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 大正5年(1916)9月6日 秋田魁新報の記事


      本邦唯一の 鳥海覆盆子(いちご)

      米国試験場より本県に注文来る

 鳥海山の中腹には往時より四季実(しきなり)の覆盆子(いちご)ありて 高山植物とともに登山の人々に採集され居()りしも 格別珍しきものとも思われずに居りしが 今春突然農商務省興津試験場より本県へ四季実の覆盆子の有無を照会ありしも 一時本県内に産するものなるや否(いな)や当局者も不明にてありしを その後ようやく鳥海山にある事判明したり、こは其実(そのじつ)農商務省の直接照会し来りたるものであらで 米国の農事試験場より 同省を経由し本県に注文せるものなるが、該(がい)覆盆子は一種の草莓(くさいちご)にて 其実(そのみ)大なるものは桜桃(さくらんぼ)より大きく 四季に実()る珍しきものにて この種のものは本邦に鳥海山より無く 本県人の未だ普(あまね)く知らざるを 如何(いか)にして米国より注文し来りたるやというに 今より14、15年前 一米国宣教師が由利郡矢嶋町(現由利本荘市矢島町)に伝導に趣きし際 鳥海登山をなし発見せるものにて 米国の農事記録に記載しありし事 図らず発見せしより 今回我が農商務省に照会ありたる次第なるが、今夏は日照つづきのため発育宜しからざりしより 未だ採集し居()らず いずれ今秋か来春採集発送すべく 矢嶋町長土田正作氏は専らこれを取計らい居れり なお かかる珍品は今後漫(みだ)りに登山者に濫採(らんさい)されざるよう 何とか保護を要すべき事なりと同町長は語られたりき

   大正5年(1916)9月6日 秋田魁新報の記事

 四季成りイチゴの原種が、秋田県由利本荘市旧矢島町の鳥海山中にあったようです。四季成りイチゴの品種改良はアメリカが世界に先行し、最初の実用的な品種の育成は1902年とされています。この年は米国の宣教師が鳥海登山中に四季成りイチゴを発見した年と重なります。日本国内での実用はそれから半世紀遅れて、大石俊雄(1902-1996)が30年間の苦心の末、1954年に育成したのが最初とのことです。「鳥海の四季成りイチゴ」と言うだけで、固有の名前がわかりません。アメリカに届けられたかもしれない「鳥海の四季成りイチゴ」の原種が、その後の品種改良にどのように利用されたか又は大石俊雄氏の品種育成にかかわっていたのかなどは知ることはできません。でも、大石氏が研究に取り組む少し前に「鳥海の四季成りいちご」は発見されていますので、大石氏がその存在を知っていても不思議ではないと思います。

イガにトゲのない栗」も鳥海山の麓の町で発見されています。鳥海山は特異な生物環境下にあるのかもしれません。

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