寺 なるほど。今度は“ジャパン・セレクション”がブランドになる可能性があるということかもしれませんね。
「金曜ランチボックス」は、この対談以外にも社会系コラムや製品レビュー、Q&Aコーナー、そしてこれまでブログで書いてきた小ネタなど沢山のコンテンツでお楽しみ頂けるようになっています。よろしければ、下記2箇所の配信先バナーからご購読をお願いします。
□対談:Small Talk
毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。
今月の対談のお相手は、インプレスジャパン刊『デジタルカメラマガジン』の編集長を務める、川上義哉氏にお願いしている。
デジカメ盛衰のあれこれを語りながら、今後のトレンドを紐解く最終回。世界の国の中で、こんなにたくさんカメラを製造しているメーカーがひしめき合っている国はない。国内市場が旺盛だった時代に支えられてここまで来たわけだが、もうそんな時代は過去のものだ。メーカーの統廃合も徐々に進みつつある中で、日本のカメラはどういった戦略で生き残れるのか。
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マーケットから見たデジカメの世界《第4回》
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小寺 カメラにフィルターが乗るっていう流れ、それはある意味、コンパクト一眼、ミラーレス一眼どまりなんですかね? この流れは本格一眼までいくのか。
川上 ここはまだ、業界的には議論はあるんですけど。
中井精也さんという、鉄道写真家で有名な方がいて、彼の書籍をつくったんですよ(著者注:『世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書』)。それはすごく売れたんですけど。なんと、今日9刷とか決まって、びっくりしちゃったんですけど。
小寺 ほお。
川上 すっごく売れてるんです。で、その本はRAWの話……1ページしか載ってないんですよね。やれるんですよ、もちろんプロの方だから。でも編集会議のとき、これを最初の一冊にしたいから、カメラの設定だけ、撮った瞬間そこに出てきたものが見た目と変わる喜びを出そう、っていうんで、カメラ内で設定をさせて、それから撮りましょう、ってやってるんですよね。
それがこんだけ本として売れちゃうと……どっかでやっぱり、一歩踏み出す時が、上の機種でもある。まだまだ、メーカーとしては決めにくい状況ではあると思いますけど。
小寺 そこで気になるポイントがあって。アートフィルターをかけて撮って、最初にみるビューが、カメラの後ろ側の液晶モニタじゃないですか。で、液晶モニタの表示が果たしてそんなに正しいのか、っていうことが気になるんですよ、テレビ屋さんとしては(笑)。
川上 なるほどね。
小寺 テレビ屋さんってほら、マスターモニタ以外では色は作れない世界なので。でもカメラの液晶モニタって、なんか標準規格もないし、機種ごとに発色なりコントラストがかなりが違うので、そんなのでいじっちゃって、フィニッシュがどういうイメージになるのかわかってんのか。僕なんかはそこの不安感がどうしてもあるんだけど、そんなことは杞憂なんですかね?
川上 そこは、フィニッシュとは何か、みたいなことが、さっきの話からつながってくると思うんですけど。ものすごく希薄になってると思う。
小寺 うん。
川上 正直、プリントする、っていうのが撮影枚数に比例して伸びてるかというと、逆だと思うんですよ。すごく減っちゃってる。ま、ここぞ、ってものはあるかもしれないけど。
うちの読者アンケートをとっても、RAW現像、RAWを知っていて、やったことある人って9割近くいるんですけど、じゃあみんながそれをいつもRAW現像してますか、っていうと、してる頻度というのは少ないですよね。たくさん撮って、ここぞというものの一部をRAW現像して、叩いて仕上げはするけど、全部はやってはいない。それでなに何かやるかっていうと、プリントもほとんどしなくて、「『GANREF』のフォトコンテストにアップする」みたいな(笑)。
小寺 ああー。
川上 ……流れだったりする。PCのディスプレイでも見るんでしょうけど、その違いに気づいてるかっていうのもなかなか。ま、環境光も違いますよね。元は外で撮ってるわけだから。もちろんディスプレイのガンマの問題とか、輝度の問題があっても、気にしてない可能性が高くて。逆に言うと、カメラメーカー側がなぜアートフィルターみたいなものをその場で設定できるようにしちゃったかのひとつの理由には、もしかしたらそこがあるかもしれないですよ。どっちにしたっていくらか合ってないんだから、カメラの液晶で満足したらそれでいいじゃん、みたいなね。「それが出力なんだ」と。
小寺 ああ、なるほどね。
川上 ……という割り切りもね、あるのかな、と思ったりはします。
■「アウトプット」という意味
小寺 フィニッシュの絵を大きく見たいというニーズは、どうなんでしょうね。プリントつったってせいぜいL判じゃないすか。ただ多くのデジカメにはHDMI端子がついていて、HD解像度でテレビで見ろよ、ということを促している中で、でっかく見たいというニーズが本当にどこまであるのか、というのが、今のとこよくわかんないんですよね。
動画を撮れば、動画のディスプレイはテレビ以上がないので、テレビ繋ぐのはわかるんだけど、写真をテレビで見るというモチベーションって、カメラメーカーさんが皆さん仰るように、本当にあるのかなー、というのが僕にはよく見えないんですけど。そのへん……
川上 ない、って思います。
小寺 ないか(笑)。ないんだ。
川上 僕もやったんだけど。僕はなんか、かみさんの親にずいぶんお世話になったんで、クリスマスはうちの実家へ、年末年始はあっちの実家みたいな感じで。
そうすると、年末年始におせちを作ったりなんだりして年越しをするときに、僕の仕事は、一年間の子どもの成長をですね、スライドショーにして。でかいテレビにですね、夕飯、年越しのときに流しながら飯を食う、なんてことをここ2年やってるわけですけど。あ、こういうのってあるんだなとは思いました。
イメージだけで言えば、仲間内で、家族4組ぐらいでキャンプに行きました、と。帰ってきたらまた集まりがあるじゃないですか。お父さんたちが撮ってたものをガッチャンコして、子どもたちが遊んでて、お父さんたち酒飲んでる、みたいな。奥さんたちは悪口言ってて。
小寺 (笑)。
川上 そういうシーンで流れてる、ってのはあるだろうと思うんですけど。ま、そういう世界ってのがもう、どんどん死に絶えてくというか……。人は関係性を持ちたがる存在であることは変わらないんだけれども、生々しいそういう集まりとか、家族関係みたいなものがどんどん希薄になってる。結婚しない人も増えてるし、子どもなんかいない人もいっぱいいるし、そもそも近所付き合いしないし、みたいなことが増えてく中では、あんまり大きい画面でみんなで見て共有するようなことを求めるシーンがないんですね。
小寺 うんうん。
川上 で、個人的なものであれば、携帯で見るか、パソコン使って流しながら見てる、っていうんで全然よいので。テレビというのは……意思決定する人たちの世代ではたしかにいいと思うんです。40代、50代、60代の人には。でもこれから30代になってく人、いまの20代、30代の人には、ほとんど効かないんじゃないかなぁ。それはよく小寺さんも仰ってたように、もうテレビからどんどん人が離れていくでしょう、ということとつながるんではないかと思うんですけどね。
小寺 アメリカとかの事情を考えると、アメリカ人って、本物のスライドショー指向というか。写真をポジで撮って、スライドにして、部屋を暗くして、プロジェクタで上映、みたいのって昔から一般家庭で普通にやられてたみたいなんですけど。
川上 そうですね、ええ。
小寺 宗教的な理由もあるのかもしれないですけど、ファミリーが集まってなんかする、みたいなのをすごく大事に思っているところがある。そこの、ファミリーに対しての情熱というかガッツ感みたいのが、どうも日本と違うんじゃないかな、という気がするんですよね。
川上 おっしゃるとおりですね。ま、でもアメリカの話を聞くと、あそこはより格差というか、地域ごとに違うみたいで。今の共和党と民主党の勢力図みたいなもんですけど、民主党系って言うのかな。今の南部の保守的な地盤の人たちは未だにそういうのがあって、そこで生まれ育った人は、都会に行っても、「やっぱりクリスマスは家に帰るでしょ!」みたいなことらしいんですよ。
それに対して、4、5年前にすごく売れた『Sex and the City』みたいなね(著者注:『Sex and the City』のTV版の放映時は1998年から2004年。映画一作目の公開が2008年)。都心で働く女性で、シングルで、という人たちはそういう価値観がなく生きてる可能性が高い。単純には言えないですけど。
小寺 以前さ、ニコンがプロジェクター付きのカメラを出したじゃない(著者注:最初のモデルはCOOLPIX S1000pj、2009年発売)。あれは、うまくいかなかったの? なんか最近あんまり噂にならないってことはうまくいかなかったのかなあ。
川上 こないだ──去年新モデルが出たんです。それが相当良くなって。以前はやっぱり出力が弱くてですね、役に立たねーじゃん、みたいなことがあったみたいです。……まあ、市場作れたほどではないんですが、そういうところもいま、コンパクトカメラが煮詰まってる、というんでしょうね。
小寺 そうなんだ。ビデオカメラの世界では、逆にソニーさんがプロジェクターの機能をほとんどのラインナップに載せてきてですね。いま上位モデルのほとんどがプロジェクターが載ってるんですけど。
川上 え、じゃあ、撮ったらそこでびゃーっと観れる……?
小寺 あのね、寝るときに、家族で川の字になって、天井に打つんだって。
川上 あっ、すごい……!
小寺 それを発見したら、ユーザー間でものすごく広がって。これはいいね! って話になって。
川上 いいですね。
小寺 でね、小さい子とか特に、自分が映ってるのを観るのが大好きなので、寝かしつけに最高なんだって。
川上 あー、ちゃんと寝てくれるのか(笑)。
小寺 そうそう、だまーって上観てるから(笑)、そのうち寝ちゃうのよ。
川上 いいねえ。しかもずーっと観てたら退屈だしね、たぶん。わははは(笑)。
小寺 そうそうそう。寝かしつけに最高のソリューション、っていう。
川上 それは面白いなあ。カメラだって、あっていいですけどね。さっきの子どもの話ですけど──ま、こういう仕事やってるんで、たぶん人よりも……一年で数千枚撮っちゃうんですけど。で、それを整理してるじゃないですか。すると子どもが来てずーっと見てますからね。
小寺 見たいんだね。
川上 見たいんでしょうねえ。たとえば数百枚撮ったのをずっと流しとけばいいですし。電源的にもちっちゃいですもんね、カメラ。あらー、それは言うてやろ、ニコンさんに。
小寺 (笑)。ああそうそう、それとね、ドラマチック感というかね、演出感が凄いのがよくわかった。暗くするとさ、体のすぐ脇からプロジェクタの光がこう、放射状に出てるのがわかるじゃない?
川上 まわりが暗くて、ぼやーっと。
小寺 なんかイベント感があるのよ、すごく。毎日がイベントみたいな感じがあるのね。
川上 夜寝るのが楽しみな時間になっちゃいますもんね。すごい。それはすごいなあ。
■どこへ行くカメラメーカー
川上 あの……ビジネスの流れみたいな話で最近注目してんのはやっぱり、メーカーと販社が分かれてるケースが多くて。そうすると、日本の販社の肩身がどんどん狭くなってる感じがしますね。
小寺 ふうん。というのは?
川上 やっぱり日本は台数出せないので。中国のマーケットとかだと、10倍ぐらいあるわけですよね。北米も大きいし、EUとかもどんどんやってると。
でも限られたラインでカメラ作って出してると、世界で同じ時期に発売するわけです。中国が「うちは100台売るよ」っていうときに、日本は「10台押さえといてね」って言っても、「いや、あんたのとこは3台にして、7台こっちに持ってきてよ」みたいな戦いがあるみたいで。
小寺 ああー。
川上 何が言いたいかっていうと、肩身が狭いというよりも、「日本のマーケットでこういうものが必要だから作ってくれ」って言うじゃないですか。たぶんその意見がだんだん……
小寺 ああ、通らなく……
川上 なってくる。それでも日本のメーカーだから日本の声には敏感だと思うんですけど、でもそれがワールドワイドでコストを考えていったときに、そこをやるとぼーんと値段が上がっちゃうようなことを選ぶか、っていうと、もう難しくなってくると思うんですよね。
小寺 日本人のニーズを突き詰めていくと、ワールドワイドレベルからすると過剰品質になるじゃないですか。
川上 ほんとですね。
小寺 だけど、それを満たさない限り、日本の市場ではあんまり評価が高くなくなっちゃう。世界では売れてるんだろうけど、日本でのイメージはイマイチ、みたいな感じになっちゃうところが、これから出てくると思うんですよね。最初から国内を見ていないメーカーとか出てきてもおかしくない。
たとえば、iPhoneとかで、けっこうよく撮れるようになっちゃったじゃないですか。
川上 なっちゃった。よく撮れますよ、あれ。
小寺 で、あんなんでいいよねっていう層は、確実にいるわけじゃないですか。しかも、ネットワークに常時つながるから、コミュニケーションツールとして写真が使える。こないだ、CESの時にポラロイドが出してたカメラが、もうOSがAndroidそのものなんですよ。
川上 ほお。
小寺 アプリも自分で入れられる、本当のAndroidマシンなんだけど、デジカメの形してんですよ。「これかー」って気がしましたね(笑)。
川上 僕自身もいろんな各メーカーの、キーマンまで行かないけど中堅の方々と、非公式にはよく意見交換をしてるんですが。共通してみんな言ってるのはそこの部分ですよね。ただ単にiPhoneなりなんなりがコンパクトカメラの市場をとるのかとらないのか、というレベルじゃなくて、それはどの部分がいちばん効いてるのか、と。加工の部分の面白さとか、アプリケーションをしょっちゅう変えられるとか。
メーカーがやるとですね、メーカーが全部アプリケーションまで提供するわけですよ。それでは競争できないわけですよね。AndroidってOSは作るけど、あとはユーザーが勝手に自分の責任でアプリ入れてくれて、加工で遊んでる。もう、コストも競争力も全然違うよねと。スキームが全然違いますと。
で、それをニコンさんがやれないの? やるの? まあニコンさんに限らず、他のメーカーでも、やれないの? やるの? ってのはすごい議論してるんだけれども。
正直日本は、キャリアとの絡みとか、物の供給の問題とか、関係者の問題でできないことを考えると、海外でできるんだったら海外でやる可能性は高いと思うんですよね。それで生き残るのであればやっちゃう。そんなことをはっきり言う知り合いは一人もいませんけど、考えてるのはひしひしと感じるような議論はずいぶん、いろんな人とこの1年、2年、しましたねえ。
■拡大する歪み、その先は
小寺 一方で、中国ではキヤノン EOS 5D Mark IIとかがめっちゃ売れてるでしょ? で、多分機能もほとんど使ってないんだけど、一応買っとく、みたいな富の象徴みたいなところがあるわけじゃない。
そういうところの動きって、明らかに必要があって買ってるわけじゃないので、歪んでるわけじゃないですか。でも、その歪みがカメラ業界全体にに利益をもたらしている。
川上 ええ。
小寺 で、その歪みに応えていってると、将来的にはものすごく大きな形ではじけちゃうんじゃないか、っていう不安がものすごくあるんです。今考えられる、拡大による歪みの形って、どんなことが考えられますか。
川上 中国がすごく売れてるといってもまだまだ……なんて言うんでしょうね。人口的には一部の人しか持ってなくて、憧れのレベルになってる。さっきお話しされてた、歪みの部分が歪みじゃなくなるのは、憧れが憧れじゃなくなった時だと思うんですよ。そういう意味でいうと、まだまだすごーく階層があるので。
小寺 なるほど。まだ先があるんだね。
川上 ものすごくあるから、その人たちの自尊心を満足させられなくなるようなコモディティ化はまだ相当先までない。富の象徴であることは、なぜいいか、じゃないんですよ。持ってるのがいいんだ、理由なくいい、というものが多分ずっと続くと思うんです。
で、それじゃまずいと思う人たちもいっぱいいて。キヤノンなんかはすごく立派だな、と思うのは、そんだけ売れてる中で、ちゃんと地域のキヤノン写真教室みたいなのを相当やってんですよね。日本と同じように──日本の雑誌も撮影だけの雑誌じゃなくて、「レンズを愛でる」みたいな記事もいっぱいあって、それがカッコイイ、みたいな文化を持ってくわけですけど。
中国ではほとんど雑誌とかが自由に出せないので、メーカー側でやってるんですね。だから、日本に比べると、メーカーに情報を取りに行く人の率が高いんですよ。メーカーのWebサイトがすごく充実していくような形。だから必ずしも物を売るだけじゃなくて、キヤノンがそういう風に自分で活動もして、ただ単にステータスとして持ってるだけじゃない部分を一生懸命作ろうとはしてるように見えます。
それに対する他の会社は、そういう風にやってるように見えないので、そこは引っかかりますけど。さっき申し上げたように、まだ持ってない人がすごくいるので、しばらくは……歪みは事実としてあるんですけど……歪みのまま(笑)行くんだろうな……って。
小寺 あー(笑)。
川上 僕らからすると歪みですけど、ある意味僕らも昔、「いい車乗りたい」みたいなね、あったじゃないですか。
小寺 あっ、そうだよね。そうだった。それは歪みじゃなくて、消費者として洗練されてないっていうことなんだよね、きっと。
川上 おっしゃる通りだと。
小寺 洗練されてないままに経済が回る、というのが日本の80年代ぐらいまであって。要はあの状況なんだね。
という意味では、日本だけ、たぶん消費者は先に行きすぎたんですよ。アメリカでさえ、消費者ってそんなに洗練されてなくって、“ブームが起きる”ってこと自体が、消費者として洗練されてない証拠だと僕は思うんですよね。一斉に買う、みたいなのがあるってことは、大半がバカってことじゃないですか(笑)。
川上 はっはっは(笑)。誰かの価値観に依存しちゃうからね。
小寺 そうそうそう。それはやっぱ洗練されてないからだと思うんですよね。ある意味日本は先に行きすぎたところがあるから、いろんな国の遠い将来のモデルではあるかもしれないですけど、今の、ワールドワイドでビジネスするところにとっては、日本の市場を細かく分析することにあまり意味はないのかもしれないですね。
川上 今のおっしゃることは、よりメーカー側が思ってることかもしんないんですよ。売らなきゃいけないのにいちいちうるせえことばかり言いやがって、と。しかもクオリティも高くないと嫌だ、値段も下げろと言うと。そんなところのために一生懸命作れるか、みたいなことを──そんなこと言うとは思いませんけど、作り手としては思うだろうなと。
それよりもねえ、ちょっとデコレーションして、1万円ぐらいの値段にして、3世代前ぐらいのエンジンでも全然いいね、ってドッカン売れたら、「どんどん作れよ」というほうが、まあ普通の考え方だと思うので。そういう意味では日本のマーケットは特殊になっていってるのかな……。
面白いのは──サムスンさんは昔、デジタルカメラを日本でやってたんですけど、撤退したんですよね。でも彼らはずっと日本のことを見てる。ワールドワイドだと今、シェア4位ぐらいなんですかねえ。キヤノン、ニコン、ソニー、次にサムスンぐらいなんですけど。
で、いつかは日本でやりたいと思ってるんですけど──思ってることがアリアリなんですけど、「やるの?」って訊くと「いやあ……」って言うんですよね。だからおっしゃるような意味では、日本って特殊だし、やってもコストかかるなあ、って思ってる。だけどカメラの世界で言うと、日本で当たってるということが、ひとつの世界的な宣伝になると思ってる部分があるみたいなんですよね。
小寺 ああー、なるほどなるほど。「あんなうるせー奴らに認められたんならきっと良いだろう」と、洗練されてない国の消費者が思う、という構図ですね(笑)。“全米が泣いた”みたいなやつだ。
川上 あはは(笑)。まさに。IT系も“Made in Japan”に復帰するのが増えてる、っていうのは──よくそういう話をされますよね。レノボが結局中国で製造するのをやめて、またこっちで作るとか言いだしてたりする。あれもやっぱり、中国のメーカーであるというよりは、日本で作ってるんだ、みたいなことが、世界的には実はいい、という考え方も持つところが増えてる。
小寺 なるほど。今度は“ジャパン・セレクション”がブランドになる可能性があるということかもしれませんね。

