小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

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□対談:Small Talk

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

今月お相手願っているJag 山本氏は、(株)イーフロンティアで、プロダクトマーケティング、マネージメントグループのリーダーとして、3DCGソフトをはじめとするクリエイティブツールの販売を指揮している人物だ。過去Shadeの開発会社にいたこともあって、CGのクリエイティブシーンにも詳しい。

僕もモノカキになるまではCG屋として仕事していたこともあり、久々のCG談義となった。

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3DCGブームはどこへ行った? 《第2回》
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小寺 今、3DCGを教える学校ってどんな状況になってますか。

山本 やっぱり、建築パース系とかが多いんですよ。

小寺 ああ、そうなんだ。

山本 じゃなければゲームですね。CGといったら、ゲームデザイン。映像系もあるんですけども、映像コンテンツのシェアというものが、残念ながら日本はまだまだ……。アニメはあるとしても、あんまりないですよね。

小寺 一時期、テレビ局にはすごい入ったんですけどね。外注の人もものすごく沢山いて。僕なんかその世界で一時期食ってた時期があるんですよ。

ちょうど、ソフトイマージがマイクロソフトに買われてWindows版が出た頃に値段がガバッと下がって、動くマシンもWindowsでいい、ってことになって。それまではシリコングラフィックスのワークステーションじゃなきゃ動きませんでしたからね。それでハウスにいたCGの人間がみんな辞めてフリーランスになって。自分のレギュラーの仕事を持って、独立していくんですよ。で、自宅とか共同でオフィス借りて、そこでテレビの情報番組とかのCGを作って、それで食ってるというような時期がありましたね。あれはたぶん、98年ぐらいかな。

山本 たぶんソフトイマージの頃ですからそうですよね、きっと。……いやあ、僕、どっかのポジティブなこと言わなきゃってずっと思いながらしゃべってて、そこが困ってんですけど。

小寺 (笑)。ポジティブなことあんまりないの?(笑)

山本 いや、なくはないんですよ! あのー…… ……いやあ。

小寺 ないんだ?(笑)。

山本 いやいや! 無理矢理言う、という意味じゃなく、あるんです。たぶん一瞬でひっくり返るようなキラー表現というか、「こんなスタンスがあったんだ」、あるいは「原点回帰していいんだ」ということが──やっぱりコンテンツですから、あるきっかけで急に来る。そういう中で言えば、すごく近いところまで来てるんですね。ただ、これが難しくて。コンテンツ側から技術が生まれるのか、技術側からコンテンツが生まれるのか。

DSC00102我々ツール屋さんのほうで言うと、ツール側からくる表現というものには、もうそろそろ、突拍子もないものというのはあまり出てこないんですね。それまではパーティクルですとか、モーフィング。例えばモーフなんていうのは、実写にない表現のひとつでしたから。あとは、生体シミュレーション。うちで扱ってるVueの最新版とかだと、恐ろしいのは、木の種類によって幹の硬さとかまでシミュレーションされてるんですね。

小寺 ええー(笑)。

山本 それこそ映画、『猿の惑星』みたいなやつで、猿がこうやって、ひとつずつ手をかけて、雲梯みたいにしていくじゃないですか。あれは、リンゴが生ってるところはリンゴの枝の硬さになってたり。あと、折れたりもするじゃないですか。松の木が折れるのと、樫の木が折れるのって、折れ方が違うわけですよ。そういう設定が入ってるんですね。それぐらいまで来てる。
あとはもう作り手さんが、そこの機能の裏技とかに気づいていただいて、ってところまでもう来てる。ひとつの機能だけで1アーティストさんが4年ぐらい食えるんじゃないかと。ただそこになかなか踏み込んでもらえるところまで……。進化が早すぎて、何をやったらすごいのか、何やったら面白いのか、というところとの紐づけが今はできてない感じですね。

小寺 うーん、なるほど。

山本 今はどっちかっていうと、開発者側発信のフェーズが多く感じますね。当然、映像の作り手のリクエストでできてる機能もたくさんあるんですけど、やっぱりまだまだ踏み込めてないないな、って気がしますね。

■LightWave的表現の行方

小寺 LightWaveの話を聞きたいんですけど。LightWaveのユーザーって今── どういう人が使ってんのかなって。

山本 いや、LightWaveはやっぱり映像系が多いですよね。

小寺 ああ、やっぱそこは強いんだね。

山本 やっぱりビデオトースター時代から、アミーガで来て、伝説のソフト……ま、ちょっと空間も空きましたけど。コストパフォーマンスではずっとリードしてきてるソフトじゃないですか。やっぱり、途中でMayaがでてこようとエイリアスが出てこようと、この値段でこれができるの?! ってのはずっとLightWaveがやってきたところなので。今度、LightWaveばかりを使った映画が公開されるんですよ。

小寺 へええ。そんなの久しぶりだな…。昔『バビロン5』とか、『シークエスト』とか、ああいうのぐらいしかなかった。

山本 『アイアン・スカイ』っていうんですけど。ま、いろいろとつっこみどころがあってですね……(参考:http://gacchi.jp/movies/iron-sky/ )あ、日本語のページもできてますね。

小寺 これは……(苦笑)。「ナチス軍、月面より宣戦布告!」。どうなんだろうなこれは(笑)。

山本 ちょっと、これ……違うモードのインタビューがあったらまたぜひいろいろと話したいんですけども。

小寺 どんなモードなんだろ(笑)。

山本 CGの好きな人って、戦争ものが好きな人が多いんですよ。やたら。

小寺 あー、そうね。バトルものですよね。ま、武器と宇宙と言ったらCGの独壇場だからね。

山本 まず、ドイツはあれだけアニメが来てるのに『ガンダム』来ませんからねえ。これ、何がすごいかというと、製作自体がほとんど十何人で作ってるんですね。CGで全部映画作っちゃったっていう。

小寺 実写ないんだ?

山本 ありますよ。でも製作は本当にすごい少ない人数で。このぐらいのものがLightWave一本でできちゃうよ、っていうのが、LightWaveの代表的な使われ方ですね。あと……『アバター』のCG技術監督の、ロブ・パワーズって人間がいるんですね。この人が今、Newtek、LightWaveの役員で入って。

小寺 へぇ。

山本 コンテンツ側、映像側の人間をもう一回入れ直して、舵取りをするような状態に今なってます。

小寺 実写と組み合わせるなら、普通はスーパーリアルなCGを使うんだけど、逆に今の『アイアン・スカイ』みたいなやつって、あれもうホント、画がLightWaveくさいじゃないですか(笑)。

山本 はいはい。

小寺 LightWaveでも今ならもうちょっとうまくできるだろ、って思うんですが、あれはあえてそこに行ってないんですかね。あんなんになっちゃうのか、狙ってああなのか。

山本 えっと、狙ってだと思いますね。

小寺 狙ってなんだ。

山本 多分スーパーリアリズムに行こうと思ったら行けるんですけど、多分、LightWaveのツールとして出る味が好きなんだと思うんですよね。

小寺 ああ、なるほどね。

山本 それが折り返し点のひとつになってんのかな、とは思うんです。車のクラシックカーじゃないですけど、やっぱり技術的な限界があって作ったもののほうがデザイン的に味がある、みたいなところに戻る、ひとつのポイントだとは思うんですよね。

小寺 なるほどねえ。

山本 どっちかと言うとこれは、90年代のCGを綺麗にレンダリングしてるだけなんで、と言うと怒られると思うんですけど。

小寺 ははは(笑)。

山本 まだ様式美的に、90年代、2000年代に作られたものが、スーパーリアリズムを求めすぎてただけにしょぼかったり、味だったりというところを振り返るまでの余裕に来てないんですよね。余裕に入ると、テクノと同じで、ちゃちさや味というものが見直されてきて。

8ビット、16ビットも、かっこいいって言い始めたのって、MIDIの楽器だらけになって、CVゲートの楽器がなくなった頃にやっと。映像も、ファミコンがスーファミをこえてサターンぐらいになって、「なんかやっぱり8ビットかわいいよね」みたいになったじゃないですか。8ビットの最中で8ビットやると……

小寺 当たり前じゃんって(笑)。それしかないんだから。

山本 そういう意味で言うと、今もうスーパーリアルに向かって一直線に来ちゃったんで、なんか、8ビット、16ビットは振り返れても、64ビットでちょっとレンダリングが遅かったものとか、その時代にあったモデリングの仕方とかはまだ…。

小寺 一周回って来てないと。そういう意味では90年代末の3DCGの何が凄かったかというと、やっぱアニメーションができたことが凄かったんですよ。それまでは1枚ずつレンダリングしてVTRにコマ撮りだったところが、メモリーに入れてポンだしできるようになった。そこがやっぱりLightWaveの原点というか、「CGが映像になる」というところが画期的だった。

ところが今はもう、動くほうのCGというのは実写の中に埋まっていっちゃって、それを自分で作ろう、という気持ちにはあんまりみんなならなくて。どっちかと言うともっとデザインっぽい、静止画でいいのでちょっとデザインっぽい感じで、“絵筆”としてCGを使いたい、というふうになってきてんのかな、という気がします。

山本 そうですね……いや、なって「いくはず」です。

一同 (笑)。

小寺 これからか。

山本 こういうのって、あっという間に変わるので。ただ今まだもぞもぞしてるのは、主流はまだそこではないんでしょう。ただ、ツール好きの人たちはもう、そういう気持ちに移ってるんじゃないかなと。そういう層と3Dのツールがまだ出会ってないですよね。

あともう一つは、YouTubeを見ても、ニコ動を見ても、オリジナル作品がすごく少ないじゃないですか。基本的に、テレビをそのままアップしちゃってる人とかが多い。違うのは唯一、ミクミク系のものだけど、それで面白いのはやっぱりMadなわけですよね。

そう考えると、今はクロマキーも簡単ですし、別に完全に真っ青、真緑じゃなくても、今のパソコンだったら抜けますから。友達のバンドのビデオをクロマキー引いてやって、後ろをShadeやLightWaveで作るとかは、すごい簡単なんですけども、今YouTubeとか見ても、アマチュアバンド系でCG練り込んで入れてるのはまだまだ少ないですね。

小寺 ないですねえ。今はやっぱね、撮影が面白いから、みんなそこに行っちゃってるところはありますね。

山本 そうですね。これも、もうちょっとしたら変わってくるだろうなと。確信的に思っているのは、iPadとかのカメラも解像度がめちゃめちゃ高くなってるじゃないすか。そうすると、ジャイロとか位置情報が動画に入れられるので、クロマキーで撮ったものの位置情報を取っとく。

それこそお腹にiPhoneを巻いといて、歌わせといて、撮るほうにBluetoothで位置情報を取りながらやるだけで、簡単なハリウッドスタジオができちゃうわけじゃないですか。それをShadeに食わせれば、カメラに一緒にグラフィックがついてきますから。今はまだソフト側がちゃんとなってないので、タブレット端末についてるカメラとの組み合わせる。あとソフト側にもジャイロがついてくる傾向もあるので。

それによって、合成がすごい勢いで来るんだろうなと。なんとなくやっぱり、バンドやってる人とかがビデオを作ってるのを見て、その話をするとすぐ「したい!」と。でもShade覚えるのって何ヶ月かかるんだろ…、みたいなことを言うんで、触ってもらうと「あ、できそうだね」みたいな。

僕自身も何年もCGから離れてたので、久々にツール界に来て、「5年ぐらいでこんなに進化しちゃうんだ!」と思ってるところです。



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