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#038 Sample

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□対談:Small Talk

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

今月の対談は、首都大学東京の日野キャンパスにある渡邊 英徳准教授の研究室にお邪魔して、震災に関連するプロジェクトのお話しを伺っている。

渡邊先生の研修室は、先の東日本大震災の折、ホンダ、トヨタの通常実績マップと、避難所の位置情報を重ねて見られるようにしたものをGoogle Earth上で公開するというプロジェクトをいち早く立ち上げたことで、世に知られるようになった。

現在そのマップは、すでに役目を終えたとして、「東日本大震災アーカイブ」というサイトになっている。

・東日本大震災アーカイブ
http://shinsai.mapping.jp/

今回は、同研究室がリリースした学生主導の別プロジェクト、「計画停電MAP」について実際に作成を担当したに参加している、首都大学東京大学院 システムデザイン研究科 二年の北原 和也さんにお話を伺う。

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震災が切り開いた、データマッシュアップの可能性《第3回》
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小寺 「計画停電MAP」も、当時はずいぶん多くの人に利用されたと思います。そもそもなんでこれを作ろうと思ったのか、そういうあたりからお話しを伺えればと。

北原 僕は、地震が起きたときは家にいたんです。すごく揺れたので、一人で家にいるのも怖いなと思って、学校に避難みたいな形でここに来て何日かいたんですけど。

小寺 ご自宅は近くなんですか。

北原 八王子です。

小寺 八王子だと、電車で来るってことですか。

北原 ええと、原付で。

小寺 なるほど。日野キャンパスまではびゃーっとすぐ来れる。

北原 そうですね。で、13日の夜に、計画停電が実施されるよ、というリストが公開された。当時は東北大の学生たちが、自分たちで安否確認のサイトみたいのを自主的に作ってて、それを見た時に、あ、僕たちにも自分たちでなんかできることがあるんじゃないかな、というのを感じたんです。

DSC01880僕と先輩で、何か役立てることしたいですよねと話してたら、ちょうどその時に計画停電の実施が発表されて。その時の資料が、本当にただテキストでばーって書いてあるだけで、僕たちが住んでるところも──というか、ここですね。それも地域に含まれてました。

でも、いつ停電するか全然これじゃわかんないなと。自分たちでもそう思ったので、これは困ってる人はいっぱいいるなと思って。それで、今までこの研究室でやってきた、位置情報系のコンテンツとかの経験を活かして、わかりやすく伝えられないかということで開発を始めました。

一番最初に作ったのが、本当にもう手作業で。Google Mapのマイマップに、「八王子市新町」とか、住所を突っ込んで、グループ分けも全部手動で一個一個行っていきました。で、13日の深夜ぐらいに作業を開始して、朝の……3時とか4時とかですかね。八王子市内と、東京都23区内を網羅したうえで、「こういったものを作っています」ってのを公開したところ、何件かコメントをいただきました。

・「計画停電MAP」初期バージョン
http://teiden.sou-sou.net/index2.html

応援して下さる方とかもたくさんいたんですけれど、このとき、「何かしたい」という気持ちの人が日本中に多分たくさんいた。その時にいちばん刺さったというか……感動したのが、「腕力では協力できないのでノウハウで協力させてください」という申し出で(笑)。

小寺 いいね(笑)。いいじゃない。

北原 僕らはその時、マイマップ使って、全部手動で一個一個打ってたんですけど、そうじゃなく、データベース使ってもっと自動化したら効率よく地図表示できるんじゃない? ということで、そのノウハウというのをコメント欄で教えていただきました。

小寺 で、その方法は役に立ったと。

北原 そうですね。それを一回僕のほうでちゃんと動くかやってみて、いけそうだったので……。その地図で作り直したのがこちらになってます。全部のデータをデータベースに突っ込んで、それからマップしてます。

・計画停電MAP
http://teiden.sou-sou.net/

小寺 網羅範囲が全然違いますね。

北原 そうですね。旧バージョンだと5、6時間かかって、八王子と23区内だけだったんですけど、こっちの場合は、データの処理──最初、東京電力が発表してる書類がコピー不可になってたりとか、扱いにくい状態だったんで、それの処理とかにけっこう手間取ったんですけど、そうですね……前のやつを作る何分の一の時間で全エリアが網羅できるまでになってます。

小寺 なるほど。

北原 これがかなりの人に見ていただきまして。一日で、20万とか30万とかのアクセスがありました。

■「社会が教えてくれる」という仕組み

小寺 これ、ベテランのエンジニアがもし作るとしたら、まず最初に方法論を探すところからいくので、わりと……最初からある程度のものはできるんでしょう。ただ学生が手作業でまずやり始めてパッといいタイミングで公開したから、情報、方法論が集まってくるというところもあるわけですよ。

そういう意味では、とりあえず作って公開してみる、というところまで含めて、またこれもソーシャル的なのかもしれないですね。いろんな人が情報をくれて、お互い成長できるというサイクルができるという点では、とりあえず動いてみるということは重要(笑)。

渡邊 そうですね(笑)。

小寺 特に学生にとっては(笑)。

DSC01891渡邊 学生たちだから、というのもあるし、応援してくれるんですよね。さっきみたいに、技術を持ってる方が、「君たち、頑張ってくれ! おれの技術は教えるから」みたいな感じで助けてくれる。

北原 たくさんコメントをいただけて。ほんと……やり方を教えてくれた方のおかげでできたな、と思ってますね。で、これで終わりじゃなくってですね。一番最新版が……まあ、もう今は生きた情報ではないんですけれど、前のバージョンを公開していると、たくさん企業の方が「うちも何か手伝いたいんですけれど」ということで、声をかけていただきました。で、ここパスデータになってるんですけれど、この地図の、北海道地図株式会社という会社の方が、好意で提供していただいてます。

小寺 それは、もともとそういうデータがあった?

北原 全然別で作成してたんですけれど、だったらこれ使えるじゃないか、ということで。

小寺 なるほど。

渡邊 その方にあとであるカンファレンスでお会いした時に聞いたら、もともとの彼らが作った計画停電マップが、どうやらもう集約的になってきてると。あと、エンジニアの方々は、デザインのスキル自体はお持ちでないので、デザインコースにいる北原君らのほうでまとめてくれたほうが、という判断もあったと言われてましたね。

小寺 なるほどね。

渡邊 僕はそれで良かったと思ってて。やっぱり君らが、実際に徹夜して。徹夜してというか、計画停電に遭いながら作った、という血が通ってる気がする(笑)。

一同 (笑)。

渡邊 今日いない、研究室の先輩と彼で2人で作ってるんですけど、その彼は修士論文をこれにしたんですよ。最初はデザイン手法みたいな話をしていたのが、最終的にはまず震災があって、その後ネット上でどんなアクティビティを展開していったかというのをまとめたんですよね。

小寺 なるほどね。ある意味、途中から社会論になっていると。

渡邊 そうです。こないだもさっきのナガサキ・アーカイブの件で、長崎放送の方が取材にきたんですけど、これを彼が話し始めたら、いま九州がちょうど計画停電が起きるかもしれない、と言ってるので、この作り方は参考になるかも、という話をして帰られました。

小寺 そうですね。いやあ、僕も実家が九州なので。

渡邊 ああ、そうですか。この2人もそうなんです。

北原 僕もです。

小寺 あ、そうすか(笑)。

一同 (笑)。

小寺 向こうの新聞とかに載ってる計画停電というのは、九電のサイトのほうもそうなんですけど、もう情報の出し方がひどいよね。なんか、ただの文字組みじゃない? こんなのどうやって探すんだよ、っていう。

・九州電力の計画停電情報
http://www2.kyuden.co.jp/kt_search/index.php/group_area/grouparea_pref/45

渡邊 全然把握できないですよね(笑)。長崎放送の方は、わざとわかりにくくしてるだろ、みたいな話をされて昨日は帰られましたけど。マップにするなんて、それこそ本当、学生たちにもできるぐらいの技術だと思うのに。

小寺 まあただですね、そこはいろいろ考えどころがあって。電力はライフラインなので、どういうエリアが固まって計画停電が起こるか、っていうマップを公式に出すと、いわゆる電力分配図ができるわけです。

渡邊 ああ、なるほどね。

小寺 そういう意味で、あんまり情報を可視化させたくない、というところも、もしかしたらあるのかもしれないですね。

渡邊 テロの対象になるかもしれないですしね。

小寺 そうです。もしかしたら図面化に関しては、法規制があるのかもしれないですね。実は今僕の家の目の前の空き地が宅地造成されようとしているんですけど、宅地開発とかの規模でも、周辺住民には上下水道の配管とか教えてくれないんですよ、役所は。やっぱりそこは黒塗りで。

渡邊 バックドアとして見られちゃうから、ということですね。

小寺 そうですそうです。……というところもやっぱりあるので、そこはある程度、ライフラインを持ってるところとしては仕方がないところかもしれないですが。ただねえ、こういう格好で情報を出されても、みんなが理解できないのではまったく本末転倒なので。

それはやはり民間というか、情報を受け取った側が、もう一回ちゃんと可視化し直すという作業は、やっていいことだと思いますね。

渡邊 そうだね。北海道地図さんがオフィシャルでやらなかった理由もなんとなく、わかる気がするね、今の話を聞くと。「学生たち」という、社会的に自由な立場の人たちがやった、というのが良かった。

小寺 うんうん。で、当然「研究」ということにつながるわけですし。

渡邊 そうですね。さっきの、震災発生後のアクティビティ、という話は、彼はそんなに詰め切らずに大学院を修了しちゃったんですけど。その「活動のデザインをする」みたいな切り口がすごく有用だなと思ったんです。さっき小寺さんが仰ってた、プロトタイプをまずウェブに上げて、声がけをしたら、たくさんの人がそこに力を貸して、どんどん完成度が上がっていく、っていう流れですよね。ここはもともとウェブコンテンツを研究するみたいな研究室だったのが、だんだん社会活動に寄ってきてるというのは、そういう意味もあります。


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