小寺メルマガ「金曜ランチボックス」の中の対談部分を無償公開しています。毎週金曜日発行のメルマガから抜粋して、翌週の火曜日ぐらいに公開していく予定です。

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□対談:Small Talk

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

今月お相手願っているJag 山本氏は、(株)イーフロンティアで、プロダクトマーケティング、マネージメントグループを指揮している人物だ。過去Shadeの開発会社にいたこともあって、CGのクリエイティブシーンにも詳しい。

僕ら90年代の3DCGブームを知っているオジサンらにとって、CGというのは自分で作るものだった。だが今や、すでにモデルデータはソフト中にあって、それで何をするか、何をさせるかを指示するだけという時代になっている。ブームから15年ぐらいを経過して、今最先端のCGソフトはバカみたいに低価格で、バカみたいに簡単にものすごいことができるようになった。

ただ最大の問題は、そうなっている事実を誰も知らない、ということである。

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3DCGブームはどこへ行った? 《第3回》
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小寺 僕も今は物書きになってるんですけど、もともとCG屋だったので。なんかね、モノの仕組みの図版とか作るときに、「これ、LightWaveで作ったら簡単じゃん」って時があるわけですよ(笑)。「これパワポで作るのか面倒くせ…」みたいなところがあってですね。

山本 わかりますわかります。や、そのへんも……。僕もびっくりしたのは、CrazyTalk Animator(クレイジートークアニメーター)というソフトがあってですね。これはもともと口パクソフトでして、人間の写真に目だとかのパーツの位置情報を入れると、しゃべりに合わせて動く……というのが、CrazyTalkというソフトだったんですけど、これがAnimatorのとこまで進化したんですね。

・CrazyTalk Animator Video Gallery
http://www.reallusion.com/crazytalk/animator/animator_videogallery.aspx

まず写真を撮りますよね。既にこの時点でもう顔だけじゃないですよね。

小寺 全身撮るのか。

山本 全身撮れば、自動でボーンが入っちゃうんですよ。顔の口パクをやってたものが、もう身体まで行っちゃってて。ここまで来たら、別にちょっとしたミュージックビデオぐらいなら、別にモデリングの知識とかある必要はない。

小寺 自分で写真撮ればいいのか。

山本 で、これ、口パクも、リップシンク機能がついてるんですね。だから、自分で作った曲で、これに乗っけて、後ろの背景作って……。ひとつビデオが、ほとんどCGとかグラフィックの知識なくてもできちゃうと。で、これ2.5Dで、横から見るとレイヤーになってるんですね。

小寺 ああー。

山本 なので、隠れたところから出てくるとかも、2.5Dならできると。このビデオ、全部CrazyTalk Animatorで作ってるんです。ま、動画の導入部分は違いますけど。

これは10年前に、僕が日本で最初から2番目ぐらいに扱ったことがあって、紆余曲折あってまたイーフロンティアで再開することになったんですけど、「え、いつの間にこんなに進化したの?」みたいな(笑)。

小寺 (笑)。これ、あれだよな。ちょっとした教育番組とかこれでオッケーだよね。

山本 これ、10万しないソフトなんですよ。うちではいくらだったかな……商品を扱いすぎてて、値段が……。

小寺 値段が出てこないのね(笑)

山本 (自社サイトで値段を調べつつ)Proで14,800円ですね。

小寺 安っ!

山本 びっくりしちゃうでしょ!? これ、別に7万ぐらいしてもいいんじゃないかとかね。で、CGやってる人ならこの値段でこの機能すげえってのがわかるんですけど、普通の人には伝わらない。

小寺 伝わらないんだ。

山本 なぜかと言うと、さっきのビデオとか──どこまでこのソフトで作ってるか、わかんないんですよ。凄すぎて。

小寺 ああー。

山本 逃げちゃうんですよ。店頭デモとかやると、凄い勢いで、「え……?」って。でもヨドバシとかだとバックが白いところがあるんで、ちょっと黄色いシャツとか着て、抜きやすい恰好だけしとくと、店頭で写真撮って、今のがすぐ出来ちゃうんで。「えっ、ええ……」みたいな。

小寺 そうだよね。知るきっかけがあれば、みんなやりたいと思うんだろうけど、なんか、考えることがありすぎるんでしょうね。多分ね。そんな簡単なわけない、みたいな。

山本 そうですね。これなんかは、実際、友達のバンドとかがこれでPV作り始めたりしたんですけど、ミュージシャンなのに、Logic(老舗のシーケンスソフト)のほうが難しいと。

小寺 ははは(笑)。まあ、そりゃそうかもしんないな。

山本 昔、こんなことやろうとしたら、ちゃんと円とか球とかからちょっとずつ作って、ねえ。

小寺 少なくとも、ボーン(CGにおける「骨」のこと。この骨ツールを動かすことで形状が変形する)を入れるのも大変でしたよねえ。人体の骨格の構造とかさ、ツリー構造が理解できてないと、ボーンをただ入れりゃいいってもんじゃないから。しわになっちゃってポリゴンが割れたり、変なとこで折れたりして。

山本 これはパーツ分けもしないでぴゅーって出来ちゃうんで。本当に、1日、2日でなんか面白いビデオ作ろうと思ったら、こういうものもあるわけですよ。……凄すぎて、伝わってない、というのがけっこう残念というか、もっとやれるとこなんですけども。

■価格破壊を起こした3GCG

小寺 なんかよくお店のメニューとかで、いかにもこれパワポで作ったろ、みたいなのがあって。すっごいオシャレな店なのに本日のランチがだっさい3Dフォントだったりして脱力しちゃうんだけど。

ああいうのってさ、知らないだけなんだよね。これパワポのほうが高いじゃないですか、どう考えても。あんなんで作るより、1万ちょいで買えるCGソフトとかのほうがよっぽどいいのに。

山本 Shadeでキュッてやってもらうだけで、全然違いますよ。iCloneというものなんかは、アニメーションのPoserみたいな形で、人体モデルがあって、動きのバリエーション、アニメーションのテンプレートがいっぱい入ってるので、「こける」とかみたいなのもすぐできちゃう。

・iClone5 Video Gallery
http://www.reallusion.com/iclone/iclone_videogallery.aspx

小寺 あー、そうなんだろうなあ。

山本 たとえば絵コンテなんかもこれでできちゃうんですよ。

小寺 ああー、いいかもしんないね。そうだよね、動きができるしね。

山本 そうなんですよ。岩井俊二さんがあのコンテ描かなくて済む、っていう。

小寺 そういう使い方もあるよねえ、たしかに(笑)

山本 人体が揃っちゃってるんで、モデリングしなくていい。動きのパターンだけで1000近くあるので。

小寺 へえー。たいてい何とかなるわけだ。

山本 そうですね。これもまた、2万円ぐらいなんですよ。

小寺 安!(笑)。なんでそんなに安くなっちゃったんだろ。何が起こったんでしょうね。

山本 値付け感も……僕、言えることと言えないことがあるんだけど(苦笑)。3Dは本当に安くなってるんですよ。

小寺 うん。

山本 逆に、写真レタッチ製品がなんであんなに高いの? って思うぐらい──って言っちゃうとまたいろいろ問題があるんですけども。

小寺 今のは問題発言(笑)。

山本 ま、まあ、まあ……大丈夫です。……だから、清水の舞台から飛び降りたつもりで買っていただいても1万いくらだし、さらに体験版もある。

■飛躍的に進化した3DCGの今

山本 小寺さんも、僕もですけど、多分5年前と今でも物凄い変わってるぐらい
ですから、テライユキの時代からもう10年近く経ってる。あの時に挫折したり、難しかったよね、しかもあんな高かったのに、みたいに思ってた人たちの、“悪い印象”だけが残ってる気もするんですよね。

小寺 あーそれはあるかも。あの時は、相当たくさんの人がチャレンジしたんだけど、結局仕事になんないってところもあり、マスターできないってところもあり。あと昔は、作ったけどどこで発表するんだよ、っていう。人に見てもらうチャンスがなかったわけですよね。

山本 そうですねえ。

小寺 まだパソコン通信時代だもんね、あのとき。

山本 今はもう……ねえ。こうやってウェブに出せますから。伸びしろ的に言うと、このCrazy TalkとかiCloneの、モデリングしないCGソフトというのはひとつ面白いかなと思ってるんですよね。PhotoshopとIllustratorだと、やっぱりPhotoshopのほうが入りやすいじゃないですか。

小寺 もとの写真が土台としてあるからね。

山本 そう考えると、LightWaveもShadeも、ゼロから作んなきゃいけない。そのへんを解決するものとして、こういったものが出てきてるというのが今。こんなのが2万円ぐらいで買える時代が来る……来てるって思ってない人が、すごいいると思うんですよね。

小寺 市場はあるよねぇ。だってほら、昔はモデリングできない人が、いわゆる景観シミュレータみたいなやつをいじってて、あれも相当売れましたよね。

山本 そうですね。Vueとか、Bryceとか。Vueも今はもう、うちの主力製品のひとつですけども。たとえば、絵を描いた後ろの背景とか、年賀状ひとつとっても、海に行ってなくても海っぽくするとか、いくらでもできちゃうんで。Vueのビデオなんか見ると、今すごいです。Vueでできるものも、もうなんか恐ろしくなりすぎて。映画で使われてる雲なんかはもう大体、かなりVueですね。

・Vue 7 Video Presentation
http://www.youtube.com/watch?v=C8mLPEsUYiM

小寺 ……これ全部CGなの?

山本 全部CGです。

小寺 はっはっは(笑)。

山本 もうやんなっちゃう。

小寺 やんなっちゃうね。なんでもアリじゃん、もう。これは要するに、選んでレンダリングするだけなんでしょう?

山本 そうですね。だからもう……MYSTみたいなのをすげーすげー言ってた時代が、なんだかよくわからない。あれはなんだったんだろう。

小寺 なんだったんだろうね、あの大苦労は。

山本 (笑)。

小寺 (3分20秒ぐらいのシーンを見ながら)えー、こういう物理演算とかもできちゃうの、これ?

山本 何かオブジェクトがやってきたらこうなるとか、みんなついちゃってるんで。

小寺 すげえなあ。

山本 本当に、今見るとなんか……吐き気がするレベルなんですよ。

小寺 ははは(笑)。そうだね。昔はさ、景観シミュレータとかで山とか作ってみたんだけど、なんかごま塩みたいな木がしょぼしょぼ生えてるだけで(笑)、これ山なのかよ、っていう感じだった。

山本 音楽ソフトがここ4、5年で全部バーチャルシンセ化して、プロも本当のシンセを捨て始めましたけど。初音ミクが音声合成を歌い始めて、もうSFの世界だったものができちゃったじゃないですか。

一方CGってレンダリングとかがあるから、まだそこまで来てないんじゃないかな、と思ってたら、グラフィックボードが速くなってるわけですよね。CPU以上に。

小寺 ああー、うんうん。

山本 なので、ずっとCPU、CPUってみんな思ってたんで、GPUのほうが根底を支え始めた瞬間に……。まあそりゃ、PS3が3万円で、あんなことできるんだから、できるよね、っていう(笑)。

小寺 ま、できるよね(笑)。

山本 意外とそこにつながってなかった、という。

小寺 なるほどね。解像度で欲張らなければ、リアルタイムレンダリングでどんどんいくんだろうな、こういうの。


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